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ロブカットを使えるようになってダブルスの “普通” を変えたい (テニス)

lob handle

練習していてもダブルスの質が上がっていかない問題

我々レベルでゲーム形式を取る際、その多くはダブルスです。

Sania Mirza serve

日本では、利用者数に対するコート数とコート確保の難しさ、シングルスで試合やゲーム練習をする機会が少ない、シンプルにシングルスはシンドい等々、様々な理由からダブルスをやる機会が多いです。(海外では年配の方でも普通にシングルスで「ダブルスをやる」発想自体がないように思います。「ご夫婦同士だからダブルスやるか」みたいなノリ?)

テニススクールでもゲーム形式をやる、レッスンの中で教わるのもほぼダブルスです。普段の練習内容も、ダブルスをやる際に有用なもの、試合中の一場面を切り取ったような内容で練習したりする事が多くなっています

※これを “Game based approach” と言ったりしますね。「繰り返しフォアだけを打たせる」ような練習は「毎回、正面向きに構えず、ずっとフォア側を向いてボールを待つ」等、練習効果の低下が起こります。実際の試合でほぼ動かない、フォアの打ちやすい所にボールが続くなんて事も起きません。ボールを打つ感覚が十分にない初心者を除き、試合で実際に起こる状況、内容で練習する方が “よほど” 意味があると考えられます。

「ボールを打つ」という基準をどこに置いているか?

試合中の一場面を切り取ったような内容で練習するという話に関係しますが、テニススクールに通い、レッスンを受けているとどうしても「コーチの球出しのボールを打つ」ような状態が「自身がボールを打つ」という事の基準になりがちだと感じます。

『試合』というものは、相手プレイヤーとの駆引き、心理的やり取り、戦略等が関わって来るものです。相手は得点を取られないようにしてくるし、自身も得点を取ろうとしてきます。

Womens Doubles

コーチと違い、自分と同じく「勝ってやろう」と思い、プレーしている相手と対峙する中で『球出しのボールを打つような』精神状態で打てる機会がどの位あるでしょうか?

相手の「勝つ」気持ちが強いほど、試合 (ダブルス) への理解が深いほど、自分にとって良い状態、余裕のある精神状態ではボールは打たせてくれなくなります。

「球出しのボールなら問題なく打てるんだけど、相手と打ち合うと全然ラリーが続かない」という経験は多くの方があるかもしれません。

「練習していない事は本番でも出来ない」ですよね。(そんなに “天才” 的なセンスの持ち主ならテニスを教わる必要はないのかも)

圧倒的な格上に “コテンパン” にやられ続ける経験がないから

成人がテニスを始める、テニスを続けるのに唯一と言って良い選択肢がテニススクールだと考えます。

あくまで「上達は本人次第」であり、通っても「コーチが上達させてくれる」訳ではないですが、整備されたコート、たくさんのボール、コーチを含めた打ち合う相手、1年を通して朝から晩までそれらを確実に確保する事は個人ではまず無理です。(私は『こういう条件の整ったコートの使用権』を確保していると思っています。)

ただ、テニススクールはレベル分けの制度があり、自分と同レベルの方々としか練習しないので「周りが皆出来てないから自分も出来てない事に気づかない」といったマイナス面もあります。

日本ではテニスの技量を数値化 (絶対評価) するのは一般的ではないです。(スクール中級といってもレベルはピンキリです) 同じレベルの方々と練習する中で周りと比較した自己評価 (相対評価) で自分のレベルを計りがち。「あの人より自分の方が上手い」「自分の方が強いボールが打てる」といった思いは少なからず誰もが持ちます。(テニスを始めて3ヶ月の方でも「全くの初心者よりはうまく打てる」と思うでしょうね)

海外だと、引退したトッププロと一般の方々が同じコートで練習する機会があったりするそうです。一般の方が休憩する間にプロが練習するといったやり方を聞きました。

そこまで行かなくても「圧倒的に格上の方々とダブルスをやってコテンパンにやれら続ける」といった経験ない事で「自分は周りの人に通用している。むしろ上手いくらいだ」という『慢心』がテニスに対する思いの前提を占めてしまうと考えます。

