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サーブを打つ際、グリップは “どこに” 力をこめるかという話 (テニス)

指に力を入れ腕を振る

今回の話、本題以外の大部分は『人差し指を離す? ラケットを握る際のグリップの話』という以前のブログ記事と変わりません。ただ、ここは雑記ブログであり、何か連載をしている訳でもない。「この部分は以前書いたものを見てね」といったありがちな誘導は適当ではなく、その記事を見るだけでなるべく完結するよう必要な情報、根拠を都度示すべきだと考えています。

ご面倒でも再確認にお付き合いいただければ幸いです。

サーブを打つ際のグリップ

「サーブを打つ際のグリップはコンチネンタルグリップ位が基本」等と言われます。

ラケットを手に持つ

あくまで “個人的に” ですが、サーブを『薄い』グリップを用いる理由としては、サーブ速度を上げつつ、確率高く「入れる」ためには、ストロークの基本と同じくボールに『順回転 (トップスピン)』をかける事が必要。極端に厚いグリップではこの順回転をかけるのが難しいからといった事が関係していると考えます。

厚いグリップ
・打点は身体より前になり、縦に振るしかない
・インパクト面は『正面向き』でネット方向へ
・プロネーションが起きると “シュート” して

 いく『リバースサーブ』になる
薄いグリップ
打点が身体に近くなる
インパクト面は『横向き』で丁度ネット方向へ
・ラケットが持ち上がる際、ストリングス
縦糸が
 ボールにかかり、回転をかかる
腕の伸ばしてラケットを押し下げるserve

同じコンチネンタルでもフィンガーグリップ的かハンマーグリップ的かで違う

「コンチネンタルグリップは『包丁持ち』だ」等と言われますが、グリップにはいわゆる『厚い』『薄い』とは違う要素もあります。それは手の平の中でラケットのグリップ部が当たる角度です。

角度の違いによりフィンガーグリップ (ピストルグリップとも) 的な握りか、ハンマーグリップ的な握りかの違いが生まれます。

フィンガーグリップ・ハンマーグリップ

包丁だって刺し身包丁(フィンガーグリップ的)と出刃包丁(ハンマーグリップ的)では握り方が違いますね。前者は腕全体を引いて切る。後者は包丁自体を押さえつけるようにして切る。目的とする動きが異なる自然と握り方も変わってきます。

フィンガーグリップ的ハンマーグリップ的
包丁の握り方包丁の握り方

握る道具を使う目的から、フィンガーグリップ的な握りは腕の延長線上に握った棒状のものが来るので「腕を動かす角度・幅 = 手に握る物が動く角度・幅」になります。ハンマーグリップ的な握りは前腕と握った棒状のものの間に “角度” が付くので腕を振り下ろす、上から力を加える際に手に握る物の先端付近に力が発生するようになりますね。

フィンガーグリップ的ハンマーグリップ的
釣り竿の握り方トンカチ・金づち・ハンマー

テニスにおいてフィンガーグリップ的な握りは、まず、ボレー等の腕とラケットを一体として柔らかく動かす、小指側、身体の中心方向に引き寄せるような動きに向いています。

Stefan Edberg cropped

Stefan_Edberg_Båstad_sweden_20070708.jpg: flickr user Michael ErhardssonSir James at [1]derivative work: Mario Žamić, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

そしてグリップが『厚め』ではないイースタン~セミウエスタン位の握りの方のストロークのグリップに向いていると考えます。

身体の構造上、グリップが『厚く』なれば打点は身体から前に離れていき、『薄く』なれば身体に近づきます。ラケットのインパクト面をボールを飛ばしたい方向である『前』に向けたい。『厚い』グリップで腕を前に出した状態でラケットを握れば自然とハンマーグリップ的な握りになり、『薄い』グリップで肩のラインで腕を横に伸ばした状態でラケットを握れば自然とフィンガーグリップ的な握りになってきます。

