PR
スポンサーリンク
スポンサーリンク

なぜストレート方向、コート中央を意識しようと思うのか? という話 (テニス)

middle of the court

プロを見ると「クロスコートのラリー」なんてしていない

2年位前からでしょうか。男子プロの試合を見ていて目についたのが『小さな逆クロスの使用』でした。

シュート気味のボールで相手をサイド側に追いやるような逆クロスではなく、ストレートに近いラリーの中で半面程の逆クロスを打つ。縦ラリーが続くと準備していた相手はボールを追いバランスを崩す。逆側に続けてポイントに繋げられる状況を作る感じでしょうか。

小さい逆クロス

最初は「自分から大きく動いて仕掛けるのはリスクもあるから相手へのけん制 (ロブ合戦から互いに仕掛け時をはかるみたいな) も含めた手段なのかな?」と思っていたのですが、次第に「あれ、男子プロ、クロスコートのラリーとかしなくなってんじゃん!!という事に気づきました。(「え、今更?」ならごめんさい)

センターラインの右寄り、左寄りの位置でフォアハンドもバックハンドもストレートに近い打ち合いをし、サイドに動いてもすぐにセンター付近に戻ってきて、またストレートに近いラリーを打ち合う感じ。特にコート周囲が狭く球足も独特になる室内コート等では顕著でしょうか。以下の動画、シナー選手もデミノー選手も “常にセンター付近で” プレーしようとしていますね。

Jannik Sinner vs Alex De Minaur For The Title! 🏆 | Rotterdam 2024 Final Highlights

「打ったらセンターに戻れ」とは違う

昔から「打ったらセンターに戻れ」と言われますが、これは「センターからならフォア側もバック側も半面動けば良い」的意味合いが強かった (後は空いたスペースを消す) と想像します。相手とクロスコートで打ち合っているのに1回打つ度にセンターに戻るなんてしないでしょう。

戦術として「バックハンドのクロスラリーを続ける中でどう仕掛けるかを互いに様子をうかがう」みたいな駆け引きがあった (バックハンドの方が安定するからバックから組み立て最後はフォアという感じ) と思うのですが「今の男子プロはフォアもバックもクロスコートでラリーを続けたりしない」ように見えますね。

フォアの逆クロスも誰も使っていない
以前はフェレール選手、錦織選手等で「回り込んでフォアの逆クロスで相手をサイドに追い出す」展開がよく見られましたが、バックハンドを打つ技術が向上した結果、自分はフォアに回り込むが相手はバックで普通に返せ、逆に展開されてしまう状況に。次第に回り込み逆クロスをベースに組み立てようとする選手は見られなくなりましたね。(今ならデミノー選手が使う印象)

逆クロスフォアハンド

ムラトグルーコーチはこういう説明をしていた

『テニス動画』と言えば、スタテニさん等の国内チャンネルの動画を見る方が殆どだと思いますが、現状、最も参照すべきテニス動画は『パトリック・ムラトグルーコーチによるものだと考えます。

パトリック・ムラトグルー氏は、セリーナ・ウィリアムズ選手、ハレプ選手、チチパス選手、ルーネ選手等のコーチを担当。2020年からはアルティメット・テニス・ショーダウン(UTS)という独自大会を開催し、有名選手らが面白い試合を見せています。アカデミーを開催するコーチやプロらは多いですが、名実ともに世界トップクラスのコーチ、且つ、テニスビジネスでもガチに新規分野を開拓しまくっている人物でもあります。

英語が分からない? 見ない方がはるかに勿体ない。科学的根拠に基づく結果を理屈は飛ばして具体的且つ直接的なやらせ方で体感させ、その違い、変化を感じさせるやり方ですね。同じ結果に向うための根拠ある説明を複数用意しており、且つ、色んな動画を見ても説明が一貫しており、けた違いに分かりやすい。よくある「指導側の信条、特定要素ばかり強調して出来ないと途端に指導が曖昧になっていく」みたいな事がないです。

