PR
スポンサーリンク
スポンサーリンク

スライスサーブ考察 [前編] – 縦回転で打つということ (テニス)

スライスサーブ軌道例

このブログはWordPressで構築していますがVer.5.0から標準エディタが「Gutenberg(グーテンベルグ 」というものに変わりました。慣れていくためにこのGutenbergの使用を始めています。以前と表記や文字表現等が違っている点、ご了承ください。

今回はスライスサーブについて考えます。といっても、ここ数回のブログ (サーブ関連) で書いた話を前提にしていますので同じような内容が並んでいます。適宜、読み飛ばしていただければと思います。

今回もサーブについてで、前編として「縦回転をかけたスライスサーブ」といったものを考えていきたいと思います。

  1. 最初から「自然とトップスピンがかかる打ち方」で教わるべきなんだろう
    1. 「積極的に回転をかけない」という意味の『フラットサーブ』を「入れる」のは無理
    2. 『自然とトップスピンがかかるストロークの打ち方』を何故サーブに適用しないのか?
  2. ボールの回転とストリングス (ガット) の縦糸・横糸
    1. ボールに回転がかかる理屈 (ストローク)
    2. オーバーヘッド系スイングで縦回転をかける難しさ
  3. 実質的に『横回転』では速度が上げられないのではないか?
    1. 「ボールが浮き上がる、曲がる」を起こすマグナス効果
    2. 横回転だと速度を上げると飛距離がコントロールしづらくなる?
  4. ボールの上を触るか、下を触るかという話
    1. 高い打点だと捉えやすいのは『ボールの下側』
    2. スライスサーブもボールの下側を捉えている事が多いのでは?
  5. ボールの質を決めるのは加えられるエネルギー量と加えられる方向性
    1. 伝達ロスが小さい厚い当たりが前提・基本となるのは当然
    2. インパクトの瞬間ではなく、コンマ数秒前の視覚情報でボールを打っている
    3. ラケットに働く慣性による直進性がボールを打つ事を助けている
    4. 道具がエネルギーを追加してくれる事はない
  6. 加えるエネルギーが小さいせいで飛距離に対する意識が高まらない?
  7. 縦方向に回転をかけてスライスサーブを打つ
    1. 『ボールの上側』を叩かないと斜めの回転にならない
    2. 一般的に言われる『スピンサーブの打ち方』は難しい
    3. 強いエネルギーを加えつつ、斜めの回転を加えた軌道イメージ
  8. 2021.01.23 更新

最初から「自然とトップスピンがかかる打ち方」で教わるべきなんだろう

テニスでは「サーブの基本はフラットサーブ。打ち方が身についてきたら次は比較的打ちやすいスライスサーブ。スピンサーブは難しいから簡単に打てるようにはならない」といった全体的な雰囲気、暗黙の了解みたいなものがありますね。

「積極的に回転をかけない」という意味の『フラットサーブ』を「入れる」のは無理

まず、何度か書いていますが「身長2mの方でも無回転のサーブを入れるのはほぼ不可能」です。

センターtoセンターの最短距離、ネットの一番低い所を通すとしてもネットの上10cm程度の空間を必ずボールが通過しないといけない計算になります。因みにボールの大きさは直径6.54~6.86cm。ネットとの隙間は1cmといった所です。

フラットサーブ 打点の高さ
サーブ 2m フラット 軌道例

空気抵抗や重量等の条件を考えないとしてもこのシビアさ。身長180cmの方が20cmジャンプした状態でこの精度でサーブが打てるの? という話です。

結果、我々が「積極的に回転をかけない」という意味で言う『フラットサーブ』は空気抵抗や重力により “偶然” 入っているだけと言って良い。山なりの緩いサーブならある程度「入れられる」でしょうが、サーブもまず求められるのは「相手に良いリターンをさせないこと」 (「エースを取ること」でも「ミスさせること」でもない) でしょうから加減しないと「入れられない」サーブが “妥当” とは言いづらいですね。

『自然とトップスピンがかかるストロークの打ち方』を何故サーブに適用しないのか?

