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サーブは理解しづらいからインパクト付近の条件だけを考えてみる [前半] (テニス)

サーブは打ち方をイメージしづらいから、部分、部分を確認していく

“形” を達成への拠り所にするから “ボールが飛ぶ事” に繋がらない

昨年11月に「サーブ、ラケットの担ぎ方を考える」という内容で書きました。

www.lond-jnl.me

サーブはストロークやボレーとは違った難しさがあります。

・ストロークやボレーと異なるボールとの距離感 (物理的に目から遠い、頭上のボール、目安となる背景物が少ない、自分の身体も見えず状態が把握できない)

・肩よりも上でラケットを振るという動作の差異

・自分でトスしたボールを打つという、足で移動し位置調整ができない状況

等、「目の前のボールを打つ」とは違う状況が、ボールを打つというイメージを作りにくくします。サーブだけは「どう打てばいいのかよく分からない」となる訳です。

ボールが飛び、回転がかかるのは「物理現象でしかない」です。

ラケットとボールが接触している時に “一定方向に力が働ければ” ボールはその方向に飛んでいきます。

ラケット面でボールを真上にポンポンと突く際、必要なのは接触点に安定して力が加わえる事とタイミングだけです。「グリップがー」「腕の形がー」等とは言いません。

でも、テニスの指導では『形』から情報を入れます。日本人は学校の授業の影響で何かをやる際にそれを行う手順を示されると安心感します。(「サーブを打つにはグリップはコンチネンタルにする。トスはこう、トロフィーポーズはこう、インパクトはこう、フォロースルーはこう」という説明を欲しがる。手順を示されないと「説明が不親切だ」と言う。)

トッププロ選手がこういった体勢からでも相手の脇を抜くエースが取れるのも、 “ボールを打つ形” ではなく、ボールのエネルギーを反発させる、ボールにエネルギーを加えるラケット面中の接触点を安定的に維持する事をプレイ中は常に意識しているためだと考えます。

皆「ラケット面が大事」 と理解しつつも、 “打つ形” とラケットとボールの関係性が理解の中で共存できていない感じです。

俗に言う『羽子板サーブ』はダメ例とされますが、初心者の方がどの位の力加減、角度で打てば良いか、打つ形ではなく「ラケット面とボール、飛びとの関係性」を自覚する手段としては使えるのかもしれません。

「サーブの打ち方」をイメージするあまりどの位置でどの角度・方向にボールが飛び出しているのかよく分からないなんて事はサーブでは特に多いですね。

自分を上達させるのは自分自身だから

私は

「自分のテニスを上達させるのはコーチや周りの人ではなく自分」

だと考えています。

自分が世界的に著名で実績あるコーチに3ヵ月教わったとしても「必ず目に見えて上達をする自信がある!!」と宣言できる方は少ないでしょう。

殆どの方が「やってみないと分からないなぁ」と言う気がします。

それは「上達は自分次第だ」と皆が自覚している事を表しているものです。

コーチの説明が悪い、スクールの指導が悪いと言いつつも、皆自分では分かっているのです。

見本を1度見ればすぐに再現できるような能力を持たない殆どの人にとって、自分で自分を上達させるには自分のテニスへの理解や知識を深める必要があります。

簡単に上達出来れば楽で良いですが、必要な苦労はした方がその経過も含め自力に厚みが増します。プロの “コツ” を聞きたがるのが「試験前に毎度ノートを借りにくる人」みたいです。試験勉強もしないし授業自体サボる感じ。自分で考えてみないと理解は深まりませんね。

「自分は他の人より色々考えている。ネットで調べ、動画や本も見ている。それでも上達しない。」という方のテニスが良くも悪もどんどん変わっているという事は案外無いものです。(“打ち方をマネる”ではなく理解が深まり変化が生まれるという事)

人から言われる「良くなったねぇ」は以前と比べて変わったという事ですからね。

大学の授業を小学生が聞いても理解は難しいと思いますが、これには「小学生でも分かるような例を用いて説明するアプローチ」も出来ますし、「小学生が頑張って理解し知識を増すアプローチ」もできます。

