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『滑る』事も「ボールに打ち負ける」要素なのかも (テニス)

ボール軌道とインパクト面の角度

うまく説明できない「ボールに打ち負ける」という感覚

テニスでもよく言われる「ボールに打ち負ける」という話。

Trevor James forehand

テニス以外でもよく聞く内容だと思います。

どういう理由で打ち負けるのか?

では、どんな理由で「ボールに打ち負ける」「ボールに押し負ける」と感じるのか??

これに対する説明を総合すると

相手のボールが予想より速かったり、弾みが大きかったりして、自分が心地よく感じる打ち方、インパクトの状態が作れていないから

といったものになる気がします。

つまり、ボールの威力そのものより自分側の状態がその感覚を生んでいるという事ですね。

自分にとっての “十分な態勢” で打てないとこんなフォロースルーになったり。

テニス 打ち損じ

これは、時速 150km 近いボールを打ち合っても上級者やプロ選手は簡単に「打ち負けたりしない」説明にもなりそうです。

同時に、その “良い状態” で打てなくなる理由として言われるのは、

・振り遅れているから
・打点が後ろ、手前になってしまっているから
・インパクトでラケットを握れていないから
・ラケット速度が出せてないから

辺りでしょうか。

因みにですが「これを直せ、あれを直せ」という手法について

この “インパクト前後の良い状態” というのは人それぞれ違う (望ましい打ち方がどうかは別にして人それぞれ打ち方が違う。身体の硬さなども関係) から「これが正解」と定義しようがないし、良い状態にならない理由はいくらでも上げられるでしょう。

当然「自信がない」等の心理的な要素も加わります。

そのため「これが原因だから直せ」「これを直せばよくなる」とやり方だけを伝える、或いは『その場で見た感想を根拠や理由を示さずそのまま口にするような手法 (腕が下がっているから上げろとか)』等は、その説明に関係なく、本人が納得する結果にたどり着くのは結局 “本人次第” でしかありません。その人が気づかないならずっとそのままかも。

プロ選手等のレッスンイベントに参加しても上達しない?

プロ選手から指導を受けられるイベント等がありますね。「上達できるかも」「プロのコツを聞けるかも」と思って参加しても「案外、普通の事しか言わない。差し障りのない指導しか受けられず不満。つまらなかった」といった感想を持ったりします。個人的にですが「初めて会う。その人の普段のテニスも知らない。その後の練習を見て上げられる訳でもない人に極端な事を言う。短い時間の中、伝えたい事と違った解釈をされてしまい、その後のテニスに影響を与えてしまう。最悪怪我等に繋がってしまうリスクを生じさせない」といった事が関係すると思います。シンプルに「プロとテニスをした。楽しかった」で良く「お金払ったから元を取らないと」「これを機会に上達してやるんだ」では見た事に気づかないかもしれません。

ボールの威力という話にも通じる

テニスでも「ボールに威力がある」「強いボール」といった表現が使われますね。

tennis forehand
Andre McenroeによるPixabayからの画像

この “ボールの威力” というものも先ほどの「打ち負ける。押し負ける」という話に関係してくるでしょう。

「相手を打ち負かすような強いボールを打つには?」といった話はよく聞きますね。

ボールの質を決めるのは速度と回転だけ

ただし、ボールの “質” に関係しそうなのは、速度 回転 だけ だと考えます。

ボールと回転

テニスに限らず、この世界は “物理法則下” にあるために漫画やアニメの必殺技、超能力的なボールの質は生み出せないです。(何でそうなったか原因が分からないという事はあり得ます)

簡単に言ってしまうと、時速200kmのサーブを打つには「ロスも含めて時速200km以上のラケット速度でボールを打つ」しかない といった感じです。

「飛ぶ」と言われるラケットですら、バネ等の『自分が発生させるエネルギー量とは別にラケットがエネルギーを追加する』仕組みが付いていない (ルール違反で使えない) 以上、時速100kmのスイングで時速200kmのサーブは打てません。