我々は「打つだけで自然とトップスピンがかかる」打ち方でストロークを教わると思います。今どき「ストロークの基本はフラットだ」なんてコーチは居ません。(多分)

スイング軌道と回転

同じようにベースラインからボールを打ち、ネットを越し、相手コートの規定のライン内に着地させるショット。身長2mでも『無回転』のサーブを入れられないなら、初心者の時から「自然と回転 (※トップスピンと同じ順回転) がかかるサーブの打ち方」を教える、教わるべきなのだろうと思っています。

※30年近く前、一般のストロークに『トップスピン』が導入された際、サーブの打ち方も同様に変わるべきだったと考えています。使う頻度が高いフォアハンドストロークの変化に皆の注目が集まり過ぎたのでしょう。

トップスピンで打つストロークが打てるようになった後に「回転を減らして速度を上げていく」やり方で「フラット気味にストロークを打つ」という事は出来るでしょう。回転がかかる感覚が分かっているから回転量を減らす試行はできそうです。サーブも同様の事が言えると思っています。

逆にネット近くで打つ、完全に「上から下に叩きつける」スマッシュはこの場所でしか使えない打ち方という感じ。

tennis overhead

ベースラインから「ジャンプしつつ上から下にラケットを振る」なら、確率か速度かを犠牲にしないといけなさそうです。

腕の伸ばしてラケットを持ち上げる腕の伸ばしてラケットを押し下げる

ボールの回転とストリングス (ガット) の縦糸・横糸

「スライスサーブは、ボールの横・外側を打って横回転をかけるから、左に (右に) 曲がっていくんだ」という風に言われますね。(回転が分かりやすいように下図は野球のボールで例を作っています)

ライスサーブリターン

ボールに回転がかかる理屈 (ストローク)

上で「打つだけで自然とトップスピンがかかる」という例を上げましたので、まず、ストロークのスイングでトップスピンがかかる理屈を考えましょう。

ラケットにはストリングス (ガット)縦・横に張ってあり、ボールと接触するのは厳密にはラケットではなくこれらストリングスです。『ラケット面』と呼ぶ事もありますね。(縦横の角度が斜めになっているラケットもありますがここでは一般的な縦横のラケットを前提にします)

ストロークであれば、ストリングス (ガット) の縦糸がボールにかかり、横糸方向にラケット面が進んでいけばトップスピン・順回転がかかります。縦糸が地面と水平方向で横糸とラケットが垂直方向に進む時に「きれいな縦回転・トップスピン」のボールが打てる理屈です。(長い縦糸が最も機能する使い方)

ガットがズレ偏って回転がかかるスイング軌道と回転
federer forehand stroke

ストロークにおけるスライスショット (バックハンドスライス、フォアハンドスライス) も理屈は同じ。インパクト前後にラケットが進んでいく方向がストロークの横糸と一致する際、もっとも効果的に縦糸が稼働し、ボールに逆回転がかかります。打ち方や腕・身体の動かし方はインパクト前後にこの事象を成立させやすくする要素に過ぎませんから、『打つ形』や『腕の動かし方』等に気を取られていると「ボールが飛ぶ」という物理現象を起こす条件 (ストリングスとボールの接触の仕方) に目が向かない、思うような飛び方を得られないといった結果に繋がると思います。

federer volley

結果「バックハンドスライスは打てるけど方向や距離はまちまち」という方は少なくない気がします。

オーバーヘッド系スイングで縦回転をかける難しさ

因みに「スピンサーブが難しい」と言われる理由の一つは、純粋にオーバーヘッド系スイングを用いて「ボールに “縦回転 (順回転・トップスピン) を” かける」という事が理解しづらい という点が大きいと考えています。

オーバーヘッド系スイングでは (どういう打ち方をするかは別にして) ラケットヘッド側が “明確に上にある” 状態でのインパクトが我々のイメージの中にあると思います。そして、下図のような状態から縦回転をかけようとするなら「短い横糸を使う」しかありません。

サーブ インパクト例

大昔に「インパクトでヘッド側が “先” に出ているとナチュラルに縦回転がかかる」と教わった事がありますが、今は「野球のナックルやチェンジアップのように無回転に近いボールが空気抵抗で落下しているのでは? 上から抑える以上の効果は期待できないのでは?」と考えています。実際、無回転に近いサーブを打つとそういう『変な』落下の仕方を感じます。

サーブ、ヘッド側先行で回転がかかる

理屈の面から考えるとやはり「ストローク同様、長さがあり、大きく稼働する “縦糸” を使わないと『打つだけで回転がかかる』ようなサーブは実現できない」でしょう。

Federer Serve

ボールの上を触るか、下を触るかという話

「スライスサーブを打つにはボールの横 (外側)を打つ」と言うものの、身体の構造ラケットを使うという制限から「完全に真横を捉える」というのは結構難しいと思っています。

