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上達目指す以前に考えたい両足の役割について (テニス)

テニス 歩幅が広い構え

テニスにおける足の役割を考える

今回は「テニスにおける足(両足)の働き」について考えてみたいと思います。

といっても「テニスと足」でイメージするようなフットワーク等の話ではないです。

テニスの上達を目指すに辺り、ボールの打ち方を考える以前の基本部分を再確認する感じです。

※私は「自分の上達のため自分で考えた事」を書いています。テニスコーチでも専門家でもありません。予め、ご理解のほどお願いいたします。

両足の機能

テニスにも関係する身体の一部位としての両足の機能としては以下のようなものが上げられるでしょうか。

1. 姿勢を保つ
2. 移動するためエネルギーを得る

ごく単純な言い方をするなら「身体を支える土台となるのは”両足”」です。

地球には重力があり、単に直立している状態でも、私達は体重の重さ (60kgの方なら60kg)で地面を踏み、同じ強さで地面から押し返されています。(地面からの反力)

だから「立てている」のです。

同様に、地面を強く踏む方向を真下から向きを変える事で “進む” 事ができます。

自分が進みたい方向と逆方向に地面を蹴る、エネルギーを加える (前に進みたければ後ろ方向に蹴る)事で、地面から反力を得て、身体を移動させる (歩く、走る) 事ができます。

陸上のスタート

テニスでボールをどう打つか、ボールの打ち方を考える前に

「立つ事を含めて姿勢を維持するにも、身体を移動させるにも、我々は地面を踏み得られる反力を使っている」

という点をまず理解しておきたいです。

打ち方を “形” で伝える指導手順

初心者がテニスを教わる際、テイクバックの形、インパクトの形、フォロースルーの形など、“形” を確認させ再現させる手法で「ボールの打ち方」を教わります。

ラケットでボールを打つことに関する知識が無い中ですから「こうこう、こういう手順でボールを打つのが正しいフォアハンドストレートの打ち方ですよ」と説明されるのは心地よいし、安心感を覚えます。(授業やマニュアル社会の影響)

この指導方法は指示通りにすれば良いという反面、「自分で考える機会を奪う」という決定的なマイナス面があります。

初心者には良くても、その時期を過ぎれば相手とのボールの打ち合いがあり、

「見聞きするばかりで自分で考えない事でテニスへの理解が深まらない」

のです。

どんな打ち方でもテニスはできてしまうから

「ボールが飛び回転がかかるのは物理現象でしかない」ので、

我々は個々に個性的な打ち方をしていても “最低限” テニスが出来てしまう

のです。

仮に「逆立ちしながらボールを打つ」人がいれば、皆笑い「その打ち方は間違いだ」と言うでしょうが、指摘される方自身が「イメージは “フェデラー選手のフォアハンド”。でも撮影してみると何かギクシャクしてスムーズじゃない」なら五十歩百歩なのでしょう。

・身体の仕組みや機能を理解しない、知識を持たないままボールを打っているから、自分が「棒立ち」の「手打ち」になっていても気づけない

同じミスを同じように繰り返しているのに、それを「技術の未熟さ」や「調子が悪い」せいだと思ってしまう

等は身体の機能や仕組みがテニスの動き、ボールを打つ際にどう機能するのか理解できないままだからなのかもしれません。見た目の “形” でボールの打ち方を学ぶ手順では難しい点です。

人が移動する際の足の働き

直立の停止状態から「5m先のゴールまで “軽く駆け足位で” 進む」例を考えましょう。

※コートの半分の長さ、ベースライン中央からシングルサイドラインまでが4.115m、ダブルスのサイドラインまでが5.485mです。

コート半面の距離を走るる

全力で走る訳ではなく進み始めてゴールに到達するまでの歩幅や進み方はだいたい均等といった感じです。

このA地点からB地点までの移動の中で、

1. 停止状態から駆け出す瞬間
2. 走っている状態から止まる瞬間

の2つの段階が、走っている段階に比べて「特に地面を強く踏んでいる」のは分かるでしょうか?

