「ラケットを振る」という話を考える (テニス)

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tennis forehandテニス

「ラケットを振る」という表現

テニス経験の無い方、これからテニスを始めようと思われている方が思うテニスへの印象は、

「ラケットを振ってボールを打つ」

といったものかもしれません。

Gasquet

そしてよく耳にする表現として、強いボール、威力のあるボールを打つためには『ラケットを速く振らないと』ダメだみたいなものがあります。

最近、こういう表現に触れる機会があるとそういう認識、伝え方がある事で、我々が「安定してボールが打てない、威力のあるボールを安定的に打てない」という事が常態化している、実力を出せていない状態を「そういうものだ」と思ってしまっているのかもしれないと考えるようになりました。

ちょっと分かりづらいですよね。この点について書いてみようと思います。

ボールが飛ぶ回転がかかるのは物理的な現象

私は「ボールが飛び回転がかかるのは物理的な現象でしかない」と思っています。

『1. ボールに加わるエネルギー量』『2. エネルギーが伝わる方向と角度』、そしてそれらの条件を整えるための『3.ラケットとボールの当たり方』が打つボールの質を決めると思っています。

飛ばしたい方向にまっすぐ進める スイング軌道と回転

できるだけ重いラケットをできるだけ加速させ、うまくボールを捉える

ボールが飛び回転がかかる際に利用されるエネルギーは、大まかには

  • 1. 飛んでくるボールが持つエネルギーを反発させる
  • 2. 自ら加速させたラケットの持つエネルギーをボールに伝える

“2つ” があると考えており、それぞれのエネルギー量は『1/2 x 物体重量 x 物体速度 ^2 (2乗)』で表せます。

テニス ボールを飛ばすエネルギー

つまり、

  • 相手ボールが速い、バウンド等で速度が落ちない段階で打つ
  • できるだけ重いラケットをインパクト前後でできるだけ加速させた状態で打つ
  • ボールの持つエネルギー、ラケットで加えるエネルギーの伝達ロスが最適化する捉え方

等が端的にはボールの威力を上げる理屈だろうと考えています。

加えるなら

  • ラケットやストリングスのしなる、歪む、たわむは単純に言えば「ボールの持つエネルギーを反発させる、ラケットで加えるエネルギーの伝達ロス」を生む

という認識も持っていたいです。

ラケットの “飛び” の違いはエネルギーの伝達ロスでは?

「ラケットがしなり、一度ボールを掴んでから飛ばす」といった表現がありますが、個人的には「ラケットやストリングスはボールが離れて負荷がなくなるまで、しなりっぱなし、ゆがみっぱなし、たわみっぱなし」と考える方が妥当ではないかと考えています。(ゼロか100かとは思いませんが)

Tennis racket/ball impact under 45 degree angle in super-slow.

よく例にあがるトランポリンのような効果「ある程度時間をかけて長く押し込み、同じ時間をかけて復元する。波の往復のような時間と長さが必要」だと考えます。トランポリンの上に立った状態から瞬間的に強くジャンプしようとしても凹むばかりでうまく飛び上がれないのは経験があるでしょう。砂浜で走りづらいのと同様、足で地面を踏む “反力” を使うには地面が相応の硬さがないと無理です。

Trampoline・トランポリン

テニスでの使用に向きませんが『ボールに当たってグニャと大きく変形する』ラケットがあったらまっすぐ飛ばしづらいし、エネルギーの伝達ロスばかりで満足に飛ばせないのは日常生活での経験等からなんとなく想像が付きます。

ラケットのしなり、しなる

「フレームの薄いラケットは飛ばない」「フレームの厚いラケットは飛ぶ」という実感がある訳ですがフレームの厚いラケットに「バネのような飛びを足す仕掛け」がある訳ではないですね。

つまり、「飛ばない・飛ぶ」と言われるのは、エネルギーの伝達ロスが大きいか、小さいかの違いと考える方が自然な気がします。

同時に「面が大きい方が飛ぶ」と言われますが、95インチと100インチは周辺部で1cmも違いません (ラケット面は完全な円ではないし、形状も製品毎に違いますが)