さて本題ですが、ムラトグルーコーチの動画にこういうものがありました。

The Basics of Tactics: TENNIS MASTERCLASS by Patrick Mouratoglou, EPISODE 6

これは戦術についての回で「コート中央に居るプロは居ない。必ずセンターから50cmほど右側、センターから50cmほど左側に居る」と言われていますが、要は「ここが基本のポジションだ」という事ですね。

middle of the court

トップ選手相手に “漠然とした位置取り、漠然とセンターに戻る” をやっていると “前提の違い” を突いて1発で決めてきます。下選手に比べて上(白)のノリー選手がセンター付近の位置取りを慎重にキープしているのを感じます。一方しか「センター付近で戦う」意識がないなら相手は三角形の頂点に向けて打ち返す、自分だけが左右に動きまわるような展開になりますね。

我々は遥か手前の「漠然とクロスへ」の段階を抜け出せない

一方、我々はと言えば「漠然とクロスへ」という段階から進もうとしない印象です。

漠然とクロス

バックハンドでラリーが続けられる人は居らず、皆が可能な限りフォアで打とうとします。サーブもストロークも「距離の長いクロス方向に打つのが入りやすい、強く打ちやすい」感じでしょうか。コーチからセンターに打つ意義を聞いてもピンと来ない。

理由は「必要が無いから」でしょう。

テニススクールには認定制度があり、自分と同レベルの人としか練習する機会がないです。同時に「〇〇が出来れば4.0」といった客観的評価が採用されず、必ず自分と周りを比べた相対評価で現状を把握する事になります。圧倒的に残った出来ない事を放置し、数少ない自分が出来る事を頼りにテニスをやろうとし、「自分はあの人より上手い」と思ってしまう感じ。それがテニススクールに通うような我々のテニスが上達しない大きな理由の一つだと考えています。

  • 圧倒的格上に何も出来ずにこてんぱんにやりこめられる機会が定期的にある。
  • 自分の方が上手いと思っていた人が急に上達し始め、「偶々だ」で済まされない差が日々ついていく実感。それが1人ではなく周りで何人も。

そんなものがあって初めて「これは不味い」と感じ、変わろうとするのだと考えます。

※「変わろうとする」がポイントで、変わるのには労力が要り、継続にはもっと労力が要ります。やり方が分からない、効果が感じられないと年齢や体力、才能が云々と『今のままで良い理由』を探し始め、また停滞が続くのですね。

考え方coaching

どこに打っても良いならストレートを試す、球出しでも位置を意識して構える

テニススクールのレッスンで球出しのボールを打つ際、「打つ方向はクロスでもストレートでも良いけど球出しするコーチには当てないでね」みたいな設定は割とあります。

普通は距離が長く強く打っても収まりやすい、試合や練習でも多く打つクロス方向に繰り返し、同じように打つ事になるでしょう。また、多くの方が打った場所で次の球出しのボールを待っている。打つ相手を向いて構える、スプリットステップもせず、”フォア寄りの” 姿勢のままで次のボールを待って居られますね。

私は、敢えてストレート方向に打つ。ストレートに打つのが目的と言うより「球出しするコーチを半面動かすならこういうショット」という感じ。また、敢えてセンター寄りの位置から1球目をスタートし、打ち終わったら前述の「センターに戻る」ではなく、相手 (この場合はコーチ) との関係性を踏まえたセンター付近のポジションを取る意識でやってみています。

middle of the court

なお、球出し練習のメニューで下図のように「1球目をアプローチショットして前進し、2球目を1stボレーする」ような設定がありますが、1球目をクロスに深く強く打っているのに『コート中央のコーチの位置から出てくる2球目』を当たり前にボレーで打っている様子は本当に違和感でしかない です。

practice

やっている事に結果に対する連動性がない。その方に相手とテニスをする、状況を作るための組み立ての意識がないのを分かりやすく感じる瞬間です。例えば、アプローチショットはコーチに当てない範囲でセンター寄り、距離も短いので尚の事、飛行時間の長い、相手が打つまでに時間のかかるショットを選ぶ等が実戦に即しているかなと思っています。