どちらも目指しているのは「小学生本人が理解できている事」です。

我々が行うべきは「教え方が悪い」と言う事でも「簡単な例で説明してくれ (要は”コツ”を教えてくれという事)」と言う事でもなく、自分のテニスに関する理解を高める事だと考えます。

サーブについて部分、部分から考えてみる

上達目指して日々考えるせいで取り組む姿勢に厳しくなってしまいます。情報があっても理解しようとしなければ自分の理解は深まりませんからね。

長くなりましたが、今回考えるのは『サーブのインパクトに関して』です。

毎度の事ですが「サーブのインパクトはこうすべきだ」といった話ではないです。

サーブの打ち方は自身の打ち方を日々見ているコーチの方に相談すべきです。合った事も打ち方を見た事もない人の話をそのまま参考にするのは無理があるでしょう。

ボールを打ちながら自分のサーブの打ち方を確認するのは難しい。サーブは特にそういうショット。このため「個々の部分、部分で関係する条件を確認していく。それらの情報を基にサーブ全体を考えていく。」という手順があっても良いのかなと思います。映像を撮って確認、考えるのも重要でしょう。

その前にボールを飛ばし回転をかけるためのエネルギーについて

我々は普段「ラケットでボールを飛ばしている」と漠然と考えますが、ボールが飛び回転がかかるのに使われるエネルギーには大きく2つがあると思います。

その2つとは

1) 速度を持って飛んでくるボールの持つエネルギーを反発させる

2) ラケットを加速させて持たせたエネルギーをボールに伝える

です。

エネルギーの大きさは『1/2 x 重量 x 速度 ^2 (2乗)』で計算されます。

インパクト時にボールが持っているエネルギー量は1/2 x ボール重量(56~59.4g) x その時点の速度^2。ラケットが加速しインパクト時に持っているエネルギー量は1/2 x ラケット重量(250~320gとか) x その時点の速度^2です。

つまり同じ速さで振るならラケットは重い方が有利。10~20g軽くしてもその人がラケットを振れる速さは速くはならないでしょう。つまり(感覚面を除けば)純粋にマイナス。ラケット速度が上がればエネルギーは2乗で増えるので道具を変えるより安定的に速く振れる身体の使い方を考える方が妥当です。その人の持つ能力を高く発揮できる身体の使い方が出来ていないのに「筋トレがー、体幹がー」と言う話も視点がズレていると思います。

ボールを飛ばすのに使えるエネルギーが2つある事で、ネットから或いはボールを打つ相手からの距離、ボールを打つ際のボール速度等により我々はショットの種類を使い分けています。

時間の無い中、ネットに近い飛ばす距離が必要無いボレーはほぼスイングせずに1をメインで打つショット。

自分でトスしたほぼ速度ゼロのボールを打つサーブはほぼ2で打つショット。

ストロークは状況に応じて1と2、両方のバランスを取りつつ打つといった感じです。

それぞれの “打ち方” を形で教わりますが、実際ボールを打つにあたってはこれらの特性と各場面で何故そのショットを使用するのかを理解しておくとテニスへの理解が深まります。

相手のボールが遅ければ(エネルギーを加えるため)ネット際でドライブボレーを打っても良いし、リターンにボレーの要素を使うのもアリです。

そのショットの導入時の理解としてはよくてもボレーはこういうものだ、リターンはこういうものだというだけでは “自分が出来ない事” で自分を苦しめる形になります。

全てのショットが一定レベル以上出来ている段階が前提となってくるプロとは違い、我々レベルにおけるテニスの上達とは「出来る事を伸ばす事」ではなく「出来ない事を減らす事」だろうと思います。 