上達を目指すためにも、自分が出来る事、出来ない事は “客観的” に認識すべきですが、人は「自分は分かっている」「自分は出来ている」と思った瞬間、上達や改善の道を自ら閉ざしてしまいます。

プロのようなダブルスが出来るようになっていきたい

我々が行うダブルスが、

  • 相手を観察し、予測し、備えない
  • ボールが飛んできてから判断し動き出すから “技量と関係ない” ミスばかり
  • 備えていないから、相手のミスショットを自分もミスショットで返してしまう
  • 何か、締まらない “やり取り” でなんとなくポイントが終わる
  • 何の前提もなく、いきなりの一発狙いみたいなポイントの決まり方

といった内容になりがちだし、周りも皆同様だからそれが “普通” の事だと思ってしまうのは練習環境に染まってしまっているからかもしれません。プロ選手や大学生プレイヤーがやるような『ダブルスらしいダブルス』をやりたい、やれたら良いなと思いますよね。

インカレ室内2017】望月勇希/ 正林知大 対 齋藤聖真/千頭昇平 1回戦 好プレー集!

また、レッスンを受けているとどうしても、

コーチに言われる通りの事をやる事で自分を含めた全員が「ダブルスをやっている」という雰囲気になってしまう

といった事もあると思います。

取り敢えずロブ上げる、困ったらボールを上げる

レッスンを受けている、ダブルスの練習をしていと「ボールを上げる」「ロブを打つ」というプレーがよくあります。ダブルス雁行陣でロブを上げて相手の陣形を崩す練習は定番 (比較的簡単で、効果が分かりやすいから練習内容に用いやすい) ですし、女子ダブルスではロブを使うのが当たり前という雰囲気もあります。

ロブを用いる事でまず “時間” が作れます。立体的に空間を使う事で相手がボールを打つまでの時間を否応なく確保する事が出来、次のボールに備える時間の確保、心理的準備、ポジションの修正(陣形の確保) 等が出来ますね。また、相手の陣形を崩す手段としても用いられます。女ダブのロブは定番の戦術ですね。

その上で「私はロブがあまり好きではない」です。

理由その1:ロブを打った自分が “受け身” にまわってしまう

まず、「ロブを上げた本人が、相手の打つボールが返ってくるまでその場でボーッと待っている」といった事があります。

私は「ボールを打つ際には理由を持っているべき」だと考えています。

予測に基づく準備

現実問題として、相手の打つボールを全て反応だけでうまく返球するのは無理 です。時速130kmですらベースライン間を0.66秒で到達する計算になります。(実際は飛ぶ中でボール速度は落ち、バウンドにより更に低下しますが) 人の反応速度が早い人でも0.2~0.3秒と言われる中、より距離の短いダブルス前衛が反応だけで対応できるとは思えません。

130キロは0.66秒で到達

テニス全般必要になるのは、ボールを打とうとしている、ボールに触ろうとしている相手を観察し、予測し、心理的・身体的に準備をし、ボールが飛ぶのに合わせて準備を元に動き出すとった事だと考えます。続ける事で経験から精度は上がるし、予測が外れても準備により対応も容易になります。

観察と予測の習慣付け

次のボールは打とうとしている相手のラケットの位置からしか飛んできません。どんなボールがどこに飛んでくるかが分からないまま、飛び始めるボールを待つのは妥当とは言いづらいです。

テニス ダブルスのポジション

望む状況を相手から得るための配球

何度か書いていますが、テニススクールのレッスンでご一緒する方が、

コーチから「なんで今、ここに打ったの?」と毎回聞かれ、「え、なんとなく」としか答えられない。ゲーム練習でもボールを打つ度にそれを聞かれるので次第に腹が立ってきて口をきかなくなった

という話があります。

相手を観察し予測、準備する先にあるのが「自分が望む状況を作るための配球をし、相手にその意図通りに返球をさせる」といった事です。

ボールを打つ際、何故、そのボールを打ったのか、自分で理由を持っている (聞かれたら明確に説明できる) という事です。

ダブルスであれば、配球を工夫する事でネットに近い前衛が攻撃しやすい状況を作るのが後衛の役割になってきます。ベースライン間の打ち合いでポイントを取る難しさは何となくでも分かりますね。ネットに近い方が角度も付けられ、相手の時間も奪える。「雁行陣より平行陣の方が攻撃的」と言われるのはこのためですね。

Bruno & Alex

この「次にどういう状況を作りたいからこういうコースにこういうボールを打つ」というのが、自分がそのボールを打つ理由です。

“何となく” ワイドのスライスサーブを打っていませんか?

