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「こういう場合はこうする」を考えてもテニスは上達していかない? (テニス)

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※私は専門家でもコーチでもありません。自分の上達のために色々考え、それをブログに書いているだけの者です。そもそも会ったことも自分のテニスを見せた事もない者の話を鵜呑みにするのは危険です。私は「自身のテニスを上達させるのは結局自分自身、コーチや周りの人達ではない」と考えています。ここで書く内容も単なる情報。理解も解釈も読む方にお任せするしかありませんし、同じ理解をしていただける自信もありません。まずは普段からテニスを見ているコーチにご相談される方が絶対に良いです。なにかしら試される場合でも怪我等なさらないようご注意ください。

“正解を” 知りたがる

テニスを1度でもきちんと始めた事がある方なら「テニスは難しいもの。簡単には上達しない。練習もしていかないとダメ。だからちゃんとした場所できちんとした人に教わるべきだ」といった考えに感じるものがあるかもしれません。練習してもなかなか上達しない、うまく打てない。改善するきっかけが欲しいです。

Kyle Edmund & coach/trainer

テニスを教えるのは「テニスが上手い」以外のノウハウや情報、経験が必要だと思います。だからこそテニススクールや職業コーチが成り立つ。経験者のお父さんがお子さんに教えようする、初心者がテニスサークルで教わる等してもあまりの上達しなさ加減に気まずくなり、止めてしまうのがオチです。

ただ、このような意識と表裏一体としてあるのは「自分で考えるなんで面倒。間違っていたら嫌だ。無駄になる。知っている人、分かっている人に “正解を” 教えてもらうのが間違いないし、手っ取り早く」という気持ちも含まれてくると思っています。

誰もがプロを目指すわけではない。週一テニスを楽しみたい。汗を流し、知り合いと触れ合ってストレス発散したいだけ。「自分で色々調べる、考える、時間を費やす」事より「人に聞く、教わる」方に効果を感じるのは当然かもしれません。

「こういう場合はどうすれば良いですか?」という質問に意味がない

私自身、テニススクールのレッスンに参加するし、YouTubeでもコーチの方が指導する映像を見たりします。その際によくあるのが

「コーチ、こういう場合はどうすれば良いですか?」

といった質問です。

lesson

「今のはストレートに打った方が良かったですか?」「下がった方が良かったですか?」「相手が並行陣になるとどこに打ったら良いのか分からなくなる」等。

質問されればコーチは「こういう場合は、こうなるから、こういう風にするが良いですよ」等とある程度時間をかけ、例を上げて具体的に説明されるでしょう。ただ、個人的には多くの場合、このやりとりにコーチが期待する程の効果は生んでいないと思っています。

相手の打ったボールに合わせて対応しようとする時点で実力は発揮できない

テニスにはルールがあり、コートの大きさも決まっています。

単純計算ですが「時速130kmのボールはベースライン間を0.66秒で到達する」計算になります。

130キロは0.66秒で到達

実際にはバウンド等によりボールは減速しますが、ダブルスの前衛等、ネット近くに居れば「準備時間はベースライン付近に居るより短くなる」のは想像が付きますね。

Mansour Bahrami serve

一方、人の反応速度は速い人で0.2~0.3秒と聞きます。

つまり、テニスのルールを考えれば「相手が打ったボールを見てから判断する、準備するのでは多くの場合『間に合わない』が発生する」と考えられます。

※自分がどんどん後方に下がって「相手のとの距離を長くする」、TVゲームのように「相手のボール速度を遅くする」 (いずれもボールが飛んでくるまでの時間を長くする効果) といった事はできませんね。

よく「相手のボールを1度は返せたけど、次のボールは反応できないまま決められてしまった」といった事が起きるのは、1度目は「構えた」所から準備しボールを打てた。次は「打ち終わる」から「構える」までの時間が足されるから間に合わなくなる点が大きいと考えます。

つまり反応速度0.2~0.3秒だけでは済まないという事ですね。

20通りのパターンがあるとして咄嗟に判断し、実行出来ますか?

先の 「コーチ、こういう場合はどうすれば良いですか?」 という質問ですが、

仮に覚えるべきパターンが20通り示されたとして、自分が実際にプレーしながら「あ、この状況はパターン8だからこうしなきゃ」という判断をし、教わった通りのやり方を実行出来るのか?

