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遅いボールと速度のあるボールを上手く使い分ける (テニス)

ネットを越す返球

遅いボールと速度のあるボール

テニスの説明で「遅いボールと速度のあるボールを使い分ける」と言われれば「なるほど、そういう事も必要なのだろうな」と思うでしょうが、きっと「自分よりもっとうまくテニスが出来る人がその高い技術を利用して相手を翻弄する」ようなイメージ、自分にはまだ縁遠いもの、ボールを打つので精一杯でそこまで意識が回らないと思うかもしれません。

野球のような緩急はテニスには当てはまりにくい

野球においてピッチャーの投球における緩急はよく言われますね。

速いストレートを見せた後にチャンジアップ (ストレートと同じ軌道で跳んでくるが途中で失速して「飛んでこない」からバッターか先に振ってしまう)を投げる。或いは、散々遅いボールを投げた後に投げると130km/h台の”遅い”ストレートでもバッターが詰まってしまう、打ち損じるといった具合で使われます。

テニスにおいて緩急に意味がないとは言いませんが、最も速度のあるショットであろうサーブを考えても、打つ速度に違いを設けるより「相手の予想を外す」「弾んだボールの変化量」等の方がよほど現実的な効果を発揮するのは想像が付きます。

プロ選手なら投球よりサーブの方が初速は速いでしょうが、マウンドからホームベースまでよりベースライン間の方が、距離は長いし速度が速ければ回転をかけて打つ事がほぼ必須、かけなくても入るサーブは単純に速度が遅く空気抵抗や重力で飛んでいる間にかなり失速する。リターンは必ずバウンドしたボールを打つのでボールのエネルギーがバウンド時にかなり減衰してしまう等の違いあるからです。

ボレー等、相手の強いストロークをネット付近で返球する事を考えても、距離は12m程と投球より短くなりますが、ラケットは飛んでくるボールのエネルギーを押し支えるだけで十分な飛びを得られ、野球のように必ずスイングする必要がありません。(バントでは距離が出ない) 130km/hのボールでもホームベースまで0.5秒程で飛んでくる計算になります。しっかりスイングするには始動からインパクトまで0.5秒では足りず、ピッチャーがボールをリリースする前にスイングを開始する必要がある。だから同じ腕の振り方で速度差を付けられると効果が大きいという理屈です。

テニスにおける遅いボールと速度のあるボールの意味

テニスにおいては野球の「緩急」、投げるボールの速度差で相手のタイミングを狂わせるといった使い方をする効果は限定的、もっとテニスの状況にあった手段があると書きました。

