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フォアハンドストロークは体の回転で打つ? (テニス)

身体の仕組み 二軸の入れ替え

体の回転でフォアハンドを打つ

テニスを始めたばかりの方でもフォアハンド及びバックハンドでボールを打つ際、ある程度、体を回転させながらラケットを振ってるということは実感できますし、テニスについて学ぶ中で「フォアハンドは体を回転させながら打つものだ」といった話を聞くこともあると思います。

体の回転とラケット軌道

でも、実際に上半身を中心とした体の回転をを行った際、当然ながら腕が描く軌道は「円」に近くなります。

体の回転は円運動

テニスの他、手に持った棒状の道具をスイングしてボールを飛ばすゴルフや野球も同様ですが、スイングする中で道具は “体に近い位置から一旦離れた道具はボールに当たった後、再び体に近い位置に近づいてくる” 軌道を描きます。

ラケットの円状のスイング軌道

これには体の機能をスムーズに使うためでこれに体の回転が含まれます。体の回転をうまく使わず、腕の曲げ伸ばし等だけでラケット等を直線的にボールにぶつけるだけではラケットのスピードは出せません。

「打点」は “空中の1点” なのか?

テニスにおいて「打点の位置」は空中の1点にラケット面をセットする形で示されることが殆どです。

フォアハンドの打点の位置は空中の一点?

でも、考えてみれば、テイバックの位置から開始されたスイングはフォロースルーまで止まることはありません。

ボールに当たったからといってスイングが止まってしまったりスイングスピードがそこで低下してしまうこともないのです。

インパクトの間にもラケットは進む

テニスにおけるインパクトの時間、スイング時にラケットとボールが接触している時間は0.004秒程度だと言われています。仮に120km/hでスイングされているラケットがこの0.004秒の間に進む距離は約13.4cmです。

つまり、ラケットはボールに触れている僅かな時間の間にも13.4cmも前に進んでいるわけです。

ボールの大きさは7cm弱ですし、ラケット面が前進しながらボールを押しつぶしていると考えてもボールの直径の2倍程度は進んでいます。

「打点の位置」はボールを捉える “だいたいの位置” だということ

自分がボールを捉えるだいたいの位置をイメージするために空中の一点にラケットをセットしそれを「打点」と考えるのはもちろん意味があります。

ただ、上記の通りラケットはインパクトの間にも動き続けているので、単純に「この打点の位置(空中の1点)でボールを捉えんのだ!」と思い込んでしまうと、“ボールに当てようとする意識と腕による操作” が発生し、結果的に “ラケットスピードが上がらない”“ボールに正確に当てられない” といった自分が望むのと逆の事象が起きてしまいます。

体の回転だけで打つとインパクトの間にもラケットはズレていく

単純に考えればですが、体の回転のみでラケットをスイングするとすれば “インパクトの間にも約13.4cm進むラケットは、ボールと接触した0.004秒の間にも体の回転に伴う円運動に伴い、ボールを打出す方向、角度からどんどんズレていく”ことになります。

インパクトの間にもラケット軌道はズレていく

ゴルフも野球も同様ですが、テニスにおいてもスイング時にラケットの描く軌道は円を基本とする運動だということです。

ただ、体の回転で打つ、ラケットの描く軌道は「円」だと言われても、目で見ているボールに対し “ラケットをぶつける、当てる” と考えたいプレイヤーにとっては円運動の中でボールを捉えるということはイメージを合致しづらいものでもあります。

また、ラケットをスイングする目的はラケットに運動エネルギーを持たせて、ボールを打出し方向、角度に(前方に)飛ばすためなので、より正確にボールに運動エネルギーを伝えるためにも、ボールの打出し方向、角度に対しできるだけ長くラケット面を向け続けたいということもあります。

“二軸の入替え” – 円運動に直線運動を加える工夫の一つ

「体の回転」というと体の中心(仮に背骨)を軸とした画一的な回転運動をイメージしますが、人の骨格は色々な骨の組み合わせて構成されており一枚の板がクルクル回るような動きしかできないわけではありません。

体の回転は一枚の板が回転するのとは違う

体の回転に伴う円運動に直線的な動きの要素を加える方法として「二軸の入替え」と言われる方法があります。これは両肩と股関節を結ぶ2本の線を軸としてこれらを捻るように使う動きです。