※ラケットやストリングスのしなる、歪む、撓むはエネルギーの伝達ロスに繋がると考えるので、打感や扱いやすさを完全無視すれば『変形しない硬いラケット、硬く張った変形しないストリングス』で打てば自身が発生するエネルギーを飛びや回転に活かしやすくなる。ただ『扱いづらさ』が「うまく打てない」という伝達ロスを生む可能性はある。

ナダル選手がああいったボールを打てるのはそれを起こるきちんとした理由があり、その再現には本人固有の要素を含むかもしれませんが「同じ条件を再現できるなら他の人でも実現できる」理屈です。コンピューターやマシンが再現すると言えば納得感が増すでしょうか。

tennis nadal forehand stroke

世間で言う「ナダル選手のようなボールを打つコツはこれ!!」といった話は、起きる条件ではなく、条件を起こしやすくする要素を述べているだけです。

具体的な理屈を前提に説明するのは大変なのでこれは仕方ない事かもしれません。

「何か秘密があるはずだ」という “願望”

でも、単純には「インパクト時のラケット速度と当たり方だけがボールの質を決める」とだけ言っても、皆、納得しない でしょうし、「いや、何か秘密があるはずだ」「それを知らないから自分は打てていないんだ」といった反応をされる と思います。

※「いやいや、まずは自分で考えてみようよ。教わる事が自分に合わなくて怪我したらどうするの?」という話ですが。

そこで、

相手のボールが予想より速かったり、弾みが大きかったりして、自分が心地よく感じる打ち方、インパクトの状態が作れていない状態が「ボールに打ち負ける」「ボールに押し負ける」状態を作る

ボールに打ち負ける・押し負けるイメージ

と説明するのでしょうが、聞く側は「うーん。分かったような、分からないような」と反応し、そこで話は終ってしまうのでしょう。

自分で考えるのはメンドクサイし、知っている人に教わる方が確実だし楽。結果、「〇〇すればボールの威力が上がる」という “コツ” の類を追いかけ、そうなる理屈も知らない (考えない) まま「常識だろ」と皆が分かってる “雰囲気” になる。そんな事の繰り返し。これでは『何も』変わりません。

ボールが “滑る” という要素

以下は、最近、海外のテニス通販サイト Tennis Warehouse のYouTubeチャンネルで公開された動画です。

Science of Spin! (the physics of tennis and spin tutorial; part 1)

Tennis Warehouse さんは以前からTennis Warehouse University と称してラケットやストリングス (ガット) 、ラケットでボールが飛ぶ理屈等を科学的に紹介したりしています。

過去はWebでの公開が中心でした動画でも上げるようになっていいます。

チャンネル登録しており、気になるタイトルの新規動画でした。「ストリングスがボールにどう影響してスピン (回転) がかかるという説明をするのかな」と思って見始めてのですが少し予想とは違った内容でした。

全編英語による説明で字幕もないので最後まで見るのはしんどいかもしれませんが、気になったのは (本来、この動画が伝えたい事を示すための一要素でしないないのですが)、

「ラケットとボールが接触するタイミングでボールに “滑り” が生じる」

といった部分です。

ボールの回転とスベリ

今回言いたい事とは少し違いますが「ボールに打ち負ける」には

「ボールに強烈なスピンがかかっていて当たった瞬間ラケットが弾き飛ばされる」

といった “漫画的” なイメージが少しありますよね。

この「回転で弾き飛ばされる」イメージにこの「滑る」が関係しているのだろうという事です。

どういう状態だと『滑り』が起こりやすいか?