では、テニスでも「遅いボールと速度のあるボールを使い分ける」といった事が言われる理由はそれとは違う部分にあり、そのひとつは、

ボールが飛び回転がかかる理屈

から来るものだろうと考えます。

ボールが飛び回転がかかる際に使われるエネルギーは大きく2つ

ボールを飛ばす回転をかけるためのエネルギーはおおまかには

1) 速度を持って飛んでくるボールのエネルギーを反発させる
2) 自ら加速させたラケットのエネルギーをボールに伝える

の2つです。

時間の無い中、飛ばす距離が長くない、遠くまで飛ばす必要が少ないボレーは1のボールの持つエネルギーを重視したショット。

自らトスしたほぼ速度ゼロのボールを打つサーブは2のラケットのエネルギーで打つショット。

ストロークは打つ位置と状況により、1と2を組み合わる、割合を変えて打つショット。

と考えられます。

ボールもラケットも重量があり、飛ぶ、スイングされる事で速度を持ちます。

ボールやラケットが持つ運動エネルギーの大きさは

『1/2 x 重量 x 速度 ^2 (2乗)』

で表されます。

因みに打つボール、手に持つラケットの重量は固定です。よってインパクト前後のボール速度、ラケット速度が速いほどそれらが持つ運動エネルギーは大きいと言えます。

「リターンはストロークの小さい版」といった認識があったりしますが、速度が極端に落ちる2ndサーブ等でなければ、自ら大きなエネルギーをボールに加えようとする (大きなスイングをしようとする、ボールの速度に打ち負けまいと力を込める、強いボールを打ち込んでやろうと力む) 必要性は小さくなりますよね。「テニスは確率のスポーツ」でポイントの多くはミスで生まれます。戦略面から意図的に選択するのでもなければ「ストロークを打つようにリターンしようとするのは “何も考えてない” だけ」に見えます。(逆に「当てるだけで返せる」みたいな発想も少し違う気が。ボールとラケット、2つのエネルギーを “物理法則下” でどう使うのが良いかと理屈を自分で考えたいです。)

「打つボールのエネルギーが小さければ相手はどうなるか?」を考える

スイングする第一の目的は「遠くまで飛ばすこと」

我々がスイングする第一の目的は「遠くまで飛ばすため」だと考えます。

ボールに大きなエネルギーを加えれば遠くまで飛びます。

加えられるエネルギー量が大きくなればボール速度も上がり、回転量を増やす事もできますが「速度を上げるため」「回転を増やすため」に力んでラケットを振り回すのは目的がズレていると思います。

繰り返しになりますが「テニスは確率のスポーツ」ですから「今の状況下で自分がコントロールできる範囲の選択をすべき」です。ゲーム中の気持ちのコントロール、判断や思慮が足りず”一か八か”な選択ばかりする。そもそも何も考えずに打ってしまっていては確率の高いテニスは難しいでしょう。

常に冷静にプレイする、判断するためにも「エネルギーを加えればボールは遠くまで飛ぶ」のだという点を踏まえておきたいです。

ボールのエネルギーが小さければ自分でエネルギーを加えないといけない

サーブのように相手にボールに速度があれば、ボレーのようにラケット面にしっかりと当て身体も使って押し支えるだけでネットを越す返球は難しくありません。

ストロークの打ち合いでも相手の打つボールに速度があれば「自分は軽く合わせるだけ(※)」でも問題ない範囲で打ち返せたりします。

※「相手のボールに打ち負けまいとスイングする」という話
前述したようにボールとラケットが持つ運動エネルギーの大きさは『1/2 x 重量 x 速度 ^2 (2乗)』で計算されます。ボールの重さは60g弱、ラケットの重さは300g程で5倍の重量差があります。時速100km/hで飛んでくるボールと同じ大きさの運動エネルギーをラケットに持たせるには、その重量差から時速45km/hほどでスイングできれば良い計算になります。(1/2*60*100*100 = 300,000、1/2*300*45*45 = 303,750。計算結果ではなく数字がほぼ同じになるという点がポイント)
スイングで得たエネルギーが全てボールに伝わる訳ではないですが、それ以上の速度でスイングするなら「ボールにどの位エネルギーを加えるか調整する」「エネルギーを回転に割り振る」「軌道や回転量を意識する」といった意識が不可欠でただムキになって振り回すのでは自身の能力のコントロール下から逸脱する、確率の低いテニスになるのは当然です。

相手が打ったボールがベースライン深くで、バウンドして止まってしまう位にエネルギーが残っていない。ベースライン後方から相手コートのベースライン付近までボールを飛ばそうと思ったらサーブのように「ほぼ自分でエネルギーを加えてボールを飛ばす」必要があります。

深いスライスを返球するような場合

相手がゆっくりとした深いスライスで繋いできて、都度、自分はスピンやフラットでしっかり打って返球しようとすれば「自分の方が先にしんどくなる、集中力が切れる等してミスする」といった事は起こりがちですね。

スライスはバウンドしないし回転もありスピン等で返球する、持ち上げるのが難しいと言われますが、純粋に速度の無さ (持つエネルギーの小ささ) から自分でよりエネルギーを加えないといけないという点も返球の難しさに繋がると考えます。