『厚い』グリップは腕でラケット面を後ろから押し支えるような状態になり、『厚くない』グリップは身体の横へやや遠く、少し腕の伸ばしたような辺りでヘッドを走らせるようにラケットを使える、低い打点等を拾うように処理する。『薄い』グリップは低い打点が打ちやすいのでフィンガーグリップならライジングも処理しやすくなります。(『厚い』グリップは高い打点が打ちやすく、低い打点を打つ際、肩のラインを傾ける等の工夫が必要)

John IsnerJuan Martin del Potro

※ただし、握り方は人によって違いますし、厚いグリップでもフィンガーグリップ的な握りに寄せる事で打点を身体に近づける、低い打点も対応しやすくなるよう工夫している選手も居るようです。「身体の構造から来る妥当な使い方を知っておく」という事であり、ここで述べた事が絶対という事では決してありません。

tennis forehand

サーブにおけるコンチネンタルで用いるのはハンマーグリップ的な握り?

さて、サーブを打つ際の握り方はコンチネンタルグリップを用いるとして、この手の平にラケットのグリップ部が当たる角度はどうすれば良いのかという事になりますが、個人的には「サーブを打つ動作に向くのは “ハンマーグリップ的な” 握り方の方だろう」と思っています。

サーブを打つ際、「インパクトにおいて腕 (前腕) とラケットに角度が必要」という話を聞いた事があるかもしれません。こういうやつです。

Bijan Hejazi serveラケットを手に持つ

我々が思うインパクトのイメージは「最高到達点で打つ」といったもの

一方、我々が持つサーブのインパクトに抱くイメージは「踏み込み側の足先から身体、腕、ラケットの先端までが一直線にしっかりと伸びたような状態」だったりします。

サーブ インパクト例

これは

「サーブを打つ際は出来るだけ高い打点で打つべきだ。打点を高く取らないとサーブは入らない」

という話と

「プロ等がサーブを打つ様子を動画として見られなかった、色んな角度から確認する事ができなかった。サーブ動作中の一瞬を切り抜いた、一方向からの静止画でしか見られなかった」

という情報の制限による弊害だと考えています。

まず、身長2mでも無回転のサーブはまず入りません。速度を上げるためにもサーブに回転は必須であり、回転前提のサーブなら身長1mに満たないキッズでも確率高くサーブは入れられる理屈です。

フラットサーブ 打点の高さ

毎回、バランスを崩しながらジャンプし、不安定な状態でラケットを振ってサーブを打つのが本当に「サーブの確率を上げる」事に繋がるのか。「サーブはジャンプして打つもの、出来るだけ打点を高く取って打つものだから」と自分で考えてみない、教わるままを『当たり前』と思っている状態正しいのでしょうか。

また、テニスの指導は『形 (テイクバックの形、インパクトの形、フォロースルーの形等)』を再現させる手法を取りますがこれも『写真でしか打ち方を確認できなかった時代の名残』でしょうし、YouTube等でいくらでも鮮明な『ボールを打つ動作』を確認できる現代、昔ながらの知識、情報で『形』を作らせるだけでは指導する側も問題だろうと思うのです。

tennis forehandfederer forehand stroke

「出来るだけ高い位置で打つ」と思うとフィンガーグリップ的な握りに変わる

サーブを打つ際に「出来るだけ高い打点で打つ」と思っていると、自然と腕が真上に伸び、身体は伸び上がったような態勢になり、腕 (前腕) とラケットが一直線になる “フィンガーグリップ的な” 握りに変わってくると考えます。

これは「出来るだけ高い位置まで到達する」事が目的の垂直跳びと同じですね。

垂直跳び

打つ前の握り方は何であっても「出来るだけ高く」と思う気持ちからラケットを振り上げる際に「手の中でラケットが触れる角度が変わる、ズレていく」感じでしょうか。

腕の伸ばしてラケットを持ち上げるサーブ

サーブにおける基本的な動作の推移を再確認

サーブにおける基本的な動作の推移を再確認しましょう。

まず『薄い』グリップでラケットを握る際、腕の構造上、インパクト面をボールを飛ばしたい方向、ネット方向に向けたまま、ラケットを振り上げつつ、腕を速く振る、ラケット速度を上げるというのは難しいです。肩支点で腕とラケットを一本の棒のように動かす感じになりそうです。

