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サーブ・スマッシュ改善の第一歩は『上』を向かない事かも (テニス)

上達を考えるための “余裕” がほしい

久しぶりの更新になります。

書こうと思う事があっても色々と説明を盛り込んで長文化、全体がまとまらなくなるという事を繰り返していました。短文でさくっと書ける方はスゴイです。2020年になったので心機一転がんばろうと思います。

さて、この所、私がサーブの練習で取り組んでいた事は「自分の “現状の身体能力の範囲” で最高に近い速度を出す」という事です。

テニス サーブ

※伝わると思いますが「速いサーブを打つ」ではないです。

年齢や個人差はありますが一般成人男性なら無理なく150~160km/h位を出せる身体能力はあると考えます。(女子だから100km/hなんて事もない。昔の木製ラケットではないし)

仮に「自分が既にかるーく振るだけで時速150~160km/h出せる状態にある」と考えてみてください。きっと「トロフィーでこう」「膝を曲げないとダメ」等の「サーブはこうやって打つべきだ」といった話はサーブを打つ際にあまり気にしないと思います。

それが出ないから、皆「サーブの打ち方」を教わり実践しようとする。でもうまく出来ない。

ならば、その考え方を変えてみても良いはずです。

以下はテニスのつるちゃんねるさんのYouTubeチャンネルに載っていた鈴木貴男選手のサーブ説明です。(4分15秒位から)

かなり軽く打っているのに我々が一生懸命打つサーブと大差ない速度が出ていますよね。

「プロだから…」で片付けたくないです。考えてみる機会は無駄になりません。最近の鈴木選手は「皆が思い込みでやっている無駄な動作を省いていき、できるだけシンプルにサーブが打てる、打ててしまうやり方を考えよう」とされている気がします。今なおより良いサーブを求めているのでしょう。

自身の現状の身体能力の範囲で高いレベルのパフォーマンスを出すには「身体の仕組みや使い方を考える必要がある」と考えます。

「速く走るために “正しい走り方” を習う」のは納得感がありますよね。”歩く”しか知らないなら”走る”を学べば良い。「筋トレして歩く速度を上げる」より妥当です。テニスでも「上手い人のスイングはスムーズで、力感がなくても威力がある」のは実感すると思います。

陸上短距離

自分で考えるのを面倒に思う。説明やコツだけ聞いてもいつまでも上達しない。「サーブの特別レッスンに参加したらいきなり上達」等、かなり甘い期待だと思います。

サーブやスマッシュを打つ際に「上を向く」

サーブを打つ際に身体をどのように使うのが良さそうか。それについては改めて書きたいと思いますが、それ以前の部分で私が気になっているのが

サーブやスマッシュを打つ際に “上” を向く

という事です。

テニス サーブで上を向く

「トスしたボールを高い位置で打つのだから上を向くのは当然では?」

と思うかもしれませんが、これが

・サーブ (スマッシュ) を打つ際に大きな影響を与えている
・その人の持つ身体能力に対して十分な威力が出せてない要因の一つになっている

と考えています。

まず「ボールが飛ぶ理屈」を確認しておく

テニスは “物理法則下” で行うスポーツです。

難しく言っていますが「漫画の必殺技みたいなボールは打てない。超能力で曲げるみたいなのもない。ボールが飛ぶにも曲がるにも “必ず” 物理法則に基づく理由がある。」といった事です。

「ラケットで打つからボールは飛ぶ」位の認識では右や左に飛んでしまう理由がわからない、修正できない。ボールが飛ぶにも曲がるにも「ちゃんと理由がある」なら知っておいた方が良いですよね。技術以前の話、そこが本来のテニスのスタートラインかもしれません。

ボールが飛び、回転がかかるエネルギーはどこから来る?