ゆっくりとしたストロークをベースライン付近に深く打たれた

中ロブのように軌道が高く速度が速くないボールをベースライン近くに深く打つなら、相手はベースラインよりもっと下がった位置から打つ事となります。

ネットまで遠いし、自分も深く打とうとすればストロークにおいて “最長” に近い距離を飛ばさないといけません。

ボールに十分な速度が無いなら「自らスイングしてボールに必要なエネルギーを加えないといけない」事となります。

人が力を入れやすい、エネルギーが発生しやすいのは「身体の重心、手足等身体のバランスの中心となる “腰” に近い位置」だと考えます。

フォアハンドの初期加速 身体の使い方

頭より高い位置でストロークを打とうとすると力が入りづらくなるのは、

ラケットの初期加速、体勢維持に貢献する足(地面との接点) と手の距離が遠くなり、重心位置も上がってしまうといった事が関係している

と思います。

プロ選手を見ても両足が設置したのと近い状態のまま “腰(重心)の位置” を上げるためジャンプして打ったりする訳です。高いボールを打つからと “身体が伸び上がった状態” で真上に飛び上がるようなジャンプをしてもしっかり打てませんね。

※力の入れやすい打点の高さはグリップでも変わる
厚いグリップは自然と高い打点の方が打ちやすくなるので、重心位置から腕やラケットが離れる。その分、スタンスを広くとり、テイクバックを大きく取ってバランスを取る事になると思います。フェデラー選手(イースタン位)やナダル選手(セミウエット位)はグリップが厚くないので高くない打点、”腰付近の位置からラケットが振り出せる” スイングが最も力が入りやすいのだろうと想像します。極端に厚いグリップの方が「フェデラー選手のフォアをマネする」とこの辺りの整合性が取れなくなるのです。(フェデラー選手、ナダル選手は高い打点で打つ際は違った工夫をしています。)

さて、深く飛んできた速度のないボールを返球する際、確率を考えれば、

相手と同じような速度でゆっくり高い軌道のボールを返球する」

事が “堅い” 選択と言えます。

相手の遅いボールを繋いでくるのにジレたり、チャンスボールだとばかりに「大きなスイングをして強く打ち返そう」とすればフカしてアウト、うまく当たらずネットといったミスの可能性が高いでしょう。

速い速度で打ち合っている時は問題なく打てるのに球出しのような遅いボール、バウンド後に失速して止まってしまうようなボールを打とうとするとミスしてしまう

といった事もこれと同じです。

ボールにエネルギーがないので自分からスイングで加える必要があり、1度バウンドしてから2バウンド目をするまで時間が多く取れるので「色んなタイミングで打てる半面、自分のいつもの打ち方ができにくい。普段意識せず打てているのにボールが遅い事で身体に力みが出る」のでうまく打てないのだと思われます。

(長い停止状態を経ると瞬発力ではなくゼロから動き出すぎこちなさになる)

アプローチショットの例

テニススクールのレッスンでも「アプローチショットを打って前に詰めて1stボレー」といった練習は多く行います。

行うゲーム練習の多くがダブルスであり、いかにネットを取り平行陣を作るかが戦術的に重要なポイントとなってくるためですね。

ただ、球出し練習でこれをやると「アプローチを強打する、丁寧さに欠く、何となく打つ等してアウトやネットする」方が圧倒的なのに驚きます。

コーチからは

「速いボールを打てば相手から速く帰ってきてしまう。1stボレーをできる位置まで到達できない。しっかり止まって準備する時間が確保できないよ。」

と繰り返し注意される訳ですが直りません。

そもそも実際のゲームなら、アプローチをミスした時点で1stボレーは打てず失点です。アプローチショットとその後のボレーを別に考える、ボレーが本番とばかりにアプローチショットを適当に打っているなら「ゲームの状況だとイメージできていない」です。そんな方々が本番でうまくできる筈もないですし、周りも皆同じなので「自分ヤバいな」と思えていないのだと思います。