ピッチャーのように直接的にボールを手に持つ場合は良いのですが、ラケットには長さがあり、腕が動き出しラケットヘッド側が加速するまでのタイムラグがあるため、肩支点の上腕 (肩から肘) の動きだけではラケット速度が出ない、「ヘッドが出てこない、ヘッドが走らない」スイングになりそうです。

投手 投球

また、慣性の法則によりその場にとどまろうとするラケットが手を “後方に” 引っ張り、腕はその負担を軽減するために自然と『外旋』状態になる。結果、小指側がボール方向を向くという点もあるでしょう。

ラケット慣性の法則ラケット慣性の法則

結果、腕は捻じれてラケットヘッド側が下、後方を向き、(今回のグリップの話とは関係ないですが、ハンマーを振るように) 外旋から内旋への動き、腕の動きに繋がる「小指側から引き上げる」スタートになるでしょう。

トンカチ・金づち・ハンマー

その後、加速したラケットヘッド側が手や腕を追い越していく流れになります

ただ、前腕とラケットが肩のラインよりも前に出る段階になると「小指側から進む」ままだとインパクト面がボールに向かない、フレームがボールに直撃する事になるので、回内 (プロネーション) 動作によりインパクト面をボール方向に向けていくという事になりますね。(「プロネーションをする」のではなく「インパクト面をボールに向ける」という方が適切でしょう)

プロネーション・スピネーション

※プロネーションは前腕にある2本の骨の『捻じれ』によって起きます。上腕を含めた腕全体が捩れる事で手の平の向きが変わる。手首には回転する機能はないので、表現上は使っても「手首を回す」という認識は誤りです。

サーブでフィンガーグリップ的な握りを用いるマイナス面

「出来るだけ高い打点で打とう、最高到達点で打とう」と考える余り、身体や腕が伸び、腕 (前腕) とラケットが一直線になるフィンガーグリップ的な握りになってしまう、打つ前のグリップが何であれスイング中に腕を差し伸ばす事で握り方が変わってしまう、ズレてしまうという事があると書きました。

それではサーブを打つ際にフィンガーグリップ的な握りにあるマイナス面を確認していきましょう。

プロネーションに対する認識

まず、皆が大好きな『プロネーションの話です。(失礼しました)

団扇で自分を扇ぐ際、人は前腕と団扇軸との間で角度が付くハンマーグリップ的な握りを自然と用います。回外 (スピネーション) から回内 (プロネーション) 方向へ腕の捻る、回転させる動きで団扇を動かし、風を発生させるからです。

団扇で扇ぐ肩の前で腕を振る

一方、同じ団扇でも「自分以外の誰か・何かを扇ぐ」際等は腕 (前腕) の延長上に団扇が来るフィンガーグリップ的な握りを用いる事がありますね。腕を捻る動きではなく、腕全体を動かして風を送るためです。目的によって動作も握り方も変わるのは包丁等と同じです。

さて、サーブを打つ際、無意識でもフィンガーグリップ的な握りになる事で腕 (前腕) の延長上にラケット位置する状態に近づきます。フィンガーグリップ的な握りを用いる理由の一つとして「腕の動きに手に持つ物の動きがそのまま追従する」点がありますからこういうスイングに繋がってきますね。

腕の伸ばしてラケットを押し下げる

プロネーションが生む効果と握り方の関係性

フィンガーグリップ的な握り方の場合

サーブを打つ際、身体の構造、ラケットに働く慣性の力等から腕が回外(スピネーション)側に捻じれ、手の小指側から腕は上げていく。ボールを打つためにはインパクト面を向ける必要があり、その際に発生するのが回内 (プロネーション) であると書きました。

ラケットを振り上げる、ラケットヘッドが打点の頂点に近づいた段階でフィンガーグリップ的な握りになっているとして、ラケット速度を上げつつボールを打つために必要なプロネーション動作が入ると下図のようなラケットの変化になります。腕とラケットが一直線。腕が捩れるから、ラケットの中心線を軸にラケット面が『ぐるっと』回る感じですね。

「え、サーブでプロネーションをやるってそう事でしょ?」と思った方は、見聞きする通りに「プロネーションをやる」認識だけを持っている。その効果や意味について考える機会がなかったのだろうと思います。

図のように「中心線に沿ってラケットが回転するだけ」です。何でそれで「プロネーションをすればサーブの威力が上がる」のでしょうか?