飛んでくるボールもスイングしたラケットもそれ自体がエネルギーを持っています。ボールもラケットもそのエネルギー量は『1/2 x 物体重量 x 物体の速度 ^2 (2乗)』で表せます。

テニス ラケットのインパクト 

飛んでくるボールの速度が “速い” ほど、スイングしたラケット速度が “速い” ほど、ラケットとボールが接触した際に大きなエネルギーが使える。速いボール、より強い回転がかかったボールが打てる可能性が生まれます。

※ただし、テニスは「遠くまで飛ばせば勝ち」ではなく、状況に合わせて最大値の何割をどうどう使うかの方がよほど大事です。力んで振り回してもうまく当たらない、むしろ遅くなっては勿体ない。

サーブはラケットのエネルギーでボールを飛ばすショット

我々は直感的に「ラケットを振り、ボールを飛ばす」と考えますが、

ボールを飛ばす回転をかけるためのエネルギー源としては

1) 速度を持って飛んでくるボールのエネルギーを反発させる
2) 自ら加速させたラケットのエネルギーをボールに伝える

の2つがあり、我々は自分が用いる各ショットとそれを用いる状況から、

時間の無い中、飛ばす距離が長くない、遠くまで飛ばす必要が少ないボレーは1の “ボールの持つエネルギー” を反発させる事を重視したショット。(主に1を使う)

テニス ボレー

自らトスした”ほぼ速度ゼロ”のボールを打つサーブは2の “自ら生み出すラケットのエネルギー” で打つショット。(主に2を使う)

テニス サーブ

ストロークは打つ位置と状況、どういうボールを打ちたいかにより、1と2を組み合わる、割合を変えて打つショット。

テニス ストローク 

といった違いを理解し、使い分けられる必要があると思います。

※ストロークより速度が速い、バウンド後すぐの位置で打つからエネルギーの減衰も小さい、返球として飛ばす距離も長くない等、”ボレーに近い” 条件が揃っているリターンで「打ち負けまいと大きなスイングをする」意味が薄いのが分かりますね。

トスで上げたボールはほぼ速度ゼロ。サーブでは、自ら加速させ、速度を持たせたラケットのエネルギーをボールに伝えて飛びや回転を生む必要があります。

テニス サーブ

ストロークやボレーは「相手のボールのエネルギーがあるおかけで、自身の “まずい打ち方” が誤魔化せてしまうという面があります。(取り敢えず当たれば返せる) サーブはそれができない。だから皆「ストロークよりサーブの方が難しい」と感じるのだと思います。

サーブはフォア側で打つショット

サーブはフォア側のオーバーヘッドで打つ事が前提となります。

※アンダーサーブ (英語ではunderarm serve, underhand serve) があるように「サーブはオーバーヘッドで打つ」制限はないです。ただ、腕を縦に振り、頭よりも高い位置で打つ事で重力による落下 (加速・入りやすさ) も利用でき、身体の機能や仕組みからも速度も出しやすいと考えられます。今回は「オーバーヘッドで打つサーブ」を前提とします。

フォア側とバック側の違い (「身体の右側か左側」ではない)

スイングを伴うフォア側のショットの特性として、

1. 準備段階として横向きの姿勢を取りラケットを握る利き腕肩の位置を一旦身体の後方に下げる。

テニス フォアハンド テイクバック

2. そこから何かしらの手段で身体を回転させる、足を踏み込む等し、利き腕肩の位置を身体の前側、ボールのエネルギー反発させる、ボールにエネルギーを加える際にラケットで押し支えやすい意味まで戻す。

テニス 両足で加速を生む

3. その “利き腕肩の移動距離” をラケットの初期加速に利用している。

テニス フォアハンドストローク

と私は考えています。

バック側は「準備段階からインパクト前後まで利き腕肩位置は身体の前方にあり変わらない」という違いがあるのが分かります。

テニス バックハンドストローク テニス バックハンドストローク

教わる通りの「サーブの打ち方、打つ形はこう」ではなく、「サーブはフォア側で打つショット。なら、体をどう使うのか?」と自分で考えてみたいです。

ストロークとサーブ、体の回転軸とスイング軌道の違い

同じフォア側ショットと言っても、ボールを打つ打点の高さの違いがあり、それに合った運動を行おうとする事でストロークとサーブでは体の回転軸と腕を動かす角度が違います。ストロークは体の回転軸とスイング軌道がいずれも水平方向。サーブは体を水平方向に回転させても最終的に腕は縦方向に振りますね。

テニス フォアハンドストローク テニス サーブのスイング

上で「フォア側で打つ際は、横向きの準備状態で一旦後方に下げた “利き腕肩” の位置を何かしらの手段で体を回転させ、利き腕肩を前方に戻す。その距離をラケットの初期加速に利用している」と書きました。こういう動作です。