個人的にですが、周辺部で僅かなサイズ違いしかないラケットを指して「100インチは飛ぶけど95インチは飛ばない」という認識自体に違和感を受けるのです。

これも、メーカーが製品毎の特徴づけのため「95インチのラケットはフレームを薄め、構造的にもエネルギーの伝達ロスが大きい設計に “敢えて” している。100インチのラケとはフレームを厚め、構造的にも変形しづらい設計にしている」と考える方がしっくりきます。

racket pro staff

数は少ないですが、ラケット面100インチ超えなのにフレーム厚が最薄部で17.5mmというプリンスのファントムグラファイト等もあります。当然、ピュアドライブ等に比べれば「飛ばない」ですね。

ラケット重量とバランス

280gと300gのラケットで同じ速度・同じ当たり方とするなら「使える総エネルギー量は後者の方が重量差である7%分多い」と考えられます。同時に、速度は “2乗” で影響するので、インパクト前後のラケット速度が時速120kmと時速130kmで同じラケット重量・同じ当たり方とするなら「使える総エネルギー量は後者の方が速度差2乗である17%分多い」となります。(条件値によって違うので7%、17%という数字自体に意味はないです。また「7%、17%ボールの威力が上がる」のではありません)

総エネルギー量を増やしても当たり方、道具の違いによって大小の伝達ロスが生まれます。ボールに当たった瞬間、ラケットが急減速するなんて事が無いですし、使われるエネルギー量はラケットが持つ全体のごく一部でしかないのでしょう。

ただ「重量を上げるより速度を増す方が意味はある」という事は言えると思います。

また、同時に「ラケットを10%軽くしてラケット速度を上げる」という事に大した意味はないと考えます。「ラケットに1円硬貨を10枚 (10g) 貼り付けたら “途端に” 振れなくなってしまう」なんて事は起きないですね。

1円硬貨20枚 = 20g

5g、10gという数字に影響されすぎかもしれません。

ストリングス (ガット) にも細い、太いがありますが、1.24mmと1.3mのストリングでは “5%” 体積が違います。1本のラケットに使うストリングの長さは12mとか (1回分のパッケージに入っている長さがそれ位らしい)。5%体積が違えば重さもそれなりに違うでしょう。

また、多くの方が使う『振動止め』も1~2g位あるでしょうか。

当然、ラケットにも製造過程における個体差があり、スペック値300gのラケットでも295g位から305g位までの差があるのは普通です。

また、ラケットにはバランスがあり、同じ300gでも重量バランスが先にある『トップヘビー』な方がラケットは加速させづらいです。

メーカーはラケット毎の極端な体感の違いを無くすため、重いラケットはバランスをグリップ寄り(トップライト寄り)に、軽いラケットはバランスを先端寄り(トップヘビー寄り)に設計しています。(320gでバランス340mmなんてラケットがあったら加速させるのが大変ですね。市販ラケットにおもりを貼る方が居ますがそういう事になるのかもしれません)

同時にラケットの重量バランスが先端寄りにある『トップヘビー気味』なら同じ300gでもボールに伝えられるエネルギーに影響すると考えます。

(手に300gの重りを持ち、その先に70cmの棒が刺さっていると考えた場合「棒の方で打ってもボールは飛ばない」のは想像が付きますね。金づちで釘が打てるのも「エネルギーを加える位置に重量が寄っている」でしょう)

トンカチ・金づち・ハンマー

重さと加速は物体の持つ総エネルギーに関係しますが、同時に「加速させた際に物体がその直進運動をし続けようとする慣性の法則」にも関係します。

慣性の法則 ラケット 振り子

(速度が遅い状態よりも速度が速い状態の方が直進性は増し、軌道の安定が高まる。ただ、”力んで” 加速させても慣性の法則による直進性を損なう体の動きを生み、直進性は阻害され、速度自体も落ちてしまいかねない)