自分で説明できない、根拠が示せないのに皆に混じって「プロネーションだ」と声高に言っている矛盾ですね。

ハンマーグリップ的な握り方の場合

では、腕 (前腕) とラケットに角度が付くハンマーグリップ的な握りならどうなるかと言えば、下図のようなラケットの変化になります。腕の周りをラケットヘッド側が大きく移動してくるのです。

サーブ プロネーション

腕の動きは同じなのにで、手の中でラケットのグリップ部が触れる角度が違うだけでこれだけラケットの動きに違いが出るのです。

※ここでは分かりやすくするためプロネーション動作を意図的に起こして比較していますが、実際のサーブ動作では、慣性の力でラケットに後方に引っ張られる腕が回外 (スピネーション) 方向に捩れる事、ボールを捉えるためにインパクト面をボール方向に向ける事で結果的に回内 (プロネーション) 動作になると考えます。だから、この比較を見て「サーブを打つ際にプロネーションを使う」と考えてほしくはないです。

インパクトにおいて腕とラケットに角度が必要という話

プロがサーブを打っている様子を見ても『前腕とラケットに角度が付く』事で腕を振る動作以上にラケット面、ヘッド側が大きく移動し、速度を上げやすくなる、回転をかけやすくなる効果を生むと考えます。それが説明を端折って「インパクトにおいて腕 (前腕) とラケットに角度が必要」という話だけが表に出ているのでしょう。

serve

途中述べたように「出来るだけ高い位置でボールを打つ」と考えてしまうとサーブを打つ前のグリップが何であれ、最大到達点に至る前後でフィンガーグリップ的な握りに変わる、ズレてしまう懸念があります。

腕の伸ばしてラケットを持ち上げるサーブ

だから「身長2mでも回転をかけないサーブは入らない (回転を “かけて” 打つサーブが本来「サーブを打つ」という事では?)」という事、出来るだけ高い打点で打とうとすれば腕とラケットが一直線状に並ぶフィンガーグリップ的な握りになってしまうという懸念から、

  • 極端に握りかえる必要はなくても最初からハンマーグリップ的な握りを意識してラケットを握っておくのが良い。
  • 打点は無理に高くしないで腕の余裕のある高さ、エネルギーを加えたい方向、ボールを飛ばしたい方向である『前へ』しっかり腕やラケットを振っていける状態を保つような打ち方をする。

といった事を考えたいでしょうか。

Pete Sampras

サーブを打つ際、グリップは “どこに” 力をこめるかという話

サーブを打つ際、フィンガーグリップ的な握りよりハンマーグリップ的な握りの方がラケットの稼働、慣性の力と腕の機能や構造との関係、サーブに用いる動作で実際にボールを打つという事に効果を生みやすいだろうと書いてきました。

では、サーブを打つ際にハンマーグリップ的な握りを意識する (※) として、サーブを打つ際、ラケットを握る手や指にどう力を込めればよいだろうかと考えました。

スイング中、ボールを打とうとしている段階で手や指に込める力加減を意識するのは難しいでしょう。ここまで確認してきた動作を効果的に良い結果に結びつけるため、これらを意識する事で動作をより確実なものにしたいと言えば良いでしょうか。(「何となく握っている」より良さそうです)

Federer Serve

※手の中でラケットのグリップ部が触れる角度の違いとサーブを打つ動作、ラケットの動き等、諸々の話を理解している事が自身のサーブを変える効果を持ちます。握り方はそれぞれ違うし、スイング中に変わる、ズレる要素もあります。だから理解をすっ飛ばして見聞きしたまま「握り方を変える」というなら皆に混じって「プロネーションが大事だ」と言っていた段階と何も変わらないです。