物体には「慣性の法則」が働きます。

停止状態にある人体はその停止状態をし続けようとするので、これを動かす際のエネルギーは走っているより大きなものが必要となります。

高くジャンプしようとする際、無意識にでも、一度しゃがみこんで弾みを付ける(細かく言えば筋肉の伸長を利用している) のもこのためです。

同様に、速度を持って進む物体は慣性の法則でその直進運動をし続けようとするので、これを止める際には走っているより大きなエネルギーが必要となります。

高い位置から着地する際、強い負担が足にかかるのは分かりますね。これも落下速度が体重の何倍もの負担として足にかかったりするためです。走っている状態から止まる際も進むエネルギーを進む方向と反対側に地面を強く踏んで押し止める必要があります。

細かい説明はできませんがここでは、

「走る出す際と止まる際は走っている段階より強く地面を踏まないといけない」

といった程度で伝われば良いかなと思います。

「スプリットステップをする事」の定義

私はボールの打ち方を説明する際、

「スプリットステップとは何か?」がかなり曖昧なまま説明されている

と思っています。

一般的な理解 (定義?) としては「スプリットステップは、相手がボールを打つのに合わせてジャンプする事」といった感じでしょうか?

テニス スプリットステップ

これだと、ジャンプする事とその後にボールを打つ事が目的として結びつかないですよね。

「タイミングを測るために相手に合わせてジャンプする?」それもあるのでしょうが、

「大事なのはその後の “移動” であり、それに結びつく理解が持てていなければ、有効な動作にはならず、結果にも結びつかない」

と思うのです。

定義するなら例えばですが、

「相手がボールを打つ様子を観察しつつ、コースや球種を予測・判断し、着地した次の瞬間には、ボールが飛んでくる方向へ動き出すのがスプリットステップを行う目的」

といったものになるのでしょう。

テニス リターン

テニススクールの球出し練習において「コーチが球出しする際にスプリットステップをした人が着地した静止状態のまま、ボールが飛んでくるのを待っている時間がある」のをよく見ます。

着地した瞬間、強くボール方向へ動きだす気持ちや身体の準備が出来ていないから、直立状態に近いスタンス幅が狭い、力強さのない姿勢や構えになるのは当然とも言えます。下の図、前後左右、いずれかの方向に全力で駆け出さないと間に合わないと思っている姿勢、体勢には見えないですよね。

テニス 狭いスタンスでの構え

コーチの球出しのボールは速度も遅く、飛んでくるまで時間があるので言われるタイミング通りにスプリットステップを踏むと飛んでくるまで、準備まで時間が “余る” のは仕方ありません。

逆に速いサーブ、強いボールを打たれたら「速すぎて追いつけないよー」と思うのは、予測やそれに基づく判断も実行していなければそのボールに反応する心と身体の準備もしていないからなのかもしれません。

これもテニスを”形”で説明する指導方法の弊害だと思います。(でも「教え方が悪い」ではなく問題に目を向けられない自分を考えたいです。自分のテニスを上達させるのは自分自身ですからね。)

体重移動も「加速」である

ボールが飛ぶためのエネルギーは2つ。理解して使い分ける

ボールを飛ばす回転をかけるためのエネルギーはおおまかには

1) 速度を持って飛んでくるボールのエネルギーを反発させる
2) 自ら加速させたラケットのエネルギーをボールに伝える

の2つです。

時間の無い中、飛ばす距離が長くない、遠くまで飛ばす必要が少ないボレーは1のボールの持つエネルギーを重視したショット。

自らトスしたほぼ速度ゼロのボールを打つサーブは2のラケットのエネルギーで打つショット。

ストロークは打つ位置と状況により、1と2を組み合わる、割合を変えて打つショット。

と考えられます。

「ボレーではラケットを振るな」と言われるのは自らラケットでエネルギーを加えるより、ボールのエネルギーを反発させる事に専念した方が目的に合うからですが、実際は移動や操作等でラケットは動いています。

ただ、コーチが「ラケットを振るな」と言うのは「身体の使い方について何も考えようとせずボレーを打っていると、入れなさすぎ、力の入れすぎ、筋肉の緊張、腕・身体・足の連動等のバランスが悪い打ち方になる。ラケット、特にヘッド側が大きく動き正確性、再現性が下がる」故の “矯正法” だと考えます。

同時に矯正法でしかないので「振らない」と思っているだけではボレーの打ち方が劇的に良くなる事はないです。(どのショットでも「偶然掴む」は指導と言えない)