テニス 両足で加速を生む テニス フォアハンドストローク

ただ、サーブやスマッシュでは打点の高さの違いから「腕を縦方向に振る」事でボールを捉えます。我々が「サーブを打つ」イメージに持つのはこういった動作ですよね。

テニス 腕によるスイング テニス スマッシュ

なんとなく分かると思いますが、肩から先、腕の機能だけでは、強く、速く、スムーズにラケットを振ることは難しいです。

「体の回転に合わせてラケットを振れてしまうストローク」と「体の回転と腕の振りを特定のタイミング、手法でうまく組合わせないと大きなエネルギーが生み出しづらいサーブ」という違いが皆が感じる “サーブの難しさ” に繋がっていると考えます。

慣性の法則によるラケット操作の制限

物体であるラケットには慣性の法則が働き、停止したラケットはその場に留まり続けようとします。その結果起きるのがラケットダウンという段階だと考えます。(勝手に起きるものを自ら作る必要がない)

テニス 慣性の法則 テニス 慣性の法則

慣性の法則により「停止した物体はその場に留まり続けようとし、進んでいる物体はその直進運動をし続けようとする」という事象が起こります。(電車の急発進、急停車の例を出すまでもなく慣性の法則は身近な事象で理解しやすいでしょう)

テニスにおいても慣性の法則が発生します。

我々は「手や腕でラケットをスイングしてボールを打っている」と思っていますが、実際には

「ラケットヘッド側が加速し、腕やグリップ側を追い越す位まで、留まろうとするヘッド側に引っ張られ、グリップを握る手や腕は “肩よりも前に” 引き出す事ができない」

と考えます。

テニス 慣性の法則 テニス 慣性の法則

この観点で改めて写真や動画でスイングを見ると

「手や腕を後方に引くラケットの負荷がなくなる時点、加速したラケットが身体の前側に出てくる段階まで “手や腕によるラケット操作” は満足に出来ていない」

と感じます。

テニス フォアハンドストローク テニス サーブ

※加速が強くなるほど慣性の力も強まります。一層、腕や手でラケットを操作する動きはできなくなりますね。

これらの事からも

「ラケットの初期加速を生むのは手や腕ではなく、両足で地面を踏んで得られる反力や体本体の力を連動させて、腕ではなく利き腕肩の位置を “瞬間的に” 前方へ戻そうとする力」

だと私は考えています。

テニス 両足で加速を生む

※手打ちは手打ちじゃない
ラケットを持っているのは手や腕です。肩・肘・手首・指の各関節の稼働と上腕・前腕の捻じれといった腕の機能を使いラケットを扱う、スイングする。「両足や身体の力をうまく使って打つ」とは言っても「腕は腕だけで必要な機能を果たす」事が前提です。「その打ち方だと “手打ち” だ」というのは「手や腕の機能だけで打っている」という意味ではなく「1.その時の状況に対し求められる手や腕の機能が十分発揮できていない」「2.手や腕以外の部分との連動・バランスが悪い」の2点から来ると考えます。トッププロがぎりぎり届いたボールを手や腕の動きだけで返球、エースを取ってもそれを手打ちだという人はいません。テニスは身体全体を使って打つ事が大事ですが、足だけ、腕だけでどのような仕組みでどう使うのかを理解しておく必要があるのだと思います。

物理法則に基づきボールは飛び回転がかかるのですから重要な事はエネルギー量と方向性(ベクトル)。その条件が満たされるインパクト面とボールへの関係性だと思います。

身体の軸の角度と腕を振る角度

サーブやスマッシュに関してはボールを打つ打点の高さの関係もあり、サイドスローやアンダースローのように「斜め横からラケットを振る」事はほぼありません。定義はともかく「腕を縦に振る」使い方です。(サイドスローはストロークに近い)

  テニス サーブ

ラケットの初期加速について色々書きましたが、

両足や身体の力を使おうが、極論、腕の力だけでラケットを加速させようが我々がラケットを使ってボールに影響を与えられる唯一の時間帯であるインパクトに発生させたエネルギーがうまくボールに伝わるような状況にする必要がある

