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頭上を抜かれたロブをどう追い、処理するかという話 (テニス)

雁行陣の縦ロブ

スクールのダブルスではロブを使う事が多い

『ボールの打ち方』は気にしても『ゲームのやり方』に目が向かない

テニススクールのレッスンで行う試合 (正式なルールでなく何ポイント先取で交代等) は人数の多さ、スクール以外で行う可能性の大きさ等からほぼダブルス形式で行われます。

テニスは続けていくが、ゲームを一切やらないと言う方はまず居ないでしょう。主義はあっても練習ではゲーム形式、ダブルス形式によりものは外せません。

私はテニスをやるには『ボールの打ち方・ボールを打つ技術』『ゲームのやり方』を学ぶ物が必要だと思っています。

スクールのレッスンでもそれぞれに説明、指導がされますが目を向けるのは直接的に目で見える、自分がボールを操る事に繋がる『ボールの打ち方』の方です。

『ゲームのやり方』を知らない、理解しないままだと、

「小さい子にサッカーをやらせるとゴールキーパー以外の全員がボールに集まって自分が蹴ろうとしてしまう」

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のと同じような事がダブルスの場で起きます。

ダブルスは味方と自分、2人で攻守するものでしょうが、ダブルスの練習中に以下のような光景を見ないでしょうか?

  • 唐突に訪れたチャンスボールを確実に決められるかは “その時次第”。だから “ポイントに繋がる形・展開” を相手に仕掛け、自分から作りたい。
  • 後衛が “味方前衛・相手前衛” 関係なく相手後衛とラリーを打ち合おうとする。何の脈略もなくいきなり強打したり1発で決めてやろうしたりする。前衛の横を抜く事ばかり、ドロップショットを打つ事ばかり考えている。
  • 相手のミスショットを自分もミスショットで返すやり取り。
  • なんとなく打ったボールをなんとなく打った相手がミスしてポイントが決まってしまう。

周りでそういうダブルスを続けていると「どういう風にできるのがダブルスらしいやり方なの?」と実感が沸かないかもしれませんが、こうやって上げると思い当たる部分はあるかもしれません。

サッカーなら「パスを受けたら唐突にシュートを打つ」「ゴールキーパーの裏をかいたシュートを打ってやろうとする」といった事。

でも、自分も含めた11人で攻守の連携ができなければ試合にはならないでしょう。

直接的に教わり自身でも意識する『ボールの打ち方・ボールを打つ技術』と違い、『ゲームのやり方』はレッスンを受けるだけでは身につかない、レッスン以外の時間を使い自分自身で「学ぶ、理解する」という姿勢で居ないと身につかないものだと考えます。

スクールのダブルスでは “とにかく” ロブを使いたがる

テニススクールのレッスンでダブルスを教わる際、「雁行陣対雁行陣、後衛がストレート方向に縦ロブを上げ、相手側の陣形を崩し、後衛同士のクロスラリーからストレートラリーに移行させる」という練習を“必ず”やります。

テニス 雁行陣の縦ロブ

平行陣を使うのは難易度が上がりますし、球威や球種等が十分でない段階の方が雁行陣で仕掛けられる選択肢としては “比較的簡単” だからです。

なお、後衛が右利き同士ならポジションチェンジさせられた側の後衛はバック側になり不利 (相手後衛がフォア側で打てるという意味で)なので、縦ロブを上げられた時点でクロス方向にロブ返球して時間を稼ぎ、互いにアドサイドの雁行陣に戻すのが一つのセオリーになると思います。

テニス 縦ロブをクロスに返しても雁行陣に戻す

とは言っても、皆、バックハンドでクロスラリーが続くレベルに達していないか、基本「バックハンドが苦手」なので、ここまで指導がされずに縦ロブを上げてポジションチェンジさせる所止まりの練習になるのです。

そもそもバックハンドが十分打てるなら縦ロブを上げられた状態で後衛同士がストレートラリーの打ち合いを続けても良い訳ですからね。

結果、レッスンに参加している人たちにはこれが、

「縦ロブを上げて相手2人をポジションチェンジさせる練習」

と認識されてしまいます。

縦ロブを上げました。

相手がポジションチェンジしました。

縦ロブを上げた側の後衛は、その様子を見ながら、相手が返球してくるのを “その場で立ってボーッと待っている”。

という流れです。

縦ロブを上げるという事は「自分から仕掛けている」状態です。

相手にどういう返球をさせ、そのボールを自分と味方で確実にポイントを取れるどういう形に持っていくかのイメージを持ちつつ「縦ロブ」を上げるなら、相手の返球姿勢を見て浅く上げてくるなら前に詰めつつ、ロブカットか、スマッシュ、ドライブボレーで前衛側を狙うといった次の流れが自然と取れると思います。