ラケット構造やバランスは「振り抜き」と言われる感覚にも関係するでしょう。

振り抜きの良さというのは「ラケットを加速させやすく感じる」という事も含まれるでしょうから、5g、10gの違いを気にして「このラケットは使えない」と言うよりも自分が使っている (スペックではなく道具への “慣れ”) ラケットを基準にバランスや振った感覚に違和感の小さいものが向いているのかもしれません。

打ち方をマネするという手法

初心者のように「どうやってボールを飛ばせばよいのか分からない。イメージが沸かない」段階の方向けにあるのが『フォアハンドストロークの打ち方』といった説明や手順だと考えます。

 

見本を示し、そのマネをさせるというのは、複雑な体の動作、動作の組み合わせを細かく理解しなくても、ボールを打つという行為を実行しやすくするひとつの方法でしょう。

ただ、分かると思いますが「ナダル選手の打ち方をマネしてもナダル選手のようなボールが打てる訳ではない」です。

nadal

似た例で言えば「イチローさんの打ち方をマネすればヒットが打てる訳ではない」ですね。

baseball

テニスでは、打つボール、手に持つラケットの重量は “固定” です。ゴルフのように打つ度に変える事はできません。そして相手の打つボール速度、インパクト前後までに自分が加速させたラケットの速度が、自分がボールを飛ばせる、回転にかけるのに使える “総エネルギー量” を決めます。

そして『ボールとラケットの当たり方』がボールに加わるエネルギー量とエネルギーの伝わり方を決める。つまり『ボールの質』を決める訳です。(これには伝達ロスの内容が関係するので『当たり方』以外の道具の影響もあります。分かると思いますが伝達ロスをゼロにする事はできませんから望む結果に繋がりやすい状況・条件作りを意識したいです)

「ボールが飛び、回転がかかるのは物理的な現象である」と考えるなら、この辺りの認識が曖昧なままボールを打っていても安定しつつ威力のあるボール、自分が打ちたいボールを思うように打つといった事は難しいのではないかと思うのです。

他スポーツ同様、テニスも『確率のスポーツ』なので、2回に1回しか成功しない、成功率50%のショットを使うなら「成功率51%以上の “別の” 選択肢を使う (持っていないなら使えるようになる)」「練習してそのショットの成功率を “51%以上に” 上げる」「その成功率50%のショットを “51%以上の確率で成功させられる” 状況を作ってから使う」等が必要です。

また、テニスは『相手ありきのスポーツ』で、ゴルフ、ボーリング、ダーツのように「自分が打ったら結果を待つだけ」とは行きません。相手と向き合い、どう駆け引きするかまでを含めてテニス。球出しのボールを打つ感覚で「打ったら終わり。返ってきた相手のボールを見てから考える」では試合やゲームになりませんよね。

仮に「ナダル選手のようなボールを打ちたい」のなら、ボールの速度、インパクト前後のラケット速度、ボールとラケットの接触の仕方を含めどう身体の機能や仕組みを使えばよいのか考えたいです。『打ち方をマネする事』はそのとっかかりでしかないと考えます。(単純に言えば「時速200kmのサーブが打ちたいのにプロの『マネ』しても時速100kmしか出せない」ようではどうしようもないのです)

tennis nadal forehand stroke

「それが分からないから “マネ” しているんだ」と言われるかもしれませんが「自分で考えるのがメンドくさいから打ち方をマネする事で手間を省こうとしている」「コツさえ掴めば今のままでも、もっとボールの威力が上がるはずだ」みたいな意識が見え隠れする気もします。

苦労したから上達する、たくさんボールを打ったから上達するとは思いませんが「テニスに対する理解を深めようとする。疑問にも思い、考え、調べ、実行し、また考える」といった改善に向けた取り組み、サイクルが習慣付けられていないならまともな上達は難しいと思います。