検証した訳ではなく、あくまで想像ですが、

「ボールが進む軌道とラケット面が90度に近ければ滑りにくく、当たる際の角度が浅くなればズレやすい」

だろうと思います。

ラケット面の向きと当たり方

これは、いわゆる『厚い当たり』『薄い当たり』の話や「自分ではちゃんと打っているつもりなのにまっすぐ飛ばせない、ネットを越せない、ネットしてしまう、アウトしてしまう」といった “無自覚” なミス要因にも関係してくる部分です。

接する部分との摩擦が小さくなれば滑りやすくなるのは、雨の日や氷上に立った時を考えれば分かるでしょう。

皆さんもテニスの試合途中に出てくるライン判定『ホークアイ』の解析CG等で以下のような楕円形のバウンド跡を見ると思います。

tennis line ball bounce

丸いバウンド跡 (〇) が付くのは真上から垂直方向に落下した場合です。

サーブ判定等でこういった楕円形に跡が付くのは「斜めに速い速度でバウンドした時」であり、着地の衝撃でボールが変形する部分を考慮しても「地面に接触した際、ボールが “滑って” いる」という想像もできるでしょう。

映像を見つけられませんでしたが、ホークアイ導入以前のテニスの試合で流れる判定時のリプレイ映像で「インにもアウトにも見える間延びしたようなバウンドの仕方をするなぁ」と思ったのはこの『滑り』が加わるためかなと思いました。

以下は、テニスのチャレンジシステムで使われている『ホークアイ』技術に含まれる『テニスボールのバウンド解析』の資料映像です。(0:52秒位からボールがバウンドするスロー映像があります)

ELC – Understanding the tennis ball bounce from Hawk-Eye Innovations on Vimeo.

ちなみに「インパクトでラケット面は地面と垂直」という話

テニスの指導では「ボールを捉える打点においてラケット面は地面と垂直」と言われ、「今のは垂直じゃなかった」とラケット面の角度を都度、気にする方も少なくないと思います。

tennis forehand
Andre McenroeによるPixabayからの画像

ラケット面を真上に向けないの?

でも、考えてみれば、ボールを真上に突き上げるなら、皆、無意識に「ラケット面を真上に向けて打つ」と思います。

真上にボールを突く動き

真上に飛ばしたいのですから、ボールを飛ばしたい、エネルギーを加えたい方向にラケット面を “まっすぐ” 向ける。皆、普段の生活での経験でその事を十分理解しているのです。

それでも、皆「テニスは難しいもの」と思っており、「テニスはこうやって打つもの」という説明に自身の経験、理解を結び付けられていないのです。

ネットの2倍の高さを通過する打ち合出し角度は水平+4.943度

計算では、ベースライン中央部の地上から80cmの打点 (身長170cmの方で腰位) から、ネット中央の一番低い部分の2倍の高さ、約180cmの所を通過させるために必要なボールの打ちだし角度は『水平 +4.943度』です。

テニス ボールの打出し角度

水平+5度程度の打ちだし角度でもネットの2倍の高さ、自分の身長よりも高いネットの位置を通過していくのです。

現在のプロ選手で「ラケットを振り上げて打つ」選手は見ない、ボールを飛ばしたい方向であるネット方向、相手コート方向に向けてラケットを振っていきます。

federer forehand stroke

飛ばしたい方向にまっすぐエネルギーを加えていく。道具が進化し伝達ロス・反発ロスが減り「ボールが飛ぶ」ようになった。身体の仕組みや使い方の研究も進んだ。発生する瞬間的で強いエネルギーを利用するなら「振り上げて回転をかける」必要もないし、今は「スピン過多の遅い山なりボールを打ち合う」テニスから「相手のボールのエネルギーを利用し、出来るだけ前、コート内で打つ。短い準備時間で相手の時間を奪う」テニスにもなっています。

水平+5度あればネットが越せるのですからボールを打っている様子を見れば「水平に近く振っている」し、飛ばしたい方向にラケット面を向けるから「インパクトでのラケット面は地面と垂直に見える」と思います。