ボールを後ろから見た図
ボールの横を打つ

高い打点だと捉えやすいのは『ボールの下側』

ラケットを手に持つ、握るという事から高い打点でボールを打とうとすると我々がラケット面で触れやすいのは自然と『ボールの下側』になってきます。

身体が伸びきってのボレー

ラケット面で『ボールの上側』を触ろうとすれば、例えばこういう捉え方になりますね。

倒れ込みながら打つサーブ

ネットに近い位置で打つスマッシュ等ならともかく、前述したようにストリングスの縦糸を稼働させづらい事から「回転をかけよう」とする打ち方には向きませんよね。

スライスサーブもボールの下側を捉えている事が多いのでは?

腕を高く上げる、肩を高い位置まで持ってくるのはしんどいですし、実際の所、ボールの『斜め下側』をラケット面で撫でるようにしてスライスサーブを打っているケースは少なくないと考えています。

大まわりな軌道のスライスサーブ

よく「ラケット面でボールの外側を "ジョリジョリ"っと擦るようにして回転をかける (リンゴの皮むき)」スライスサーブの話が出ますが、このようなフォアハンドスライスの打ち方を応用にしたような動作になっているかもしれません。

Squash Shot

バックハンドスライスでもボールの外側を触る事で "横" に曲がっていく軌道がありますね。

バックハンド スライス

これと同じく、ボールの斜め下側を触って打つ事でボールの回転はエネルギーを加える方向から『横回転』と言うより、進行方向に対して回転軸が横向きにズレる『ジャイロ回転』寄りものになりそうです。

横回転ジャイロ回転
テニスボール 横回転サーブ ボールの回転 ジャイロ

結果、ボールの外側、斜め下を触って打つスライスサーブ「(下側を触る事で) 打ち出し直後に少し浮きあげる感じがあって、その後、(言い方が悪いですが) 「だらーっと」曲がっていく、バウンド後に前進力がだいぶ落ちてしまうような飛び方になる」印象です。

(スライスサーブをリターンする際にこういう軌道のイメージがないでしょうか?)

曲がるんだけど落下は重力や空気抵抗任せ。下手に速度をあげようとすればサービスボックスに収まらないだけでなく、コントールできず大きくオーバーしていってしまう。

実際そんな感じなのではないかと思っています。

我々は時速180kmのスライスサーブなんて打てませんし、室内カーペットコート等なら、相手に向かって進んでいく前進力より「曲がって、切れて、弾まない。2バウンド目に至るまでに周りの壁やネットに当たって返球できない」方が有効に感じたりします。

そして「少ない」と言われるサーブの練習時間以上にリターンの練習機会を持たないし、「リターンはストロークのコンパクト版」といった認識も多いですね。(打ち負けまいと大振り、強打する)


我々が得る『サーブポイント』の殆どは自分の「ナイスサーブ」ではなく、相手のリターン技術の未熟さが起こしているのかもしれません。相手がプロなら『今打てる最高のサーブ』を打っても簡単にリターンされるし、強く打てない甘くないボールが返ってくる。「相手のリターン技術が高かったら?」と考えるなら現状のサーブで満足して良いのかはかなり怪しくなります。

ボールの質を決めるのは加えられるエネルギー量と加えられる方向性

「ボールが飛び回転がかかるのは物理的な現象」ですから、我々が打つボールの "質" を決めるのは『1. ボールに加えられるエネルギー量』『2. エネルギーが加えられる方向性』だと考えます。

伝達ロスが小さい厚い当たりが前提・基本となるのは当然

「厚い当たり、薄い当たり」等を言われますが、ボールにエネルギーを加えるのは縦横に張られたストリングスであり、インパクト前後に打ち出し角度とスイング方向が大きくズレた『掠れた』当たり方より打ち出し角度とスイング方向が近い当たり方を用いる方が自分が望む結果 (どこにボールを飛ばしたいか) を得やすいです。

厚い当たり 薄い当たり飛ばしたい方向にまっすぐ進める

インパクトが『点』に近い当たり方は再現性が低くなるでしょう。

インパクトの瞬間ではなく、コンマ数秒前の視覚情報でボールを打っている

速い人で0.2~0.3秒と言われる反応速度しかない我々が0.003~0.005秒と言われるインパクトの瞬間を「認識してこれに操作を加える事はできない」です。

結果、インパクトのコンマ数秒前に視覚情報を元にインパクト時のラケット面を用意するしかなく、トッププロの多くが「インパクトの瞬間、ボールを見ていない。相手コートの情報を確認しつつボールを打っている」現状がこれを示していると考えます。