飛んでいったボールに影響を与える事はできない

テニスに関する一つの真理と言えるのが、ボールが飛び始め、ラケットから離れた後にいくらラケットを動かしも、ラケット・ストリングスはボールに “何の影響も” 与える事はできないといった事だと思います。

volley

※「大事なのはインパクトだけでフォロースルーとかどうでも良い」等と言いたい訳ではないです。そういう “決めつけ” をされた事があります。まずは最後まで話を聞いて理解してから考えていただければと思います。

よく、ボールが飛んでいった後のラケット操作で「なんとかしよう」「こういう風に飛ばしたい」という意識が出る、見える方が居られますよね。

テニス フォハンド

気持ちはよく分かりますし、そういう意識も必要だとは思います。

ゴミ箱にゴミを放って入れようとする際、飛んでいくゴミが描く放物線とゴミ箱に入るイメージを持つ事で特別、身体の動かし方等を考えなくても自然と動作は最適化されます。

テニスも同じで教わる『ボールの打ち方』だけが大事なのではなく、毎回「ここにこういうボールを打つ」という具体的なイメージを持ちつつボールを打つ事が大事なのだと思います。多少の想定違い、状況の違いがあってもイメージが動作を最適化していきます。

逆に「なんとなく相手の居る方向に打つ」「とにかく相手に向かって強く打つ」といった意識でボールを打つと動作の最適化が起きないでしょう。コースを狙わず、とにかくキャッチャーに向けて強く投げようとする『ノーコンなピッチャー』みたいです。

サーブ等は狙う位置を直接的に目視できないので見てはいないものの「あのコースにこういう軌道で飛ばす」イメージを持っている事が大事でしょう。

ボールに影響を与えられるのはインパクトの時間帯だけ

ボールとラケットが接触している『インパクト』は0.003~0.005秒と言われます。これに対し、人の反応速度は早い方で0.2~0.3秒と聞きます。これらの事だけでも「インパクトの瞬間を目で認識し、これに操作を加える事は事実上不可能」だろうという事が言えます。

人が飛んでくるボールの位置変化を把握する手段はほぼ両目からの『視覚情報』です。(音もありますが惑わされやすいですね)

ボールの位置変化はタイミングや打点に影響しますから、位置変化を把握する必要があるのにボールをあまり “見られていない” 方向けに「ボールを良く見ろ」というアドバイスがされます。「フェデラー選手はインパクトの瞬間までボールを見ているぞ」という例も聞きますね。

でも、インパクトの瞬間を人が把握し、これに対して反応による操作を加える事が困難である以上、我々は、インパクトの “コンマ数秒前” までのボールの位置変化の情報を元に、コンマ数秒後に起きるインパクトのタイミングに合わせるようラケットを前進させていると考える方がしっくりきます。

「プロ選手の多くは、インパクトの瞬間、ボールを見ていない」という事実はこれを指しているのでしょう。

Kerber tennis forehand

速いボールは直進性が高く変化が小さいので、インパクト直前の視覚情報からの誤差が小さいから「ボールを直視するより相手の状況、相手コートの状況を把握する方がメリットが大きいといった事でしょう。

※その人が持つ技術の差、ボールの位置変化を把握できていない方向けですから「ボールを良く見ろ」というアドバイスが間違いという事ではありません。ただ、同時にこの理屈も情報として伝え、理解・把握しておいた方が良いと思います。

打つ状況、ショットの違いによっても違う。時間経過毎の変化率が分かりづらい『遅いボール、速度よりも変化量が目立つボール』はしっかり見て打つ方が良いと考えます

tennis volley Edberg

速度のあるボールを打つ感覚で遅いボールを打つとタイミングが合わずミスショットになったりするのはこのためかもしれません。まさに「ボールを良く見ろ」ですね。

飛んでいったボールに影響は与えられないが、望む結果を得るために準備し、行動する事で望む結果を得られる

「ボールが飛び始め、ラケットから離れた後にいくらラケットを動かしも、ラケット・ストリングスはボールに “何の影響も” 与える事は出来ない」と書きました。また「インパクトの瞬間を把握して反応としてこれに操作を加える事はできない」とも書きました。でも、打った後の結果は変えられなくても『これから起きる未来』は自分で決められるのです。

