テニスのレッスン中に急に調子が悪くなる
私はテニスを初めてから今までずっとテニススクールに通っています。
スクールでは1コート10名程の人数がコーチにテニスを教わるわけですが
『練習中に”急に”調子がおかしくなってしまう。自分がどうやってボールを打っていたのか分からなくなってしまう』
ということがよくあります。
上達していけばそういった変化は”小さく”はなるでしょうがゼロではありません。
なぜ急に調子が悪くなったのか? 考えても自覚がなくその場では修正できないことが殆どですが、スクールでレッスンを受けるにはそれなりの時間とお金を使っている訳で、調子がおかしいまま練習を続けないといけないのは勿体無いだけですね。
原因は色々あるとしても私が一つ感じるのは『レッスン中は周りの影響受ける』ということです。
周りの影響を受ける
普段の環境と異なる要素に囲まれる
レッスンを受けているとこういった出来事があったりします。(男性側の視点で書きますが性別に意味があるわけではありません。)
・振替(休んだレッスンの代わりに他クラスのレッスンを受けること)で所属でない人が参加していた。レッスンの最初からコーチが出す球出しのボールをガンガン打ち込んでいた。
・普段と違いクラスは男性ばかりだった。皆、打つボールが自分よりも速い。
・振替参加の上手な人とボレスト(ボレーとストロークで打ち合う練習)をやったら速いボールを打ってきたので一所懸命返球した。
こう書くと調子がおかしくなる理由は何となく分かるかと思います。
普段経験するより速いボールを見たり、その速さを経験することで、『(自覚がなくても)自分も同じように打たなくては』と思ったり、返球するのが精一杯な中で”普段の自分の打ち方が分からなくなってしまう”ためです。
これは自分よりも速いボールを打つ人の影響だけではありません。自分よりもスピードが遅い、山なりのボールばかり打つ人に囲まれると普段の自分がやっているままのテニスはできなくなったりしますね。
人のプレイが頭に焼き付いてしまう
他の人の印象が強いプレイは自分でもやってみたくなりますね。例えばこんなケースです。
・ダブルスの練習をしていて自分は前衛。相手後衛に居るコーチに自分の横(ワイド)をストレートに何度も抜かれてしまう。それを見て皆がマネをする。
※スクールにおいてレッスン最後にダブルス形式をやるのは”お約束”ですが実質は”コート上に4人居るというだけの打ち合い”です。適切なポジションを取れれば、前衛がボールに触って攻撃・防御するのは簡単ですが、練習においては前衛の人が相手後衛であるコーチに簡単にサイドを抜かれ、それを生徒もマネします。ポジションを理解していればベースライン後方からサイドを抜くのは難しく、そもそも簡単にストレートを狙えるようなボールを相手側は打たせてくれません。相手前衛にストレートに打ったらそれが厳しいボールでも守備上、自分に帰ってきます。『ストレートに打ち、ボールが帰ってきたら次にどうするか』まで前提があってこそのストレートアタックですから。
このコーチがストレートに打つ意味は「”今”、ボールを打つ後衛がどこに打つのかを考えて”予測”し、対応できる場所に予め移動しておきなさい。」ということです。
最初の自分より速いボールを打つ人に影響されるのも共通しますが、自分よりもテニスがうまい人のプレイはスムーズでかっこよく見えるので自分もああやって打ちたいと思います。こういったある種の”憧れ”は上達に必要な要素でしょうが『人は自分が出来ること以上のことはやるのは無理』なので、行うべきは『その人達はなぜ、力んだ様子もなく、とてもスムーズに自分よりも速く安定したボールが打てるのか?』を考えることです。
マネするだけで出来るようになる人はごく僅かです。普通はなぜかを考えることが必要でしょう。
よく「今日は調子がいい、今日は調子が悪い」と言ったりしますが、『日々の体調に左右されるようなものは自身の技術や実力ではない』でしょう。
『自分がどうやって打っているのか理解できていない』から日によって調子も違い、不調になったら戻す手段を持たないということです。
知識を持ち、自分が体をどのように使ってスイングしているかを自分で説明できることが大事です。
(“知識”を持ち理解できていないと説明はできない。且つそれはイメージ等ではなく具体的・科学的でないといけない。)
毎日ボールを打ち続けても調子は維持できないし、不調時に復調もできないのは皆実感があるはずです。
調子のよい時の映像を見て復調しようとするのは “他人の映像を見ているのと同じ” です。
リズムが悪くなる
スクールでレッスンを受けていると次のような事を目にします。
・所属しているのは初心者に近いクラス。コーチの球出しのボールに対し交代でボレーやスマッシュを打っていくが、皆、ネットしたりアウトしたりということが多い。
よく見かける光景だと思うでしょうが、私は、
“自分よりもうまい人のプレイに無意識に影響を受ける”なら、逆に”人がミスする光景にも無意識に影響を受ける”はずだ
と考えています。
“個性”と呼ばれ許容される自己流
テニスをやっている人は良くも悪くも“打ち方は自己流”です。
人の体の機能や仕組みは皆基本的に同じです。関節は皆同じ方向にほぼ同じ角度で曲がります。陸上100m決勝を走る選手は皆同じような走り方をしますね。
“速く走る”というごく単純な目的の前に”自己流”が入る余地がないためです。
体の機能や仕組みが同じである以上、世界トップクラスのプロテニス選手がそうであるように本来は皆、基本的な打ち方は同じようになるべきだ”と私は考えています。
皆が “個性” と呼び、自分自身で許容してしまっている部分が『ミスを発生させる大きな原因』になっているのは間違いないでしょう。
教わらないからといって理解するだけでミスしなくなるなら考えないのは勿体無い話ですね。
ゴルフも同様ですが自己流は限界があり、一定レベルまで皆が到達できるのは長年研究されてきた故の『王道』や『基本』ということです。
