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フォハンドにおけるラケットの加速とプロネーション <前編> (テニス)

プロネーション・スピネーション

フォアハンドにおけるラケット加速とプロネーション

先日、サーブの常識と言われる「サーブのグリップは薄くないとダメという話とプロネーションの関係」について書きました。

プロネーションは肘から手首までの前腕にある2本の骨が捻れることによって起きるものです。

プロネーション・スピネーション

プロネーションの動きはサーブに限ったものではないので、今回はフォアハンドについて考えてみたいと思います。

と言っても人間の腕の機能についての基本的な機能に関する話ですのでサーブについて書いたものと前提はほぼ同じと考えています。

これをフォアハンドに当てはめた場合にどうかという視点でのお話となります。

ラケットの加速と物理的な法則性、体の機能に関するおさらい

まず、ベースとなる部分のおさらいですが、

ラケットの持つ運動エネルギー

ラケットをスイングする目的はボールに伝える運動エネルギーを発生させるためです。その運動エネルギーは 『1/2 × ラケット重量 x スイングスピード^2 (2乗)』で計算されます。

手に持つラケットは1つだけなのでシンプルにスイングスピードが上がる程、ボールに伝わる運動エネルギーも大きくなります。

ラケットに働く慣性の力と遠心力

慣性の力

ラケットには “慣性の法則” が影響します。テイバックで停止したラケットはその場に留まり続けようとしますが、グリップ側から手に引かれ加速を始め、留まろうとするヘッド側は後方から追従していきます。

一旦動き始めたラケットは同じく慣性の法則により動いてる方向へ動き続けようとします。

ラケット慣性の法則

円周運動と慣性の力から派生する遠心力

スイングは体の回転に伴って行われます。慣性の法則で直進し続けようとするラケットは手によって円の中心側に引っ張られる形で、進む方向を変えていきます。(直進 → 円周軌道)

遠心力

この “ラケットを円の中心方向にひっぱる” 腕の力に対し、ラケットまっすぐ直進しようとする慣性の力が、中心に引っ張る力と逆向きに円の外向きに引っ張られる力として感じられるのが “遠心力”。

ラケットを持つ手にはラケットを中心に引くのと同じ力が逆方向(外向き)にかかっているように感じます。

円周運動する物体の軌道は安定する

また、ひもについたおもりを回す際のように円周運動をしている物体の軌道は安定します。

ラケット 振り子

つまり、加速を始めたラケットにかかる慣性の力を邪魔しないようにすればラケット軌道は本来安定するものだと言えます。

人がボールに当てよう、ボールを飛ばそうとする操作がスイング軌道を不安定にする大きな要素です。

補足: 遠心力でラケットは加速しないし、ボールも飛ばない

スポーツにおいて「遠心力でボールを飛ばす」という表現をよく聞きますが、ボールを飛ばすのはボールを打ち出す方向に向けて真後ろからまっすぐラケットをぶつけることが最も効率的なはず。

ボールを打ち出す方向や角度と力の働く向きが全く異なる遠心力(円周の外側に引っ張る)がボールを飛ばすのに直接的に効果があることはないでしょう。

「遠心力でボールを飛ばす」とは物理的な要素とは関係なく、多分に感覚的な表現でしかないと思います。ハンマー投げでああいう投げ方をするのは直接的に投てきすることができないからです。

(ただ、そういう前置きをされる事はありませんね。)

遠心力

個人的には「遠心力で飛ばす」を肯定的に解釈するなら、“リラックスした状態で遠心力を感じられるようなスイング” ができれば、結果的にスイングスピードが速くなり、ラケットスピードも上がることでボールは飛んでいく”ということ。

また、上記のように遠心力を感じられることは “安定したスイング軌道とそこから生まれる正確なインパクトに繋がり、ラケットの運動エネルギーを少ないロスでボールに伝えることができる” といった辺りかと思います。

ラケットの加速

フォアハンド テイクバック

テイバックで停止状態にあるラケットは手に引かれヘッド側が後方から追従する形で動き始めますが、体に近い位置から振り始めたラケットは遠心力と加速により次第にヘッド側が体から離れていきます。

forehand swing

同じ時間で同じ角度を動く円周運動中の物体は中心から遠いほど速度が速くなります。「距離 = 速さ × 時間」ですから長い距離を動く外側の方が速度が速くないといけないからです。

円運動の半径と移動距離

このため、加速を始めたラケットはスイングの途中で体より外側にあるラケットヘッド側がグリップ側(手側)を速度的に、そして位置的に追い越し、更に前に進んでいこうとします。

federer forehand stroke

ただ、ラケットは手の長さ以上に前には進めないので手に引かれ方向を曲げられ減速しながらフォロースルーに至ります。

Gulbis' forehand

このヘッド側の方が速度が手よりも速くなる現象が一般的に言われる「ヘッドが走る」というものです。

人がラケットをボールに当てようとする動作が正確性や速度を損なう

人が “ラケット面をボールにぶつけよう” と手や腕でラケット面を動かそうとするとグリップ側とヘッド側が同じ角度、同じ速度を保ってボールに向かうので、本来あるべき慣性の力と円周運動によるヘッド側の動きを阻害し、ヘッドスピードの低下と慣性の力及び遠心力で安定した軌道を描くはずの動きを邪魔してしまいます。

円軌道のスイングまっすぐ進むスイング

ラケットは加速し安定的に進もうとするのでそれを活かす

速度を得たラケットは慣性の法則で安定的に進もうとするのでそれを利用したいです。

リラックスした状態で体の機能を上手く使ってラケットを加速させてやりさえすれば、後は自然と安定した軌道でボールに向かっていきます。

逆に人が腕や手の操作でラケットを物理的にボールにぶつけよう、当てようとすれば、これら自然と起きる事象を阻害してしまうのは想像が付くのではないかと思います。

力を込めて速く腕を振ろうラケットを振ろうとしなくてもラケットは十分加速させられるし、その方がスイング軌道も安定し、より正確なインパクトを得やすいでしょう。

残りは後編とします

ここまでがベースとなる内容の再確認という感じになります。

長くなってしまったので、残りは後編として別に書きたいと思います。

フォハンドにおけるラケットの加速とプロネーション <後編>