※人生相談みたいな書き方ですいません。

「ボールが飛び回転がかかるのは物理的な現象である」と考えており、ボールの質を決めるのは『1. ボールに加わるエネルギー量』『2. エネルギーが伝わる方向と角度』、そしてそれらの条件を整えるための『3.ラケットとボールの当たり方』があるだろうと書きました。

分かると思いますが「インパクト面が “上” を向いているのにボールは “真下” に飛んでいく」なんて事は起きません。

真上にボールを突く動き

ラケット・ストリングスから離れて飛んでいってしまったボールに影響を与える事はできませんが「インパクト前後までの準備、行動がどういうボールが飛んでいくかを決めている」と思っています。

自分が望む結果としての『ボールの質、ボールがどう飛び、どう着地し、どうバウンドするか』を決めるのが “ボールを打つための準備”であり、“ボールを打つまでの時間 (加速段階)” である という事です。

tennis

「この場面でこういうボールを打ちたい」と思うなら、望む結果を生みやすくするインパクト前後のラケットの状態、ボールとの接し方を作れるような準備、行動をすれば良いだけです。

「ボールが当たった所から」という意識

物理的な現象としてのボールの飛び、回転を得るためにインパクト前後までに準備し行動していく。

それに対して我々の多くが無意識に (それが当たり前だと) 重視しているのが、

  • インパクトの瞬間 (“打点” に対する強いイメージ)

であり、

  • ボールを捉えた所からスイングしていくイメージ

ではないかと思っています。

tennis forehand

スイングは人によって違うので一概に言えるものではないですが「ボールが当たった所からラケットをしっかり振ってボールを飛ばす」みたいなイメージの事です。

その場で腕を動かして打つ

繰り返しますが

「ボールが飛び始め、ラケットから離れた後にいくらラケットを動かしも、ラケット・ストリングスはボールに “何の影響も” 与える事は出来ない」

ですし、

「インパクトの瞬間を把握して反応としてこれに操作を加える事はできない」

のにです。

ラケットをボールに接近させてから振るというイメージはアリだが

唐突ですが針の穴に糸を通す際に1cmの所からと50cmの所からでは圧倒的に後者の方が大変です。

テニスなら「大きなスイングをするほど、ボールとラケットが接触する位置やタイミングを合わせるのが難しくなる」と考えられます。

(リターンをする際、普段のストロークのスイングで打とうとするとタイミングが合わない、うまく捉えられない事がありますね)

重量と速度を持ったラケットは「慣性の法則によりその直進運動をし続けようとする」性質を持ちます。

手に持っているラケットが勝手に『時速300km』で進んでいくとしましょう。その前進するラケットに対し、我々が「こういう風に動かそう」と操作を加える事は恐らく “無理” です。手は引っ張られるだけでラケットの勢いに対して何もできないでしょう。

ラケットとロケット

「車は急に止まれない」という交通安全標語がありますが、我々の日常生活でも身近な『慣性の法則』というのはそういうものです。残りが少なくなったマヨネーズ容器を振って入り口付近に集めるのも、手についた水滴を腕を振って払うのも慣性の法則を利用した動作です。我々はその動作の意味を理解していますね。テニスだけ特別なはずはないです。

慣性の法則

ラケットのスイングで言えば、ラケットは慣性の法則で停止位置に留まろうとするので、手に引かれて進み始めるグリップ側に対し、ヘッド側は軌道の真後ろから追従し、途中で手やグリップを追い越して、更に進んでいこうとする (慣性の法則による直進性)と考えます。

ラケット慣性の法則 

だから、前進してくるボール、ボールの位置変化に対し、タイミングや位置をあわせる、打点をうまく取れない方へのアドバイスとして、先行するグリップの位置をボールに近づけてから、遅れて加速し前進してきたヘッド側(ラケット面側) がボールに近い位置でグリップ側を追い越すといったイメージを持たせるのはアリだと思います。

