テニスと手汗という問題
テニスでよく聞く質問に「手汗への対策」があります。
テニスをする際に、試合中の緊張から手に汗をかいてしまったり、元々汗をかきやすい体質だったりで、グリップが滑ってしまう対策をどうすればいいのかというもので、学生さんなど屋外のコートで夏場でも長い時間プレイする場合には結構聞く悩みのようです。
テニスのグリップ素材は?
テニスラケットのグリップ部には元々PU(ポリウレタン)や本皮製のグリップテープが巻いてあります。これを「元グリ」等と呼んだりしますがそのままプレイすると汚れたり傷んでしまったりするので、市販の「オーバーグリップテープ」と呼ばれるものを元グリの上に巻いて使用することが殆どです。この「オーバーグリップテープ」のことを「グリップテープ」と言ったりしますね。)
ラケットのグリップサイズを選ぶ際はオーバーグリップテープを巻いた厚さを見越して選んだりもします。
手汗対策にはドライタイプのグリップテープ?
手汗に対するアドバイスとして「ドライタイプのグリップテープを使えばいいよ」と言われる方が多いのですが、失礼ながらその方自身は “ドライタイプのグリップテープを殆ど使ったことがないのでは?”といつも思います。
ドライタイプの代表「トーナ グリップ」
ドライタイプのグリップテープの代表が「トーナ」ブランドのグリップテープで、憧れの選手がサンプラス選手だったこともあり、私はこのブランドのドライタイプのみを10年以上使い続けています。
The History of Tourna Grip!
他社のドライタイプは殆ど使ったことがありませんが「紙っぽいパサパサな手触り」な製品もあったりしますね。ただ、ドライタイプはトーナの人気がダントツなのでトーナのOEM製品や色や触感をトーナに似せたものもあります。
トーナ製ドライタイプの使用感
このトーナ製のドライタイプを個人的な感覚で説明すると以下のような感じです。
1)握った際に手に張り付く感じがなくグリップを回転させやすい。
2)適度な厚みがあるので握った感じは硬くなく、ごく僅かなクッション性がある
3)手に張り付かないが、紙のような乾燥感ではなく、微妙に手にフィットするしっとりさがある
1と3が矛盾するようですが「表面が紙のようにパサパサではなく、絶妙な厚みがあることで握った際にごくごく僅かに凹む感じで指にフィット」します。このためウェットとは違う独特のしっとり感を手に感じます。
つまり使ったことがない方がイメージする「ドライ = さらさらというイメージとはだいぶ違う」のです。
ドライタイプに吸水機能はない
また、ドライタイプと言っても、吸水シートのような水分を内部に取り込める性能や機能を備えている訳ではありません。
例えるなら「ドライタイプの素材に手に粘着する加工を加えたものがウエットタイプ」と言えばイメージが湧くでしょうか?
元々の素材自体は同じPU(ポリウレタン)であり水分に対する素材自体の性能は変わりません。
実際、ドライタイプのオーバーグリップ製品のパッケージを見ても「吸湿効果」「手汗にはドライタイプ」といった説明がされたものはないのではないでしょうか?
(店側が個人的見解でポップ等を作る場合はあるかもしれませんが。)
ドライタイプとウェットタイプの違いは何か?
ドライタイプとウェットタイプのグリップテープの違いは表面の粗さの違いと考えていいと思います。”タイプ”と言うから別物のように感じますがドライフィールとウエットフィールという呼び方をすれば分かりやすいかもしれません。
顕微鏡で見れば表面が荒く穴がたくさん空いて居るようなものがドライタイプです。
メッシュ素材など生地の目の荒い服は肌に張り付きませんが、同じ生地でも生地の目が細やかな生地(雨ガッパのようなもの)は肌に張り付いたりします。紙を皿に乗せても密着しませんが食品用のラップは密着します。素材表面の滑らかさにより接触面の面積が増え、接触した面の空気を外に逃げる事で大気圧でくっついてしまうのだろうと考えます。
トーナのドライタイプのグリップテープを使っていて、雨がポツポツと降ってきたり誤って飲み水がかかってしまった場合などは濡れた部分がふやけたように湿ってしまいタオル等で拭いても簡単には乾燥しないです。
ウェットティッシュを2-3回ポンポンと当ててみるだけで….
これを見ても
「手汗対策にドライタイプのグリップテープを使うことは解決にならない」
のは明らかでしょう。
最初に
「手汗にドライタイプのグリップテープを勧める人は自分で継続的に使った事がないのでは?」
と書いたのはこの辺です。
私がドライタイプのグリップテープを使う理由は「自分が使いやすいから」のみです。(トーナ以外のドライタイプで吸水機能があるようなものがあったらすいませんが。)
手汗対策は「滑り止め」と考える
では、手汗対策をどうすればいいかですが、簡単に言えば「滑り止め」という考え方はどうかと思います。
野球では、打席に入る際にバットのグリップ部にロージンやスプレー等ですべり止めをしますね。滑り止めを施すことで雨の中でもグリップは滑りにくくなります。
これと同じで、テニスで手汗によってグリップが滑ってしまうのであれば「滑り止め」を施すことが一つの対処方法かもしれません。
具体的には
「効果の高いウエットタイプのグリップテープ(スーパーウェットと呼ばれるようなもの)」
を使う。或いは、
「市販のテニス用の滑り止めを使うこと」
といった対策あたりかと思います。
「手汗をかいて手が湿っているのにウエットタイプのグリップテープを使うの?」
と思われるかもしれませんが、ウェットタイプが水分を含んでいる訳ではないですからね。
ネーミングはともかく
「ウエット = 表面が滑らかで密着性が高い」
という理解が正しい気がします。
YONEXのスーパーウェットタイプ
テニスではグリップチェンジを使います。
野球のバットのグリップに塗る松脂やスプレーと違い、「握っている間全く滑らない、動かない」事を目的にしている訳ではないので、ウエットタイプでも操作性が落ちるという事はないと思います。(サラサラの触感を期待されている訳ですから慣れは必要でしょうが)
テニス用の手に塗る滑り止め
TVでテニスの試合を見ていると、錦織選手がベンチで何か液体のようなものを手に付けて両手をこすり合わせているのを見たことがないでしょうか。
ハンドクリームでも塗っているように見えますが、これは錦織選手が育ったIMGが開発した滑り止めなんだそうです。
これをプリンスが商品化して国内販売しています。
※2019年現在、既に販売が終了しているようです。
私自身はこの製品を使ったことがないのでラフィノさんのインプレ動画等を参考にしていただければと思います。
ラフィノさんのインプレ動画
強めのウエットタイプのグリップテープを使えば滑りにくくなりますが、手に張り付く感覚に慣れないとグリップチェンジしづらいと感じると思います。
この辺は使い続けて慣れることもあるでしょうが、リキッドタイプであれば汗をかいてきた時だけ手に塗ることができるので、グリップテープを変えてみるのと併用前提で考えるのもありかなと思います。