テニスラケットのフェイスサイズ(ラケット面)の大きさ
市販されているラケットのフェイスサイズ(ラケット面の大きさ)は小さいもので90インチ強から大きい物で120インチ位まであると思います。(一般には90インチと言っていますが面積なので正確には90平方インチですね。)
一般に、『初心者なら100インチ位がちょうどいい』とか、『95インチを切ると難しいラケットだ』『105インチは大きめだね』と言った会話がされますが、それぞれのラケット面の大きさはどの位違うものなのか少し確認してみようと思います。
どんなサイズの大きさがあるのか
私の憧れの選手であるピート・サンプラス選手が使っていたProstaff midは85インチでした。(今も復刻版を海外では売っています。)
フェデラー選手が以前使っていたProstaffが90インチ、今市販されているラケットで一番フェイスサイズが小さいのは93インチですがここは数社設定のある95インチ、その次に設定がある98インチ、そして標準と言われる100インチ、後、105インチ、110インチ、120インチで大きさを比較してみたいと思います。
とは言ってもラケットフェイスの形はメーカーによって様々で縦横比も違うので比較は難しいです。そこで、各サイズの面積を持つ円を比べる事で確認してみたいと思います。
各フェイスサイズの面積を円で換算した場合のサイズ比較
フェイスサイズ (平方インチ) | 面積(平方m) | 円の半径 |
85平方インチ | 0.0548386平方m | 0.132119902m |
90平方インチ | 0.0580644平方m | 0.135950258m |
95平方インチ | 0.0612902平方m | 0.139675612m |
98平方インチ | 0.064516平方m | 0.143304154m |
100平方インチ | 0.0677418平方m | 0.146843061m |
105平方インチ | 0.0677418平方m | 0.146843061m |
110平方インチ | 0.0709676平方m | 0.150298665m |
120平方インチ | 0.0774192平方m | 0.156981836m |
直径でもいいのですがラケットフェイス周辺部のサイズ感 (周囲でがどの位違うか)という事が分かるよう半径で比較しています。(以下平方インチと書きます。)
一番小さい85平方インチの円の半径は約13.21cmです。
95平方インチだと約13.97cmで、85平方インチとの差は7mmです。
100平方インチだと半径は約14.68cmです。
90平方インチとの差は1cm程、95平方インチとの差は7mm程度ですね。
この中で一番大きな120平方インチで半径は15.7cmです。
100インチとの差は約1cmです。
一番小さな85平方インチと一番大きな120平方インチを比べると半径の差は約2.5cmです。
ストリング(ガット)の1つのマス(四角い目)の大きさがだいたい1.5cm位なので、仮にラケットフェイスが丸い円だとしてですが、90平方インチと100平方インチは周囲で言えばガットのマス目1つ分も違わないという事になります。
因みにテニスボールのサイズは6.54~6.86cmです。
この数字を見るに「100インチより90インチの方が難しいとは言いづらい程度の差しかない」のが実際のところです。
(両者のフェイスサイズは直径で1cm程度しか違わない。ボール直径の約1/7。ぎりぎりでボールを引っけた際に違いがあるかどうかでしょうか。)
また、90平方インチのラケットも100平方インチのラケットもストリングパターン(縦横のガットの数)は16×19が殆どです。
90平方インチより100平方インチの方が面積分ガットの本数(列)が多いという事はなく、部屋が広くなれば畳の枚数も増えるではないですが、フェイスサイズが大きいという点が直接的にボールに効果を生みにくい事も言える気がします。
なぜフェイスサイズの大きさが使う難しさの基準になるのか?