テニス ダブルス

「ロブを上げる」と言われるからロブを打つ

明確に打つ理由を持たず「ダブルスの練習では縦ロブを打って相手の陣形を崩す」とコーチに言われる通りの事を実行する

その後にどういう状況を作りたいかではなく『ロブを打つことが目的』になってしまっているから、打ち終わったらその場で相手が返球する様子を “ボーッと” 見て待ってしまう のだろうと思います。

予測し、準備する意識を持つなら打った後にその行動が出るでしょう。

そもそもロブは「相手の時間を奪う」ショットとは言いづらいです。時間を与えない低くて速いロブは難しいし、そんなロブを狙って使う方も多くないでしょう。どうしても「相手が打ってくるまで自分達は何もできない。その後は相手次第」という事が起きやすいと思っています。

縦ロブに対し、相手がクロスにロブを返球してくるのは定番ですね。ロブをしかけた自分が相手に陣形を崩されてしまい後手に回ってしまう。「ロブとはそういうもの」「そういうのも含めて女ダブのロブ合戦」みたいな話を聞くと個人的には「うーん」と思ってしまうのです。

理由その2:ロブは『余裕のある場面』で『マージン(余地)を取って打つ』ショットでは?

回転を多くかけたストローク、スピンサーブ等は軌道を上げて打つショット。直接的に着地点を狙えない分、着地点の周囲に余裕 (マージン) を確保して打つショット。(ギリギリを狙うと少しでもズレるとアウト) なのでしょう。

ロブも同様だと思います。

Tsvetana Pironkova 1, Wimbledon 2013 - Diliff

「私はロブが得意だ!」という方も居られるでしょうが、試合中の時間的・精神的余裕がない状態で「変わらず高い精度で打ち続けられる」と考える方が危険な気がします。そんな状態でロブを打ちミスやアウトする。それらを「たまたまアウトした」とは言いづらいです。

咄嗟に上げるロブも予め打つ準備をしている

この後に書く内容と重なりますが、相手前衛が打ち込んだボールを咄嗟の反応でラケット面を出し、逆に相手の頭上を越す返球にするといったプレーがよくありますよね。

頭上を抜き返される

これも「相手前衛に強く打ち込まれそう。咄嗟の反応にはなるけど相手の頭上を越すボールが打てれば相手の陣形を崩せるし、時間も稼いてこちらも良い位置、態勢になれるかな」と予め予測、判断、準備しておく事で狙い通りのボールが打てる確率が跳ね上がると考えます。

余裕の有無が結果に直結する訳です。本当に「咄嗟の反応だけでラケットを出す」のではたまたま以外に良い結果が得られにくいのは分かると思います

このように時間的、心理的余裕がある場面で打ちたいのが『ロブ』というショットではないかと思うのです。どんなに技術を高めようが余裕が無い中で打って「高精度」は難しいでしょう。

理由その3:「取り敢えずロブ」「困ったらボールを上げる」

述べてきたその後にどういう状況を作りたいか? ボールを打つ際に理由を持っている」「自分が望む状況を作るための配球をし、相手に意図通りに返球をさせる」といった意識が持てていない事で

  • 何となくロブを打つ、取り敢えずロブを打ってみる
  • ネットしたら嫌だから、困ったらとにかくボールを上げる

という事が起こると考えます。

我々は、初心者の頃から「ネットするのはダメな事」と印象付けられています。

また、「左右を通過させるより遥かに距離がある “頭上” を越せば、相手はラケットに触れない。いきなり攻撃されたりしない」という過去の経験と「今の不安から逃れたい」気持ちを結びつけた所から来る “反応” も大きいです。

距離が長く時間も取れるベースライン間ならともかく、ボレーボレー等、短い時間で余裕が無い中で打ち合うと「打つ度に、どんどんボールの軌道が上がっていってしまう」という事が起きます。

