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ガットは3ヶ月1度張り替えようという話を考える (テニス)

ラケットに張ったガット(ストリング)は伸びる、緩む

ガットは高いテンションをかけてラケットに張られ、素材自体も伸びる(1mmの長さが1.2mmに伸びるとか)し、張り方によって緩み(結んだ結び目が緩くなってその分長さが1mmが増すとか)といった事が起きていると思います。

ガットは切れなくても3ヶ月を目安に張り替えましょうと言われます。これは正しいのかについて考えてみたいと思いました。

長くガットを張ったままのラケットを見てみると

1年以上も張り替えていないラケットを見れば分かりますが、ガットが伸びると言っても触ったり、手で押し込んだりしてみても目に見えて分かるような変化はありません。ゴムやナイロン製釣り糸のように手で押してたわんだり、指で引っ張ったら浮いてしまうようなことには決してなりません。

この事は、仮に50ポンドでガットを張ったとして、張った直後からガットの素材は伸び始めますが、49, 48, 47,46と徐々に緩んでもその伸びは次第にゆっくりと小さくなっていき、ある一定のテンション相当まで伸びたらそれ以上はほぼ変化しない状態になるということを表していると思います。

1年以上張ったままのガットの様子

どこまで伸びたら伸びの幅がほぼ止まるかというのはガットやラケットによって違うでしょうが、6ヶ月、1年放っておいたら全くボールが飛ばなくなってしまうとは考えられないし、劇的に飛びが変わってしまうように “無制限に伸びが進行する” ということはありえません。

ガットの伸びによる打感の変化

では、切れないのにガットを張り替える理由は何かというと「打感の変化」です。

プロ選手が試合中に何度もラケットを交換するのをよく見ると思います。

それを見て「飛びが悪くなったから、或いは飛びが悪くなるから交換するんだろうな」と思うでしょうが、私は「ボールを打つ際の打感が変わるのが嫌だから交換しているのだ」と考えています。

ガットを張り替えた直後と2日後を打ち比べれば、ボールを弾く際の音の高さや打感の硬さが違うのは我々でも分かります。

試合中、いつ切れるか分からないですから『張った直後の打感』を基準とするのは “ある意味合理的” と言えます。翌日経過以降の状態を基準にしてしまうと「試合中に張り替える必要が出ても張った後にすぐ使えない」という状況が発生するからです。

テンションはどんどん変化していくので選手からすると “最もラケットの状態や条件を揃えやすい選択肢” が自然と「張った直後」になるという事だと思います。

冬場はテンションを落とすという話

よく「冬場はボールが飛ばないからテンションを下げている」と言われますね。確かに冬場は気温が下がり大気が収縮し体積は小さくなります。ボール内の空気も収縮し素材のゴム自体も硬くなることでボール自体は飛びにくくなり、大気の密度が増すことで空気中の分子が多くなり空気抵抗が増すことでもボールは飛びにくくなります。

ただ、ガットのテンションを5ポンド下げた所でボールの飛びは変わりません。10ポンド下げても実質的に差はないと思います。(ボールが当たった際のたわみ具合が変化することで同じように打っていても打ち出し角度に差が生じることはあるでしょうが、それは飛ぶようになるのとは別のことです。)

では何故テンションを下げるのかというと、「ボールが当たった際の打感が硬く感じるからテンションを落としてそれを調節するため」です。テンションを下げると打感が柔らかくなったように感じます。そもそもラケットとガットは “トランポリンのようにたわんで飛ぶようになるという思い込み” がこういった誤った発想に繋がっていると思います。

打感の変化を避けるためプロはラケットを交換するのだろう

プロ選手はラケットとガットでお金を稼いている訳で、道具の問題で1ポイントを失ってしまうことは避けるでしょう。いくらプロ選手が強くボールを打っているとは言え短時間に極端に飛びが変わる程ガットが伸びることもないでしょうし、結び目が緩んで飛ばなくなるとしたらガットを張る担当者(ストリンガー)に問題があるでしょう。つまり、打感の変化を避けるためにラケットを頻繁に交換していると考えるのが妥当なはずです。

