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楽に飛ばす、操作性、回転。ラケットと前腕との角度の意味 (テニス)

薄い握りとラケットヘッドの位置

※私は専門家でもコーチでもありません。『ボールの打ち方』を説明する立場に無い。自分の上達のために色々考え、それをブログに書いているだけの者です。そもそも会ったことも自分のテニスを見せた事もない者の話を鵜呑みにするのは危険です。私は「自身のテニスを上達させるのは結局自分自身、コーチや周りの人達ではない」と考えています。ここで書く内容も単なる情報。理解も解釈も読む方にお任せするしかありませんし、同じ理解をしていただける自信もありません。まずは普段からテニスを見ているコーチにご相談される方が絶対に良いです。なにかしら試される場合でも怪我等なさらないようご注意ください。

自然とトップスピンがかかるストローク

テニスを始める際、最初に教わるのが打つだけで自然とトップスピンがかかるストロークだと思います。「後ろから前へ、ボールの下側から上側にラケットが抜けるように打てば自然と回転がかかる」といったものですね。

tennis forehandforehandforehand stroke
スイング軌道と回転

ラケットやストリングスの「ボールが飛ぶ、飛ばない」という話

30年近く前、テニスの道具は自然素材から化学素材製に変わり、製法も進化。それまでよりも打ち合うボール速度は速くなり、回転量も多くなりました。

ラケットやストリングスは一般に「ボールが飛ぶ、飛ばない」と表現されますが『ボールが飛び回転がかかるのは物理的な現象』であり、人が自分の身体を使って生み出せる以上のエネルギー量をボールに伝える事はできないです。(※)

※厳密には重量と速度を持って進むラケット、ボール両方にエネルギーは有り、ラケットを使って加えるエネルギー以外にも「ボールが持つエネルギーを反発さえる」事でもボールにエネルギーを加え飛ばす、回転をかける事はできます。ボレーで「ラケットを振るな」と言われるのはこのため。ただ、ボールが持つエネルギーを反発さえるより、ラケットを加速させてエネルギーを加える方が遥かにエネルギー量は多い。(速度を持つボールを振らないで飛ばすボレーと速度の無いボールを振って飛ばすサーブの差)

これはインパクト前後に時速100kmで振られているラケットから時速200kmのサーブは生まれないといった事ですし、バネ付き、電動アシスト等が付いた道具は公式な試合では使えないでしょう。

実際、「人が打てるサーブ速度の上限は時速160マイル (時速約257.5km)が限界」と言われているようですし、道具の進化で伝達ロスを減らして得られたボール速度、威力の向上が限界に来たからこそテニスの進化は「相手の時間を奪う」方向を選んだのだと考えます。(これはサッカー等でも同じ)

つまり「ボールが飛ぶ、飛ばない」とは「ボールにエネルギーを加える際の『伝達ロス』の大きさ」が関係している。ボールに当たった際、グニャッと “しなって” 力を吸収してしまうラケットでは「全くボールが飛ばない」のは想像が付くと思います。

しなるラケットとは?

打感を使い勝手に影響するので作りや構造で工夫さされますが、バボラ ピュアドライブを始めとする「飛ぶ」ラケットが「硬くしなりづらい、構造上、変形しづらく」作られているのは伝達ロスの抑制が関係するでしょう。

tennis racket

※今どきナチュラルガットを60ポンドとかで貼る人が居ないのは他に選択肢があるから。加えるエネルギー量が増せば「変形しづらい」ポリガットが威力を発揮するし、「ゆっくり振る」なら柔軟性の高いナチュラルガットの良さが出る。

ボールの飛び、回転に関係するのはラケットよりストリングス (ガット)

「ラケットでボールを飛ばす」等と言いますが、実際にボールと接触し、エネルギーを加えているのはラケットに張られたストリングス (ガット) ですね。ラケットには基本、中心軸に沿ってストリングスの縦糸が、縦糸と90度で交差する方向で横糸が張られており、且つ「縦糸の方が横糸よりも長い」です。

racket

インパクト前後において、ストリングスの横糸と “スイング方向” が一致した際、横糸と90度で交差する縦糸は最も可動しやすくなり、ボールの負荷でズレる

ガットがズレ偏って回転がかかる

初心者の頃教わるように 「後ろから前へ、ボールの下側から上側にラケットが抜けるように」ラケットを振っていくとストリングスの縦糸がボールの下側に偏ってかかる状況が生まれます。(ラケットやストリングスの違い・状態、スイング速度、軌道等によって違う)