同時に味方後衛が縦ロブを上げた時点で前衛はややセンター寄りにポジションを寄せて相手後衛が上げてくるクロスのロブを牽制、上記のような状況になりそうなら味方後衛が詰めてくる動きを助けるため、相手前衛を牽制するような動きができれば、味方後衛も打ちやすくなるでしょう。

ダブルスは2人で攻守するものですから「パートナーが打っている時は、自分は何もする事がない」といった思考だと相手に何のプレッシャーもなくボールを打たせてしまうのはなんとなくでも分かりますね。 

とにかくボールを上げたがる

雁行陣のダブルスを習う際には「相手前衛に攻撃されないためには高さのあるクロスラリーを使いなさい」と教わります。

身長含め腕が届く高さ + ラケットの長さ + ジャンプできる高さがあり、物理的に触れる事ができない『頭上の広い空間』は安全に思います。

テニスコートには間にネットがあり、ネットを越さない限り、テニスが続きません。最初はラケット面の中心付近に満足にボールが当たらなかったり、ボールが当たる際にラケット面が不安定になったりする事で「すごく振っているのにボールが飛ばない」ので「ネットを越さないと。もっとボールを上げなければ。」といった心理が練習をするたびに染み付いてきます。

男性はたまたま良い当たりをしたりで「常に持ち上げようとしなくてもネットは越える」と体感しますが、女性は不安から無意識でも「打ち上げる」選択をしがちです。最近のラケットは当てるだけでも簡単に飛んでいきますから、その心理を “悪い意味で” 助けてしまいます。

相手と打ち合っていても、ネットするか、相手の頭上を越えていくかで、なかなか丁度良く打てないという方はこの辺りが関係すると考えます。

きちんと当たれば十分ネットを越えるのに不安から”上向きの面”でインパクトする。当たり損なうとたまたま丁度良く飛ぶが、きちんと当たれば当然上に飛び、そもそも「インパクト面が飛ばしたい方向を向いていない」のだからうまく当たる確率も下がり飛ばない事も多いという具合です。

「相手の裏をかく」優越感からロブを多用する男性も居ますが、前述の縦ロブの話も含め、女性ダブルスで『ロブの打ち合い、ロブ合戦』になったり、女性がボレー対ストローク、ボレー対ボレーといったテンポが速くなったりするとすぐボールが浮いてしまうのはこういった心理がある程度大きく関係していると考えます。

(写真は内容と関係ありません)

 

私は「球威頼りの選択がしづらい分、男性よりやり方を考えて、テニス、ダブルスを考えられるのが女性の特性だ」と思っています。

周りの人の良いプレイやコーチの指導を聞いて素直に「やってみよう」とされるのは大概女性です。

男性で目立つのは、球威ばかり注目して「自分も」と思ったり、コーチの説明も「自分は分かってるから」と注意深く聞けない姿勢です。

それでうまく出来ないのですから

「ある程度のレベルまでは女性の方が上達しやすく。プレイも安定している。」

というのが私の印象です。(中級を越える位になると、スイング速度を球種や選択肢に活かしたり攻撃的な判断も不可欠となるので男性が強くなってきますね。)

ダブルスに求められ、内容の差に繋がる「ボレーで丁寧に打って足元を狙う。ストロークを丁寧に打って足元を狙う。」といったプレイは女性の方が取り組みやすいと思うのです。

打つので精一杯、ネットする不安からつい上向きの面で打ってしまう。コーチは一発で決めに来ないかもしれませんが勿体ないだけだと思います。

頭上を抜かれたロブをどう追うか?

長くなりましたが本題です。

対戦者同士のスキルや能力に関わらず、テニスにおいて頭上をロブで抜かれるという状況は起こり得ます。

色々書いてきましたが頭上をロブで抜くというのはある程度選びやすい選択肢だからです。ストロークのロブもあるでしょうし、ボレーで頭上を抜くロブもあります。

縦ロブでポジションチェンジする練習の例を上げましたが

『ロブを含む高い軌道でボールを打たれるとなかなかうまく返球できない』

事がとても多いと思います。

何故、ロブをうまく処理できないか?