たくさんある出来ない事を放置したまま「フォアが得意」と言うのはちょっと無理があります。

条件1. フォア側ショットは一旦下げた利き腕を戻す距離で加速させる

我々は漠然と「ラケットでボールを打つ」と考えていますが、フォア側、バック側で体の使い方に決定的な違いがあります。

それは『準備段階での利き腕肩の位置』です。

フォアハンドで横向きを取ると利き腕肩は”身体の後ろ側”に下がる

フォアハンドのテイクバック

バックハンドで横向きを取ると利き腕肩は”身体の前側”のまま変わらない

バックハンドのテイクバック

準備段階として “横向き” を作った際、利き腕肩の位置が全く異なるのが分かります。

準備段階からインパクト前後まで”利き腕肩の位置が身体の前側にあって変わらない” バック側に比べてフォア側のショットは

「横向きにより一旦後方に下げた利き腕肩を、体の回転・ねじり戻しにより再び体の前側に戻す事で “腕やラケットの加速距離” を確保している」

と言えます。

同時に「腕にある肩・肘・手首・指の各関節も “体の外側から中心に向けて” 柔軟に曲がる。(逆に曲がるのは肩と手首だけ)」という点もフォア側、バック側でボールを打つ際の身体の使い方に違いを必要とさせます。

腕関節の曲がり方1 腕関節の曲がり方2 腕関節の曲がり方3

サーブにおいても「利き腕側に横向きの状態からトスを上げ、身体をターゲット方向に回転させつつボールを打つ」 は変わりません。

「横向きから身体を回転させて打つなんて十分分かっているよ」と言われそうですがフォア側、バック側で体の使い方が違う点はとても重要な事柄だと思いますので確認しておきたいです。

条件2. 腕の可動域。スイング初期、腕はラケットに後方に引かれる

腕の可動域は関節の仕組み上限られている

上で確認したように肩を含む腕関節の稼働範囲は肩の延長線上の位置から肘を曲げて手が反対側の肩に触れる位までの間です。 

腕関節の曲がり方1 腕関節の曲がり方2 腕関節の曲がり方3

上腕 (肩から肘までの部分) は肩よりも上に上がらないし、肩よりも背中側にも曲がりません。一方の腕を上げながらもう一方の手で肩回りを触れば分かりますが、人が腕を肩よりも上に上げる際は肩回りの関節を回し(肩甲骨を開く)事で見た目上の動かせる方向を変化させています。

腕は肩甲骨の向きの変化によって肩よりも上に上げられる

ラケットには慣性の法則が働き腕を後方に引っ張る

物体であるラケットには慣性の法則が働き、テイクバックで停止状態にあるラケットはスイング開始時にグリップ側から手に引かれても、ヘッド側はその場に留まろうとするので、ヘッド側が加速して手の位置を追い越していくまで、ラケットを引く手をスイング軌道後方に引っ張り続けます。 (その結果生まれるのが手首が甲側に曲がるラケットのラグ(遅れ)やラケットダウンだと考えています。)

ラケットに働く慣性の法則1 ラケットに働く慣性の法則2

スイングの初期段階で、ラケットに後方へ引っ張られる手や腕は、我々が思っているほど自由には動かせない状態です。

フォアハンドならワイパースイングと呼ばれるようなフォロースルーに向けて腕を捻じる、たたむ動作。サーブならプロネーションと呼ばれるような現象は「グリップ側から引っ張られたラケットが加速する事でヘッド側(ラケット面側)が手や腕より速度が速くなる、位置的に”追い越す” 前後でようやく行えるようになる」 と考えます。

テニス フォアハンドストローク

スイングを考える際にその事を意識する必要はないですが理解しておく必要はあるでしょう。 

我々は「腕を振ってラケットをスイングしている」と考えますが、スイング初期においてラケットに引かれて腕は殆ど動かせない。つまり、横向きを取り一旦後方に下げた利き腕肩の位置を、身体を回転させて戻して得られるラケットの移動距離がスイング初期の急激なラケット加速を生む要因であると考えられます。

スイング初期のラケット加速 (物理的にラケットが目標方向に “前進” する事) に大きく関係しているのは身体の回転という事です。

「フォハンドやサーブでパワーを出すには身体の捻じれが重要だ」と言われたりしますが、スタンスから横向きを取った状態と正面向きから身体を捻じった状態、どちらも身体を回転させた際、「どちらがより強く、利き腕肩の位置を身体の前に移動させられるか?」と考えれば、恐らく後者であろうと言えます。