「体重移動」というもの

さて、テニスでは「体重移動をしてボールを打つ」とよく言われます。

「体重移動」もまた、その定義が曖昧なまま説明されていると思いますが、個人的に体重移動が指すのは、

・前側の脚上もしくは後ろ側の脚上への回転軸の移動
・実質的な意味でのラケットの加速

辺りだと考えます。

1)前側の脚上、もしくは後ろ側の脚上への身体の回転軸の移動

テニス フォアハンド インパクト テニス フォアハンド インパクト

両足の中心に回転軸が残ったままだと上半身しか回せない。

上半身だけ捻って打つ

オープンスタンスの場合、身体の前側に身体の中心軸がある状態が変化しないから目に見える「体重移動」が起こらない。(体重移動の説明ではスタンスの違いに触れない)

テニス フォアハンド 身体を捻ったテイクバック

2) 実質的意味でのラケットの加速

「ボレーは(積極的な意味での)スイングをしない」のが基本となりますが、相手の打ったボールに速度がない場合、比較的長い距離を飛ばさないといけない場合、踏込みつつボレーを打つ事があると思います。極端ですがこんな感じ

テニス 踏み込んで打つボレー

ボールに速度がない = エネルギーが小さいのでエネルギーの反発で飛距離が足りないなら、自らエネルギーを加える必要があります。

また、相手の浮いた返球を「パチン」叩くボレー等で「強く踏み込んで打てばパンチの効いたボレーになる」とか言われます。

筋肉の働きから言えばそういった事も言えなくもないのですが、実質的な意味で言えば「足を使って強く踏み込む事で身体がその分前進する。腕に持つラケットも身体の移動する分、同じ距離前進するから」だと考えます。

(手にラケットを握っただけの状態でも人が30km/hで走ればラケットも同じ速度で進む理屈)

また、物体が急加速すれば、慣性の法則で停止を維持しよつとする物体を支えるために腕や身体の力が入るので、ラケットが前進する速度自体とそういった身体の機能がタイミングよく組み合わさってパンチの効いたボレーといった物が生まれるのだろうと想像します。

足を動かすだけでも、腕を動かすだけでも、うまくいかない、足と身体、腕の連動が意味を持つのは分かると思います。

ボールの打ち方を習う際、強調されないかもしれませんが、体重移動という話も含め、

「足を使ってボール方向、打ちたい方向に身体を進める事でスイング以外でもラケットを加速させられる」

とまず理解しておきたいです。

ボールに反応し、追いかけ、止まり、ボールを打つ

実際のテニスはもっと複雑ですが、我々は、

・(予測に基づき心と身体の準備をしてから)相手の打つボールに反応
・ボールを追いかけ始める
・想定した打ち方に基づき、打つ(打てる)位置で止まる
・(スイングの有無はあっても)ボールを打つ

といった手順を踏んでいます。

これを身体の部位としての足の機能に注目して見てみましょう。(専門的な事ではなく「誰でも理解できる範囲で」です)

その前に「立つ、姿勢を保つ」ということ

我々は地面を踏み得られる反力によって地面に立ち、状況に合わせて身体のバランスを保つ事ができます。

直立姿勢

テニス 構えの体勢

頭部はボーリングのボール位の重さ(約6kg)があるそうで、地面を踏む唯一の接点で身体を支える元となる “両足の外側に頭部が出るだけ”でバランスを取れなくなるのです。

このため、テニス選手はどんな状況でも足の着き方、位置を工夫し、身体のバランス、頭の位置が両足のスタンスの間にあるようにしています、

フォアハンドストロークに限っても、軸足(利き腕側の足)、踏込足(非利き手側の足)の着き方に「”基本” はあるが “決まり” はない」と考えます。基本をしっかり確認しつつ、色んな状況での練習を行う事で意識的に使い分ける事ができるようになるという事です。

逆に言えば「1つの打ち方で全部の状況に対応しようとする」と(実質的に)適用力の低下に繋がり、本来の自分の実力が発揮できない要因になると考えます。

我々が “形” で教わる「フォアハンドストロークの打ち方」は基本1つ。毎回状況もボールの質も異なる中、同じ高さ、同じ打点、同じスイングで打とうとするのはよほど精密なフットワーク、予測の制度、反応の良さがないと難しいです。「スライスも使え」みたいな話ではなく、練習の中でもっと色々な打ち方を考え、試してみないと対応力、想像力は高まらないでしょう。「その1つもうまく打てないのに」ではなく「色んな打ち方を考える事で身体の使い方やボールにエネルギーを伝える事」を理解するきっかけになったりするのです。