ラケットのスイング軌道

よく聞く「ズレたガットが戻る際に回転がかかる」という話が正しいかとは別に、野球でボールを投げる際に「かける人差し指、中指の隙間が狭いほうが回転は増える」そうです。5本の指でわし掴みにして投げれば回転が少ないのも想像が付きます。

野球 ボールの握り方

これらが「ボールの一方に偏ってエネルギーをかけられる状態を作るとボールに多く回転がかけられる」と考える根拠になってくるでしょう。

因みに、ストリングスの横糸とスイング軌道の方向が一致しない状態 (例『✕』状態) だと縦糸も横糸も大きく可動できない。回転もかかりづらくなるでしょう。

回転がかかりにくい当たり方ラケット ヘッド側が下がったインパクト厚いグリップで打つリバースフォアハンド

また、長さが短い横糸が主としてボールにかかる角度、スイング方向でも「縦糸を使う」際ほどの回転は期待出来ないでしょう。(ボレーやスマッシュ等でボールを「抑える」のに使用。縦糸、横糸の特性を理解し、状況や用途で使い分ける。)

ラケットを縦に使う

どんなに技術があっても「わざわざ難しくなるやり方を基本の打ち方とする必要もない。理屈の面から当然起こる事象を当たり前に使えば良い」

個人的に「ストリングスの縦糸、横糸の役割を前提とせずにボールを打っているのは、とてつもなく勿体ない (プレーの質が段違いに変わるのに…)」と思っています。ボールを打つ際に「根拠を持っている」事はとても重要でしょう。

ラケットの握り方は『厚い、薄い』だけではない

テニスでは「ラケットを手に握って使う」という制約・ルールから身体を動かす『動作』とラケットの『握り方』との間に特有の関係性が出来ていると考えます。

tennis 写真AC

厚い、薄いではない握り方の区分

日本ではラケットの握り方を示す際、『厚い』『薄い』という表現を使いますが、それとは別に『手の平の中でグリップ部が当たる角度、前腕とラケット中心軸との角度』で握り方を考える方法があります。

ハンマーグリップ、フィンガーグリップ

『薄い』コンチネンタルグリップでも、下の2つの写真で『手の平の中でグリップ部が当たる角度、前腕 (肘から手首まで) とラケット中心軸との角度』が違っているのが分かるかと思います。

ラケット中心軸と前腕に角度がある握り方ラケット中心軸と前腕の角度がゆるい握り方
42-16667076Juan Monaco

握り方と力を加える動作との関係性

上で述べた『 前腕とラケット中心軸との角度 』と手首関節の状態 (曲げる、手首が伸びる) との関係性で生まれる状態の変化、運動効果への影響を考えてみましょう。(握り方だけの問題ではないよという事)

まず、手首の関節を強く『尺屈 (手を小指側に傾ける)』した状態は『自然』とは言えないです。(身体に負担がかかる「手首が伸びた」状態) 加えて「ラケット中心軸と前腕との角度がゆるい」握り方を用いると一層、前腕の延長線上にラケット中心軸が来るような状態になります。

ラケットを手に持つ

ラケットを振ろうとすると、腕とラケットが同じ「肩支点による円を描くような動き方」になってくるでしょうか。

腕を動かす

一方、手首が自然な状態 (前後左右・上下に傾けない、曲げない)、もしくは軽く 『橈屈 (手を親指側に傾ける)』した状態 「ラケット中心軸と前腕に角度が付く」握り方を用いるとハンマーを握るようなラケットと前腕との角度の付き方になります。

ラケットを手に持つ

肩支点の動きでラケット面の位置が立体的に”ズレた” 位置を移動していくのが分かります。

腕を動かす
volleyvolley

ポイントは「ハンマーを握るような」という部分で分かるように「手や腕ではなく、手から距離のある “ラケット面の位置で” 力を加える」という部分。これには『てこの原理』や物体に働く慣性 (運動の第一法則) も関係すると思います。

トンカチ・金づち・ハンマーracket balance

肩支点で腕を振り下ろすような動作で「釘を打つ」等は「当てづらい」「強く加速させづらい」のは想像が付きます。

腕の伸ばしてラケットを押し下げる

ラケットヘッドを下げるな、ラケットヘッドを立てろという話

ボレーで低いボールを打つ際に「ラケットヘッドを下げるな 、ラケットヘッドを立てろ 」と言わる事がありますが、こんな姿勢でボールは打てません。

tennis

手のひらで直接ボールを叩く、掴む訳ではなく、テニスではラケットという道具を使い、手から “50cm近く” 離れた先、ラケット面上でボールを捉え、エネルギーを加える必要があります。

