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フェデラーが引退したらPRO STAFFを使うプロは居なくなるのかも (テニス)

tennis racket

フェデラー選手のラケットカラー変更問題

今現在で私も使っているWilsonのラケット PRO STAFF。

2018年に黒白カラーのVer.12.0が発売されましたが、Pro staff 使用プロの筆頭格であるフェデラー選手の2018年のUSオープンで、それまで使用していた黒白カラーから旧モデル (2016年モデル Ver.11.0) と同じ黒黒カラーのラケットに戻し、Ver.12.0のマーケティングにちょっとした混乱を生んだと思います。

その後、Wilson担当者によるVer.12.0の型(モールド)とスペックでカラーを黒黒にしたPRO STAFF RF97 Autographを2019年5月に発売する (ただし記載のバージョンはVer.11.0) という説明動画が上がりました。

 【Wilson Tennis】2019年フェデラー選手が使用するプロスタッフとは!?

動画の中でもフェデラー選手が黒黒カラーのラケットに “戻した” 理由は噂レベルで出ているものを話すに留まっています。選手からメーカーに理由は伝えてあるでしょうから、マーケティング上で一般には説明できないという感じでしょうか。

「フェデラー選手が突如、黒黒カラーに戻してしまい我々も驚いた」と言われているので、言葉通りならフェデラー選手はメーカーに説明せず旧モデル (旧スペック) のラケットを使い始めたという印象を受けますが、そもそもフェデラー選手がその時点で使っているラケットが数年毎に発売される新製品と同素材・同機能(〇〇素材や××テクノロジー)を有しているとは限りません。機能や素材ではなく重さやバランス、フレーム厚等は元々違う可能性も高いですからね。

動画を見れば分かりますが、この「Ver.12.0の型・スペックのラケットをVer.11.0の表記と黒黒カラーで新発売する」というのもフェデラー選手が “黒白カラーのVer.12.0を黒黒カラーで使っている” と言っている訳ではないです。

色の違いは見ても分かりますが、我々が「選手が使っているのと同じラケットだ」と思ってラケットを買うのはあくまでメーカーの戦略に乗っているという点を認識するかどうかという点はあります。分かっていて「そのラケットが好きだから」買う、「選手と同じラケットを使いたいから」買う。逆に、そんなの気にしない。全然知らないまま買うというのでも良いと思います。

個人的には『ごく限られた人しか使えないラケット』は販売されないと思います。500gのラケットが市販されても (興味本位以外) ほぼ売れないでしょうし、偏ったスペックのラケットを市販して明らかにそれが理由で怪我や事故が発生したらメーカーの責任にもなります。一般ユーザーの年齢・体力・求めるテニス像等で最大公約数的に誰でも当てはめられる、エッジからかなりのマージンを取ったスペックで設計されていると考えます。「〇〇ラケットは良い。××ラケットはダメ。」とユーザーは評価したがりますが(メーカーの事情はあっても)わざわざダメなラケットを市販する理由がありませんよね。10年前のラケットを使い続けても全く問題ないし、どんなラケットでも1年も使えば人は慣れてしまいます。ストリングスも変えない、張る強さも変えないまま1、2回打って「ダメ」と言ってしまうのは「自分がそのラケットに思っている印象を確認したいだけ」だと思います。予めダメだと思っているラケットは打ってみても大体ダメだと思うでしょうし。

PRO STAFFを使っているとされる選手達を見てみる

2019年シーズンになり、Wilson契約の各選手達もそれまで使用していたラケットから黒白カラーのPRO STAFFに切り替えています。

※前述したように市販品とプロが使用するラケットが同スペック、同素材、同機能が搭載されていると考えるのは少し難しいと思います。”プロだから” ではなく、市販品含め自分にあった選択肢がメーカーからより多く提供されるなら勝つために “選ぶ” のは当然ですよね。

最近の画像で見てみましょう。

ロベルト・バウティスタ・アグート選手

「何でバウティスタ・アグートから?」と思うかもしれませんが、PRO STAFF使用選手の中で今季、上位に目立っているのはこの選手だと思います。

現在シングルス23位。ATP500で優勝1回、 全豪ベスト16、ATP1000・500・250大会でそれぞれベスト16です。

写真を見れば一目瞭然ですが、フレームは全体的に円筒形をしており色も光沢があります。Wilsonで言えばハンマー系 (錦織選手が使っていたBURN95 (J) とか) のシルエットに見えますね。フェデラー選手のラケットとはだいぶ形状が違って見えます。

ペトラ・クビトバ選手

全豪オープン2019で大坂なおみ選手と決勝を戦ったクビトバ選手も今季から黒白カラーのPRO STAFFを使っています。

写真を見るとラケット面周りのフレームやPWS(両サイドのでっぱり) 辺りはバウティスタ・アグート選手のラケットに似て見えますが、スロート部分の厚みがやや太く、付け根部分の形状が違うようにも感じます。この写真だと分かりづらいですが照明の下だと光沢のある塗装です。