「ネットプレイヤーに対しては相手の足元を狙え」と言われるのはネットより低い位置からだと直接的な攻撃が難しいからですが、足元を狙って打つには「足元を狙う」という意識と心理的余裕が必要です。(狙って打とうとするだけだと強く打ちすぎたり、変に加減しようとしたり、上手くは打てないです)

ネット近く、打点と軌道の違い

時間的、心理的余裕が無いなかで打ち合う中でどんどんボールが上がっていき最終的には勢い余ってアウトさせてしまう。コーチ相手ではなく試合なら相手にスマッシュされて終わりかもしれません。

述べてきたようについボールを打ち上げてしまうというのは自分に対する自信の無さの裏返しなので、自信をもってプレーできていないと根本的には改善されないでしょう。「攻撃されないよう足元に打てる」という自信があってこその心理的余裕です。

そのためにも、相手を観察し、予測し、心理的・身体的準備をし、行動する事が必要で、単に「たくさん練習した」だけではどうしようもないと考えます。

※心理的要素が絡み、難しい所ですが「たくさん練習したけど不安」「試合になるとどうしても緊張する」のは「練習を練習だと思っている」事もあるでしょう。次の  “Game based approach” 等に乗って常に試合の一場面のつもりで練習に取り組みたいですね。

『Game based approach』に自分から乗っていく

ボレスト (ボレー対ストローク) 練習等で “フワッと” 浮いた緩いストロークとボレーで「ラリーを続ける事」が目的になってしまっている方をよく見ます。

ボレスト

試合中の一場面を切り取った設定で行うGame based approachという考え方について書きましたが、

コーチが設定した練習内容に対し、

  • 『ボレー対ストロークのラリー練習』と捉えるか
  • 『ダブルスの雁行陣のストローク対並行陣のボレーヤー』の状況だと自ら設定するのか

その効果は大きく変わります。

また、コーチもそういう自己設定を期待して用意したメニューだとも思います。

球出しのボールを打つにしても「とにかく強いボールを打ってネットやアウトしても気にしない」なら、試合の場でも、相手関係なく、同じような事をされるのでしょう。

何のためにそれをやっているのか自分でも説明できない。普段からそんな姿勢を見せているのに「上手くなるコツを教えて」みたいな話をされても困りますね。

スマッシュよりロブカットの練習をしたい

さて、テニススクールのレッスンでもスマッシュの練習をする事は多いですが、コーチの球出しに対して『バーン、バーン』と全て強打しようとする方も少なくないと思います。

Sydney International Tennis WTA

※個人的には深い所から打つ「時間を稼ぐスマッシュ」「回転をかけて相手の準備を狂わせるスマッシュ」「角度をつけて短く落とせるスマッシュ」等も練習してはどうかと思います。

でも、考えてみるとダブルスで自分がスマッシュを打つ機会って案外少ないのではないでしょうか?

前述した「少しでも困ったらとにかくボール上げようとするケースが多いのに」です。

その辺りは、

  • スマッシュできるようなボールを引き出す配球を自らの意図を持って実行していない (要は予め打つ準備が出来てない)
  • そういうボールが来ると予測しないから打てる位置で打てる準備が出来ない (ボールが上がった瞬間に「無理」と判断してしまう?)
  • ロブが来たら味方に任せてポジションチェンジという刷り込み (「後衛に任せた方が良い」と自分の気持ちを引いてしまう)

といった辺りが関係するでしょうか。

数少ないスマッシュのチャンスも落下地点で “固まって” 待ってしまう事でスイングはぎこちなくなり、ネットミス、アウトに繋がってしまう事も少なくありませんね。

ロブカットを使えるようになりたい

スマッシュを打つようなボールは相手が「自分達の時間を確保するためにボールを上げている」、そして「ロブが通った後の状況を “前提” にしている」部分もあります。

「ロブを通さない事で相手の想定を壊す」なら、ハイボレーやその応用としてのロブカットでも十分かもしれません。

lob handle

スマッシュしてミスする位なら尚更です。

また、状況的に「そのショットで決める」のは難しい (バックハンドのハイボレー等は力が入れづらい) ので、速度を上げずに返球して相手が返球するまでの時間を稼ぎ、自分達の陣形、位置を整えたいという面もあります。相手はこちらの陣形を崩すためにロブを上げているのですからね。

