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サーブのグリップは薄くないとダメという話とプロネーション (テニス)

サーブ プロネーション

サーブは薄いグリップで打たないとダメ?

サーブの習う際に必ず言われるのが「グリップは薄くないとダメ」という話です。「サーブで使うグリップはコンチネンタルが基本だ」と言われたりもします。

薄いグリップで打たないといけない理由

では、「何故、サーブは薄いグリップで打たないといけないのか?」という疑問が湧きますが、決まって出て来るのが「厚いグリップではプロネーションができない」という説明です。

申し訳ないですが、私はへそ曲がりなので、グリップの違いによってどういった違いが生じるのか自分で考えないと理解できないし、そもそもこの “プロネーションうんぬん” の説明には全く納得感を感じません。。。

プロネーションが必要って周りが言っているからでは?

失礼ながらそう言われている人達も「何故薄いグリップで打つほうがよいのか自身では改めて考えたことがなく、周りから聞いた”キーワード”をそのまま復唱しているだけ」ではないかと思ってしまいます。実際、プロネーションがプロネーションがと繰り返すだけでそれ以上の情報 (プロネーションが影響する意味等) が提示されることはまずないんじゃないでしょうか。

プロネーションという前腕の機能

頻繁に使われる “プロネーション” という動作は、肘から手首まで “前腕” の2本の骨が捻れる動作です。よく誤解される “手首の動き” ではありません。

プロネーション・スピネーション


単にラケットを持つ角度が違うだけで “前腕を捻る動作ができなくなる” ことはないですよね??

少し考えれば疑問に感じるはずのことも、皆が言っていることだからと盲目的に受け入れ分かったように感じてしまう、自分で考える事をしないのはテニスを教わる際の悪い慣習だと思うのです。

今回はこの辺りについて、自分なりに考えてみたいと思います。

サーブの速さを生むのは?

ラケットの運動エネルギーは  “1/2 x ラケット重量 x ラケットスピード^2 (2乗)” で計算されます。加えて、ラケットの当たり方によりラケットの運動エネルギーはボール速度と回転量に分配されます。

つまり、厚いグリップ、薄いグリップでそれぞれサーブを打つとして、「同じラケットスピードで同じ当たり方ができるなら両者に違いは生じない」と考えられます。

現に、明らかに薄いとは言えないグリップ(イースタングリップ等)である程度速度のあるサーブが打てる人がいますよね。技術云々ではなく、その人は速いスイングスピードが出せているということです。

漠然と “薄いグリップの方がいいというステレオタイプ(固定概念)” ではなく、きちんとボールに働く事象を理解しないと理解が進みませんね。

では、グリップの厚さは関係ないのか?

サーブというかラケットを振る際には、上記の法則性に、 “ラケットの加速させやすさ” “回転” という要素が加わります。ラケット重量は固定ですから、ラケットスピードが同じで当たり方が同じなら速度と回転量は同じとなりますが、速度を出すにはラケットを加速させる必要があるわけで、この “ラケットスピードを上げようとした時” にグリップによる違いがでる要素があるという訳です。

プロネーションの役割について確認してみる

前述の通り、プロネーションとは肘から手首までの前腕にある2本の骨が捻れることで起きます。ラケットに大きくその効果を反映させるには “前腕とラケットに角度が必要” になります。

ラケットをこのように持った状態で、前腕にプロネーション動作を加えると

腕とラケットの角度

前腕を軸にラケットは回転し、ヘッド側は円軌道を描きます。

腕とラケットの角度

つまり、“前腕とラケットに角度を付けた状態” でプロネーションを行うと「ラケットが大きく長い距離を移動する」という事です。

角度が付かないこのような状態で前腕によるプロネーション動作を行っても前腕を軸にラケット面が回るだけでラケットが大きく移動しない事がないのは分かりますね。

腕とラケットの角度

この「ラケットヘッドが大きく動く」ということが「ラケットの加速させやすさ」「ボールへの回転のかけやすさ」に繋がる要素と考えられます。

実際のサーブに近い動作でプロネーションの機能を確認してみる

実際のサーブに近い状態で見てみると、サーブの振り始めでは前腕はニュートラルからスピネーション方向に動いた状態で、

サーブ 正面向き

少し変な図ですが、比較のため上の図の状態から前腕をプロネーションさせたら、こうなります。

上腕を動かさない状態でも、前腕とラケットに角度を付けてプロネーションを行うだけでラケットがこれだけの距離を動くことができるという事です。

サーブ プロネーション

なるほどだからプロネーションが大事なのかと納得してしまわず、もう少し説明させてください。

厚いグリップと薄いグリップにおけるプロネーション

厚いグリップで打つ  “羽子板サーブ” のラケット軌道イメージ

極端に厚いグリップでサーブを打つ場合、ラケット面は最初からボール方向を向いており、ラケットの中心軸と前腕は同一線上にあります。

サーブ 厚いグリップで打つサーブ

つまり、厚いグリップでプロネーションを行っても、ラケット面はボール方向から反れてしまって正しく当たらなくなるし、プロネーションを行ってもラケット面が回転するだけでラケットは大きく動かないと言えます。

薄いグリップで打つサーブのラケット軌道イメージ

薄いグリップでサーブを打つ場合、ラケットは小指側のフレームからボールに近づいていくので、前腕を捻るプロネーションによりラケット面をボールに向けていかないと正しくボールを捉えることができない。これがプロネーションを行う理由の1つ。

もうひとつは、振り始めで前腕とラケットの間にある角度(仮に90度)を維持するようにラケットを振っていけば、プロネーションによりラケットヘッド側は前腕を軸に大きな円周軌道を描き大きく動くということ。これがプロネーションを行うもうひとつの理由。