【みんラボ】駒田研究員の”インパクトを正確にするためのヒントPart3”

ただ、問題になるのが『ラケットの加速』の部分です。

この動画でも「腕を打点に近づけてから振る」という話をされていますが「ラケット加速は両足や体を使って行う (腕ではない)」と言われています。

我々が無意識に (それが当たり前だと) 重視しているのが、

  • インパクトの瞬間 (“打点” に対する強いイメージ)

であり、

  • ボールを捉えた所からスイングしていくイメージ

だという話をしました。

tennis forehand

だから、

ボールの質を決めるのがインパクト前後のラケット速度と当たり方であり、その内容を決めるのが『加速を始めた所からインパクト前後まで』なのであるのに、

ボールとラケットが接触した打点の位置からスイングが始まる。打点の位置にちょうどタイミングをあわせて力を発揮しようとする

スイングを見せたりします。

ボールとラケットを接近させる

その際、『スイングを始めた所からインパクト前後まで』の事は意識から外れてしまっている感じです。

どうしても「打点、打点」と思っていますから重視してしまうのは『インパクトの瞬間』であり『ボールを捉えた所からスイングが始まるようなイメージ』になるのでしょう。

昔から「グリップが厚いほどボールの威力が上がる」といった雰囲気があり、極めて厚いグリップを使うなら打点の位置も双方に身体の前側の位置になります。(グリップが薄いと打点は身体に近づく)

結果、テイクバックの位置から手や腕の操作で “なんとなく” 打点までラケットを動かしていって、ボールとラケットが接触する瞬間、打点の位置からラケットをしっかり振ってボールを飛ばすみたいなイメージのスイングになったりしている気がします

打点の位置から身体の前側で横に振るワイパースイング等ですね。回転はかかるでしょうが「ボールを “前” に飛ばすためには “前” に向けてエネルギーを加える事が大事」でしょう。(ボールに加わるエネルギー量と加わる方向・角度がボールの質を決めます)

 wiper swing

打点は空中の一点ではない

上記の「打点の位置からラケットを振る」というイメージを持ちやすいのは打点に対する認識 (刷り込み)も関係していると考えます。

テニスを始める際、「グリップはこの位で握ってください。そして打点の位置はこの辺りですよ」と空中の一点を『打点』として認識させられます。

そして事ある毎に「打点が、打点が」という話をする訳です。

tennis forehand

でも、ボールとラケットが接触するインパクトを0.004秒 (0.003~0.005秒を言われます)、インパクト前後のラケット速度を時速120km (プロのストロークは速くて時速150km位。サーブはボールにエネルギーがないから時速200kmのサーブを打つならラケットも200km出ていないと厳しい) とすると、「ボールとラケットは、飛び出す方向・角度に向けて、触れて潰れて復元しつつ離れるまで “約13cm” ほど “接触状態” で前進している」計算になります。

テニス 打点は空中の一点ではない

これを踏まえると『打点は空中の一点』とは考えづらいでしょう。

142mph Serve – Racquet hits the ball 6000fps Super slow motion

「インパクトの瞬間を把握して反応としてこれに操作を加える事はできない」という事を踏まえると、打点は空中の一点と考えるより、13cm + α (インパクト前とインパクト後を含めたある程度の幅) の幅でボールを捉えていると認識したいです。

「一点で打つ」と思っているのと「10cm強の幅で打っている」と思っているのでは実行の仕方も全然違ってくるでしょう。野球のバッティングでも言われる「点と線の違い」「点ではなく面で打つ」にも通じます。

baseball

どこがインパクト (空中の一点という認識の “打点”) かと決めなくても、その前後を含めた30~40cm位は飛ばしたい方向、角度にラケット面が向き続けるようなスイング、インパクト前後のラケット面の状態を作るのが安定した結果を得るためには望ましいと思います。