Angelique Kerber

※打つボールの速度によって「インパクトの瞬間までボールを見て打った方が良い」ケースはありますし、そもそもインパクト前後のボールの位置、そこまでの位置変化を認識できていない、要は「ボールをよく見ろ」と注意される状態はこれには当てはまりません。

ラケットに働く慣性による直進性がボールを打つ事を助けている

物体であるラケットには慣性の法則が働きます。速度と重量を持ち進む物体はその直進運動をし続けようとする。例えが何ですが「車は急に止まれない」「カーブでは速度を落とす」ですね。

加速させたラケットは「勝手に」前進していくので、前進させたい方向に向けエネルギーを加えてやればラケット (ラケット面) は勝手にボールに向かっていき、ボールを捉えた後もそのまま直進を続けようとすると考えます。

federer forehand stroke

この特性を利用せず「腕でラケットを振ってボールを打つ」とする事で再現性の低下、発生するエネルギー量が小さいといった問題点が起きます。左右の足が地面から得る反力、下半身、身体の本体の力をスイングに連動できない。それなのに「もっと強いボールを」と更にラケットを振り回そうとする訳です。

道具がエネルギーを追加してくれる事はない

原則、ラケットやストリングスが「我々が加える以上のエネルギーを追加してくれる」事はないです。バネ仕掛けでボールを飛ばすようなラケットはルール違反でしょう。

また、我々がボールに伝えられるのは発生させたエネルギーのごく一部であり、様々な『エネルギーの伝達ロス』を生みながら我々はボールを打っています。(当たり損ね、掠れた当たり、ラケットやストリングスのしなる・歪む・たわむもエネルギーの伝達ロスだと考えています)

我々が加えられるエネルギー量には限界がありますし、ラケットやストリングスが伝えられる、ボールが耐えられるエネルギー量にも限界があります。結果、サーブ速度は時速260km辺りが限界だと言われています。

また『150平方インチの超デカラケ』といったものが製品化されないのは大きさによる操作性の問題もありますが「120平方インチのラケットより150平方インチのラケットの方が飛ぶ」という明確な違いが生まれないからでしょう。プロモーション用の巨大ラケットでボールを打つ事を考えれば分かりますね。ラケット速度を上げられないなら、原則『伝達ロスの違い』でしか飛びの違いは生まれない。伝達ロスを増やして「飛ばなくする」のは簡単ですが限界に近い「伝達ロスの小ささ」を更に小さくして飛ぶようにする事は難しい

一般に言うラケットの「飛ぶ・飛ばない」どれだけ伝達ロスを小さくボールにエネルギーを伝えられるかの違いだと考えています。

※速度と回転の両方を上げたかったら「ボールに加えるエネルギー量を増やす事」です。その上で「加えるエネルギー量の内、速度をあげようとすれば回転は減り、回転を増やそうとすれば速度は落ちる」理屈です。(加えて「回転をかけよう」と掠れた当たりを使い伝達ロスが増えるのは勿体ない)

加えるエネルギーが小さいせいで飛距離に対する意識が高まらない?

ボールの下側を触って打つスライスサーブの話に戻すと、速度を上げるには、ボールを飛ばしたい方向である『前』方向に加えるエネルギー量を増やす必要があるのですが、ストロークにおける効果で分かるように「順回転・トップスピンをかけて打たないボールは強いエネルギーを加えると飛距離のコントロールがしづらい」です。

federer forehand strokeストロークをフカしてしまう

積極的に回転をかけないという意味で使う『フラットサーブ』の例からも垂直方向の回転が無い、小さいボールは、結局「加減をして入れる」必要が出てきます。また、スライスストロークのようにボールの下側を触る打ち方、腕の動きで回転をかけるような打ち方だと「速度を上げる」という事自体が難しい

「回転はかかるし、『スライスサーブ』も打てている。相手にも通用している」という状況。ボールの下側を捉える打ち方、身体の仕組み、使い方から「そのままだとラケット速度が上げられない。今のラケット速度でサーブを打つしかない」という現実。結果、そこから「速度を上げる」というイメージが持てないままで居るかもしれないと思います。