錦織選手はラケットを変える際にラケット面を手や他のラケットでパンパン叩いたりしますね。また、ミスした後などラケットでボールを地面にバンバンバンと打ち付けて確認をしたりしています。これらも飛びというより打感、感覚面を確認しているのだと考えた方がすっきりします。

つまり、張り替えた直後に違い打感を使い続けたいのであれば3ヶ月と言わず、1ヶ月以内を目処に張り替える事になるかと思います。(2本持っているなら交互に張り替えるのもできる。)

ガットは3ヶ月に一度張替えようという話

誤解を恐れずに言えば「切れなくても3ヶ月に1度張り替えないとガットの性能が出ない」と言われるのは「ビジネス上の都合」が最も大きいと思います。

テニスで使う道具のことに知識や強い関心がない人ならガットも1年以上張り替えていないということは往々にしてあります。

ガットの張替えを生業としている人やガットを販売するメーカーにとっては定期的に張り替えてもらった方が売上になる訳で「3ヶ月に1度」と情報を目安として与えることである意味「洗脳」している訳です。「ガットは3ヶ月に1度張り替るように」と言われるでしょ? と言えば「あぁそうですねぇ」と反応が帰ってきますよね。 

長く張ったままだと性能がでなくなる、肘に悪い

「長く張っているとガットの性能が出なくなったり、体、特に肘などに影響が出るからよくない」というのも間違いではないでしょうが、“メーカーも張ったガットがどの位の期間でどの位伸びるかは数え切れない位テストを繰り返しているはず” です。張っているだけで極端に性能が低下する、体に影響が出るガットをまともに市販することはないんだろうと思います。

もしそんな懸念があるなら今の時代、ガットのバッゲージに「健康上の懸念があるため3ヶ月を目処に張り替えてください」とか細々注意書きが書いてあってもおかしくないですがそんなものはありません。(もちろん性能が出る幅はあるという前提です。)

なお、ポリエステル製のガットは伸びるのが速いと言われます。ナイロンに比べれば素材上、伸び率が高いのは事実でしょうが、書いてきたこれらの事柄は程度の差はあれ “ポリガットだから全く当てはまらない” ということはないと想像します。

3ヶ月も張ったままのポリガットで打てば打感は悪く感じるでしょうが、もう伸びは止まっている状態だと思いますし、伸びたポリガットで打ったら即、体に悪いというものも変な理屈だと思います。逆に硬く張ったガットの方が衝撃が強い分、体(肘)に悪いという理屈も成り立つでしょう。

また、5年や10年張ってままのガットは酸化するなど物理的に経年劣化することはありえますが、そこまで張ったままのガットなら普通に張り替えようかなとは思いますよね。

テンションの違いが体に影響が出るとしたら

体に悪いというのは伸びたことによるものではなく、打感の変化を感じたプレイヤーがそれをカバーしようとすることで打ち方に無理が生じ、結果、体の不具合に繋がるといったことではないでしょうか。

それに、常に安定してボールを捉えられないプレイヤーの場合、ガットからの影響よりもラケットの中央で捉えられないことで体に感じる振動等の方が余程体や肘にはよくないだろうとも思いますからね。

Tenniswarehouseのテンション実験

海外通販サイトのTenniswarehoseは上達のための参考情報を「Tennis Warehouse University」といったページで公開しています。

その中にボールをボールを打つような衝撃を連続して加えた場合のガットのテンションの変化という情報もあります。

How Tennis Strings Go Dead (テニスガットはどのように性能を失うのか)

twu.tennis-warehouse.com

62ポンドで張ったガットに200km/h以上のサーブが当たったのと同等の衝撃を連続して加え続けた際のテンションの低下を計測した数字になります。

Absolute change in tension for several strings according to number of hits.
Figure 2 — Absolute change in tension after first 100 hits. Reference tension for all strings was 62 pounds. Each string was at a different tension after the 100 hit break-in period.