のは変わりません。

下図は時折見る「身体が横向きのまま、左肩を閉じた状態のままサーブを打つ」打ち方です。

横向きのままサーブを打つ

腕でラケットを加速させており “速いサーブ” を打つのは難しいですよね。仮にですが、腕の筋力で時速200km/hまでラケットを加速できてもこの打ち方では「ボールの衝撃を両足や身体で支えられない」でしょう。スイングを速くできない。遅いから打てている打ち方です。(ちなみにナダル選手はこういうスマッシュを使います)

サーブを打つ際は軽くジャンプする事も多いので「両足を地面につけた状態で踏ん張れ」とは言えませんが、エネルギーを加える方向 (前) に対して加える際の衝撃を押し支えられる状態、体勢になっておく事は重要です。「横向きのままでは押し支えづらいから正面方向に身体の向きを戻す」のです。

両足と身体で押し支えられる体勢

それが『皆がイメージするサーブのインパクトの姿』なのだと思います。

サーブのインパクトイメージ

「サーブのインパクトはこうだから、サーブを打つ際、自分もその “形” を作る」ではなく「何故この形になるのか、前後の動きとの関係性を知っておく」方がはるかに良いでしょう。

サーブを打つ際に上を向くと戻さないといけない

ようやくタイトルの話に近づきました。

サーブを打つ際にトスを上げますが、空中のボールの現在位置と位置変化 (上がってズレて落ちてくる) を認識するため我々は何かしらの方法で「上を向く」事になります。

サーブを打つ際に上を向く サーブを打つ際に上を向く

でも、我々は最終的には身体の軸が地面と垂直に近い下図のような状態でサーブ、スマッシュを打つイメージを持ちます。(皆「インパクトの “形” はこうだ」と思っているからです)

サーブのインパクトイメージ

比較すれば分かりますが、ボールを打つまでの間に

ボールを見るために傾いた身体の軸を垂直に近い状態まで戻す過程

がなにかしら加わっているのは想像が付きます。

背中を反って上を向く

繰り替えし述べたように「フォア側ショットであるサーブにおけるラケット初期加速は準備段階としてとった横向きで一旦下げた利き腕肩を身体の前側に戻していく距離を利用している」と考えるのでスタート段階で回転軸である体軸が傾いているのはこの初期加速を阻害してしまうのです。体軸を垂直に戻してからでないとイメージ通りのインパクトの形に到達できません。

身体の回転と身体と腕の位置関係 サーブのインパクトイメージ

ボールの位置にもよりますが

“視線を上げる”だけで頭上のボール位置、位置変化を確認できる

のは分かるでしょうか?

サーブ 視線を上げるだけでトスを見る

これなら、首を曲げる、背中を反る、胸を上に向ける等の体軸が傾く方法を取る必要がないです。

(視線を上げるだけでOK、反るのは不要という事ではないです。各自の身体の状態や打ち方もあります。違いを述べている、これらを踏まえてどういうやり方が良いか考えるという話です。)

何故、体軸を傾かせてまで “上を見る” のか?

トスが身体に近すぎる

ひとつは「トスが身体に近すぎる」からだと考えます。

頭の真上に近い位置にボールを上げれば視線を上げるだけではボールを視認できません。首を曲げる、背を反らす等しないといけません。

上を向く

「俺は頭の上にトスなんてしていない。ちゃんと身体よりも前、ネット寄りにトスを上げている」という方は居るでしょう。確かに、スマッシュを打つ際のように、最初から正面向きに近い身体の向きで、頭の上辺りに上げたトスを見上げているといった打ち方をされる方もいます。

上を向いてトスを見る

ただ、サーブを打つ際に多く共通する事象として、

我々はトスを上げた後、身体をボール方向、前側に寄せて居る

体軸の前進があります。

サーブを打つ様子を見てみると左肩の位置まで右肩が出てくるのが分かりますね。つまり、中心軸は “前” に移動しているという事です。(広義の言い方なら『体重移動』とも言えます)