スライスサーブ リターン

縦方向に回転をかけてスライスサーブを打つ

下図のような斜めの回転がかかったサーブを打つとします。

テニスボール 斜め回転

『ボールの上側』を叩かないと斜めの回転にならない

サーブで上図のような斜めの回転をかけるには『ボールの斜め上側』を打つ、エネルギーを加える必要があります。

ボールを後ろから見た図
ボールの斜め上を打つ

一般的に言われる『スピンサーブの打ち方』は難しい

スピンサーブは「ボールの下側から斜め上に向けて当てて縦回転をかける」という話がありますが、

  • 薄い当たりになるから再現性の問題で速度が上げづらいのでは? (厚く当てるとボールは真上に飛んでいってしまう)
  • 薄い当たりになるからエネルギーのロスが大きいのでは?
  • 速度のある、前進力のあるサーブが打ちづらいのでは? (ボールが弾む高さは回転より軌道の高さが関係する)

といった疑問があります。(そもそも当たるのは下側なの? 真後ろを薄く擦り上げるの?)

ボールを後ろから見た図ボールを横から見た図
斜め上に振っていく斜め上に振っていく

実際、教わる『スピンサーブの打ち方』で打てていないのならコツ等を考えるより「同じような縦方向の回転が加わるなら打ち方は同じでなくても良い」と考えるのもアリだと思っています。(それはスピンサーブではない? 同じような回転なのに?)

また、今回は「縦回転をかけたスライスサーブ」を考えています。縦回転を加える理由としては「速度を上げる事」「明確に飛距離をコントロールする事」ですから前に向けて強くボールを飛ばす、エネルギーを加える事から離れるこの打ち方、考え方は参考にしづらいのです。

肩上まで弾むサーブ

強いエネルギーを加えつつ、斜めの回転を加えた軌道イメージ

『斜め』の回転をかけても、実際には飛んでいる間に重力や空気抵抗による落下が発生して回転軸が『縦回転』に近づいてくるかと思いますし、ボールの外側にエネルギーを加えることで先に述べた『ジャイロ回転』的な要素も加わるでしょう。

斜め回転ジャイロ回転
テニスボール 斜め→縦回転サーブ ボールの回転 ジャイロ

その上で野球のピッチャーが投げる変化球の曲がり方を参考にすれば、下図のように「一旦外側で出て戻ってくる」ような軌道イメージになってくると思います。

スライスサーブ軌道例

※実際にこれほど大きな変化をするサーブが打てるという訳ではないです。十分な前向きのエネルギーがあり、回転の特性から考えるとこういう軌道になるのでは? と思って下さい。

野球の球種で言えば「横に曲がりながら落ちるスライダー」ではなく「縦に曲がるスライダー (縦スラ)」という感じでしょうか。

baseball pitcher

ピッチャーは「ボールが曲げれば良い」という訳ではなく、変化球でもインコース、アウトコースと正確に投げ分けないといけません。18.44m先にある38.11cmホームベースに向けて (回転にエネルギーを割くものの) 基本『前向き』に強くボールにエネルギーを加える必要があります。

先に述べた「ボールの下側を打つスライスサーブ」との違いは「前に向けて強いエネルギーを加える事 (結果的に速度が上げる)、その上で明確に飛距離をコントロールする意識を持って打つ事」です。ボールの下側を打つ懸念点は速度を上げると飛距離をコントロールしづらくなる。そしてそもそも速度が出せるような身体の使い方を用いてない事ですからね。

大まわりな軌道のスライスサーブSquash Shot

斜めの回転を加えるために「ボールの上側を触れる」打ち方をする。それは「ラケット速度が上げられる。前に向けて大きなエネルギーを加えられる身体の使い方によって実現される。ラケット速度の速さを利用してボール速度と縦回転による飛距離コントロール、相手のリターンしづらさ等を手に入れよう」という事です。

上の軌道イメージの例からも伝わればと思いますが「バウント後に跳ねる」と言われるスピンサーブとの違いは地面と設置する角度だけ。それが「上に弾む」か「横に滑るか」の違いを生む (入射角が浅いので力が横に逃げて上に弾まない)回転軸、回転方向は殆ど変わらないし、ここから少しだけ回転軸を垂直方向 (縦方向) に変えれば、イメージする打ち方とは違っても『スピンサーブ』と言っても良い位になると思っています。

【みんラボ】恐るべしジェームス選手

※スライスサーブの定義、スピンサーブの定義は私にはよく分かりませんから「違う」と言われても反論はできません。

今回触れなかった「ボールの上側を打つスライスサーブはどういう打ち方になるか」といった面を次回の後編で考えていきたいと思います。

2021.01.23 更新

後編を追加しました。