フォハンド 打点

ラケットの中心軸が前腕の延長線上にある状態で肩支点の腕全体を動かす動きでラケットを操作しようとすれば “直径が長すぎて” 繊細な動きに向かないし、ボールの負荷を肩で支えるのは正直シンドいです。

ラケットを手に持つ腕を動かす

腕の関節は肩だけではないです。肘や手首、そして指。末端に近い関節を使うほど、細かく動かせるようになり、操作も楽になります。

手からラケット面までの長さもある。身体の仕組み上、ラケット中心軸と前腕との間に角度がある握り方の方が都合が良い場合が多くなるでしょう。

Forehand volley

手からラケット面までの長さによる軌道のズレは「肩支点で腕を動かしている」等と細部に目を向けるより「ラケット面をボール軌道に入れていく、飛んでくるボールの反対側からラケット面が当たるように移動させていく」と普通に考えれば良いと思います。

サーブ プロネーションインパクト 足、肩の前進、腕

※例えば「ゴミ箱に紙くずを放る」と思うだけで動作は構成される。身体がどう動いているか知ろうとするのは良いが「肩支点で上腕を動かして、次に肘を動かして」等と考える必要はない。

だからこその ラケットヘッドを下げるな 、ラケットヘッドを立てろなのでだと思います。(握り方 + 手首の状態 + 肩の位置対する腕の位置や状態)

Forehand volley

根拠や理屈を踏まえずに「ラケットヘッドを下げない」事だけ気をつけても意味がない。物理現象としてのボールの飛びや回転を生む条件を整えるためにやっている事なので知らないままでは条件は満たせない。「教わらないから知らないままで居る」のは残念ですね。

インパクト前後で『前腕とラケットに角度がある』意味

膝から肩位までのボールを打つ

膝から肩位までの高さのボールを打つ場合、グリップが『厚く』ても『薄く』ても、身体の構造と力を加える仕組み上、『前腕 (肘から手首まで) とラケット中心軸との角度』があるとストリングスの縦糸 (場合によっては横糸) を稼働させてボールを持ち上げやすく、或いは上から抑えやすくなると考えます。

ボールに回転をかける際はストリングスの『縦糸』を使いたい。垂直方向にボールを持ち上げる、回転をかけるなら『横糸』も地面と垂直方向に向く。縦糸は水平方向ですね。

手や腕を肩よりも前に出した状態、或いは手や腕を肩よりも下げた状態で、ラケット面の向きをボールを飛ばしたい方向に向ける、ストリングスの縦糸・横糸を適切な角度に向けるには「ラケット中心軸と前腕との角度」がポイントになってくると考えます。

グリップが厚い + ラケットと前腕に角度があるグリップが薄い + ラケットと前腕に角度がある
tennis forehandAlex Corretja hitting a low volley
ラケットのスイング軌道backhand volley

逆にラケットの中心軸と前腕に角度が無い状態でラケット面を前に向けようとする、回転をかけようとすれば「薄いグリップ」でこういう動作になるでしょうか。ちょっと無理があります、

腕とラケットの角度グリップ 薄い 持ち上げる

肩よりも高いボールを打つ際はラケットと前腕との角度を浅くする選択肢も

「ラケットが届く範囲はラケットを持つ腕の肩の位置に依存する」と考えるので「(肩の位置から) 遠いボールは自然とラケット中心軸と前腕が一直線に近い状態、手首が伸びたような状態に近づいていく」でしょう。

バック 片手 腕の動き身体が伸びきってのボレー

インパクト前後でラケットの中心軸、ストリングスの縦糸を地面と水平方向に、横糸とスイング方向を地面と垂直方向に取ろうとした場合、最初に「 膝から肩位までの高さのボールを打つ場合」手や腕を肩よりも前に出した状態、或いは手や腕を肩よりも下げた状態ならラケット中心軸と前腕に角度がある方が都合は良いのですが、

backhand

肩よりも高い打点でインパクト前後における同じラケット面の状態 (縦糸・横糸の向き、スイング方向・角度) を作ろうとした場合、ラケット中心軸と前腕の角度は浅くなってくる、前腕の延長線上にラケット中心軸がある状態に近づけた方が良いかと考えます。(普段「厚い」握りでも握りをやや「薄く」して肩支点でラケット面とボールを押させる感じ?)