つまり、ロブカットする際にも、相手を予め観察し、「どこにどう打つか」を想定した上で打つようにしたいのです。

ロブカットされると相手はプレッシャーを感じる

女子ダブルス等、普段からロブ、相手前衛の頭上を越すようなボールを多用する方には「ロブが通るのを “前提” に打っている」部分があると思います。

もちろん簡単に触れない高さ、コースを通過させる訳ですが、それには前述したロブは『余裕のある場面』で『マージン(余地)を取って打つ』ショットという話が関わってきます。ロブを打つことに慣れている相手ですからロブを打つ、頭上を抜こうとする意識は変えられないでしょう。やはりポイントは「心理的・時間的余裕を与えて打たせない」事だと思います。

私が、ダブルスで最も重要だと思っている事に

「相手にプレッシャーをかけて心地よくプレーさせない」

という物があります。(テニス全般そうですがダブルスは特に意味を持つ)

自分がボールを打とうとする瞬間、相手前衛が先回りするように打とうとしているコースに現れる、視界に入ってくれば、打つボールに自信があっても「取られるかもしれない」という思いが浮かびます。そんな事が続く。逆に「また視界に入ってくるか」と思えば今度は前衛が動いていない。次第にボールを打とうとする相手は自分がどうしたら良いのか分からなくなり、動かず立っているだけの前衛にも警戒し、ちょっとした動きで自分からミスしてくれるようになります。

前衛が打つコースに入ってくる

上で「コーチの球出しのボールを打つ」状態が「自身がボールを打つ」という基準になりがちと書きましたが、球出しのボールを打つというのは最もプレッシャー無く打てる状況、ミスしても問題ないし、だからこそここぞとばかりに強打しようとします。

何の不安もなく打てる状態を『自分がボールを打つ際の基準』にしている、ボールを打つ相手を観察し、予測したりする習慣が整っていない相手だからこそ、相手前衛がかけてくるプレッシャーに強く反応してしまうと考えます。(自分がやっていないから対処もできない)

逆に「相手を観察しない、予測もしない」からこそ、セオリーが通用しない、「なんでそんな所に打つの?」というボールを打ってきたりする方も居ます。

(こちらが構えていないのにサーブを打ってきたり、球出ししてきたりする等でもわかります)

ダブルスのセオリーが分かっている、予測をしあっている同士だから駆引きや裏をかくといった事が意味も持つし、それが「単にボールをうつ」という楽しさ以外のダブルスの面白さでもあります。

そういった方が相手の場合は、予測する可能性を広めに考える必要があるし、相手が観察していなくても気付く位に大げさに位置取り、動きを取る事も必要だと思います。

ロブカットは「当てて落とす」所から

テニスの壁打ちでも野球の壁当てでも、垂直に近い壁に当たったボールは、跳ね返った際、水平より下に落ちる のは想像できます。反発だけでは強く跳ね返るだけのエネルギーが残っていないからであり、 “多少” 速度が上がってもこれは変わりません。

壁に当たって跳ね返るボール

ハイボレーで打つロブカットの基本イメージは、まずは「ボールが飛んでくる際、その軌道の延長線上にタイミング良くラケット面を設置できれば、最低限「下に落とす」感じにはできるかな」といったものでしょうか。

lob handle

ボールを打とうとしている相手を観察し、このコースにこういうロブを打ってきそうと予測し、予めポジションを修正し、ちょっと動いて手を伸ばせば取れる位の準備が良いです。

「走って追いかけつつ、ジャーンプ!!」みたいなトリッキーなやり方は万人向けとは言えない。

これも「相手が打ったボールを見てから追いかける」ではうまく打てません。繰り返しますが技術の問題ではないのです。

まずは、軽く伸ばした腕でボールを捉え、コントロールして柔らかく意図した辺りに「ポトリと落とす」位の意識。そして「ネットを越せば良い」位。

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まずは、自信を持って捉えられるようにならないと「打った後の態勢を整える、陣形を整える」までいけませんから。