左右の両肩と股関節を結ぶ二軸

分かりやすい例で言えば、相撲のつっぱりやボクシングの右ストレートを打つ際、右手側の肩や肩甲骨伸ばすようにして腕を伸ばし、逆に左手側の肩や肩甲骨を含む腕を手前に引き付けるように動かすと思います。

右手側の肩、肩甲骨を伸ばし、逆に左手の肩、肩甲骨を手前に引く

反対側の腕を伸ばす際はこの逆の動きを行います。

左手側の肩、肩甲骨を伸ばし、逆に右手の肩、肩甲骨を手前に引く

これにより、単に体に回転に伴い腕を前に向けるよりも、腕を前方により長い距離、力強く速度を持って腕を伸ばし力を加えることができます。

これが両肩と股関節を結ぶ二軸を入替えている動きとなります。(※)

二軸の入替え、左手側の肩、肩甲骨を伸ばし、逆に右手の肩、肩甲骨を手前に引く

※実際は様々な骨が捻れることで起きるものですがその連動を言葉で表すことは無理なので分かりやすいように “二軸の入替え” という表現が用いられていると考えます。

知識はないのですが、水泳におけるクロールも同様の肩周りの運動を用いて両腕を回転させていると思います。

 動画: 両肩と股関節を結ぶ二軸の入替えによりスイングの円軌道を補完する 

それまで回転で打っていたスイングにこの動作を加えるのはイメージがわかないかもしれませんが違いは大きいと思います。 

因みに体の回転に伴いスイング軌道(スイングプレーン)は動いていくが..

テイバック時のスタンスにかかわらず、テイバックでは体は横向きになっており、ボールを打つために体をボール方向(正面)に向けていきながらラケットをスイングすることとなります。

体を正面に向けるのは、人が力強くボールを打つためには「自分の体の正面 (右肩から左肩の間+α) の範囲かつ肩よりも前に腕がある」必要があるためです。

ラケットのスイング軌道

仮にテイクバックで横向きになった状態のままラケットを振ることと考えれば、体が回転し正面を向く中でスイング軌道はこういう風に変化していきます。

単なる円ではなく、体の回転に伴いスイング軌道も動いていく 1

3つを重ね合わせるとこういう図になります。

単なる円ではなく、体の回転に伴いスイング軌道も動いていく 2

体の回転に伴い、スイング軌道もシンプルな「円」ではなく、ラケットを振る方向、つまり前方に伸びていっているのは分かるかと思います。

ただ、ラケットのスイング軌道が前に向かって伸びていっていっても、ラケットを振っている本人は回転軸の中心に居て、そこからボールを見ている訳ですから、スイング軌道が伸びていることに対する実感は得られません。このため体の回転の中でラケットに直線的な動きをさせてボールに当てたいと考えたら腕や手の動きを使うことに繋がってしまう訳です。 

二軸の入替えによりスイング軌道に縦に伸びる部分を作り、ラケットも加速させる

体の回転中に二軸の入替えを行う動きを加えようとすると最初はぎこちなくなってしまうかもしれませんが、「右腕でラケットを振る際、左肩を手前に引き付けるようにして右肩を伸ばしていく (両肩を回転させる)、その際、肩だけではなく両肩と股関節を結ぶ2本の軸を前後入れ替えるようにする」と考えれば少しはイメージができるかと思います。

これを行うことにより元々の円に近いスイング軌道に直線的に伸びる部分を加えることができ、実際のスイング軌道の変化以外にも、ラケットを振っている自分自身もラケットが前方に伸びていく、“ラケットを押している” イメージを持てることにもなります。(実際に “押すという操作” に重要性はなくむしろ逆効果さえあります。本人がイメージを持てることによる安心感という事です。)

最初はラケットを持たない状態で正面を向き、右側の軸、左側の軸を入れ替えるように右手、左手を差し伸ばす動きを確認するところからでしょうか。その際、単に体を回転させる、腕を伸ばすというよりも、伸ばした側の軸が前方に伸びるのに合わせて、反対側の軸が引きつけられるので、正面から見たら股関節から肩までの幅が狭くなったように見えるはずです。

表現が違いましたが、以前、杉山愛さんがジュニアに指導をするTV番組の中で “体の回転で打つという説明の中で右肩を伸ばし左肩を引く、左肩を伸ばし右肩を引くという動きを加えることで力強くしっかりとラケットを振れるようになる”という趣旨の解説をされていました。ボクシングや相撲、或いは水泳の例を考えても、意味がある動きであることは理解できるのではないかと思います。