足に多く力がかかるのは、動き出す、止まる、ラケットを加速させる際の3つ

テニスでボールを打つ合う際、日常的な歩行のように「ボールに向かって普通に歩きだし、その等速運動で歩きながら(止まること無く)ラケットを振ってボールを打つ」といった事はしないでしょう。

おおまかですが、

1. 駆け出す(走り出す)
2. 進んでいる状態から止まる
3. テイクバックをしてラケットの加速を開始する

3つのタイミングで強く地面を踏んでその反力を得る必要があると考えます。

強く加速してボールを追う、速い速度でボールを追い急激に止まる、強いスイングをしてボールを打とうとするなら尚更です。

※ボールを追い打つ準備をするまでの時間や距離によって、2と3を同時に行う事はありますね。

以下のようなボールの追い方、打ち方になっているとこれら3つのタイミングで強く地面が踏めない訳です。

 ボールを追い駆け出す際に強く掛け出せる体勢・姿勢になっていない。

テニス 狭いスタンスでの構え

強く地面を踏んでボールを追いかけ始められていないから、追いかける際の足の力も弱くチョコチョコと狭い歩幅でボールを追う。前進する力が弱いからそれに対応する「強く止まる」という事象が起きない

狭い歩幅でボールを追いかける

移動と停止で動作完了。止まった位置で別動作としてボールを打つ動きを始める

止まった位置で “改めて” 地面を強く踏んでラケットを加速させようとしても、移動→停止の段階を経た筋肉の伸長が起きないのでダイナミックな身体の使い方にならない。強いスイングもしづらい。

テニス 唐突にテイクバックする

と考えます。

※これらが「間違いだ」と言いたいのではないです。球出し等、速度のない、打つまで時間のある、ゆっくりとしたボールで打ち返せば良い状況なら打ててしまうでしょう。でも、そういった状況ですら “ミス” してしまうのはここにも理由の一端があると考えます。

動きに力強さがない、ダイナミックに見えないという事は足で地面を踏んで得られる反力を姿勢の維持にも、ラケットの加速 (インパクト面を押し支える) にも十分使えてないでしょう。

※バタバタと動けば良いという訳ではないのがまた難しい所ですね。その辺りは「テニスにおけるフットワークの使い方」や「スポーツ問わず姿勢維持の方法」を学びたいです。

どういう打ち方が良いといった事は言えませんが、下図のような明確な回転軸の移動、体重移動による実質的なラケット加速ができないまま、テイクバックの状態からそのまま身体を回して打つ方は割と多いと思うのです。

テニス 体重移動をしつつ打つフォアハンド

結果として起きるのは、伸び上がって打つような形だったり、身体が十分回転できず利き腕肩が前方に出てこない状態のまま打っていたり、腕が縮こまって懐が窮屈だったり等です。

また、上ではスクエアスタンスっぽい打ち方で表しましたが、オープンスタンス系の打ち方でも同じで、正面向きの構えの状態から何の予備動作もなく、いきなり十分なテイクバックを作るのは身体の各部の連動といった意味からもスムーズではないし、正確性も高まりません

テニス 十分なスタンス幅での構え

テニス フォアハンド 身体を捻ったテイクバック

※「リターンはどうなの?」と思うかもしれませんが、リターンはボレーと同じく「相手ボールのエネルギーを反発させる事に重きを置く事が望ましい」ショット。準備時間が取れる遅いサーブでもなければ「コンパクトな準備から飛ばしたい方向にインパクト面を作る」と考える方が目的に合うと考えます。よくある「ストロークのコンパクト版」という認識は適当とは思いません。私なら「ストロークのグリップでボレーを打つなら」といった発想を試します。

スプリットステップ着地時に(右利きフォアなら)左足で地面を踏むことで身体を右側に捻り、ラケットの初期加速に必要な体勢を取る流れが作れたりします。(あくまで一例ですが)