狙った所まで届かせる工夫

壁に当たったボールは強く跳ね返るだけのエネルギーが無いので下に落下します。

壁に当たって跳ね返るボール

飛んできたコースに跳ね返していくためには逆方向から飛ぶためのエネルギーを加えていく必要があります。

エネルギーを加えてボールを飛ばす

自分が加えるのですから必要なのは「加えるタイミング (タイミングよくエネルギーを加える事)」であり「加える強さ」ではありません。

ロブカットの状態を考えても「上向きの面で少し打ち上げるように返す」感じです

lob handle

想定している状況は「この1発でポイントを取る」のではなく、相手のロブをカットし目的を削ぐ、時間が稼げるように返球して自分達の態勢、陣形を整えるとった事でしたね。

サーブもそうですが「頭よりも上にあるボールだけを見ており、相手や飛ばしたい位置を直接的に視界に捉えてない」状態です。相手コートのどの位置にどういうボールを飛ばしていきたいか具体手にイメージを持ちながら打てる事が大事です。サーブもそうですが、ボールだけを見てなんとなく打とうとしてもコースも飛んでいく軌道も定まらないですね。

lob handle

先程の軽く伸ばした腕でボールを捉え、コントロールして柔らかく意図した辺りに「ポトリと落とす」位の意識というのもこのイメージ作りに関係してきますね。

 lob handle

また、ネットに近い位置なら問題ない飛び方でもネットから遠くなるネットしてしまうという事は当然起こります。よくある「スマッシュを打ったらネットした」も同じですが、着地点を直接見られない状態で打つからこそ尚更「このボールをあの方向にこの位飛ばす。あの辺りに着地させたい」という明確にイメージを持ってボールを打ちたいですね。

飛ばし方を変える

フォアハンド側とバックハンド側の違い

なんとなくは書いてしまっていますが、私は専門家でもコーチでもないので「こういう打ち方をすればOK」「こういう打ち方をするんですよ」みたいは話をするのは適当でないでしょう。

フォアハンド側とバックハンド側の違いを確認

打つために横向きの準備姿勢を取るとします。

両手打ちバックハンド テイクバック

横向きになるのは “決まり事” じゃない

初心者の頃から「まずボールに対して横向きになる」と教わり、その手順が染み付いてしまいますが「ボールを打つために横向きになる」は必須ではないです。

足を引いてのテイクバック

ボールが飛び回転がかかるのは物理的な現象、人は体の機能や仕組みを使ってボールを飛ばすためのエネルギーを作っています。『ボールの打ち方』には教わるように体を動かす理由があるはずです。教わる通りに打っても本来望まれる動作にならない事はよくあります。多くの方はその動作をする理由を教わっていないのですからね。

ボールに対して横向きを取る理由としては、「深い・短いの “前後に対する” 距離感を調整するため」「ボールを飛ばすエネルギーを作るためラケット加速の距離を作る」「これら2つもあり、正面向きのままより”体重移動”がこれらに使いやすい」等が上げられると思います。

ただ、『ボールの打ち方』の中でこれらを示されないために「横向きになっても、横向きだとボールが見づらいから早い段階で正面向きに戻る。体重移動をラケット加速に繋げられず、正面向きに戻った所から腕を動かしてラケットを操作、ボールを飛ばそうとする」打ち方になりがちです。

その場で腕を動かして打つ

ラケットやストリングス(ガット)が科学素材製に変わり、製法の進化もあり、当てるだけでも遠くまでボールを飛ばせるようになっていますからね。でも、腕だけで打てば「毎回打ち方、当たり方が違う」ようになりやすいのです。「体重移動をしながら打つ」等はエネルギーの生成に加え、慣性の法則で直進をし続けようとする物体の特性も使っているのでしょうからね。

federer forehand

図を見ると分かると思いますが、ボールに対して横向きの準備姿勢を取った際、フォハンド側はラケットを握る利き腕肩の位置が体の後方にあるのに対し、バックハンド側は利き腕肩の位置が体の前側にあります。