テニス サーブのスイング

身体の回転で利き腕肩の位置変化

トスを上げる状態で、身体の中心軸に対し左右対称に身体を回転させると利き腕肩の位置が前に出てこないです。

身体の回転で利き腕肩の位置変化

これは、実質的に後ろに下がりながら打っているような状態になります。

スマッシュ

つまり、

ボールを打ちに行く際、身体 (ラケットを持つ利き腕肩) が前に出ていく分も加味してトスを上げる位置を考えないといけない

という事です。

テニス サーブ

サーブではネット方向にラケットでエネルギーを加える必要があります。よく聞く「ベースラインより中に着地しろ」「前向きにしっかりエネルギーを発生できる身体の使い方をしなさい」という事だと考えます。(着地位置を気にしてしまう)

ちなみに、ネット近くで飛ばす距離が短く打点から斜め下方向に打つスマッシュならこの位、“前” で “低い” 打点で良いはずです。

テニス スマッシュの打点

頭上に上がったロブは時間もあるので、一旦大きめに下がった位置から距離を詰めて行けば良いのですが「ジャンプする事で多少の位置のズレを吸収できてしまう」ので、ついその場でボールが落ちてくるのを待ち、思ったよりも長くて、頭の上辺りでジャンプしつつ打ってしまいます。打点を落とすのは不安ですし、「サーブは高い打点で打つ」思い込みもあります。これらがスマッシュの不安定さ、オーバーやネットを生んでいます。

トスが高すぎる

物体の位置が真上でなくても、純粋に高い位置にあれば、首を傾ける、背を反らすなどしないと視界に入れられません。

上を向く

広く浸透した「トスは高くないとサーブが入らない」「打点が高い方がサーブは入りやすい」という “迷信” がありますね。(敢えて迷信と書きました)

身長150cm台のプロ選手は大勢居ますし、テニスキッズ達はもっと身長が低いですが「サーブが入らない」なんて事はありません。逆に身長が2mあっても “無回転のサーブ” を入れるためには空気抵抗や重力等を無視して最短距離で打ったとしてもネットの上10cm程の空間を必ず通さないと入らない計算になります。

身長2mの人が打つサーブ

この精度でサーブを打つのは無理なので、「重力や空気抵抗を加味した上で回転をかけて安定的に打てる事が ”サーブを打てる” という事」なのかもしれません。(自分がコントロールできない重力や空気抵抗頼りの”フラットサーブ”を使えるのか?)

オーバーヘッド系ショットは肩や頭よりも高い位置のボールを打つための打ち方ですから、肩よりも低い位置、手や腕が縮こってしまう高さで打つ意味はないですが、トロフィーポーズにおける説明に出てくる

自ら高く上げたトスが “落ちてくるまでずっと待っている”

サーブ トロフィーポーズ

意味は何でしょうか?

サーブも、ピッチャーが腕を加速させてボールにエネルギーを加える事と同様ですから「トロフィーポーズで一時停止してエネルギーを溜める」という説明に根拠が伴わないです。

他に「ボールを打つ準備時間がほしいからトスを高く上げる」という事情もあります。「この位高くトスを上げないと間に合わない」という逆算でトスの高さを決めている方も少なくないと思います。

以下は

「ピッチャーがボールを投げる際のようにスムーズにサーブを打つためには『思い込み』を捨てて無駄を省いた動作をしてみましょう」

という鈴木貴男選手のレッスン動画です。

【テニス】世界一受けたいレッスン!スライスサーブ編①

スピンサーブとかのイメージが強すぎる

プロ選手の打ち方をイメージしたり、スピンサーブ等の打ち方をイメージしたりするあまり、自身の打ち方が変わってしまう、ズレた方向で打ち方がサーブの打ち方が定まってしまう事があります。

※身体の動かしやすさや柔軟性は人それぞれ。「この打ち方だけが正解」という事はないです。逆に「逆立ちちながらフォアを打つ」人が居ないように「身体の仕組みや機能は皆に共通する。安定かつスムーズにボールを打つためにもこれを学ぶべき」です。ボールを打ち続けるだけでは学ぶ機会がありません。

チチパス選手がサーブを打った後に身体が斜めに傾いているのは良く知られていると思います。

仮に体軸が地面と垂直の状態で身体が回転すれば「中心から身体半分外側。利き腕の肩から外側の位置を腕は移動してくる」のは分かりますね。腕は肩の先に付いているのですから。