ロブが対処しづらいと感じるのは『飛んでくる高い軌道。そこから生まれるバウンドの高さ。』が大きな理由になっているのは明白でしょう。

テニス ロブを含む高い軌道のボールとそのバウンド

トップスピンロブ等の速度のあるロブを打てる方は周りに多くはないと思いますし、軌道の低いロブを狙って打つのはそれなりに難しくなります。

従って、我々がまず考えるべきは、スライスロブ、フラットロブ等の比較的速度の遅い「追いつける」ロブをどう処理するかでしょう。

うまく打てない理由その1.「普段のストロークと同じ打ち方をしようとする」

これはロブの処理に限りません。

ボールの打ち方を “形” で教わる我々は全てのボールを「同じ打ち方で打とうとする」傾向を持ちます。

「テニスはオープンスキルのスポーツ」と言われます。

相手ありきなので、ダーツ等のように「自分が同じ投げ方を正確に再現し続けられれば結果に繋がる」という訳にはいきません。

「同じボールは2度と来ない」と言われる位、打つたびに違う状況の中、適切な選択をし、ラケットを操作して自分が思う返球をしなくてはなりません。

我々はボールの打ち方を “形” で教わります。打点の位置はここ、インパクトの形はこう、テイクバックの形はこう、フォロースルーの形はこうといった具合です。

運動とは身体の各部の機能を組み合わせ、連動させて実現するものですから、一連の運動の中の “ある一段階” を静止画的に再現できても大きな意味はないでしょう。

YouTubeを始めトッププロ達のスイングを高画質なスーパースローで繰り返し確認できる時代です。

テニス フォアハンド

ボールの打ち方を “形” で確認するのは、参考情報が書籍の写真位しかなかった頃の名残だと思います。(テニススクールは学校の授業を参考にしているものですし)

これだけスポーツ科学が発展してきている中、その教え方が30年以上も変わらず続いているのは疑問しかないです。

テニス 雑誌 選手の写真

ロブの処理の話に戻すと、球出しのボールを打つような高くない軌道、高く弾まないバウンドを自分から積極的な位置調整をする事もなく、ある程度のその場で待って、腰から胸の辺りでストロークを打つという事を基準にし、全てのボールをその “やり方” (打ち方ではなく敢えてやり方と書きますが) で打とうとすれば、タイミングも、位置も、打点も、全てが合わなくなってくるのは当然と言えます。

「ボールが飛び回転がかかるのは物理現象でしかない」です。

インパクト前後に一定方向にエネルギーが加わればボールは飛んでいきます。

我々が個々に個性的な打ち方をしていても最低限テニスが出来ているのはこのためで、プロ選手のような打ち方ができないとテニスが成立しないなら、皆、続けていないでしょう。

「”打ち方” がボールが飛ぶという現象を生むのではなく、事象を起こす要因が揃えばボールは飛ぶ」のです。

ボールが飛ぶ、回転するための使われるエネルギーは、

1) 速度を持って飛んでくるボールの持つエネルギーを反発させる。

2)自ら加速させたラケットの持つエネルギーをボールに伝達する。

の2つです。

(エネルギーの大きさは『1/2 x 物体重量 x 物体速度 ^2 (2乗)』)

ネット近くで時間もなく飛ばす距離が短く相手ボールの速度も残っている状況で打つボレーはスイングせずに1メイン、自ら上げたほぼ速度ゼロのボールを打つサーブは2メイン、ストロークは状況や選択に応じて1と2を組み合わせて使うという具合です。

初心者が基本としての打ち方を確認し身につける事は重要でしょうが「フォアハンドはこういう打ち方だ」という固定概念に縛られると「ボールに作用するラケット面、インパクト点の状態や働き」を意識できません。

このような打ち方をできるようになれという訳ではないですが、状況に応じて柔軟な発想、やり方は1つではないと考えたいです。

うまく打てない理由その2.「2バウンド目の位置を基準としない」

1で述べたように我々は自覚がなければ「全ての状況で同じ1つの打ち方で打とうとする」傾向を持ってしまうのですが、それが『バウンドの予測』という面にも繋がってきます。