ボレーヤーに足元のボールを打たせる意味

プロの男子ダブルスなら「浮いたボールを返したら即決められてしまう」という話を良く聞きます。

相手コートの間にはネットがあり「ネットよりも低い位置で打つ限りは、ネットの高さまで一旦ボール軌道を持ち上げる」必要があります。

ボレーヤーはネットに近い位置に居る訳なので、足元のボールを持ち上げネットを越すためにはネットに近づくほど、打ち上げる角度が急になり、ボールに強いエネルギーを加える事が難しくなります。(強くスイングしようとすればミスする確率が高くなる。飛ばす距離が短いのでアウトする可能性が高くなる。”下から上に振る”スピンでは足元のボールを処理するのは難しい。スライスやフラットで持ち上げるなら腕で振るから強くは振れない等々の制限)

足元からネットを越すための球種の選択

以下は鈴木貴男選手のボレスト練習ですが、ハーフバウンドのようなタイミングが多い中、

しっかりと重心を落とし、足で地面を踏み身体を支えて、準備(タメ)を作り、常に自身のコントロール下で余裕を持ってボールを打ち、ボールをフカして浮かせない必ず相手ボレーヤーにネットよりも低い位置で打たせている

ように見えます。

打つボールが速く見えるのは「プロの練習だから」でもっと速くも打てるけどミスしては仕方がない。遅く打っては互いに負荷にならないという線引きなのでしょう。

我々なら、色んな状況、打ち方で常にコントロールして相手ボレーヤーの足元に狙って打てるという点を参考にしたいですね。

速すぎるとアウトやネットが多発。ボールにエネルギーがあるから相手も当てるだけで返せ、速度で打ち損ねを期待するのは相手の技量的に妥当ではないです。

ストローク側が男性だと「相手ボレーヤー正面、身体に向けてぶつけるように打つ “突き球” のイメージ」を持つ方も多い (とにかく”強く”打ちたい) です。

Highlights: Benneteau/Gasquet (FRA) v Federer/Wawrinka (SUI)

ただ「鈴木貴男選手のようにハーフバンドでもきちんと準備して打ち続けられますか?」という話で相手のボレー技術、ダブルス経験が自分を上回って居る場合、ストロークを続ける中自分の方が先にミスするでしょう。(並行陣が有利と言われるのはその辺りだし)

常に変わる状況下で自分の技量、ボールをコントロールできる範囲で選択をすべきですね。相手が繋げてくれるボレーを気持ちよく強打していても仕方がないです。

ネットより低い位置で打たせる前提で、相手にボレー返球させるけど何か細工する余裕はない。とりあえず返すだけになる速度(速すぎず、時間を与える遅さでもない)、回転、失速度合い、ネットを越す弧の頂点、打つタイミング(ハーフバンドか2バンド目ギリギリで打つか等) を試行錯誤して自分なりのものを掴みたいでしょうか。

ストローク側にミスをさせるボレーの配球

上と同じボレストの状況でボレーヤー側がストローク側に打つボールについても同じような事が言えます。

相手のストロークが浮き、打ちごろの高さに来たならパチンと叩く強いボレーを打ったりできるでしょう。

でも、上で述べたように「実際のダブルスで打ちごろの浮いたストロークが来たらなら、一発で決めてしまうべき場面」であり、「お返しとばかりに相手ストローカーに強いボレーを打ち込んでやった」と悦に入るのはかなり的外れだと思います。

ダブルスにおいて「偶然訪れるチャンスに期待する」のは無理があると言わざるを得ません。

テニスにおいて予測は必須であり、相手の打つ様子を見て飛んでくるコースや球種、今、そして次にそのボールに対する攻守のため自分がコート上のどこに居るべきかが決まってきます。

相手の打ち損じを決めてのガッツポーズは気持ち良いでしょうが、予測が出来ていない方ならそのチャンスボールすらミスしてしまいます。「本来、居るべき場所に居ないから」ですね。