身体の回転と利き腕肩の位置変化

これだと「本人が意図的に腕を上げている状態」です。

腕を上げた状態

身体の回転 (両足や身体の力を使った利き腕肩の前進) をラケットの初期加速に活かせない。腕の力だけで振るしかありません。

 腕を動かしてラケットを振る

「右腕は各関節に適切な角度を持って右肩よりも外側にあるのが自然な状態である」のは想像できると思います。

 身体の回転と利き腕肩の位置変化

投球動作と同じく身体を回転させつつ利き腕を強く振って前向きのエネルギーを発生させようとした際、利き腕肩側が少し上がり、体軸は非利き手側傾きやすいです。右利きなら身体を支え踏ん張る、前に踏み出した左足とのバランスがあるからでしょう。

ピッチャーの投球 身体の回転と利き腕肩の位置変化

でもそれ以上にトスが身体に近い、右利きなら左肩側に寄せて上げてしまうと「体軸を傾けた状態のまま打つしかない」です。

チチパス選手の打ち終わりの体勢はそれが理由だと思います。(プロは問題なくても我々だと毎回打ち方が変わる、バランスを崩す、安定してサーブが打てない要因になりそうです)

ここで、

「スピンサーブは頭の上、背中側にトスを上げるのではないか?」

と言われるかもしれませんが、

「(右利きなら) スピンサーブは前ではなく右方向に振る」
「打ち終わるまで横向きを保つ。身体を開かない」

と言われるのは

ごく簡単に言えば、フラット系なら横向きから身体を回転させたタイミングで正面(ネット方向)に振る。スピンサーブなら横向きのまま正面方向 (右利きなら右) にまっすぐ振る。いずれも身体の正面方向に振るのは変わらない。

という事だと考えます。

Roger Federer Kick Serve Analysis – BNP Paribas Open 2013

皆、フラット系サーブで身体を回転させた後、正面方向であるネット方向に振る事に慣れている。腕を振る方向とボールが飛ぶ方向が近しい。だから「横向きのまま正面方向である右側にまっすぐ振る。でもボールは左側であるネット方向に飛ぶ」という感覚が分かりづらいのだと考えます。

トスの位置の都合で、横向きのまま背中側に反っても身体の向きは変わらないので正面方向に反りを戻しつつ打てる。沿った角度のまま身体を回転させて正面を向こうとすれば当然、体軸が斜めに傾いたまま打つ感じにはなりますよね。

サーブ トスで上を向く

※繰り返しますが「これが間違いだ」という事ではありません。今回の目的は「自身の身体能力の範囲で最大値を出すためには?」であり、誰でもやりやすい方法を考える上での話です。

無理なく自身の身体能力が発揮できる打点位置、腕の振り方は?

最近、テニスの拳チャンネルさんに載った鈴木貴男選手のサーブレッスンです。

【テニス】世界一受けたい続編!鈴木貴男プロのサーブ基本動作①

【テニス】こんなに楽にサーブが打てる!鈴木貴男プロのサーブ基本レッスン②

【テニス】確実にサーブが安定する!鈴木貴男プロの基本レッスン③

「サーブと投球動作は共通した部分がある」と聞く事はあって「何がどう共通してくるのかを考える機会」はなかなかありません。(「自分で考えるは面倒だし分からないから、誰かが考えた事を教えてほしい」ですよね。)

私がよく鈴木貴男選手の動画を参考にしているので「鈴木選手の打ち方、説明が正しい」と言っているように思われるかもしれませんが、実際問題として、

「このような具体的な観点で納得感のある根拠ある説明。誰でも根本からサーブを改善できる情報を提供される提供元が殆どない」

というのが大きいです。

皆、「スライスサーブの打ち方はこう。コツはこれとこれとこれ」といった説明をさんざん聞いてきており、それでもうまく打てないのです。どこにいっても同じような説明で、皆、その説明が「正しいと思っている」のにです。

自分のテニスを上達させるのは結局自分です。コーチや周りの方ではありません。自分で自分の上達のために考える機会を設けるためにも“室の高い”情報に多く触れたいです。

ごく最近まで良くも悪くもこういった情報は高価で手に入りづらいものでした (お高めのDVD販売とか) 今はYouTubeで部分的にでも情報発信してくれる方々、組織があります。以前に紹介させていただいたテニスフォーラムさんの白戸仁コーチ、神谷勝則コーチのお話も参考になるものだと思います。