フォアハンドのを打つ際にボールへの入り方

スイング初期、ラケットの初期加速時、慣性の法則でその場に留まろうとするラケットに後方に引かれ、手や腕は思っている以上に動かせません。

腕の自由度が高まるのは、加速したラケットが身体を追い越して前に出てくる前後から、我々はこの辺りで腕の各関節の機能 (捻れ、曲がり) を利用してインパクト面を調整し、ラケット速度を落とさないようにし、スピンをかけています。

スイング開始時腕はラケットに後方へ引かれる

足で地面を踏む力、身体の力を連動させ、(腕を動かすのではなく) 横向きにより一旦下げた利き腕方を前方に戻す。その肩の移動がラケット初期加速のポイントになってくると考えます。

足の力と身体の捻り戻しで利き腕方を前進させる

※フェデラー選手、ナダル選手らを見てもセミウエスタン位までのグリップの方は低めの打点の方が打ちやすいので特に。重心がある腰付近でラケットを加速させるのに使えます。ウエスタン以上の厚いグリップの方は打点を高く取る方が、特性が活かせ、腰の位置からスイング軌道が遠くなるのでテイクバックを少し大きめにし、スイング自体も大きく取る、結果、より前の打点でも打てるという事になりそうです。

動き出し、止まり方、初期加速時に足の使い方を意識する

スタンスを広く取るというアドバイス

「もっとスタンスを広くとった方が良いといったアドバイスを聞く事がありますね。

テニスの拳 ボレー編!鈴木貴男プロの世界一受けたいレッスン

普段の直立状態では問題なくても、ラケットを握りボールを打つという動作をする中、狭いスタンスでは「手だけが出て足が出ない」打ち方にもなりやすいでしょう。(重心が高く地面も強く踏めないから) 

テニス 狭いスタンスでの構え

テニス 足が出ず手だけでボールを打ちに行く

簡単にバランスを崩す。「そのボールは打ててもその次に備えられない」といった事が起こります。

ここで重要なのは、

「スタンスを広く取る」のが目的ではなく、その後のしっかりとした動き出し、反応、その際の姿勢維持に繋がる姿勢・体勢を取る事が目的

である点です。

これも「ボレーではラケットを振るな」と同じ “矯正法” でしかないのでしょう。

多くの方は自分のスタンス幅が適切だと思っていますし、それが原因で「ボールを打つ際にバランスを崩している」「強い動き出しができない」「しっかりとしたスイングが出来ていない」とは思いません。「スタンスを広く取れ」と言われる際、そういった話は強調されないですからね。

広すぎるスタンス

逆に、スプリットステップからの着地でこれから前後左右に動き出すという際に、広すぎるスタンスでもその目的に合わなくなります。

「低い姿勢への意識」が強いのか、こういう構えの女性選手を見ます。

テニス 広すぎるスタンスでの構え

ワウリンカ選手もこういった構えをしますが足で地面を強く捉えていますし、単純に脚力が違いますからね。また、サーブの種類によってもスタンスを変えています。

脱線しますが、女性に見られる例では下図のような構えもあります。

テニス 異常に低い姿勢での構え

やはり「低い姿勢を取る」意識が強すぎるのでしょう。

恐らく、手を伸ばして届く身体の前側しか対応できないし、横に動くには身体の向き毎横を向き直すしかない。小さい歩幅で前進するしかなく、追いつけないボールが多く発生するだろうと想像します。

人の身体の構造や仕組みは皆共通するので、性別、体格差、筋力差等を理由にテニスにおける『基本的な身体の使い方』を変える意味は薄いでしょう。

また、(基本的に) 相手のボールは自コート側の規定のライン内で “一度” はバウンドする、物理的に届かない高さを通過させてポイントを得ることは出来ないので「伸長が低いから」何か変えないといけないという事もないと思います。(当然、個人差はありますが)

「スプリットステップの定義」の話でも書きましたが、

“形” や見た目ではなく、その後実行する、実行すべき状況に対して、身体の機能や仕組み、走る・ボールが飛ぶといった物理現象に対してどういった準備を行うべきか、それが自分のテニス技量を最大限活かす、無駄にミスや失点を発生させない事

だと思います。結果に繋がらない意識や思い込みはマイナス面しかありません。

動き出し、止まり方、初期加速時に地面を強く踏める

a. スプリットステップからの動き出し

スプリットステップした直後の動き出しでは、進行方向と逆側の足でまず地面を蹴り、進行方向にある足に体重をかけて身体をその方向に進めていきます。(シンプルな移動で考えた場合です。状況によって体重のかけかた足の着き方等変わりますが理屈は同じでしょう)