ォアハンドの横向きテイクバック フォアハンド 身体を捻じるテイクバック

「腕の力は弱いから身体全体を使って打て」と言われますが、ラケットの初期加速を生むのは身体のねじり戻しと地面を強く踏んで得られる反力等を組み合わせる事でしょう。これが強く使えるのも身体を捻じった状態ですね。スイング初期に腕は積極的に動かせないのだから尚更です。

ただ注意しないといけないのは「だからスクエアスタンスはダメ。オープンスタンスで打つ方が強いボールが打てる」という誤解です。色々な状態でボールを打つ必要がるテニスです。スタンスやボールを打つ際の足の着き方は無数にあります。オープンスタンスでも身体を捻じれない人は俗に言う「手打ち」でしょうし、プロ選手はスタンスから横向きを取っても身体を捻じって地面を強く踏みパワーを得ていたりします。この辺も打ち方を “形” で見て区分したがる弊害でしょうか。

条件3. トスは”横向きの状態” で “非利き手” で上げる

サーブでトスを上げる際、身体の状態は準備段階である“ターゲット方向に対して横向きの状態”です。同時に“トスは非利き手 (右利きなら左手)で”上げます。

これは「トスが上がる位置は “身体の非利き手側” だ」という事実を示しています。

当たり前のように思うでしょうか? (以下、説明の都合で右利きの例とします)

右利きの人がトスすると、ボールが上がるのは身体の左側になります。サーブを教わる際もこの位置で上げなさいと言われるはずです。

前述したようにほぼ速度ゼロのボールを打つサーブにおいてボールの飛びと回転を生むエネルギーはラケットから伝えられるものです。また、ラケット重量は固定なのでインパクト時のラケット速度が速くなればなるほどラケットの持つエネルギー量は2乗で増える計算です。(ボールに伝わるエネルギー量は全体の一部ですし、正確に当たる事が伝達量に大きく影響もします。)

ラケットの初期加速を得るため、横向きの状態から身体を回転させる事で利き腕肩の位置を身体前方に戻したい訳ですが、

身体の回転軸を背骨の位置だと考えた場合、

「横向きの状態で身体の左側に上げたトスに対し、正面向きになった際、右肩の位置がボールの位置に近づかない」

のが分かります。(あくまで単純な回転で考えた場合です)

単純な身体の回転でサーブを打つと利き腕肩がボールに近づかない

ここで生まれる距離の差がサーブに影響している例があります。

時折、お尻が後方に下がった、腰が引けたような状態で腕だけが前に伸びたようなインパクトでサーブやスマッシュを打つ方を見ますよね。

腰が引け腕の差し伸ばして打つサーブ

また、落ちてくるトスに対するタイミングを合わせるためや、サーブアンドボレーなどの意識が強い方等は身体を前方に倒れ込みながらサーブを打つ方もいますね。 

身体を倒れ込ませながら打つサーブ

※因みに、全てのショットにおいて「ボールをより正確に捉え、エネルギーを伝え、自分が打ちたい方向・角度に対し、自分が打ちたい球種で打つためには、ボールを捉える瞬間、身体は “停止状態” にある事が望ましい」と考えられます。動きながら、身体がブレながらではうまく打てませんね。これはスタンスや体軸、バランス等が関連します。多くの方はスタンスが狭く、バランスが崩れやすく、強い前進も強い停止も難しくなってしまっています。「基本なんて自分は十分できている」と思わずに映像を撮って確認してみる等が大事です。

いずれもラケットが得たエネルギーを適切のボールに伝える姿勢として十分でないと言えるでしょう。実際、いずれの打ち方をされる方もサーブ速度は遅いだろうと思います。 

求められるボールの回転方向の違い(逆回転・順回転)からリリースポイントが目標方向(ホームベース側)にかなり近づく点がサーブと異なってくると考えますが、腕を強く振るために投球動作のように “力を加えるポイントに身体の回転軸を近づけていく” という事が必要になるだろうと考えます。