※もちろん、健康、社交、ストレス解消等、テニスをやる目的は人それぞれで良いです。上達する気がない奴は来るなみたいな考えが正しいとは思いません。

頻発する『ストレート抜き』は “後衛の”せい

テニススクールの中級位になると頻繁に見るのがダブルスにおける『ストレート抜き』です。誰かがやると「自分も、自分も」と皆がやり始める。レッスンに参加時で私が嫌いな時間のひとつです。

tennis

多くが前衛に慣れていない事もありますが、後衛同士のクロスラリーを邪魔しないように (下手に関わって失敗するのが嫌) 前衛はサイド寄りに立って動こうとしない。サイド側は狭い筈ですが動かない前衛は良い的、目安になるのでサイドを抜くのは難しくないのだと想像します。

このストレート抜き、状況から「前衛がサイドを抜かれた」ように感じますが、殆どの場合で「ストレート抜きを起こしているのは後衛だ」と思っています。

「漠然とクロスへ」の意識が、飛んでくるまで、バウンドしてから打つまでに時間が出来てしまう球質のストローク、サーブを相手後衛が立っている位置、フォア側に “意図なく” 打ってしまう。相手後衛は飛んでくるのを待ってから “どこへでも” 打てる。その際、目の前に目標が立っているストレート方向は漠然と打つクロス方向より打ちやすいかもしれません。

前衛もポジションや距離感、間合いやタイミングで相手後衛にプレッシャーをかけるべきでしょうが、相手が打とうとしているコースに早く入り過ぎるとそれを見た相手が「ぶつけてやろう」という顔をする (俗にいう目が合う)。意識や視野の狭さからもう「ぶつける!!」しか考えられなくなる。下手に動けない、打たせてから反応するしかない雰囲気もあります。

これがセンターへのボールになると距離も短く打つまでの時間も短くなる。相手のバック側ならセンターから逆クロス方向に飛びやすくなると考えます。(当然、緩い、弾む、時間を与えるボールだと意味がない。確率・その後関係なくバックハンドでも「サイドを向く」を優先する人は居るので)

試合中の場面を想定して、サーブ練習でもワイドではなくセンターにきっちり入れる。ストロークはフォアでもバックでも動いた上でストレートにきっちり打てる練習をしておきたいなと思います。

ダブルスでもコート中央がうまく使えるように

重複してしまいますが、レッスン中のダブルスでも「漠然とクロスへ」サーブやストロークを打ち続ける傾向は強いですね。

※相手との駆け引き、組み立てにより作った状況、配球により後衛が状況を作り、(配球から意図を感じた) 前衛がそれ機会をきちんと決める等ではなく、目の前のボールを打つのが目的、『次』が頭にない「このボール!!」な傾向も強いですね。打ったら終わり。打ち返えされたら慌てて反応みたいな感じ。

「ラリーはクロスコートが基本」等と言われますが「何故、今、クロス方向を選択するのか?」が大切なのでしょう。

同様に「相手がセンターを使ってこないから自分も使わない。練習する必要を感じない」なら、自分だけでもコート中央を上手く使えるようになりたいですね。例えば、アドサイド側でクロスコートのラリーやボレスト、平行陣対雁行陣等やっているのに全部フォアで打つ。デュースサイド側でもセンター付近までフォアで打つ等に意味を感じません。

相手がそうするなら積極的にセンター付近に打って相手を動かしたいですし、自分はバックハンドでショートクロス、逆クロス、センターへ突き球等打つ練習をしたいと思います。

練習のための練習にならないように

練習していない事は試合でも上手く出来ない。相手と駆け引きする、相手とテニスをするから試合中に起きる状況に対応できる術が必要になる。実際の試合で使う事を準備するのが『練習』の目的。

相手ありきのスポーツであるテニスをやっているのに相手とテニスをしようとしない。ボールを打つのが目的になっている。そのボールを打ったそのターンは終わり。相手が打ち返したボールを見てからまた「そのボールを打つ」事を考える習慣性。

球出しの1球でも自分で状況設定して試合で活かせる練習をしておきたいですね。

tennisbaseball