ルールで言えば「相手が打ったボールがネットを通過し、自コートの決められたライン内に着地、そのボールが2バウンドするまでに返球する。」事になります。

ネットを越した後であれば、ボレーやドライブボレーのようにノーバウンドで打っても良いし、バウントしたボールを追いかけて2バウンド目ギリギリを地面近くで打っても良いのです。

コーチの球出しのボールやゆっくりとしたラリー等で「ボールは自分が居る位置に向かって飛んでくる。それを待ってから打つ。」事に慣れてしまうと

常にバウンド後の同じタイミング、例えば1,2の3といったテンポで打つ事がボールを打つ基準になってしまう

と考えます。

ロブなら相手が打つ瞬間に前に詰めてノーバウンドでロブカットでも良いし、1バウンド目の上がりばなを打っても良いし、2バウンド目ギリギリの位置を見定めて下がって待ち構えても良いのです。(難しさは別に全て腰から胸位の打点で打てます)

テニス ロブを含む高い軌道のボールとそのバウンド

ロブカットやハーフバウンドで打つのは技術や慣れも伴いますからここで意識したいのが

「2バウンド目が “どこ” になるか?」

です。

 自分が出来るかどうかは別にして『股抜きショット』と言われるトリックショット (英語だと後ろ向きも前向きも “tweener” と言います) を打つ場合、頭上をロブで抜かれた選手がボールを追い、2バウンドするギリギリ手前の段階で打つのは見ていて分かると思います。

これは

「相手が打ったボールを見て2バウンド目をする位置を予測して追いかけている」

という事を指しています。

Roger Federer ‘Tweener Hot Shot & More, Toronto 2014

球出しのようにゆっくり自分に向かって飛んでくるボールを打つ様に、常に「1バンド目をしたボールをいつ打つか」を前提にしていると「2バンド目はどこになるか」を考える機会は自分の中に訪れません 

補足:  Game based approach を参加する側も意識したい

最近は「Game based approach 」という言葉が広まっています。

「ゲームで発生する状況を切り抜いて練習をさせる」、実戦に即した練習をさせる方が能力を伸ばす、上達させる事に繋がるという考え方です。 

その場でほぼ移動せず、フォアハンドストロークを繰り返し打たせるといった練習は初心者に近い方だけで、最近は、レッスン最初の球出しから「フォアハンドとバックハンドを1回ずつ打つ」「アプローチショットを打って1stボレー、続いて決めるボレーを打つ」「スマッシュを打った後、返球をボレーで決める」といった内容が当たり前になってきているかと思います。

これは「ゲームで起こりうる状況を切り抜いて練習させている」のですから、ボールを打つ側がそういう意識を持っていなければ『単なる練習内容の設定』でしかなくなります。

アプローチショットを簡単にネットしたら次のボレーは出来ないし、バーンと強く打っていては自分がネットに付き構える時間がないまま相手のボールが帰ってきます。

スマッシュを打った後にボレーを打つ練習でも「ダブルスで相手2人。自分の位置からどこにどういうスマッシュを打てばボレーで攻撃できる返球を引き出せるか、そのボールをボレーするならどこにどう打つべきか」

なんとなくボールを打ちミスしている人達とそうやって練習意図を汲み取り自分なりに設定し取り組んでいる人達、同じ5分間の練習にとてつもない意味の差が生まれるのは想像に難しくなりません。