元々クビトバ選手は使っているラケットが市販品の製品構成からすると少し離れた所にあった選手です。

2015年からPRO STAFF使用になりましたが、写真を見るとPRO STAFFの特徴であるPWS(両サイドのでっぱり) が目立ちません。

2014年まではSteamを使っていましたが、そのラケットもスロート部の形状を見るとむしろ別製品であるJUICE (製品構成で言えば今のUltraの前にあったモデル) に似ています。

Steamは初代モデルから使用していましたがこの赤白黒モデルの変わる際に「クビトバ選手はSteam96を使う」とか変なマーケティングを打たれていました。(Steam自体Sラケ含めてかなりの製品数があったので当然売れていません。同じ末路を辿ったのは「デルポトロ選手が使う」と言われたJUICE PRO)

バウティスタ・アグート選手のラケットに近い気がするけど、クビトバ選手だから他選手とちょっと違うのかもという感じです。

2016年に暴漢に襲われツアーから遠ざかっておられたので全豪の活躍は本当に良かったです。クビトバ選手のようなタイプの選手は居そうで居ないので貴重な存在です。

カイル・エドマンド選手

24歳ですがPRO STAFF使用選手の上位選手の中ではかなりの”若手”です。現在シングルスランキング22位。

写真を見ると市販のPRO STAFFよりフレームに丸みがありやや厚めな印象。バウティスタ・アグート選手のラケットに近いシルエットに見えます。 

2018年シーズン後半は錦織選手同様「カモカラー」の迷彩色を使っていたのですが、こちらは市販のPRO STAFF97に近い形に見えますね。

今季使っているラケットとはだいぶ形状が違うのが分かります。 

バウティスタ・アグート選手、クビトバ選手、エドマンド選手に共通するのはストロークを武器にするという点です。また、クビトバ選手とエドマンド選手はサーブも強力

選手の特徴を考えればPRO STAFF縛りでなければもっとパワーのあるラケットを使う方が理にかなっているでしょう。クビトバ選手は以前Steamを使っていましたが、今で言えばUltraとかです。

PRO STAFF使用と言いつつ、ハンマー形状に近いラケットをこれら3選手が使っているのは妥当な選択なのだろうと思いますね。 

グリゴール・ディミトロフ選手

ディミトロフ選手もPRO STAFF使用選手の代表格ですが、市販品でもPRO STAFF 97Sを使用とされているようにストリングパターンが異なるラケットを使っています。(18×17のようです。16×19からすると18×20の横を減らした感じ)

また、最近は黒いフレームの両サイド、PWS部分の色を大会毎に変更している感じです。(細かい模様を複数、金、白、元々の朱色とか) 

マイアミオープンでの写真ですが形状を見ると市販のPRO STAFF97と比べて周囲が角ばった形状に見えます。PRO STAFF97が登場する以前のシリーズに近いでしょうか。

カラーリングを変えているだけで当時からの型を今も使っているのかもしれませんね。

アレクサンドル・ドルゴポロフ選手

PRO STAFF97以前からPRO STAFFfと言えばという感じドルゴポロフ選手です。昨年、手首の怪我で手術、今シーズンもまだ復帰できていない感じのようです。(ボールを打つ練習はしているよう) とは言え、昨年八百長疑惑で調査されるなど微妙な感じです。 

2018年の写真を見ると市販のPRO STAFF97とほぼ同じシルエットのラケットに見えますね。この頃は黒黒のPro staffを使うのはフェデラー選手のみで他選手は黒朱のPRO STAFF (97で言えばCV無版) を使ったりしていましたが、ドルゴポロフ選手は2014年の初代モデルのカラーリングを使っていました。

ただ、ストリングパターンは18×16のようです。

フィリップ・コールシュライバー選手

技術もあり、経験や戦略的なセンスも高い選手です。トップ選手との試合でもたびたび良いシーンを見せてくれます。

コールシュライバー選手は以前から黒朱のPRO STAFF (CVではない無印版のカラーリング) のラケットを使用していましたが、昨シーズン終盤から黒白カラーのPRO STAFFを他選手に先駆けて使っています。 

写真を見ると市販のPRO STAFF97に近い形状に見えますね。

コールシュライバー選手はドイツの選手で得意で言えば芝とクレイでしょうが、片手バックハンドですし、選手のタイプからすればフェデラー選手に近いでしょう。言い方は良くないですがオールドタイプの選手(ベテランですし育った頃に身についたもの)です。フェデラー選手同様に伝統あるPRO STAFFの使用感を好むであろうことは想像が出来ます。

同じドイツのハース選手もですが、コールシュライバー選手もドイツ語を話せるフェデラー選手とは仲が良いようです。ハース選手はヘッドのプレステージ(ザ・ボックス形状)を使用していた同じくオールドタイプな選手でもあります。 この3人には共通点があると思います。