データを見ると殆どのガットが最初の100球までの変化が大きく、以降の変化は緩やかになっています。変化の少ない上位はナイロンガットが多く、下位はポリエステルガットですね。

62ポンドというのは少し高めのテンションなので最初に極端に伸びるのはその影響もある気もします。逆に言えばもう少し低いテンションで張れば伸びる影響は小さくなったのかもしれません。

また、このデータれは時間経過によりものではないですし、200km/hのサーブを1,000~10,000回も受け続けることはないでしょうが、ナイロンガットなら(それ以上のテンションで張っても) 40ポンド位が伸びが落ち着く目安なのかなと想像します。

まとめ: 個人的な意見ですが..

物理的に切れてしまう以外で、ガットが伸びる、緩むことで変わる打感の差が気になるならこまめにガットを張り替えるのは理解できます。ただ、特にガットの損傷等もない状態で「3ヶ月に1度」という情報だけでガットを張り替えるのは正直勿体ないとも思います。1度張り替えるだけで5,000円近くかかります。年4回、1年半でラケット1本分の費用になりますからね。

1年以上張り替えないというのは、逆に「道具に愛着を持っていない = テニスの上達したいという気持ちが薄い」と感じてしまいますが、ガットの張替えは気分的な面 (新しくして気分一心) も含めて、自分が判断していいと思います。

「定期的に張り替えないなんてありえない。張り替えないと性能が落ちる。」と声高に主張してくる人には、打感の違いを除いて性能が落ちる根拠を聞けばいいと思います。(ケンカにならない範囲でですが。)

2021年12月追記: 10ヵ月程張り替えていないラケットを使ってみました。

このブログ記事を書いてだいぶ経ちますが、新型コロナウィルスの第6波が収まりつつあり、日本では人口比80%近い人が必要な回数のワクチンを接種済みという状況です。私も2回のワクチン接種を終えて久々にテニススクールに復帰。その際、約10ヵ月程、ストリングス (ガット) を張り替えていないラケットを使用してみました。

以下のような内容です。

  • ラケット:Wilson PRO STAFF 97 V13.0
  • ストリングス: Tecnifibre HDX Tour 1.24
  • テンション: 45P

因みに、PRO STAFF 97 V13.0はストリングパターンがラケット面の上側に少し詰めて (V12.0に比べて横糸が “ラケット面の下側” で1列少なく、上側で1列多い) あり、45Pで張っていても “打感は硬めに” 思います。

※慣れないと45Pでも “板で” 打っている感じ。ラケット面中央より少しだけ先の方でボールを捉えるようにした方が『キレイに』飛びます。

HDX Tourはもう廃盤ですが2種類のナイロンと1種類のポリを樹脂で1本にコーティングしてある「緩く打った時は柔らかく、しっかり打った時は腰がある」感じのストリングス。

打感が好きで発売当時から使っています。

PRO STAFF 97 V13.0の硬めの打感に相応して「ボールが当たった時硬く感じるんだけど、ボールはつぶれ、ボールが触れている部分だけストリングスが “キュッ” と少しだけたわむ、ほんの少しだけ伸びる」感じがします。(個人の感想です)

さて、これらを10ヵ月程張り替えていない状態で使ってみた訳ですが、正直「使うのにあまり支障はないな」と思いました。

相変わらず打感は『硬い』ですし、ボールが当たった際のストリングスのたわみは張替え直後より減った印象はあります。より “板感が” 増し、ボールも飛びづらい感じです。ただ、「全然とばないよー」とか「こりゃダメだな」と言い切ってしまう程ではない。案外「3ヵ月経過時位の状態と大差ないのかも」と思いました。

もちろん余裕があるなら適宜 (1回のレッスン毎でも) 張り替えた方が良いでしょうが、やはり「3ヵ月で張り替えろ!!」を常識のように思わず、自分で確認してみる、体感してみるのも大事かなと思いました。

検証のためだったのでこの後、張替え予定です。

 

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