前提になる話が長くてすいません。ここからが今回の本題になります。

ラオニッチ選手、イズナー選手、サンプラスさんがサーブを打つ様子を見る

まず、ラオニッチ選手、イズナー選手がサーブ練習をしている様子を見てみましょう。

Milos Raonic Serve – 2013 Cincinnati Open

続いてサンプラスさんのサーブ練習の様子です。

Pete Sampras Serve

つい打ち方や打ったサーブの結果に目が行ってしまいますが、3人のグリップ、ラケットを持っている手に注目して見ていただければと思います。

3人共、サーブ動作に入る前にこういう動作が入っています。

サーブ 握り

ラオニッチ選手だけとかなら癖やルーティーンという事もあるでしょうが、3人共という部分が気になりました。イズナー選手も頻繁にやっていますね。仮に「小指側により力を込めてラケットを握っている」ならこういう動作は入れにくいと思ったのです。

小指を曲げて腕を振る、中指を曲げて腕を振る

小指だけを曲げた状態、中指だけを曲げた状態で、それぞれ上腕の内旋、外旋動作をしてみましょう。

小指だけを曲げた状態

指に力を入れ腕を振る

中指だけを曲げた状態

指に力を入れ腕を振る

感じづらいかもしれませんが力の入り方、入りにくさに違いがあると思います。

小指に力がかかる状況、中指側に力がかかる状況

もう少し具体的にラケットを握った状態で自然と『小指側』に力がかかる状況、『中指 (人差し指、親指側)』に力がかかる状況を考えてみると以下のような感じになるでしょうか。

小指に力がかかる状況

ラケットを握った状態で『小指側』に自然と力がかかる状況は、ストロークの始まり。立てたラケットが倒れてグリップ側から引かれ始める段階辺りでしょうか。(グリップ側から引き始める段階)

フォアハンド テイクバックtennis nadal forehand stroke

中指 (人差し指、親指側) に力がかかる状況

一方、ラケットを握った状態で『中指 (人差し指、親指側)』に力がかかる状況は、ハイボレーでボールを「抑える」ように打つ際や途中述べた前腕の捻じり (プロネーション) を行いたい場合等でしょうか。(ヘッド側を効かせる状況)

腕を広げるようにしててフォアボレーの準備サーブ プロネーション

サーブを打つ際、小指に強く力を込める必要はない

フォアハンドストロークと (オーバーヘッドスイングで打つ) サーブとの違いの一つに振り始めからインパクトまでのラケットヘッド側が動く角度があると思います。

肘を90度近くまで立てて上腕の内旋させる動きを用いる (腕の角度、使い方が異なる) 事でストロークに比べ、サーブ (オーバーヘッドスイング) は振り始めからインパクトまでにラケットヘッド側がより大きな角度、より長い距離を動いてきます。(90度前後 対 180度前後)

フォアハンドストロークサーブ

結果、フォアハンドストロークは「振り始めで小指側から引き、慣性の法則で遅れたヘッド側が加速後、同じく慣性の法則による直進性で手や腕を追い越す際は、あまり手に力を込めず、ラケットが前進していく動きを阻害しない (操作しようとすると速度低下、再現性低下に繋がる)」感じなのだろうという事に対し、

federer forehand stroke

サーブ (オーバーヘッドスイング) は、最終的には手や前腕の先にラケットヘッドが到達した状態でボールを打たざるを得ない (ここが、皆が持つ「腕とラケットが一直線になるインパクトのイメージ」やフィンガーグリップ的な握りに変わる要因になる)

このため、フォアハンドストロークほど「振り始めで小指側から引く」力を用いず、むしろ、前腕のプロネーションでラケットヘッド側が動いてくる、インパクト面がボール方向を向きやすくする、結果的にラケットヘッドの側の加速を助ける事に繋がるよう中指 (人差し指、親指) 側に力を込めるようなやり方が適しているのだろうなと考えました。

サーブ プロネーションserve

ラケットダウンを「作らせる」説明の問題点

ボールにエネルギーを加えたい方向は『ボールが飛んでいく方向である “前” 方向』であり、サーブにおける身体の動き、腕の振りもこの方向にエネルギーを加えるために最適化されるべきです。

