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サーブにおける打点の形。そのイメージは間違ってない? (テニス)

サーブ前後の状態

サーブにおけるインパクト前後の状態

サーブの主に打点(インパクト)付近についての確認です。

サーブの打点付近で、挙手のように “腕とラケットを一直線に真上に伸ばしたような形” はよくない例として上がります。

1. 頭と腕が着いてしまうほど腕をまっすぐ伸ばした形

腕の上げた状態
腕の上げた状態

この状態だと肘や手首の関節は機能せず肩を動かすしかないためだと思います。

力も入りませんし速く動かすのも難しいです。

でも、“インパクトにおける正しい形” として教わるのも、この悪い例から『多少、肘や手首の関節に角度が付いた程度にしか見えず両者の違いがよく分からない』ということはないでしょうか?

2. 正しいと言われるようなインパクトの形

サーブにおけるインパクト

両社の違いは、

肘や手首に角度が付いてる、体の軸がその分斜めになってる

といった部分。

昔と変わらず写真 (静止画) を参考にしている現実

こういった形を教えられるのはサーブを打つプロ選手のインパクト前後の静止画像などが根拠になっていると思います。

Andy Murray serve - after medical treatment

足から肩まで、肘や腕もまっすぐに伸びていますが、上体と腕は一直線ではなく、頭と腕の間にはある程度空間が保たれているように見ます。(頭と腕がくっつくような腕の伸び方ではないということですね。)

サーブを練習している人に「インパクトの形を取って」と言えば、多くの人がこういった腕を伸ばしたようなポーズを取ると思います。

教わっている段階、レベルもあるでしょうが「こうやる人は少ない」でしょう。

ボールに影響を与えられるのはラケット

さて、ボールに影響を与えられるのは物理的に接触するラケットだけで、ボールに伝わる運動エネルギーを構成する要素は、ラケット重量、スイングスピード、ボールへの当たり方等です。( 運動エネルギー = 1/2 x ラケット重量 x スイングスピード^2 (2乗) )

ボールへの当たり方で球質 (及びボールにエネルギーが伝わる効率) が変わりますが、ラケット重量は固定なので、最も重要と言える要素は “スイングスピード” だと言えるかと思います。単純にはスイングスピードが上がる程、サーブスピード(ボールスピード)や回転量が増えます。

インパクトの形の話に戻りますが、腕が一直線に伸びた悪い例も、いい例と言われる多少関節が曲がっているけど体が伸び切った状態も、その形だけ考えれば、ラケットを加速させれる状態とも力を強く発生できる状態とも思えないはずです。

この違和感は何故発生するのでしょうか?

理解のキーになるのは「腕の機能」だと思います。

私がサーブについて色々学ぶ度に「腕は関節を軸に動き、曲げ伸ばしする中でラケットを加速させている」という事を再認識します。

度々書いていますが、テニスを教わる際、ボールを打つ動きの中で、各時点の「形」を作るように教わります。「トロフィーポーズの形はこう、インパクトの形はこう」という具合です。

ただ、腕を強く振る際は、肩から先の関節は曲げ伸ばしを伴いながら動きます。その一連の動作が力(腕を振る速度)を発生させるのであり、動いている中の「一瞬」を切り出して「形」としてそれを作らせることに前向きな意味があるとは思えません。インパクトの形を教えるより腕を振る動作の仕組みを教える方が正しいはずです。

キャッチャーの送球動作

少し内容に入っていきます。

サーブにおける体の使い方は投球動作に近いと言われます。よく例に上がるのは ピッチャーですが、全身運動のため動きが大きく、腕近辺の動きを集中して考えにくい面があるので、今回はキャッチャーや野手のスローイングを見てみようと思いました。

キャッチャー(野手もピッチャーも同様)がボールを投げる際、準備動作としてボールを持った手を “コック” します。コックとは振りかぶるという意味で、脇(上腕と脇)、肘(上腕と前腕)をそれぞれ90度、上腕と胸を180度の状態にし、上腕からボールまでが肩よりも上の位置にあるように “担ぎ” ます。

腕をコックするのに併せて上半身を捻り、上腕と胸の角度は保ったまま腕を後方に移動させます。ここから、肘や脇の角度は保ったまま、上体の捻りも戻して体を正面に向けながら腕を加速させてボールをリリースすることになります。

ボールを強く投げるためには、ボールをリリースする前後に腕が最大加速状態にあるはずで、テニスで言えばこれがインパクト前後に当たると言えるはずです。

野球、もしくはボールの投げ方をある程度知っている人なら、「キャッチャーがボールをリリースするポイントは利き腕の肩からそれほど離れていない位置だ」と言えば想像が付く思います。

キャッチャーのスローイング集

ピッチャーは、ホームベース側に非利き手側の足を大きく踏み込み、体の軸をその足に移動させる中でボールを投げるので、物理的に振りかぶってから投げるまでのボールの移動距離が長く、結果、リリース前後でボールを投げる利き腕はホームベース側に伸びたような形に見えます。

しかし、ピッチャーのような軸移動を考えず、体の軸は直立を保ち、体の捻りを戻す際の肩の回転を除いて、腕の振りに伴い肩が前方に伸びていくことがない (体に対する肩の位置は一定)と考えれば、90度近くに保たれた肘と脇が、腕の振り始めの自然な “外旋”から”内旋”方向に動き、腕が振られる際、ボールを持つ手及び上腕が肩を追い越してすぐの位置が最も腕を加速できている位置であり、ボールを投げるべき位置だというのが分かります。

サーブで言えば、頭に付くほど腕を真上に伸ばした形でもなければ、多少肘や手首の関節が曲がっていても「腕がネット方向、或いは上方に伸びている」と感じる形でもないはずです。