テニスフォーラム 【座学編③ 正面を向いてプレー/高い位置でボールを捉える】

通常のストロークより、軌道を上げたロブを打とうとしているのに「インパクトで地面と垂直」と思っていたら、カスれた、コントロールの難しい、再現性の低い打ち方になる。皆、気づかないまま、そういった “無自覚” ” のミス要因を抱えてテニスをしているのです。

相手に “厚く” 捉えさせない

ボールを飛ばしたい方向、エネルギーを加えたい方向にラケット面をまっすぐ向けるというのはよく言われる『厚い当たり』を指していると考えます。

ただ、「厚い当たりにすればボールの威力が上がる」は “コツ” とは言えないでしょう。

カスれるような当たり方は、ボールにエネルギーを伝えるにも、ボールのエネルギーを反発させるにも、伝達ロスが大きいし、毎回同じ “ロス具合” で打つのが難しい。どんなに技術をお持ちでも、咄嗟の時、焦った時に『”勝手に” うまく当たる打ち方』に勝るとは思えないです。

テニス 薄い当たり
テニス 厚い当たり

考えれば「厚い当たりで打つのを基本とする」等は「当たり前の事を言っているだけ」だし、そう思わないならまだ理解ができていないのかも。自身で考えるのをサボってしまうと色々と勿体ないです。

どの段階で打つかによってボールの進む方向、角度が変わる

テニスのルールでは「自分が打ったボールを相手コートの規定のラインで示す範囲内に一度着地させる」必要があります。さもないと相手がボールに触れてしまわない限り「アウト」で失点です。

重力や回転、空気抵抗等によりボールは “落下” し、着地した後、何らかの “バウンド” をします。(「弾まない」といっても着地した場所で止まる事はテニスコートならまずありません。)

ボールのバウンド

同様にテニスのルールにより「ネットを越して自コート側に入ってきたボールを2バウンドするまでに相手コートへ打ち返す」必要があります。

アウトしそうなボールをわざわざ打つ必要はないので自コートのライン内で1度バウンドする事を前提とするにしても、バウンド前のノーバウントの段階で打っても良い (ボレー、ドライブボレー、スマッシュ) し、追いかけて2バウンド目直前、地面ギリギリで打っても良いです。

ただ、「自分がどの段階で打つか?」により『その段階で、ボールがどの方向、角度に向けて飛んでいる、落下しているか?』が違ってきます。

軌道の頂点から落下してくる段階もあるし、バウンド直後で下から上げってくる段階もあります。

上図のようにボールの”質”、例えば「強いトップスピンがかかったボール」と「フラットやスライス(逆回転)のかかったボール」で同じ段階でもボールの進む方向、角度が違ってくるのも分かります。

選択の前提は「相手にどういうボールを打たせたいか」「次にどういう状況を作りたいか」

これは今回の話と直接関係しませんが、

自分がボールを打つ際、

「なぜ、そのボール (打つ位置、コース、球種、回転、軌道、速度、着地させる場所) を選択したのか?」

という事が自分で説明できる

という事がとても大事です。

テニススクールのレッスンでご一緒する方が「コーチから「なんで今、ここに打ったの?」と毎回聞かれ、「え、なんとなく」としか答えられない。ゲームで打つ度に聞かれるので次第に腹が立ってきて口をきかなくなった」という話があります。

テニスにおける「相手に向かってとにかく強く打つ」等は、野球で言えば「キャッチャー目掛けてとにかく速い球を投げる」と同じです。運よくストライクが入っても相手は当然打ってきます。(打つために打席になっているのですからね) 誰もが時速160km以上の “打てない” ストレートが投げられる訳ではないです。

テニスではサインを出してくれるキャッチャーが居る訳ではないので、自身で『組み立て』をしないいけません。「相手は力の強い引っ張りバッターだからアウトコースに変化球だな」とか「ストレートに強い打者だけどフォークボールかチェンジアップを投げれば三振か内野ゴロになりそうだ」とか。自分以外にも内野、外野に守備の選手達が居るので「アウトになりやすい配球をしてそれに合わせて守ってもらう」という事も考えないといけません。予測してないのに「急にボールが飛んできてもナイスプレー」ばかり期待しても無理があるでしょう。