(基本的なダブルスができず散々同じようなミスしているのに、1回のポイントでそれらの負のイメージを上書きし「ダブルスに自信がある」みたいな顔をされる方は多いです。)

予測していないから足の移動でボールに近づけない。足ではなく咄嗟に手や腕が出る。身体のバランスを崩した打ち方になる。ミスするか返球できてもどこに飛んでいくかコントロールできない。こういったミスが起きるのは「ボレーの技術が高くないから」ではありません。

足が出ず手だけで打ちに行くボレー

予測が出来、確率的に居るべき場所に居る事ができたらボレー技術はそのままに格段にダブルスが上達します。ボレーミスも減り、本来の自分の技術が活かせます。下手だからミスするとは限らないです。

話は戻りますが、ボレー対ストローク (ボレスト) でストローク側に返球する場合でも

「ストローク側が打ちづらいであろう配球」

を意識しながら練習をしたいです。

繰り返しますがそれは「バーンと強打して相手に打ち返させないボレー」ではないです。(実際の試合でそんな機会や余裕のある場面が頻繁に来るとも思えません。)

ここまでの話から

1. 飛んでくるボールに速度がないなら自分からエネルギーを加えないといけない
2. ネットから低い位置で打つ際は “ネットを越せる打ち出し角度” を確保しないといけない
3. 足元のボールを打つ際は打ち方や球種の選択に制限が生じる
4. 足元のボールは上に持ち上げる必要があり、姿勢や重心を下げる等”打つ際の負担”が増す

といった事が言えます。

例えばですがこれらの事から、

速度を押さえた(※)ベースライン付近に居る相手の近くまで飛んでいって、足元付近でバウンドする。バウンド後も強く前進しないようなボレーであれば、相手は毎回 “辛い” 姿勢で、打つまでの準備(間、タメ)を作り、普通のストロークより “集中して” 打たないといけない。速度が遅い分、”つい力んで” しまえば即ミスに繋がるだろう

といった事が思い浮かびます。

ベースライン付近でバウンドするゆったりとした深いボレー

雁行陣対並行陣のような状況でのボレストでは自らエネルギーを加える必要があるストローク側と相手ボールのエネルギーを利用し反発させて打てるボレー側という違いから「平行陣側が有利」が基本的認識となっています。(技術や球速のあるプロだからそれを打ち崩す展開も可能なだけです)

自分が一生懸命打っているのに相手ボレーヤーは軽く返球するだけで返されてしまう。そのやり取りが何球も続く。当然、打ち合いが続く程、ストローク側の方がプレッシャーはかかり、心理的に不利にもなります。

相手が足元に打ってこようとするストロークをコントロールして返球できる経験や技量が必要ですが、ゆっくりと速度を殺した山なりのボール、少し速度を上げた弾まないボール等を混ぜると相手はより対処が難しくなります。

打ち合いの基本は「同じ条件で打たせない」事だと思います。球種、コース、打つ場所、打点の位置が毎回変われば都度相手がミスする可能性が生まれます。同じ場所でフォアばかり打つことを考えればその違いは明らかです。

練習ではないかもしれませんが「深く打てずベースラインから入って打てる位置、浅くなってしまうと踏み込まれて打ち込まれてしまう」可能性生まれます。ゆっくりでも良いので深く、速度のないボールを打たせたいです。当然、相手の返球次第で一発で決められる心づもりと準備をしつつです。

速度のあるボールを使う意味

テニスのルール上、自分が打ったボールでポイントが発生する条件は、

「自分が打ったボールが相手コートの規定のライン内に2バウンドするまでに相手が自コート側に返球できないこと」

になるでしょうか。

単純な言い方をすれば、

1. 相手が触れる前に2バウンドさせれば良い
2. 物理的に相手が触れない位置までボールを遠ざければ良い

といった事が言えます。

1で言われて真っ先にに思い浮かぶのはドロップショットでしょうが、2も含めて

「極めて速度のあるボール、角度の付いたボールを打って、曲がる回転のかかったボールを打ち周囲の壁に2バウンド目を当てる」

のも同じ事になるでしょう。サーブ等がその例ですね。

コート毎のルールもあるでしょうから

「物理的に相手が触れない位置までボールを遠ざける」

のが、ボールのエネルギーを反発させるボレー、自らスイングしボールにエネルギーを加えるサーブ、両方を組み合わせて使い分けるストローク、それら全ショットを含めてボールに速度を持たせる(エネルギーを持たせる)理由で大きいものの1つだと思います。