繰り返しになりますが、

「スプリットステップをする意味は、相手ボールとのタイミングを取る以上に、そのボールを追いかけ始めるため、強く地面を踏む、地面を蹴って移動を開始する、移動の必要がないならボールを打つ、インパクト面を押し支えるための体勢・姿勢を取るためのきっかけとなるもの」

です。

ジャンプして停止した直立状態に戻ってしまうような事が無いようにしたいです。

男子ダブルスを見るとネットプレイヤーが「ピョンピョンピョンピョン」と細かく何度もスプリットステップを踏んでいる (それをスプリットステップと呼ぶかは別にして) ケースがあります。

時間が無く相手のボール速度も確実でない中、色んな状況に対応できるべく細かく動き出しのタイミングを測る工夫です。「飛ぶことが目的ではない」ので、着地してボールが飛んでくるまで時間がある、停止状態が生まれてしまうなら、スプリットステップをするタイミングを遅らせる、再び飛ぶ、複数回飛ぶ等の工夫があって然りなのです。

 

b. 強く移動した後の停止

日本人は「小さなステップを多用して移動する、ボールに近づく事を好む」ように見えます。「足をたくさん動かすのが丁寧なテニスだ」といった認識が昔からあるからでしょう。(野球でもMLBの守備は日本野球の基準から見たら雑に見えたりする)

ただ、人の身体の構造は皆共通してくるので、自分の体格や体力に合った範囲で身体の機能を上手く使えば大きな歩幅(ストライド)で移動する、ボールに近づくのはむしろ望ましい事だと考えます。

自分の体格や体力に合ったという点がポイントですが、広い歩幅でも自分の身体を移動させられる、その分、地面を強く踏めているなら、その方が速く遠くまで移動できるからです。

当然、強いエネルギーで移動をしたら、ボールを打つ準備をするために“停止”しないといけません。移動するエネルギーが強い分、強く止まれる必要があります。

軸足と呼ばれる足の方で強く地面を踏み体重をかけて身体を支えつつ止まります。

追うボールが遠い、打つ準備をしている時間がない場合は、追い掛けながら準備をしつつ明確に止まること無く打つという事もありますが、

ボールは飛んでくる (移動し続けている)、自分も移動している、身体が動き視線もブレているといった状況の中でボールを捉える事は難しくなりますし、安定感、再現性も下がってしまいます。

また、次に述べる「ラケットの初期加速」を行うに停止して地面を強く踏める体勢が重要になってくるからです。

 

c. ラケットの初期加速

走る出す際と同様ですが、ある方向に力を加えたいと思ったらそれと逆方向に向けて地面を強く踏み、押す力と均衡が取れるよう足で身体を支える必要が生じます。

前方に向け押し支える際、足は後方に蹴って身体を支える

フォアハンドを打つ際なら、我々がエネルギーを加えたい方向、ボールの持つエネルギーを反発させたい方向は、広い意味で”前方向” なので、それら力を加える・反発させる方向と逆向きに足で地面を踏み、身体を押し支える体勢・姿勢を取る必要があります。

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足で地面を踏む力、身体の力を連動させ、(腕を動かすのではなく) 横向きにより一旦下げた利き腕方を前方に戻す。その肩の移動がラケット初期加速のポイントになってくる他、

足の力と身体の捻り戻しで利き腕方を前進させる

体重移動による実質的なラケットの加速 (前進) も使うためには軸足となる利き手側の足が重要になりますね。

ボールにトップスピンをかけるため「下から上のスイング」を強く言われるので、その一貫として曲げた膝を伸ばすようにしてスイングする、それが「ジャンプしながら打つ」という形で現れたりします。

ただ、「上に飛ぶ」「前に向かってエネルギーを加える・反発さえる」は運動方向が90度近く異なるので、

(ボールを打つタイミングを測るために毎回ジャンプしながら打つという方も居るでしょうが)