高い打点のフォアハンド

先の「手と腕を下げた状態」の逆で下図のような位置、態勢で、腕を上げてラケット中心軸と前腕に角度を付けた使い方は出来ますが「頭の高さにラケット面を位置させるのが目的でボールにエネルギーを加える事は二の次」という印象。打ちづらそうだし、力も入りづらいでしょう。

普段からウエスタン超の厚いグリップで打つは咄嗟にこういう打ち方が出るかもしれませんね。ただ、厚いグリップで低いボールを打つのは難しいですが「肩よりも上に弾むのを待つより、肩よりも低い高さで打てる位置に移動して打つ」方が望ましいのでは?と思っています。

高い打点

慣性による直進性をうまく使った安定したスイングのために

ラケットには慣性の法則が働き、加速したラケットはその直進運動をし続けようとします。我々がそう誘導する事で「ラケットは勝手にボールとの接触位置に向けて進んでいく」ので、安定したインパクト、再現性の高いスイングにはこの特性を利用したいです。

forehand

特にスイングを伴うショットで、ラケットに働く慣性による直進性を損なうほど「強く握りしめて手や腕の操作で直接的にラケットをボールにぶつけようとする」のは望ましくないでしょうが、

手首 背屈
Photo by Dima Khudorozhkov on Unsplash

逆に「ラケット加速に任せて力を込めない、ぐらぐら、ゆるゆるな握り」でもスイングの再現性が下がるように思います。

左右の足の力、下半身の力、体重移動を使おうとすれば「身体 (ラケットを持つ肩の位置) は前進していく」でしょうが、腕の動きだけでラケットを振ろうとすれば肩を中心とした円軌道、身体の周りをラケットが回るような打ち方になりやすい

スイングする目的はラケットを加速させて「前に強くエネルギーを加える事」だと思うので、腕よりも大きなエネルギーを出せる、また「前に向けて」エネルギーを発生させやすい足や下半身の力を使わないのは勿体ないでしょう。

forehand strokeその場で打つ

足の力、下半身の力、体重移動によるラケットを持つ肩の位置の前進をインパクト、腕を振る段階にエネルギーとして連動、繋げていくためにも「ラケットの握り方」が意味を持ってくるのだと考えます。

とかく「脱力」が強調されますが「スイング開始からインパクト前後まで “ぐらぐら” な力加減より、ある程度しっかりと握れているほうが良い」と個人的には思うのです。(データを取ったりして具体的に握力何Kgで等示せませんが)

(足や下半身と連動した) 加速にもインパクト状態の再現性にも意味を持ちますからね。

バック 片手 試行

エネルギーを加える方法は何でも良いが目的に合うボール、状況を作る手段は決まってくる

ストロークとスマッシュ、サーブではボールを捉える高さの違いから、適した動作が異なる。腕を動かす角度 (横振り、縦振り) が異なる。ボレーは低い打点から高い打点まで打つ必要がある。

低い位置で打つボレー伸び切ったボレー

身体の構造とラケットという道具 (手から50cm近く離れたラケット面でエネルギーを加える) を使う都合上、ラケット中心軸と前腕に角度を付けた握り方を用いるようにした方がストリングスの縦糸・横糸を美味く使ってボールを飛ばす、回転をかける、飛びをコントロールする事がやりやすくなると考えますが、状況によってはその利便性を削っても「相手コーチに向けてボールを返球する」事を優先せざるを得ない事もあるといったことですかね。

「ボールが飛び回転がかかるのは物理的な現象」であり、エネルギーを加える方法は何でも良い。フォアでもバックでも良いし、同じボレーでも打ち方は色々出来る。

問題は「今の状況で自分はどういうボールを打つべきか」という点でしょうか。(相手ありきのテニスでは「次に相手にどういう返球をさせるか」が自分が打つボールを選択する大きな根拠)

「フォアハンドはこうやって打つものだ」という固定概念が邪魔をして柔軟な発想 (物理現象としてのこういうボールを飛ばすからこういう条件を整えないといけないな) が失われる方が自身のテニスの上達という目標から離れてしまいそうです。

ボールが飛び回転がかかる理屈と体の仕組みや動作との関係性を考える機会を持つ事はボールを打つ練習を沢山する以上に意味があるのだろうと思うのです。

YouTube動画

動画編集練習用のYouTube動画を追加しました。前回の記事で書いたものに近い内容になります。

テニスの上達のために『片手打ちバックハンドをどう始めるか?』を考えてみる