フアン・マルティン・デル・ポトロ選手

デルポトロ選手がラケットへのこだわりから2007年当時のPRO STAFF95をその後も使用し続けた話は割と知られています。

結局2014シーズンまで使用し続け、2015年は黒塗り、2017年からは新製品であるBurn FSTを使用とされていました。(ちなみにBurn FSTとされていたラケットは普通にPRO STAFFの形状をしていました。ただ、2015~2018は色々と試行錯誤があったと思います。)

それが2019シーズンから『晴れて』というか黒白カラーのPRO STAFF使用に戻っています。ただ、デルレイビーチに1大会出た所で膝の問題で再びツアーから離れてしまいましたので使用している写真があまりありません。

Huge Del Potro Winners v Nishioka | Delray Beach 2019

ただ、ネットに乗っている写真を見た印象で言えば、昨年までBurn FSTとして使っていたラケットと変わらないのかなという気はします。

足が痛々しいですが、ラケットを見ると市販のPRO STAFF97のフレームとは少し違う、PRO STAFF95に通じる曲線がある感じがします。 

フェデラー引退後もPRO STAFF使用プロは残るのか?

ここまで見てきて分かるように市販品 (PRO STAFF97シリーズ) とほぼ同じ形状の “PRO STAFF” を使用しているように見えるのはドルゴポロフ選手とコールシュライバー選手位しか居ないようです。

これ以外の選手で言うと、ダブルスプレイヤーののブルーノ・ソアレス選手(ブラジル)はコールシュライバー選手と似た市販品とほぼ同じ形状のPRO STAFFを使用しており、レオナルド・メイヤー選手(アルゼンチン)が使っているのはバウティスタ・アグート選手と同形状のラケットに見えます。(メイヤー選手は以前Steamを使っていました)

グランドスラム以外とはなりますが、今季もシングルス優勝を続けているフェデラー選手が後何年現役を続けるのかという点とは別に

「フェデラー選手引退後のPRO STAFFというラケットがどうなるのか?」

という点に興味を持つ方は多いでしょう。

製品を変化させて新しいイメージを作る

1つの方向性としてはPRO STAFF97登場時のように

「よりラウンド形状に近づけた仕様に変えていく」

という事。

バウティスタ・アグート選手等が使っているラケットがそういうイメージです。

従来からのブランドイメージは変化せざるを得ませんが、PRO STAFF97登場時にそういう意見を乗り越えてきており、新しいPro staffというイメージ、その代表選手というイメージを作る機会にはなります。

ただ、そうした場合、BLADEやULTRAとの違いがより不明確になる懸念があり、「どの位変えるか?」が従来から続く”ファンが思うアイデンティティ”を保てるかでしょうか。

複数仕様を混在させる

もう1つの方向性としては

「1シリーズの中に複数の仕様を混合させる」

という方法。

デルポトロ選手が使用していたPRO STAFF95とそのトップモデルのPRO STAFF90の関係性もこれに近くWilsonはそういうマーケティングを使用してきています。(当時もPRO STAFF90とPRO STAFF95が何で同じ製品なの?と思いましたが、遡ればオリジナルのPRO STAFF85に対しても色んな派生モデルがありました)

今で言えば (かなり醜い事になっていますが) Burnシリーズの中に錦織モデルを無理やりはめ込んでしまったり、今回Burnをメインモデルから外す過程で錦織モデルをULTRAシリーズに移行させたりです。(Burnがメインモデルから外れたのは使用プロ筆頭であるハレプ選手がBLADE使用に変わった事でも感じます。現在も製品はありますが今後無くなるのかもしれませんね。)

Wilsonとしても市販品とプロ使用のラケットの形状があからさまに違う、ユーザーの目にも明らかだという状況は “あまり大きく存在させたくはない” でしょうから「この辺りが落としどころ?」という気もします。

今のまま続けるのは難しいか?

仮にフェデラー選手の後継として「PRO STAFFの伝統と共に育ちました」みたいな若手選手が出てくれば、今の状態のまま継続という事もあるかもしれませんが、少なくとも他メーカーからの移籍等でこの形を作るのは難しいでしょう。フェデラー選手は広告塔としてまさにうってつけなのが分かります。

逆に言えば、PRO STAFF内で複数仕様が存在する状況なら「95インチモデルが出たり、85インチモデルが復刻したりとかいう事もあるかも…」しれません。ファンは喜ぶかもしれませんがそれが望ましいかどうかは別の問題ですが。

個人的にはフェデラー選手という看板が消えた後も今のままの仕様のPRO STAFF97を引っ張り続けてしまうようならプレステージと似た将来が見えるようにも思います。ヘッドは複数ラインナップが平行的に同じ力の入れ具合(同等のトッププロをそれぞれ広告塔にする)でモデルチェンジしていく中でプレステージは埋もれてしまっている印象です。(ラジカルやエクストリームも) 伝統ある代表モデルだと言いつつもスピードもインスティングトもではユーザーも混乱しますね。

プリンスやバボラの人気とその終焉、ラケットメーカーの人気というのは1-2モデルで大きく岐路に立つ感じですから「単に良いラケットを作ればOK」とはいかない所が難しいですね。