強いエネルギーで移動する
移動した後しっかりと止まる
ラケットを前に振るための初期加速

を考えるなら

「出来る限り、両方の足できっちりと地面を踏み、それで得られる反力を初期加速や姿勢の維持に利用する方が理にかなっている」

と考えます。

※高い打点で打つためにジャンプしながら打つという場合も、両足は着いたまま、ラケットやスイング軌道を上げてスイングするという方法も考えて良いと思います。

両足で地面を踏むことで姿勢・体勢を保ち、強く移動でき、止まれ、ラケットも加速・反発できる

あまり、具体的な事は掛けませんでしたが、

構えの状態からの狭いスタンスのまま、狭い歩幅でボールを追い、その歩幅のままなんとなく止まり、棒立ちに近い状態で、腕だけでラケットを一生懸命操作して飛ばそうとする、返球しようとする。

といったテニスをしているなら、自分の身体機能を発揮したテニスが出来ているとは言えません。

自分で認識していないくても周りを見ればこういうテニスの方は少なくないと思います。

ボールが飛んできてもダイナミックに移動せず、狭い歩幅のまま少し動き、腕の操作でなんとなく相手の方向に返球しようとする。弾み方が予想外でも “足ではなく腕で” 無理やり返球しようとする。

どんな打ち方でもテニスが出来ない訳ではないので打ち合う速度が上がらなければそれでもラリーっぽい打ち合いはできてしまいます。

実際、そういうメリハリのないテニス、スイングではどこに原因があるのか分からないが繰り返し起きるミスが多く発生してしまうものだと思います。

(やたらと一つ一つの動きが大きくドタバタに見えるテニスが良いという訳ではないですが「身体を上手く使う、スムーズに使う」という意識は何もしなければ生まれません。

また、

狭い歩幅のままなんとなくボールを追い、止まる所までは一緒だが、ボールを打つ準備をする時だけ動きが大きくなって強くラケットを振ろうとする。

のでも同じです。

そのポイントが終わるまで自分の攻守の動きは止まる事がないので、打ったら次の機会に合わせて移動し準備をするという事を繰り返さないといけませんし、強くボールを追えない、身体のバランスを支えれないスタンス、体勢・姿勢では自分の実力を発揮できずにミスが起こってしまっているかもしれません。「ボールが速くて追いつけない」と思うのも足の使い方に要因があるのかも。

説明が具体的でなく申し訳ないですが、

「メリハリの感じる動きの中でボールを追い、ボールを打てる」ということは、身体の機能や仕組を理解し、うまく使ってテニスが出来ているという事に繋がる

と考えます。

以下はフェデラー選手の練習風景です。軽く流すような練習ですが、ボールを打つ際、きっちりと止まり、足 (両足で、或いはいずれかの足) で地面をしっかり踏めいるのが分かります。身体はブレず、下半身と上半身の動きがバラバラではなく、ラケットも楽に、しっかりと振れます。

WIMBLEDON | Extended Roger Federer Practice Session 2019

スタンス幅も狭い広いは個人差があると思いますが重要なのは広さではなく、次の動きに合うように地面を強く踏めるか、足に体重をかけられるかといった部分です。

テニス 十分なスタンス幅での構え

そういった点が意識できると「ただ飛ぶだけのスプリットステップ」ではなくなるでしょうし、飛ぶタイミングや飛ぶ方、着地した後の事を考えたやり方が考えられるのではないかと思います。

最小は不自然でわざとらしくても、必要なタイミングで「ガツッ」と足で地面を強く踏む、踏める意識は需要なのです。

ボールを打つ技術、ボレーの技術等は急に上達したりはしづらいでしょう。

もし、今回挙げたような部分に注意を向けていなかった、あまり考える機会がなかったら、こういった「テニスの基本」以前の部分、「ボールの打ち方」で教わらない部分を考えてみる事は結果的に実力を発揮しやすくする (本来の実力が出るだけだがそれを「上達」と感じるかも) 事に繋がるかもしれません。

今回の事と直接的に繋がらないかもしれませんが、ナダル選手はフットボール (サッカー) の能力も極めて高いです。

RAFAEL NADAL ● Craziest Football Skills Ever

足で身体のバランスを取りつつ、身体の状態を把握し、ボールをコントロールする。そういった部分はどのスポーツでも繋がっている気がします。

「テニスの当たり前」から離れて、足と身体の関係の共通点に着目して他スポーツのトレーニング方法を参考にしてみても良いかもしれませんね。