上の例で言えば

  • 「ダブルスで相手の2人の位置からこの辺りにこういうボールを打てば、味方前衛が決めやすいボールが返球される可能性が高い」
  • 「相手が攻撃的なポジションになって強く打って攻めてきているからここは一度ポジションを崩さえよう。或いは足元に打って叩くような強打をさせないようにして関係性をニュートラルに戻そう」

といった「自分なりの根拠を持って自分がその場で持てる選択肢の中から選んでいますか?」という事をコーチは気づいて欲しかったのだと思います。(時間も短いし人数が居る中、そういう事を考えた事が無い方に言うにはかなりの言葉足らずですけどね)

テニスでは『予測』が必須だが…

テニスでは『予測』が必須です。

仮に、速度低下が無い条件なら「時速130kmのボールはベースライン間を0.66秒で通過する」計算になります。

人の反応速度が速い人で0.2~0.3秒と言われる中、ダブルス前衛が反応だけで相手のストロークをポーチするのは全く現実的でないのが分かります。

「あの人はバックが苦手だからフォアでこう打ってくるはず」「女性だから強いボールは来ないはず。この位のタイミングかな」とか教わらなくても皆、何かしら予測はしているはずで、習わない事で「それを明確に実行する」という習慣付けが出来ていないだけです。

次にボールを打つ相手の打つ位置、ボールの追い方、打つ態勢・姿勢、打ち方、インパクトの状態、ラケット面の向き、年齢・性別、相手の性格や選びそうなショットの種類等から次にボールが飛んで来るコースや球種、速度等を “毎回” 予想します。

ボールは相手コート側、”前” からしか飛んできません。自コート側の規定のライン内に着地させるため『相手が無理をせず収められるコースや範囲』は自然と定まってきます。

テニス ダブルスのポジション

打つ相手に近づけば自分が担当する範囲は狭くなり、ボールを打つ相手にもプレッシャーになります。ものすごく空いているように見えても『飛んで来る確率の低い所』まで含めて2人でカバーしようとするのは無理があり、どこに重点を置くべきかも曖昧になります。無理のあるコースは確率が低いし、アウトしないように速度が出せないなら見てから追っても良い。それを含めてのポジション取りです。

相手が打つから、味方が打つからではなく、次にボールを打つ相手を見て他の3人がそれぞれの判断で攻守の位置取りを変える、調整する、それがプロのような細かい動きのダブルスになります。

「ボールを打ったらその場に立ち止まり、相手が打ったボールを見てから動き出す」

我々がやっているそんなダブルスと全く違いはその辺りなのでしょう。

ただ、「予測をする」といってもそれを大きく補完するのが

  • 「相手にどういうボールを打たせたいか」
  • 「次にどういう状況を作りたいか」

という自分が意図を持って選択した配球なのです。

「こうなる」と思って打ったボール、相手が想定通りに返球してくれれば望む展開に出来ますし、仮に相手が想定と違う対応をしてきても “ゼロ” から判断するより圧倒的に対応もスムーズになります。

この辺りが一般に言われる「テニスの上手い下手」に大きく関係してきます。「技術が上手いか下手か」が「テニスが上手いか下手か」を決める訳ではないという事です。(『ボールを打つ技術』というのは10cmの違いを打ち分けるようなもので、それが出来れば「相手に勝つ」訳ではないですね。)

厚く捉えさせない その1. 高い軌道

前置きが長くなりましたが「自分が打ったボールは一度、相手コートでバウンドする」という前提を利用すると相手に厚く捉えさせない、ボールの『滑り』が生まれやすい、「打ち負ける」という条件が発生しやすいパターンがあると考えます。