両手打ちバックハンド テイクバック

ここから両足で地面を踏み得られる『反力』を下半身、上半身、腕、ラケットと『ボールに向かって前進していく、加速させていく』エネルギーとして連動させていく。

その際、利き腕肩の位置を前進させていく中でラケットを加速、ボールを捉えるフォアハンド側に対し、加速からインパクト前後まで利き腕肩の位置が体の前側にあり変わらないバックハンド側という体の使い方の違いがあります。

tennis forehand

※反力とは、我々が地面に立つ際、体重分の60kgで地面を踏み、同じ強さで地面から押し返される力の事。これを使って、歩く、走る、止まる、姿勢維持を行っている。走る、飛ぶ際は瞬間的に90kg、120kgと強く地面を踏むのでその分強く押し返され、前進やジャンプに使う事ができる。つまり「強く踏める姿勢、態勢でないと反力を “体を使った加速” に活かせない」という事。

この事により、フォアハンド側は横向きに近い、利き腕肩の位置が後方にある状態でもボールが打てるのに対し、バックハンド側は「利き腕肩の位置よりも少し前」の位置でしかボールが打てないという『許容される打点の幅の違い』が生まれます。

フォアボレーの打点の幅
バックボレーの打点の幅

バックハンド側でより後方で打とうとすれば「相手に背中を向ける」打ち方を使う事になります。

バックハンドボレー

バックハンド側のロブカット

上で述べた理由から、ハイボレーのようなバックハンドのロブカットをするには「横向きに近い状態で利き腕肩の位置よりも少し前の位置に自然と腕を上げた状態でボールが打てる位置まで下がる」必要があります。

大きく腕を上げるような高さで無ければ、横向きのままジャンプもせず、落下してくるのを落ち着いて処理すれば良いでしょう。

Womens Doubles

場合によってはドライブボレー気味に返球しても良いですね。

WOMENS DOUBLES_0973

※でも、スマッシュもそうですが「落ちてくるのをその場でじっと待つ」とタイミングが合いません。(頭上から落下してくる物体は距離感が掴みづらいし、自然落下する物体は落下する距離が長くなるほど加速度が高まる) 少し大きめに下がった位置から斜め上にボールを見つつ、距離感を合わせていく方が良いでしょう。また、伸び上がったり、腕だけで打ってしまったりしないよう落ち着くのが大事。落ちてくるのを待ち過ぎて打てないのも、慌てて打ち損じるのも同じ1ポイントです。練習では大胆に変えて「やってみる」事も大事です。

でも、ロブカットに求められる効果である「相手の想定を覆す」「緩いボールをコントロールして打ち、態勢・陣形を立て直す時間を作る」「ロブという高さのあるボールを処理する」という事を考えると相手に背中を向けるようにして無理のない範囲の最高打点でボールを捉えるという打ち方こそ練習しておきたいです。

lob handle

上で『当てて落とすイメージでの練習』を上げました。予測と位置取りを含めた準備が出来ていれば、後はラケットを上げるタイミングだけだと思います。強く打つ必要もないですし、うまく当たらない、イメージした所に打てなくても「最低限ネットを越せれば良い」です。

 lob handle

漠然とした速いボールを打つ、強い回転をかける等より、打つための敷居は低いのではないでしょうか。

ロブカット

フォアハンド側のロブカット

フォアハンド側のロブカットはハイボレーですね。

身体が伸びきってのボレー

何でも「スマッシュで」と思わず、当てるだけ山なりでもゆっくり狙った所に返せる (戻せる) 打ち方がイメージできている方が良いです。

スマッシュを「後退しながら打とうとして、バンザイ状態でラケットに当てられない、空振りしてしまう」事がありますね。空振りしないまでも上手く打てずに空に向かってホームランなんて事もあります。

スマッシュ バンザイ状態

これは、正面向きのままでは深い・短いいの “前後の “移動がしづらい (だからスマッシュでも「まずは横向きになれ」と言われる)事と合わせて、先に述べた利き腕肩の位置変化の関係もあります。

サーブ インパクト例

あくまで例ですが、回転系のサーブを打つ際、プロ選手は「横向きを残したまま」打っています。これにより打点をより体に近い位置に取れます。正面向きなら (腕を前に出して打たない限り) 体より前で打たないとラケット面が上を向きます。先の「下がりながらスマッシュを打つと空に向かってボールが飛んでいく」のはこのためです。