私が最初にテニスを教わった30年近く前、「ラケットダウンでは背中側にラケットヘッドを落とせ。振り上げる際は背中をラケット面で搔く(かく)、擦るように動かせ 」と教わりました。

これを行う手法の一つが「握りを緩めて、重力でヘッド側が下がるようにする」事でしょう。

手に感じる重さでヘッド側が下がった事を感じた後、今度は「小指側に力を込めてグリップ側からラケットを “上に” 引っ張り上げようとする」動きが出そうです。(ラケットダウンと「スイングを始める」を感じられて心地よいかも)

ラケットヘッドを背中側に落とす身体の回転と腕を振る方向(前)と
加速時にラケットが上がってくる方向 (上) が
ズレている
(加速してくるまでのロス)
serve

ただ、上の2つ (エドバーグさんと女子選手のスイング) を見比べると、エドバーグさんのスイングはラケットヘッドを「下げる・落とす」過程が見えない。手にラケットを握る自然な形のまま、腕を振る方向に手とラケットが進んでいくのを感じます。

回転を加えるため、軌道を上げるためにエネルギーを加えていく方向に『上へ』の要素が強まっても『前に』エネルギーを加える、腕を振る動作は基本変わらず、身体の向きを変える等して対応する。

エネルギーの発生量が下がる「腕だけを上に振り上げる」になってしまうと勿体ないし、再現性も下がってしまうでしょう。打点を高く取ろうと「上にジャンプして打とうとする」動き等ですね。

サーブ 足揃える

ラケットに働く慣性の法則と腕の動きによる関係性から生じる『ラケットダウン』の段階を一連の動作としてではなく (かつて情報量が少なかった時代、写真で打ち方を推測せざるを得なかった時代の流れで) 静止画として切り取って再現させる手法のマイナス面の典型でしょう。

この辺りも諸々、ラケットをどう握るか、どの指に力を込め、手の中でラケットをどう支えるかに関わっている (だから明確に考え、握り方も意識して練習してみる方が良い) と今回は改めて思いました。

指に力を入れ腕を振るサーブ プロネーション
serveサーブ 握り

まとめ

個人的な結論としては「サーブを打つ際はハンマーグリップ的な握り、前腕とラケットに角度が付くように意識して持つ。小指側には力を込めず、グリップに強く小指をひっかけるような握り方もしない。中指が親指 (右手なら手の右半分、左手なら手の左半分) でグリップを挟むように持ち、支えるような握り方をする」というのが、サーブに用いる『前に』エネルギーを加える身体の動きや腕の振り、腕の機能や使い方、フレーム側からボールに接近し、ボールを捉えるためにインパクト面を向ける回内 (プロネーション) 動作等の効果を生みやすくする、最適化に繋がる、自分が打てるより良いサーブのために考えられる要素なのかなと思いました。

Pete Sampras

もちろん、「ボールが飛び回転がかかるのは物理的な現象」ですから、ラケットを使い何かしらボールにエネルギーを加えれば、加えられたエネルギー量と加えられた方向性に沿ってボールは飛んでいきます。打ち方に『絶対の正解』を求めてもあまり意味がないでしょう。習った通りの打ち方をしているつもりでも皆、それぞれに個性的な打ち方でテニスをしている。道具の進化もあり、(決められないと思いますが) 絶対の正解でなくてもテニスは出来ています。

今回のブログ記事も、私が自分のテニス上達のための「身体の仕組みとボールが飛ぶ理屈からこういう身体の使い方が良いのでは?」という考察、情報のひとつだとご理解いただければと思います。「こんなの間違いだ」と思っていただいて構いませんし、それで読んだ方が「テニスについて考える」機会になれば良いのだろうと思っています。

私はテニスの専門家やコーチではないので、テニスにおける『ボールの打ち方』を示すのには向きません。そもそも、会ったこともテニスを見せたこともない者の話を鵜呑みにするのは危険です。普段から自分のテニスを見ているコーチに相談していただくのが一番です。全く同じ理解をしてもらえるとも思いません。何かしら参考にするにも、ご自身で考え、自分なりの理解の上で取り組む、工夫していく事が上達には必要でしょう。くれぐれも怪我などないようお願いいたします。