それが毎週、年間50回程も積み重なるのです。

同じ「球出しのボールをフォアハンドストロークで打つ」という状況でも、

球出しのボールが短ければ『前に詰めながら、バウンド直後のバウント手前で高い打点で』打ってみる。

球出しのボールが少し高めの軌道で深く飛んでくるなら『ポジションを一旦下げて、バウンドし2バウンド目をしそうな直前まで引きつけてから』打ってみる。

といった工夫はその人の意識付け、心がけ次第でいくらでも出来てしまいます。

うまく打てない理由その3.「人の身体の構造を理解していない」

人の身体の構造から言ってフォア側とバック側で決定的な違いがあります。

前述したようにボールが飛び回転がかかるエネルギーは、

・ボールのエネルギーを反発させるか

・ラケットのエネルギーをボールに伝えるか

の2つですから、インパクト前後でラケット面を安定的に押し支えられる姿勢を取りたいです。

ごくシンプルに言えば足や身体でボールとの接点を押し支えやすい体勢となります。

足や身体で押し支える姿勢

これを基準として、

フォア側ショットは準備段階として “横向き” を取ること事で一旦利き腕肩の位置を身体の後方に下げ

テニス フォアハンド テイクバック

足や身体の力を使って身体を回転させ、利き腕肩の位置を再び身体の前側に戻す距離をラケットの初期加速に利用しています。

ニス フォアハンド フォロースルー

これに対し、バックハンド側では準備段階としての”横向き”状態でも、そこからスイングしてのインパクト前後の段階でも利き腕肩は身体の前側にあり変わらないのです。

テニス バックハンド テイクバック

テニス バックハンド インパクト

つまり、「積極的に身体の回転を使うフォアハンド側に対し、バックハンド側は身体を軽く捻る位でしか使わない」という違いがある事を認識しておくと「フォハンドストロークもバックハンドストロークも同じ感覚で打つ」といった“うまく打てない場合に原因を考えにくくする” 理解を防げます。

(というか、そもそもの違いなので初期段階の指導で情報として伝えられて良い部分でしょうか。)

ラケットをスイングするという事で “誤魔化せて” しまえる部分を覗いて考えるためスイングしないで打つ事が前提となるボレーで考えると、

バックボレーで打てる打点の範囲はこの位なのに対し、

バックハンドボレーにおける打の点範
volleyvolley

  

※利き腕肩より手前で打つには背中を向ける状態になるがそれでも僅かな違い

フォアボレーは横向きから正面向きに近い状態まで対象可能な打点の範囲が広いのです。

フォハンドボレーにおける打点の範囲
volleyvolley

つまり、

「頭上を越されて後方に追いかけて打つような状況では利き腕肩が身体の後方に合っても打てる “フォア側” で打つ方が、バック側で打つより成功する確率が高くなる。」

と言えます。

当然、バック側に追わざるをえない場面もありますが、バック側で打とうとするとフォア側で打つより『両肩の幅分』より下がれないと身体の前側に利き腕肩がある位置では打てません。

「2バウンドするギリギリまで打てる」事を考えれば、変にバック側で打つ事を考えずに「最初からフォア側で打つぞと回り込むように追いかける」方が迷いを持たない分、速く追える可能性もあります。

ダブルスの試合映像を見ているとロブで頭上を抜かれた選手は “フォア側” で打つべく必要な距離を追いかけていく印象です。

他にも、プロが 『股抜きショット (tweener)』を行う映像を見ると

「ボールを後方に追いかけながらも、必ずフォアで打てる側から弧を描くように2バウンド目の位置に入っていく」

 のが分かります。

図: 頭上を越すロブをフォア側から回り込んで打つ

ロブを後ろ向きで追いフォア側から接近する

TOP 30 BEST EVER ATP TENNIS TWEENERS!

まっすぐボールめがけて背走し、ボールのバウンドを真上からまたいている訳ではないのです。

股抜きショットはフォアで打つので身体の構造を理解し、計算してボールに接近していると考えられます。

因みにですが、下記動画のマナリノ選手は「バック側に追いかける状況であり、フォア側に回り込む余裕もない。トリックショットが得意。」という状況から、バック側から接近し、後ろ向きのままフォアの面で返球するという選択をしたものだと思います。

MAGIC Adrian Mannarino reverse flick shot + winner 

ナダル選手もベルダスコ選手と組んだ対ブライアン兄弟戦のダブルスで似たようなショットを打っていますね。

まとめ

「ロブを上げられると返球が難しいな」「弾むボールだとうまく打てないな」と思われている方だと何段階も難しい事を言っているような感じかもしれませんが、「クレーが得意な選手のように大きくジャンプして高い位置で打ち返す」みたいな事をやるより確実な選択について考えていると思います。