281000 - Wheelchair tennis David Hall serves - 3b - 2000 Sydney match photo

※正確に「横向きのまま、右利きなら右に向方向に向けてラケットを加速させている」と思います。これは「正面向きで正面方向に振っていく」のと変わらない。スピンサーブで言われがちな「体を回転させた正面向きの状態で右に振る」というのでは両足や下半身から力は”ジャンプ”に、ラケットは “腕だけ” で振る事になると考えます。(「打てない」とか「間違い」とか言いたい訳ではないです)

横向きを保ったままで打てるというのがロブカットのような場合は有効になるのです。

身体が伸びきってのボレー

もちろん、余裕があるなら「強打せず回転をかけてゆっくり打つ」ようなスマッシュ (正面向きにならずに打つ) を使っても良いですし、ナダル選手は横向きのまま、或いは、後ろを向きながら打つスマッシュを使っていますね。

nadal smash

横向きで打つのが適さないボレーもある

逆にネット間際で相手の強いストロークを抑える、反発させて返すような場合で「横向きでボレーをする」というのは向かないでしょう。

体よりも前、ラケットを握る肩よりも前に腕を出し、両足でボールの勢いに体やラケットが負けない位置、状態で押し支える、反発させたいです。

Bruno & Alex

手で押そうとする動き

  

相手の打ったボールのエネルギーがバウンド前で残っている、飛ばす距離が長くない、時間も取れない状況で打つボレーは「ボールの持つエネルギーを反発さえて飛ばす」事に専念したいです。だから「ボレーは振るな」と言われます。

ただし、相手の打ったボールの速度が速くない、比較的ネットから距離のある所から長い距離を飛ばさないとけない場合もあります。

その際は「手や腕を動かしてラケット加速させる」代わりに「両足で踏み込む事で体を前進、手に持つラケットも前進 (≒ 加速) させ、そのエネルギーで飛ばす」という事もできるのです。

大きく踏み込んで打つボレー
踏み込んで打つボレー

『ボールが飛び回転がかかるのは物理的な現象でしない』ですから「腕でラケットを振ってボールを飛ばす」という認識だけでは実際に行われているテニスとのギャップに苦しむ事になります。

使えないより、使える方がよい

私は、テニススクールに通っているような我々レベルにおけるテニスの上達とは出来る事を伸ばすより出来ない事を減らす作業ではないか」と思っています。

フォアハンドと同じ位自信を持ってバックハンドを打てない状態で「フォアハンドが得意」と言ってしまうようでは結局自分が困りますね。(試合ならその方には「バックハンドしか」打ちませんよ)

色々と残っている出来ない事を減らしていけば、同じ場面でも違う選択肢が持てる。いくつかの選択肢の中で最も確率の高いもの、望む結果、自分が作りたい状況を生むのに適した選択肢を選べるようになります。(自信を持ってバックハンドを打てないから「回り込んでフォアハンドで打つ」しかないのですからね)

ボレーをやりたくないからベースラインに留まり雁行陣でプレーする。ロブカットする意識、練習をしていないから「少々無理でもスマッシュを打とうとする」か、上がった瞬間に諦めて「味方に打ってもらう方が良いのだ」と自分に言い聞かせてしまう。

「出来ない事を減らす」ようにしたいし「使えないより使えるようになった方が良い」と思います。ロブカット等は、ものすごく難しいショット、1発で状況を変えてしまうようなショットをやろうとしている訳ではないですからね。

その一方で『器用貧乏』という言葉がありますね。一通りこなしてしまうけど “これ” という部分がない感じでしょうか。

これまでバックハンドをスピン系だけで打っていた方がスライスのストロークを覚えると、(スライスがあるからと) スピン系はそこから向上していかなくなるし、かといってスライのスストロークも「打てる」というだけでスピン系が不要という事にもならないといった状態に陥る事がよくあります。これもテニス上達の壁で、人は「自分が必要に感じない事を練習しようとはしない」ですからね。

「出来ない事を減らすのが上達」だと思っていますが、同時に「それぞれを自信を持って使える、打てる」よう意識する、練習する事も大切なのだと思います。

ロブカットが出来るようになったからものすごくダブルスが変わる訳ではないでしょうし、テニスの技量より、相手を観察し予測し準備する事の方がよほど望む結果に直結するでしょう。でも、もっとダブルスを楽しむ、プロのようなダブルスに近づくためにも、必要なパーツは一つずつでも埋めていきたいと思います。