キャッチャーもボールを投げた後の腕の形を見れば、ボールを投げた対象方向に腕は伸びたようになっています。ただ、これはリリースした後です。

つまり、サーブにおけるインパクトも、イメージで言えば、「肘や脇の90度、上腕と胸の180度の角度が保たれた状態で腕が振られ加速する中、内旋の動きに伴い前腕が肩を追い越した最大加速の辺りでボールを捉える」というのが正しいだろうと思っています。

厚いグリップでサーブを打つ

サーブにおいて “厚いグリップで打つのはよくない” と言われ、その理由が “薄いグリップの方がボールに回転をかけやすいから” と言われますが、理由としては分かりづらいと思うはずです。

別に考える機会を設けるつもりですが、極端に厚いグリップで考えると「力の入る打点は自然と前になり、体から手やラケットが離れる」「ラケット面を向ける都合上、体を完全に打ち出し方向に正対し終えてからインパクトを迎える必要がある」と言え、ラケットが体から離れているわけですから、最大加速時点を超えラケットが減速する中でボールに当たらざるを得ない (加えてラケットヘッドも大きく動けない状態) ので “スイングスピードが上がらない = 回転がかからない” と言えると思います。(他にも要素はあります)

サーブ厚いグリップ

一方、薄いグリップでスライスショットを打つ際のように、薄いグリップはボールに力を伝えやすい打点が体に近くなります。サーブにおいてスライス、スピンをかける回転はフォアハンドにおいてもスライス回転ですから、グリップが薄ければ最も力が入る位置 = 打点が体に近くなるのは自然な事です。

サーブ 正面向き

サーブにおいて腕を動かし、関節の曲げ伸ばしを行う中でボールを捉えるなら、薄いグリップで体に近い肩のすぐ前の位置、各関節が伸び切らず角度を残したままラケットが最大加速に至る直前でボールを捉えるのが最もよい打点になると言えます。

サーブ厚いグリップ

サーブでスライスやスピンの回転をかけるためには腕やラケットは “ボールを打ち出す方向より利き腕外側に振り抜く” 事になります。

腕は肩(体)よりも前でないと強く振れないので、厚いグリップで打ち出し方向を向いていた体は薄いグリップで回転をかける際はインパクトまでは腕とラケットを振る方向、つまり利き腕側外を向いている必要があります。いわゆる「半身」状態です。スピンサーブで “体の横向きを保つ” と言われますが同じ事です。(横向きという表現に縛られるのはダメ..)  腕は肩の位置で後ろから前に振るのが基本で、体の向きと腕を振る方向が違う、腕を振る中で関節が伸びてしまうと力強く振ることができません。ラケットを背中側から引き上げる、擦り上げる等は腕を振る方法に体が向いてこそです。(横なら横、上なら上)

自らコントロールできない不確定要素(空気抵抗や重力)による失速を当てにしたくなければ、全てのサーブにおいて回転をかける必要があり、薄いグリップで打つのは必然と言えます。

少しわかりづらくなってしまいましたがまとめていくと、

  • 「腕を加速させるには、肘、脇、上腕と胸の角度が必要」- これがトロフィーポーズの根拠であの形を作るのが目的ではない。
  • 「加速状態のラケットでボールを捉えるならラケットは体に近くあるべき」- 遠くなる程、最大加速時からの減速段階となる。
  • 「回転をかけるためには打点が体に近くなる薄いグリップの方が有利」- 加速中にボールに触れるのが望ましい。
  • 「体は腕を振る方向に正対する必要がある。腕は肩の前で強く振られる」- 体の向きと腕を振る方向がズレていては力強く腕は振れない。

という感じでしょうか。

地面に足がついた状態でオーバーヘッド系スイングをするとどうなるか

以前に書いた「サーブでは当然ジャンプすべき」という一般認識も邪魔していますが、まずは、スタンスを取った両足を地面に付けたまま、薄いグリップで、肘/脇/上腕と胸の角度(トロフィーポーズの要素)を作り、横向きから少し捻った上体をラケットを振る方向(利き腕方向)に体を向けていることを意識しながら、肘の関節が伸び切らないよう優位して、肩の前、体から離れない位置に打点をイメージする形で素振りをしてみたらどうかと思います。

鈴木貴男選手の回転系サーブ導入レッスン動画(一部)

導入練習なのでサーブの打ち方としては未完成ですが、肘や脇の角度を保ったまま体を回転させながら楽に腕を振れているのがわかると思います。ボールを投げる動作と似ていますね。打点も高くないしジャンプもしていませんが、回転の強くかかったボールがネットを超えていきます。

また、少し短めにラケットを持ったこのセットから、野球のスナップスローのようにリラックスして肘から先を使うイメージで「ブン」と前に振ってみてください。(分かる方は水銀入りの体温計の目盛りを下げるような腕の振りと思ってもいいです。)

指に力を入れ腕を振る

肩のすぐ前の位置でラケットが加速する感覚が分かると思います。

腕が伸びてしまってはこの感覚は確認できません。

アメフトのスローイングイメージ

一般的に教わるサーブの指導をそのまま参考にしてもこういった体の使い方は理解できないですし、自身で練習する間に自然と体が使えるようになる人が居ても、やっている動作とその人が話す説明(自分では教わっった通りにやっているつもり)に差が生じた状態になることが殆どだろうと想像します。同じ事を言っているのに出来る人と出来ない人がいたり、(実際の困難さ以上に)皆スピンサーブは難しいというのもこの辺りに要因があるはずです。

いずれにしても、皆が思う「腕を伸ばすような形でサーブのインパクトを取ろうとする」のが効率が悪い方法であるのは明らかだと思っています。

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