サーブが苦手な大学女子テニス選手をフォーム矯正しました

サーブの原理原則を踏まえた段階的指導法

こういったお話、情報が「正しいか、間違っているか」は見た人が決めれば良いと思います。(私には判断できないし、全て参考にさせていただくだけ) ただ、発信側の意図を抜きに「誰々が言っているのが正しい」「○○は✕✕な筈だ」と否定するのは対等ではない (同等の情報、立場で否定すべき?) と思います。

これらに共通するのは「サーブの打ち方はこうだから」ではなく、

「人の身体の構造上、こういう使い方が自然じゃない?」
「言われる通りにやったら、自然とそういう動きになるよね?」
「元々、誰でもできる動作。結果的にそれがサーブにも使える動作になっている」

といった事だと思います。

この辺りに

「自分の現状の “身体能力の範囲” で最高に近い速度を出す」

ヒントがあると思うのです。

筋トレ?
体幹トレーニング? 

もっと先にやっておくべきこと、やっていない事が残ったままなのだと改めて思います。

自身の身体能力の範囲で速度が出せる身体の使い方を

最後に私が歴代No.1のサーバーを打つ選手だと思うピート・サンプラスさんのサーブです。(引退後のエキシビション)

Pete Sampras Serve Full HD Slow Motion

打ち方上の個性はあれど、トロフィーポーズから打ち終わりまで身体の軸は垂直に近い状態を保たれていますね。トスを上げる位置が身体に近すぎず、腕を振った際に右肩・右腕が通る身体の右側、左足側に回転軸を寄せていく(体重移動)動作後の右肩・右腕が来るネット寄りの位置にトスを上げているからこそのスムーズな打つ方、身体のバランスだと考えます。 

そういう観点で情報を探しているという点はありますが、参考にさせていただいた説明や各プロ選手の打ち方も “形” ではなく、”根拠を伴う事象” として全てが繋がってくる気がしています。

2019年の秋位から「サーブはこうやって打つものだ」という話を置いておいて「自分の “現状の身体能力の範囲” で最高に近い速度を出す」という事を考えていますが、その中でまず気をつけたいと思ったのが今回の「サーブを打つ際に上を向く」という事でした。

ネット方向へ エネルギーの”量” と “加える方向” があるのですから初期加速からインパクトまで両足と身体でラケット面を押し支える、しっかりエネルギーを加える、インパクトの衝撃に耐える体勢としては「利き腕肩よりも前に位置でしっかりボールを捉える」事であり、腕だけで身体とのバランスや連動が取れていない体勢ではまず “速度” が出せません。

サーブ インパクトのイメージ

フォア側ショットであるサーブは両足や身体の力を使って利き腕肩の位置を前側に戻す身体の回転が初期加速に使わるので体軸の回転と体軸の前進(体重移動)分を加味して、最終的に足や身体に力が入る位置にトスを上げる必要があります。(まず速度が出せる身体の使い方を確認してから「サーブの打ち方」に落としてこんで行けば良い。「打ち方で身体の使い方が身につく」は難しい。実際それで出来ていない訳なので)

体軸の回転が初期加速、インパクト位置に影響してくる訳ですし、トスしたボールの位置変化(落下やズレ)を把握するほぼ唯一の情報源は両目からの視覚情報ですから、サーブのスイングをする際に身体の軸が傾いたり、ブレる、ズレるはうまく当たらない要因を自分で作っている事に他なりません。

最後にもう一度鈴木貴男選手の「ナチュラルスピンサーブ導入」の説明映像です。

身体の右側に離れた比較的低い位置で打っているので首や身体が大きく傾く事はないです。肩が回り、スイングをしても体軸や頭の位置は殆ど変わらないですね。身体の右側で腕を振った位置にラケット面、そして打点(ボール)があります。そこが足や身体に力が入っている、そしてインパクト面を強く押し支えられる位置 (腕と身体の関係性、連動性において) です。

「これはサーブではない」と言えばそれまでですが「サーブを理解するための段階練習」と考えれば問題なく受け入れられるのではないでしょうか。

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