では、なぜ「フェイスサイズが小さいラケットの方が難しい、100インチが標準だ」と言われるかというと、一般的に
95平方インチ以下のフェイスサイズが小さめのラケットはフレームが薄い作りになっている事が多く、100平方インチを超えると途端にフレームが厚いラケットばかりになってしまう事が大きい
はずです。
一般には、フレームが薄いとボールは飛びづらくフレームが厚い作りのラケットはボールが飛びやすいと言われますが、
正確には厚い方がフレームが変形しない分100%の飛びに近く、薄くなるほどフレームがしなる分でボールを飛ばす力をロスしているということだ
と思います。
厚いフレームが何かの仕掛けでボールをより飛ばす訳ではありません。
ただ、中にはプリンスの著名な製品である「グラファイト」のようにフェイスサイズが100インチでもフレーム厚が20mmを切っている(19.5-19.5-19.5mm)ものもあります。
今の市販ラケットのフレーム厚は20mm以下は殆どありません。
つまり、
フェイスサイズは大まかなラケットの特性を示す目安でしかなく、95平方インチより100平方インチの方が楽だとか、100平方インチならどれも簡単とは言えないし、同じ100平方インチのラケットでもラケットによりフレーム厚や構造、素材が違うので、それぞれのラケットのスペックや特性を見て判断する必要がある
だろうと思います。仮に同じ23mm前後のフレーム厚であれば、95インチも105インチもボールが飛ぶ感覚は大きくは違わないだろうと想像します。
(23mm位は95-100弱に多い)
フレームが薄い「しなる」ラケット
また、フレームの薄いラケットはボールを打つ際、「ラケットがしなる」と言われますが、“しなったラケットはボールが離れるまでの時間内には復元しない”と考えます。
接触によりラケット面(ガット)にかかるボールによる負荷が無くなるまでラケットはしなりっぱなしということです。
人間の感覚的に心地よいと感じても単純に言えば、
「スイングによって発生させたラケットの運動エネルギーをボールに伝える際のパワーロス」
でしかないでしょう。
つまり飛びにくい要素であるとシンプルに考える方がよいと思います。
インパクトのスーパースロー動画
フレームのブレ、歪み、振動
また、フレームの厚さとは直接関係しませんが、ラケットがボールに当たった際、
「ラケットがブレる、歪む、振動する」
ことでも
「ボールに伝わる運動エネルギーにパワーロス」
が生まれます。
これらもボールが飛びにくくなる要素です。
ラケットやガットにトランポリンのような効果はない
また、ラケットやガットの “たわみ”を
「トランポリンで例えるケース」
がありますね。
「ガットがボールを一括掴んで”たわみ”、それが復元する中でボールを飛ばしていく」
といったものです。
ただ、スーパースロー動画を見ても分かるようにラケットのしなり同様、ラケットやガットのたわみはボールが離れるまでの0.004秒の間に復元するとは考えにくく、それがボールを押す力になるとも思えません。
トランポリンはゆっくりとした上下運動の波の中で物体を押し上げるのであり、瞬間的に力を加えても押し上げる力は発生できません。
「作用反作用の法則」で力が加わると逆方向に押す力が発生します。
ボールが跳ね返るには逆方向に押す力を発生される必要があり接する面は硬さが必要です。(逆にガットの柔らさは回転をかけたり打感をよくする)
ラケットやガットのたわみはボールが離れることで押されていた力がなくなり元の状態に戻っているだけと言っても言い過ぎではなく、たわみが戻ることでトランポリンのようにボールが飛ぶと考えるのは正しく理解するのを妨げる説明だと思います。
まとめ
私は「ラケットは自分が好きなものを使えば良い」と思っています。
メーカーは利用者の最大公約数のスペック幅で設計されると思われます。
特定以上の筋力、運動能力がないと使えないラケットは売れるはずもなく、そんなものをメーカーが販売することはないでしょう。
前述の通り、初心者用や上級者用は流通する際に販売店やメディアが決めているにすぎません。
ご存知の通りラケットの重量は300g程。文庫本2冊、りんご1個程の重さです。
個々の体力差はあっても “その重さを持って腕を振れない”、小さいお子さん位の身体能力となる方はそもそもテニスが出来ていないのかなと思います。(つまり問題ない使えるだろうという意味です。)
今回確認したように100インチと90インチのラケットではラケット面のサイズは周囲で1cm程しか違いません。
ラケットにおけるボールが飛ぶ飛ばないはラケット面の大きさではなく、フレームの厚さや構造により、スイングで発生させた運動エネルギーがボールに伝わる際のロスの大きさによります。
仮にボールの飛びを気にするのであれば、気にするのはラケット面の大きさではなく、フレームの厚みや形状(全長で同じ厚みか、途中が厚みが違うタイプか)などの方だと思います。
それらを分かった上で言っている人も大勢居るでしょうが、ラケット面の大きさをラケット選びの基準と考えるのは正しくないなぁと思っています。