という質問者に対する疑問があります。

ダブルスダブルスダブルス

もちろん、コーチの話は聞きっぱなし、確認もしないし、ただ「言われたからやる」「言われた通りにやる」という姿勢の方よりも「質問する」「熱意が態度に表れている」方の方がコーチも教え甲斐があると思います。

(話を聞かず、理解しようともしない。「自分は分かっているから」といった態度を見せる。自分の理解や解釈で指導を無視する。コーチも人間です。仕事とは言え、そんな方々には力を尽くしたくないかも。テニススクールのレッスン等は周りも自分と同じかそれ以上に時間と費用をかけて参加している。自分がよい練習をしたければ自分も周りの人にとって良い練習相手になるべきだと思っています。自分が楽しければ周りは関係ない。金を払っているのだからコーチは練習相手をすれば良いみたいなのは好きじゃないです)

ただ、「何のために聞いているのか」を自分の中で整理できているのかが少し疑問に感じるのです。

実際の所、「コーチに聞いた。覚えた。でも実際にその場面が来ると実行できない」という場面が少なくない、ずっとそんな調子でプレーの質が上がっていかない (だから余計にコーチに聞こうとする) のではないでしょうか。

ダブルス前衛のこういうポーチ

ダブルスの練習をしている際も「コーチ、こういう場合はどうすれば良いですか?」という質問は多いのではないでしょうか。

ダブルス

例えば、YouTubeで見る練習風景やレッスン動画、テニススクールのレッスン等でダブルス前衛のこういう「届かない」ポーチを見かける事があります。

ボールを追いかけるが「届かない」前衛のポーチ

tennis poach

「あー、届かなかったぁー (笑)」という奴。同じようなケースでこういう「逆を抜かれる」ケースもありますね。

ポーチに出て「逆を疲れる」前衛の動き

tennis poach

「あー、逆をつかれちゃったぁー (笑)」という奴。

これらは、対戦相手関係なく「自分がポーチをする」という事が目的になっているという点が大きいと考えます。「アンラッキー。次こそは」等ではなく前衛本人が起こした結果ではないかという事ですね。

攻撃は最大の防御という話

世間には「攻撃は最大の防御」という事がありますね。(孫子の兵法中の一文からの抜粋で本来は「勝てそうにないならひたすら守れ」という意味が前に付くようです)

色々な解釈があるでしょうが、含まれる要素として、対戦相手と勝ち負け、得点のやり取りがある状況で「場の主導権を握りやすいのは攻撃する側だ」といった面があると考えます。

守備的プレースタイルへの誤解?

テニスには「守備的にやや下がった位置取りをして、相手の打ったボールをひたすら返球して粘る、攻撃が通らずに焦れた相手が先にミスをする」といったプレースタイル (シコラー?) もありますが、それでも「時間が取れるから、相手のが打つのを見てから判断して良い」という訳ではないでしょう。

先程のボールが飛んでくるまでの時間と人の反応速度、準備時間との関係性を見ても、テニスは「相手の打ったボールを見てから判断する、準備する」のが向かないスポーツであるのは間違いないと思います。

(勘違いしたくないのは「俺は反応には自信がある」「私は出来るから問題ない」といった話ではないという事です。誰でも簡単に実行出来る、良い結果が安定的に出せる方法があるのならそれをまず前提とする。テニスは相手ありきのスポーツであり「自分の能力を出せれば勝てる」訳ではありません。)

プロほどボールに速度がない、飛んでくるまでに時間が確保できる、相手もそこまで無理をして「時間を奪う」プレーをしてこない。

そんな前提であっても「守備的なプレースタイルなら、相手がボールを打つのを見てから判断しても大丈夫」という事は無いし、色んな守備的プレーヤーが居ても勝ち上がるのは「そういう判断をしていない」方々じゃないかなと思うのです。

相手に先行できるプレーヤーが試合を優位に運ぶ

「プロのテニスを自分達と比べても仕方がない」という意見もありますが、YouTubeでテニスの試合を見ていると試合を有利に運ぶのは総じて「相手に先行して状況を作る」選手であり、そのために「先行できるパターン、武器を持っている」選手だと感じます。

returnnishikori

守備的なプレースタイルでランキング上位に居る選手も居ますがツアーを勝ち上がる (優勝まで6回勝ち続けるとか)、それを年間を通じて続けるのは大変だと思います。同様の技量、ランキングなら先行できるプレースタイルの方が精神的にも実力を発揮しやすいかもしれません。

※また、身体の大小で「攻撃的、守備的」を分ける考え方も古いと思います。20年前なら185cmは大型プレーヤーでしたが今は小柄な方です。身長170cmと言われるシュワルツマン選手が「守備的」とは思いません。

攻撃的なプレースタイルが良いという話ではない

我々レベルだと「強いボールが打てる = テニスが強い」みたいなイメージがあるし、純粋にボールを打てるようになった段階からボールの威力を気にする傾向は誰にでもあるでしょう。

だから、上の話が表面的な部分から「守備的なプレースタイルは良くない。攻撃的なプレースタイルを取るべきだ」と捉えられてしまうと困ってしまいます。

例えば「強打、強打、強打」な選手は調子に乗れば勝てるでしょうが、それを続ける事が難しいでしょう。今年は好調でも翌年急激にランキングを下げたり。我々レベルでも『ボールの威力』に拘る方は細かい事を考えるのが苦手だから強打になびくという面はあると思いますね。

また、述べたように守備的なプレースタイルでも「相手とのやり取り、その場を支配して自分有利の状況に繋げる」事は可能。ただ、自身が主体的にリードしていくプレースタイルの方がやりやすいし、自身のプレーへの負担も減る。実力も出しやすいのでは? という感じですね。