リズムが悪くなる理由
話を戻します。
運動する際によく“リズムが悪い”と言ったりしますすね。
リズムが悪くなる理由は色々あるでしょうが、一緒に練習している人達がボールを打つ様子は最も情報量が多い『視覚』から得ている訳で、頭でレッスン中に得る情報をコントロールしていかないと無自覚のまま”悪い方向に”影響を受けてしまうと私は思います。
(私が “気にしぃ” で周りを気にしてしまう事も大きいでしょうが。)
これらのことで、練習中、周りの人がボールを打つ様子に影響を受けるという話が分かってくるでしょうか。
練習中は周りを見ない
スクールに長く通っている経験から、個人的には、
『レッスン中は周りの人がボールを打っている様子に”注目しない”方がいい』
のではないかと思っています。
球出しのボールを打つ際など、自分が打つ順番を待つ間、他の人が打っている様子に目が行ってしまいますね。
自分よりも上手い人の打つ様子も周りの人が簡単にミスする様子も目から情報として頭に入ってしまうのです。
前述したように『人は自分ができること以上のことをできるようにはならない』です。
できるようになるには『理解と再現』が必要であり、都度考えずに実行出来るようになるには『脳における運動の学習』が必要です。
このことに関し、私は『出来るようになることだけでなく”できないことも”脳に運動として学習される』と考えています。
練習していると『苦手なバックハンドにボールが来たらつい普段の打ち方ではない打ち方(ラケットに当てるだけで返そうとする等)をしてしまい、同じミスを繰り返してしまう』という経験があると思います。
きちんと習ったように打たないとダメだと十分分かっていてもボールが来るとついそうやって打ってしまう。
「ミスを恐れずに打たないと上達しない」というアドバイスは正しくても『ミスするのが分かっていてもそうやって打つのが脳に学習されてしまっている』という面もかなり大きいでしょう。
影響を受ける良い面もあるでしょうが、目から入る情報をコントロールできるという自覚がないなら『練習中、自分がボールを打つのを待っている間、周りの人がボールを打っている様子に注目しない方がよい』と思います。
ただし、レッスン中は周りから飛んでいるボールや周りの人の動きに注意しないと怪我してしまいます。
周りには意識を向けるが人がボールを打つ様子には注目しないということです。
周りの様子を上達に役立てる
逆に『上達のため周り人がボールを打つ様子に注目する』という部分もあります。
簡単に言えば『反面教師』です。うまく打つのを参考にするのは難しいですが、何故うまく打てないのかを考えるのは比較的楽です。
(参考にするサンプルの量や多彩さには事欠きませんね。)
自分がレッスンを受けている間、ボールを打つのを待っている間に周りの人がボールを打つ様子に注目してしまうと大概は悪い面に影響を受けます。自分がボールを打つのを待つような時間帯は周りの人には注目しない方がよいでしょう。
一方、我々がミスするおおきな要因は打ち方の独自性、個性、癖であり、体の機能や使い方、それからくるラケットをどう使えばいいのかという知識を踏まえて見れば、人がボールを打つ際にミスをする理由が推測できます。
上から目線の解説とは異なる
これはよくある「あの人は下手だからミスした」「こういう打ち方をしないからミスした」という上から目線の解説とは本質的に異なります。
正しいであろう体の使い方に対して何が違っていたからミスが発生したのかという話です。
例えば、頭が動くから、体から腕やラケットが離れてしまっているから、スイング中にラケット面があちこち向いてボールに向けられていないから等、これらは目に見える”事象であり原因ではない”ので、それ自体を修正してもミスしなくなるようにはならないというのは何となく伝わるでしょうか?
体の使い方が正しくないからこういう打ち方になってしまう。結果、ミスという形で現れるという繋がりです。
この場合、スクールでは『打ち方』を直されますが、本来は体の使い方を教わる所から始まるべきなのでしょうね。
ミスの内容から発生する理由を考える
話を戻します。
周りの人がミスする様子とその打ち方を見て、なぜ、その打ち方がそのミスに繋がるのかを考えることは自分の上達に役立ちます。
ただし、当然ながらその理由を考えられる『知識と理解』が必要です。
この場合の知識とは噂話で聞く伝聞やテクニックうんぬんではありません。
(“○○すると強く打てる”らしいという話で上達しないのは皆実感があるはずです。)
周りの人がボールを打つ際のミスの内容からその理由を考えるのは、レッスン中で順番を待つ休憩時間やダブルスの順番を待っているような時、レッスンの前後に他クラスのレッスンを見学している時などです。ボールを打つということから離れてどうやって体を使えばいいのかと考える余裕があります。
完全な区切りではなく待ち時間に考える場合は、ボールを打つ機会には頭を切り替える必要があります。
考えながらボールを打ってしまうと練習自体が疎かになり、その場でどうかしようと思っても『理解』ができないと『再現』できるようにはならないためです。
周りに影響を受けず、理解を確認するために見る
スクールに通うだけでは上達せず、上達には『知識を集め整理し、考えて理解し、再現できるようになる』ステップが必要です。
レッスンを単にボールを打つ機会として捉えず『自分がボールを打つ際は周り(悪い)影響を受けないこと。ボールを打たない時間で自分の理解を確認するために参考にすること』を加えると上達に繋がるのかなと思います。
繰り返しになりますが自分で上達するために必要なことはまず『知識と理解』です。本当に自己上達の参考になる情報は普段見聞きするテニスの話の中にはありません。
(だから”コツ”を聞いても目に見えて上達はしませんね。)
ボールを打つのとは別の取り組み(といっても大変なことではなく知ろうとする理解しようとすること)がとても大事なのだと思います。