1. “2バウンド” するまでに打てば良いのだから「このボールが2バウンド目をするのはどの辺りか」 を認識、予測し、そこに向かってポジションを下げる事を考える

球出しのボールを打つように1,2の3で打てる位置、バウンド後のタイミングで打とうとしては高く弾むバウンドに合わせるのは難しいです。

ボールはバウンドにより “確実” に速度が落ちるのだし、飛ぶ距離が長くなればなるほど空気抵抗でも速度は落ちます。

つまり2バウンド直前というのは最も速度が落ちている状態。

下がる分、自分が飛ばさないといけない距離は長くなりますが、ロブを強打で返球するのは難しいし、状況を考えるとダブルスならロブで返球するのがセオリーだったりします。

まずは確実に打てる位置まで下がれる、その位置でどう打つかを常に考えられるようにしたいです。

「ロブが上がった際、追いかけるけど追いつけず、打てる体勢にも入れなかった。」

というのは1つは相手がロブを打つ状況を把握してない、ロブを打つ事を予測してないという事がありますが、

「追いつけたけど、良い体勢で打てなかった。返球出来なかった。」

というケースも含めて

1バウンド目の位置を基準にボールを追いかけている

事も多いと思います。

「1バウンド目の位置を基準に追いかけると追う速度が途中で鈍る、無意識に調整のため減速してしまう」のです。

減速するなというのは難しいので2バウンド目の位置を意識して追いかけることでロスが減る可能性があります。(追いかける事自体はしんどくなりますが)

2. フォア側で打つ事を前提にする

述べたようにフォア側であれば横向きの利き腕肩が後方に下げられた状態でも打てるが、バック側は利き腕肩が身体の前側にある状態で打つ事になる。その差は『両肩の幅分』違う。

腕の各関節も外側から内側に柔軟に曲がるように出来ています。

腕関節の可動域1
腕関節の可動域2

従って、ロブ等、後方に追いかけて打つショットに対しては

「常にフォア側で打てるように回り込んで追いかける」

「弧を描くように回り込む事で直線距離より長く移動する可能性もあるが 前述の “2バウンドするギリギリまで打てる” 事を認識し、2バウンドする位置から腕とラケットの長さ分遠くまで移動する事まで考えて追う」

と言ったことが言えると考えます。

「バックが苦手だからフォアで打ちたい」という方は多いと思います。

2バウンド目の位置を意識し、地面スレスレまで打てるという余裕を持てれば、肩より高い位置で無理やり打とうとしたり、どう打つかイメージがないままバック側で返球しようとするといった “結果に繋がりにくいであろう中途半端な対応” を避けられると考えます。

3. 目標に対して正面向きで打つ必要がない

「常に同じ1つの打ち方で全てに対応しようとする」話のようにフォアハンドなら

常に身体を回転させ目標方向に身体を向けた状態で打つ

と無意識に思ってしまいます。

体勢を崩しても正面向きで打つ

これは後ろ向き、或いは横向きで追ったロブを打ち返そうとする際も同様で、身体を大きき回転させて目標方向を向いた状態でボールを打ちたくなるものです。

横向きのまま打つボレーの話をしましたが、腕の各関節の曲がる方向、可動する方向の事もあり、フォア側なら横向きから身体を回転させて正面向きに近い状態まで広い範囲で打点と取ることができます。

ボレーにおける打点の範囲

ただし、ボールを飛ばしたい方向にエネルギーを加えないといけませんし、ロブの2バウンド直前ならボール速度も遅いので横向きのまま “腕の動きでなんとか飛ばす” だけではコントロールも難しくなります。

足の力、身体の力が使える手段は考える必要があります。

こういう事ができるになれという事ではありませんが、

錦織選手が時折使うコンチネンタルグリップより “薄い” 位のグリップで打つフォアハンドスライスとスマッシュの複合技のような打ち方なら身体より後ろの位置でもボールが拾え、前に飛ばせます。

右利きなら右肩が後方にある、横向き、半身の姿勢でも返球する方法はあると考える方が「2バウンド目ギリギリまで打てる」という心理的余裕に合ってくると思います。

私はマンスール・バーラミさんのダブルス映像を良く見ます。

Legends: McEnroe/McEnroe v Bahrami/Santoro match highlights (1R) | Australian Open 2017

コミカルでショー的、ダブルスの試合とは言えないかもしれませんが、

高い技術を柔軟に使う「テニスはもっと自由で良い」

そんな事を体現されている気がしています。

「ボールが飛び回転がかかるのは物理現象でしかない」ですから、インパクト前後に一定方向にエネルギーが加わるようラケット面のインパクト点を機能させる。

それは、決められた打ち方を形として再現する練習より、もっと遊びのようなやり取りの中で自然と磨かれるような事なのかもしれません。

我々は指導を受ける中で既に色々と身につけてしまっていますから、情報を知り、考える事から始める感じでしょうか?

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