※当然、『滑り』にボール速度や回転も関係するという前提。速度や回転と合わせて考えたい条件という事。

シンプルに自分が軌道の高いボールを打てば「インパクトでラケット面は地面と垂直」と考える相手は “薄い当たり” が起こる要素が出てきます。

ボール軌道とインパクト面の角度

厚く捉えさせない その2. 弾まない軌道

自分が弾まないボールを打ち、相手に低い位置、相手が居る位置より前 (今居る所まで飛んでない) で打たせれば、相手は「持ち上げないとネットする」と打ち上げる打ち方になり、“薄い当たり” が起こる要素が出てきます。

ボール軌道とインパクト面の角度

厚く捉えさせない その3. バウンドの直前、直後を打たせる

「予測」をせず、自分が打った位置に留まり、相手がボールを打つのを見ているような場合、ちょうど相手が居る位置前後でボールがバウンドするように打ち、「バウンド直前かバウンド直後に打たざるを得ない」状況になれば、力を入れるタイミングが合わず、不安定な姿勢、態勢で打ちやすくなる。2同様に打ち上げるような “薄い当たり” が起こる要素が出てきます。

ボール軌道とインパクト面の角度

一見、距離のコントロールが難しそうに見えますが、自分がボレーを打つ場合は2や3が有効だと思います。

☆着地直前のボールはネットを越すよう “飛ばしたい方向へ” エネルギーを加えたいです。(上に飛ばすのだからボール軌道の反対側、足も使って下から上へ)

テニス 厚い当たり

☆ハーフバウンドは下から上がってくるので、ストリングス (ガット) の縦糸・横糸の角度を意識し、横糸が垂直方向の状態でラケット上のフレーム側で跳ねを抑え (縦糸がボールに噛む) つつ、ネット方向 “前へ” エネルギーを反発させる足や下半身の態勢を取ります。

ガットがズレ偏って回転がかかる
half volley

バウンド直前のボールもバウンド直後のボールも「予測せず動かずその場で『手や腕だけでなんとか』」等がが良い結果から一番遠い、不確実で自分で結果を導けない、”運頼り” な手段になります。

厚く捉えさせない その他の条件

単純には「インパクト前後のラケット面があちこち向いている」打ち方だと安定したインパクトが出来づらいと考えられます。

「ボールはこうやって打つものだ」という話は置いておいて、インパクト前後のラケット面が下図の2つの状態にあった時、再現性が高く、安定してボールを飛ばせるのは、圧倒的に『下右図』のような当たり方だろうと思います。

円軌道のスイング
まっすぐ進むスイング

厚めのグリップで握る方は打点の位置が自然と身体から前になります。これは身体の構造 (手が前腕の延長線上に付いているため) による自然な現象です。

テニス グリップと打点の関係
テニス グリップと打点の関係

そして、打点が身体より前に遠くなる分、テイクバックを大きく取る、ラケットを振り始める位置を身体から後方にとって前後のバランスを取ろうとする傾向があります。(腕力に自身のある男性は特にでしょうか。身体に近い位置から大きく前に振ると振る方向が安定しづらい (長くまっすぐ振れる段階が欲しい) ためです。)

また、テイクバックでインパクト面は地面側を向く、伏せた状態にある方がトップスピン系のボールは「打ちやすい」と感じます。

ただ、グリップが厚い方は、テイクバックを大きく取る事で伏せた面がバックフェンス側を向きやすくなります。写真のカチャノフ選手もそうですね。

薄めのグリップは、身体に近い位置から振り始めやすくなります。この場合、伏せた面を引き起こす (90度程の回転) 事でインパクト面の向きが完成しますが、

Roger Federer

スイング軌道

グリップが厚く、テイクバックを大きく取り、バックフェンス側にインパクト面が向くようなスイングだと180度近く回転する事でインパクト面の向きが完成する事になります。

スイング軌道

この「インパクト面がボール方向を向いて安定状態に入るまの時間と距離が欲しい」という事も厚いグリップで打つ際、テイクバックを大きく取る、ラケットを振り始める位置を身体から後方にとって前後のバランスを取ろうとする傾向がある事に繋がります。