下図左のようなスイングの中で毎回同じようにボールを飛ばすのは難しいでしょう。

円軌道のスイング  まっすぐ進むスイング

ラケットを “振る” という話

根拠的な説明が長くなってしまいました。

最初に述べた強いボール、威力のあるボールを打つためには、単純に言えば「ラケットを速く振らないとダメ」といった話ですが、私が気になるのは「速く」ではなく「振る」という部分です。

「振る」というのは当然「手や腕で」という意識が含まれている。つまり、「手や腕を “振って” ラケットを加速させる、ボールを捉え飛ばす」という事なると思うからです。

 wiper swing

改めてボールが飛び回転がかかるのは物理的な現象でしかない

改めて、私は「ボールが飛び回転がかかるのは物理的な現象でしかない」と思っています。

『1. ボールに加わるエネルギー量』『2. エネルギーが伝わる方向と角度』、そしてそれらの条件を整えるための『3.ラケットとボールの当たり方』が打つボールの質を決めると考えます。

ボールが飛び回転がかかる際に利用されるエネルギーは、大まかには「1. 飛んでくるボールが持つエネルギーを反発させる」「2. 自ら加速させたラケットの持つエネルギーをボールに伝える」の2つと考えており、それぞれのエネルギー量は『1/2 x 物体重量 x 物体速度 ^2 (2乗)』で表せます。

「ラケットを振る」という点で言うなら、2の自ら加速させたラケットが持つエネルギーをボールに伝えるという部分が大きくなるでしょうね。(1のボールの持つエネルギーを反発させるなら「ボールを捉える」等の方がぴったりきます)

でも、インパクト前後の一定範囲 (先の例で言えば13cm + α) でラケットが最大速度まで加速すれば良いので「手や腕を使ってラケットを振る」だけがその方法ではないです。

簡単に例を上げるだけでも、『a. 肩から先の腕を動かす』『b. 上半身のねじり戻し』『c. 両足を踏む事と下半身を連動させて利き腕肩を前進させる』『d. 足を踏み込む』等があります。 

腕を動かす 上半身を捻る

身体のねじり戻し 踏み込み

4つを連動させて使えるし、逆に腕の動きに絞った使い方が必要な場合もあります。

federer forehand backhand

テニスでも、毎回「ここにこういうボールを打つ」という具体的なイメージを持ちつつボールを打つ事が大事だと書きました。基盤としての『ボールの打ち方』はあっても、ゴミ箱にゴミを放って入れようとする際のようにイメージを持つ事で自然と動作が最適化されるからです。

必要な事は「10cm以上の幅で接触し離れていくボールとラケット。インパクト前後のラケットが飛ばしたい方向、角度に安定的に向き続け、同時にインパクト前後に必要なだけの速度に至り、エネルギーを加えたい方向にラケット面が前進していく」といった事だと思います。

よく「ボールの威力を上げるためには厚い当たり方をしろ」と言われますがボールに回転をかけるという部分を少なくしていくとこういう “厚い” 当たり方になるし、それは「ボールに対する伝達ロスが少ない」という事。

まっすぐ進むスイング

「ボールに加えるエネルギーを回転に多く割り振ろうとすればカスレた “薄い” 当たりになりやすい」し、毎回、無駄に伝達ロスとして消費されてしまうエネルギーが生まれます。

『コツ』みたいに言っていますが物理現象としてのボールに飛び、回転に関係する当たり前の事を言っているに過ぎないと思います。

繰り返しますが、ボールに加えるエネルギーに関して伝達ロスが少ない “厚い” 当たり、10cm超の幅で接触し離れていくボールとラケット、インパクト前後までに安定的に必要な速度までラケットを加速させていく (加速開始から軌道が安定するまでにある程度の “距離” も必要)といった事を踏まえると

フォアハンドストロークは「身体の回転で打つ (コマのように強く速く身体を回して打つ)」といった話は妥当とは思えない。(※)

です。

身体を回して打つイメージ

※物理的に言えば『遠心力』という力は存在しないそうです。存在しない『遠心力』で「ボールを飛ばす」と考えるのは正しいのでしょうか?