相手を誘導し、自分が望む状況を作る

小説の中の話ですが、戦闘で「相手の戦力はこちらの10倍。開けた平地で戦うのは不利だ。左右が崖で回り込む事ができない谷に誘い込んで、直接戦闘に参加できる人数を同等にしよう」といった戦術を取るとしてこれは「望む状況を作るために相手を誘導する (した)」という事が言えるでしょう。

戦術

テニスにおいて「相手をコーチの一方の端に追いやる」ボール (角度のあるボール、深いボール)を打ったとします。

相手は追いつくだけで精一杯、特にバックハンド側なら利き腕が身体の前側にあり、身体の前側ある利き腕肩よりも後ろの打点ではうまく打てない。(フォアハンド側は横向きで利き腕肩が身体の後方にあるからバックハンドより後ろの打点でも打てる)

相手が打つ様子から返球される基本のコースは当然限定されてくる

つまり、「次に自分がどこに居てどう攻撃すれば相手が対応できないか? という想定が『自分がボールを打つ前に』概ね決まってくる」という事です。

anticipation tennisクロスラリーからのストレート

相手の打ったボールと打ち終わった相手を見て「あ、あそこに打とう」と思って行動するのとは心理的にも時間的にものだいぶ違うでしょうし、この場合「相手がどう返球するか、その返球にどう対応するか」の想定まで出来ていないだろうと思います。

ボールを打つにあたり『その次』のイメージがないという事。

当然、また「相手が打ち返してくるのを見て考える」という事になるでしょう。

ボールを打つ際の緊張

ポイントが決するまでの間のやり取りを考えれば恐ろしい程の差プレーの質が全く違うのは想像に難しくありませんね。

(自分の意図通りに相手を動かし想定通りの状況を作り続ける vs 相手が打ったボールを見てからどうするか考える)

「こういう場合はどうすれば良いですか?」 はどういう状況を作りたいかの前提

相手が作った状況を前提に「こういう場合はどうすれば良いですか?」と知ろうとするのではなく、自分がどういう状況を作りたいかの前提として「こういう場合はどうすれば良いですか?」 を学ぶ。

同じセリフですが発した理由、目的はだいぶ違う。

こういう質問を見聞きする際、

  • 相手が打ったボールを見てから「こういう時はこういう風に対応するんだ」と考えて動こうと思っているのでは?
  • そもそも、人の反応速度とボールが飛んでくるまでの時間を考えれば、この発想が妥当とは言いづらいよね。
  • 同時に「相手の打ったボールを見てから判断する」と考えている場合、その状況に慌ててしまう、頭が真っ白になってしまうといった事が多いのでは? 準備時間、反応時間以上にマイナス要素を抱える事になるのでは?

といった事が思い浮かぶのです。

そこに「相手に先行して状況を作るという意識。望む状況を作るために相手にこういう返球をさせるために今居る場所からどこにどういうボールを打つんだという意識。次の次を見越した行動」は見られない。それどころか「そういうのはもっと先の話、レベルが上の話。今は「こういう場合にはこうしなさい」を理解する段階だ」と考えられている雰囲気すら感じます。

tennis female

テニスの『技量』は相手ありきの状況、ルールを前提とした試合のような場面でこそ発揮されるべきでしょう。大したプレッシャーもない、自分に都合よく打てる球出しのボールを打つような練習を何千球続けても勿体ないだけだと思います。(ルールの元での試合等絶対にしないなら別ですが)

tennis lessons

テニスは相手ありきのスポーツであり、機械が打ったボールに「1, 2の3で攻撃」みたいなプレーは練習でしか通用しない技量と関係なく相手がテニスというスポーツを理解しているほど結果に大きな差が出ると思います。

※テニススクールはレベル分けにより同レベルの人達としか練習しない。格上の相手にコテンパンにやられるという経験が継続的に得られないので「(同レベルでしかない) 周りに通用するから自分は十分上手い」と現状を肯定し停滞してしまう。はるかに上達できるのに目指す気持ちを弱めてしまう。

テニススクールでのレッスンも「コーチに言われたからボレストをやる」のと「これはダブルスのこういう状況。味方前衛に決めてもらうには相手前衛からこういう状況を引き出したい。そのためにはこういうボールを打てる事が必要だといった自分なりに状況決め、意識付けを持って特定のショットの練習をする」のとでは半年後の成長の違いが恐ろしいほどです。

平行陣対雁行陣

仮に「相手を観察し、判断し、準備し、行動する」を実践できる方なら「あ、こういう意図でこのボールを打ったな」「こういう状況を作るためにあのボールを打ったんだな」といった事が見ていてもプレーやボールに意図が感じられるものですし、打ち合っていても「ボールを打つ」事以上に互いのやり取り、駆け引きが楽しいものです。

相手関係なく、自分がボールを打ったら終わり。相手が打ってきたらそのボールを見てから次の「ボールを打つ」がスタートみたいなテニスを続けているのは (テニスを楽しみたいと思うのなら) 少し勿体ないよねと思います。