当然、「強いボールを打って相手にミスをさせる」のも理由になりますが、

述べてきたように

「ボールに残っているエネルギーが大きければ無理に強くスイングしなくても返球できてしまう。」

「速いボールを打ったら相手からも速く返ってくる。自分が準備する時間が確保できなかったり、自分の方が “物理的に触れない位置まで” ボールを遠ざけられてしまう可能性もある 」

といった点も認識しておく必要があります。

「相手に戦う意思を示す」「強さを示して相手の心を折る」といった面はあるでしょうが

「実際の試合でどう使うか関係なく練習でとにかく強いボールを打ちたいだけ」

なら自身のテニスを高めるのには繋がらなさそうです。

プロの練習風景を見ても、闇雲に強いボールを撃ち続けてる訳ではないですね。負荷の中打ち続ける練習だったり、試合の中でそういった場面でミスせず打ち続けられるようにするため等の理由があるのだと想像します。試合中のラリーでは我々が想像するより “遅いボール” で打ち合っている事も多いですからね。

 いわゆる「緩急」ではない”ボール速度”を使い分ける意味は大きい

まとめになりますが、野球の投球における「緩急」とは違った意味で、テニスには

「遅いボールをうまく使える事」

が重要になってきます。

相手が打ち返してくるまでの時間を稼ぐ

のにも使えますし、

敢えてボールに大きなエネルギーを持たせないことで、それを打つ相手に「エネルギーを加えないといけない」という心理的、体力的な負担をかける

事も出来ます。

単純にベースライン後方から速度のない、エネルギーがないボールを長い距離打ち返すのは難しさがある

のですし、途中述べたように

ネットから低い位置で打たせる事でネットを越させるために打ち方に制限を持たせる (強く振れない。ネットやアウトを防ぐため相手もゆっくり打つしか無い。足元のボール処理に慣れていないと浮いた返球が引き出しやすい)

ことでより遅いボールを打たせる事の意義を増す事ができます。

「テニスの練習でストロークを打つ際はとにかく強打を打ちたい」という方は多いでしょうが、実際やることはなくても1時間、2時間、試合でその強打を打ち続けられないならただの不満解消でしかないですね。

(それを否定する訳ではありません。ただ、テニススクールなら「自分が “良い” 練習をしたいなら、自分と同等かそれ以上に時間とお金をかけて参加している周りの人にとっても、”自分が良い練習相手になる” べきだ」と私は思っています。自分は満足、相手は不満では不公平でしょう。)

「遅いボールを上手く使う」というと「スライスを使え」「ロブを使え」みたいな話になりそうですが、物理法則下で行うしかないテニスというスポーツおいて「ボールにエネルギーがない」事の意味はかなり大きいです。

これは自分がボールを打つ際、相手がボールを打つ際、常に関わってくる部分で「理解しないまま練習している」「理解した上で練習している」の違いがコート上の結果に明確に出てきます。

本来の実力を発揮するには不可欠な部分かもしれないです。

「なぜラケットで打つとボールは飛ぶのか?」「なぜボールに回転がかかるのか?」「”ボールが速い” とはどういうことなのか?」「なぜラケットやガットに”飛ぶ” “飛ばない” があるのか?」

それらは全て物理法則によって生まれているからですね。

ボールを打っているだけでは辿り着けない理解もあります。

興味や疑問を持ってコート上で練習できない時間をテニスの理解に活かしたいと思います。