テニスでは「グリップが厚いほどボールの威力が上がる」という雰囲気 があります。

ただ、「グリップが薄い」と言われるフェデラー選手だけでなく「強烈なトップスピンのボールを打つ」印象のナダル選手も我々の感覚で言えば “セミウエスタン” 位のグリップ です。

tennis nadal forehand stroke

ナダル選手の

  • テイクバックが大きくない、比較的身体に近い位置から振り始めている
  • (印象とは違い) 腰から胸位のあまり高くない打点で常にボールを打っている

のもこのグリップの違いにより打ち方、身体の使い方から来ているのだと考えます。

我々レベルで「厚いグリップが不利」という事はありませんが、フェデラー選手やナダル選手を見て同等の威力のボールが打てるなら、薄めのグリップを使うメリットは

「準備時間、振り始めからボールを打つまでの時間が短くて済む」

事であり、

「相手の時間を奪う」

「ボールを落とさず、できるだけ前に入ってボールを打つ」

現代テニスにおいてフェデラー選手やナダル選手が活躍できている理由にもなると考えます。

(だから「薄いグリップはダメ」ではない。グリップに合った身体の使い方をするという事ですね。同時に、木製ラケットの頃を基準とした『薄いグリップで打つ打ち方』ではなく、現代の道具と現代のテニスに合わせた打ち方をしているという点が重要です。また、打ち方を考えず「グリップを薄くする」と思うのは「グリップが厚いほど良い」と変わりません。)

回りくどくなってしまいましたが、相手が極端に厚いグリップを使用している。テイクバックを大きく取ってスイングしている なら、

  • 大きなテイクバックでは間に合わない状況を作る
  • 身体から前に遠い (その人にとっての標準の) 打点で打つには間に合わない状況を作る

ことで “薄い当たり (厚くない(?)当たり、力の入りにくい当たり方) が起こる要素が出てきます。

相手固有の条件下におけるその1、その2、その3の応用という感じでしょうか。

☆逆に、厚いグリップで打点を前に取る、テイクバックを大きく取って打つ方は、時間の無い中でコンパクトに打っても同じように安定して飛ばせる選択肢を持っておくべきだろうと思います。「深いボール、態勢が崩れた時、ハーフバウンドは当てるだけになる」なら相手に付け込まれるかもしれませんからね。例えば、ジョコビッチ選手は厚いグリップですが、テイクバックをすごく大きい訳でも、身体よりすごく前の打点で常に打っている訳でもないです。

まとめ

ボールが『滑る』状況を作る事で「打ち負ける。押し負ける」と相手が感じる状況が生まれるのではないか? という方向で書いてきましたが、見ていただければ分かるように「相手が良い状態で打てない」要素に包括されてしまいます。

述べたようにボールの質を決めるのはまず速度と回転であり、これに『滑る』状況が生まれやすい要素を加える事で「打ち負ける。押し負ける」と感じやすくするといったものだと思います。

ただ、「とにかく強いボールを打つ。回転をたくさんかけて相手に打ち勝つ」と考えるよりも相手と打ち合っている状況が見えている、何をどうすれば自分に有利な状況が作れるか考えているという事かなと思います。

『予測』とその前提にある「自分が何をやりたいか? 意図を持ってボールを打ち、望む状況を自分で作り出す」という流れにも含まれるものでしょう。

特別な事ではありませんが、こういう事も知っておくのは何かしらプラスになるかなと思いました。

・関連記事: ラケットのインパクト面をバックネット方向に向けるテイクバック (テニス)

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Makuake 企画ページ

新たにダニエル太郎選手らの出場が発表されたようです。(何か、先日テレビに出演されていたようですね) ご興味あれば、参加を検討されてはいかがでしょうか。

関連記事: 今年7月に無観客テニストーナメントの開催を目指す! BEAT COVID-19 OPEN (テニス)

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