昔から「体重移動をしてボールを打て」と言われますが、その理由の一つに『ラケットの安定的な加速と直進性』が関係すると考えます。(他には身体の構造から来る上半身の回しやすさ、打点の取りやすさ等もあるのでしょう)

ラケットが安定的に直進しつつ加速していくならそれを行うための身体の使い方はどれでも良いし、組み合わせ使っても良いでしょう。

腕を動かす 上半身を捻る

身体のねじり戻し 踏み込み

上記の『コマ』のような回転ではなく、直進要素を強く含んだ身体の回転を含むスイングにしたいです。

上記の『コマ』回転と同じ90度身体は回っています。ただ、ラケット軌道は直進的です。

どちらがボールに当たりやすく、安定的にラケット加速させやすい (慣性の法則により直進性が高まり、勝手にラケットがボールに向かっていく) かは明確だろうと思います。

federer

ボールが飛び回転がかかる際に利用されるエネルギーは、大まかには

  • 1. 飛んでくるボールが持つエネルギーを反発させる
  • 2. 自ら加速させたラケットの持つエネルギーをボールに伝える

“2つ” がある中、1をメインにし「ラケットを振るな」と言われるボレー、逆に自らトスしたほぼ速度ゼロ (エネルギーを持たない) なボールを打つサーブは2をメインにしています。

ただ、ストロークについては「相手のボールのエネルギーを利用して反発させる」事と「自ら加速させたラケットの持つエネルギーをボールに伝える」の2つを状況、選択により1と2のバランスを取って使い分ける必要があります。

最初の話に戻りますが

「ラケットを振ってボールを打つ」

という意識が強い中、ストロークを打つ際等、横向きの準備姿勢を取っても「打点重視、打点で打つ。ボールに当たる所から強くラケットを振る」という意識が

打点までは “何となく” ラケットを接近させていき、当たった所から強く振ろうとするスイング

という形で現れている気がしています。

厚いグリップを用いると打点はより前になり、振り始めから打点までの距離も遠くなり、余計に『打点で』という意識が高まりそうです。

結果、身体は正面向きに戻っている、或いは意図的に速く (何となく) 正面向きに戻した所から「腕を強く振ってボールを打とうとする」スイングになってしまう気がするのです。

腕を動かす

wiper swing

よく「腕の力より足等の力の方が強いから腕だけでラケットを振ろうとダメだ」みたいな事を言われますが『体重移動』の話を含めてその方法は明確に示されない事が多いと思います。

重要な事とは手法としての『ボールの打ち方』ではなく、インパクト前後までにラケットをどう安定的に加速させていくか (腕だけではなく両足で地面を踏み得られる反力はそれを活かした身体の力を使って)という事なのでしょう。

shapovalov backhand Djokovic Backhand

難しい事ではなく日常生活で慣性の法則を利用できている我々なら何となくでも実現可能なのではないかと思います。

もう少し『ボールの打ち方』から離れてみてはどうでしょうか。キッズと呼ばれるような小さいお子さんは『ボールの打ち方』や『打つ形』等は気にしませんよね。遊びのような部分から自然とどうやれば思うようにボールが飛んでくるのかをまさに「体感して」覚えると思います。

身体の構造や個々の動作の組み合わせは複雑ですから「何が正解」と決めるより「目的をイメージして動作を最適化させる」事を書きました。ただ、身体の機能や仕組みがどう機能するかを知っておく事はより理解を深めるために意味があると思います。

腕を動かす 上半身を捻る

身体のねじり戻し 踏み込み

長くなりましが、これらが「ラケットを振ってボールを打つ」という意識に対する違和感と物理的な事象であるボールの飛びや回転に望む結果を得るために行いたい内容に関する話になります。回りくどく話が分かりづらかったかもしれません。毎度、申し訳ないです。

 

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