だから、薄いグリップでも、ラケットが加速している間に前腕とラケットが一直線になるような形になってしまうと「ラケットヘッドが動く距離を大きく取れない」ことになり、インパクト前後では「厚いグリップでサーブを打っているのと変わらなくなる」ということになります。

腕とラケットを1直線にしてしまうと薄いグリップも厚いグリップと同じ

サーブ

こういう ” 腕を伸ばした状態がインパクトの形だ!! “ と考えている人には違和感があるでしょうが、私は下図のような肘の角度、前腕とラケットの角度が付いた状態(※)でラケットがインパクトに向かうのが正しいだろうと考えています。

野球のピッチャーがボールを投げる際に肘の角度を維持しているのを見れば分かります。

腕や肘、手首に角度を保った状態でないと腕は速く触れない

※それぞれ角度があるという点を1枚で分かるようこうしています。スイング中にこういう状態があるという訳ではないです。

実際には、肘は後ろから前に動き、肘から先は内旋し、ラケットはプロネーションにより大きく回転します。ただ、野球のピッチャー同様、肘の高さはこの位でもサーブは打てるし、腕とラケットをまっすぐ伸ばしたインパクトはありえないということです。

サーブにおいて腕とラケットが一直線に伸びたインパクトはダメ

サーブにおけるインパクトの説明で「腕とラケットが一直線に伸びた形はダメ、腕と頭の間に空間が必要」のように言われることがありますが、両者の違いが全然分からないでしょう。

説明する側も違いを理解していないため “形” の差を直させるような言い方になっていますが、体の機能から考えれば上に書いたような違いを言っているのだと考えています。


ラケットヘッドが大きく動くと言っても、一般的にイメージしがちな「長い距離を動く= 加速できる」訳ではありません。加速にはエネルギーが必要ですが、ラケットの加速は50cmもあれば十分だからです。ただ、体全体を使った運動連鎖、外旋・内旋、回外・回内(プロネーション)を使ってラケットを振る中で薄いグリップの方がサーブにおいてラケットを加速させやすい握り方だと言えると考えています。

ただし、これらは極端に厚いグリップとコンチネンタル以上位に薄いグリップでサーブを打った場合を比較した場合のことであり、「イースタンとコンチネンタル位の違いでは大きな差は生まれない」ということは強く主張したい点です。

サーブにおけるグリップの話が出ると、コンチンチネンタル以上に薄いグリップが絶対で、それより多少厚くなっただけのイースタングリップですら「とんでもない、絶対ダメだ」と否定する方がいますが、ほんの数度、角度が違う2つのグリップで一方は完全に問題がなく一方は完全にダメといった事が起きるはずがないということです。

この辺りも、ステレオタイプ(固定概念)に縛られず、まず疑問を持ち自分で考えてみることが大事です。

 ちなみに何故テニスではプロネーションを行うのか?

サーブ動作に似ていると言われるピッチャーの投球や投てき(やり投げ)の動作を見てみると、テニスほどプロネーション動作が機能していないと感じます。

Embed from Getty Images

ピッチャーが腕を振る際、既に、テニスで言えばラケット面がキャッチャー方向を向いた状態になっていますね。投げ終わった後のプロネーションは90度もいきません。

Embed from Getty Images

トロフィーポーズ時のニュートラル位置からプロネーションを行っていく動作をサーブではなぜ行うかについて、今現在で個人的に考えていることは、ラケットという道具の使い方から生じる「力を伝えるべき位置の違い」です。

ピッチャーが力を伝えるボールは手の中にあります。投てきで使うやりも手に持ちますね。一方、サーブにおいて力を加えるべきボールは手から約60cm先のラケットのスイートスポット付近にあります。

つまり、振っている手の速度 = ボールややりの速度となる両スポーツと違い、手や腕よりもラケット (ラケットヘッド側)をより速度を上げないといけないテニスにおいては、体や腕の運動連鎖の中におけるプロネーションの役割が強くなるということだと考えています。

(前述の通り、前腕とラケットに角度がある状態で振るとラケットヘッドが大きく動き加速させやすくなる。)

中心から距離がある方が速度は速くなる、遠心力との関係

最近のキーワードで「プロはラケットの先の方で打っている」という話がありますね。

中心軸から一定距離にある物体が円周運動する際、同じ時間で同じ角度動く場合、中心から遠い物体の方が速度は速くなります。(同じ時間で長い距離を動かないといけないから)

プロ選手は感覚的なものも含めてこういった事を理解しているからスイートスポットの範疇でできるだけ先頭に近い位置を使った方がボールに威力がでると知っているのだと思います。

人が手に付いた水滴を腕を振って払う際、何かに指を挟んで「痛い」と手をぶらぶらさせる時、昔なら水銀タイプの体温計の目盛りを下げるために振る際、全て人はプロネーション動作を行っていますが、これは前腕を軸に回転させることで外側に飛ばそうとする力(分かりやすい言葉で言えば “遠心力” )を発生させているものです。

前腕を動かす動作

 

サーブ 腕の動き

トロフィーポーズで上腕と体 (脇)、上腕と前腕( 肘)を90度、上腕と胸の角度を180度以上にしないと腕を機能的に振ることができませんが、同様に、前腕とラケットの角度も保たないとプロネーションの効果が薄まってしまいます。

まとめ

正しい体の使い方を理解し、機能的に動ける各関節の角度を保つ事で特に特定部位を動かす意識をすることなく自然とその効果を発生させることができるはずです。

つまり、こういった点を理解し実践することなく「プロネーションを行えばサーブに威力が出る」などと考えてしまうのは、木を見て森を見ずというか殆ど意味がないことだと思います。