身体を回転させつつボールにエネルギーを加える点に利き腕肩を近づける

その際、回転軸全体がボールに近づくことが重要です。

腕だけをボールに近づける、上半身だけをボールに近づけようとする事で前述した不安定に前傾したインパクトを生みます。ラケットの初期加速を生むのは身体の捻じれ戻しや足で地面を踏む反力を含む身体全体を連動させた力だと書きました。軸が傾き、腕だけ上半身だけで打とうとすれば速度が出ないのは当然ですね。

また軸が傾いたコマの外周軌道がブレブレになるのは想像が付きますね。

回転軸がブレたコマ

この辺りも「当たり前」のように感じるかもしれませんが、確認して認識しておくことで理解が深まると思います。

条件4. ラケットは常に “身体の利き腕側” で振っている

これはちょっと説明が難しい所ですが

「サーブにおいて振り始めからインパクトまでラケットの位置は常に身体を基準としてその利き手側(右利きなら身体の右側)にある」

という事です。

tennis serve tennis serve

フォア側ショットであるサーブは身体の回転により利き腕肩の位置を身体の前方に戻す距離を加速に利用します。身体を回転させる事でラケットの描く軌道が3次元的に複雑になりますが、前述したように上腕は肩よりも背中側には曲がりません。

田中将大投手の投球をキャッチャー側から見て見ましょう。 

Masahiro Tanaka fastball in slow motion

横向きの状態でも手に握ったボールは投げる瞬間まで身体の右側に存在し続けるのが分かります。肩よりも後ろのラインには入りません。

「ラケットダウンは慣性の法則で停止位置に留まろうとするラケットがグリップ側から引く手をスイング軌道後方に引っ張る事で起きる現象だろう」と書きました。ラケットダウンはスイングの過程で起こる現象であり作る必要がないという事です。

でも、テニスの指導では、ラケットダウンという状態を “形” で作らせ、それが “段階” として存在させる必要であるという説明がされます。

ラケットダウンという指導1

ラケットダウンという指導2

でも考えて見れば、「頭上に高く上げたトスではなく、ネットに近い位置のあまり高くない打点でスマッシュを地面に向けて打つ、ラケットを上方向ではなく水平に近い方向(前に)振っていくと考えれば、このようなラケットダウンは必要ない」でしょう。

恐らく下図のような状態から打ちにいくことになると思います。

まさにピッチャーがボールを投げるような腕の使い方に近くなりますし、腕は身体の右側を通過して縦に振られる事になります。

肘の角度を維持すれば、ラケットは身体から見て肘の位置、身体から一定の距離を持った軌道をぐるっと回って出てきます。(背中にラケット面が付いたような位置から振り出されません)

ラオニッチ選手やデミノー選手のサーブを見て分かる通り、手を後方に引っ張るラケットに負けずに”肘の角度”を適切に保ち続ければ、ラケットの肘の位置よりも身体側に大きく接近する事はない、適度に身体から距離を保った利き手側を通過していくと考えます。

MIlos Raonic Serve In Super Slow Motion – 2013 Cincinnati Open

後述しますが、逆にインパクトに向けて、頭上のボールにラケットを当てる・接近させる意識が、肘を伸ばす、腕を伸ばす動作を生みますが、腕の伸ばした状態では肩支点の稼働になってしまい腕を強く振れません。

腕を振る動作には各関節の角度を適切に保つ事が重要という事ですね。  

体の回転とラケットの軌道は別物

ここは少し蛇足ですが身体の回転とラケット軌道は別物という話。

「フォアハンドストロークは強く身体を回転させてスイングする」と考える方は多いかもしれませんが、体と腕の位置関係が固定で身体が回転した角度の分だけ腕とラケットがぐるっと回ってくるようなスイングをされる方を見ます。

身体と腕、ラケットが同一円周軌道で一直線に回るフォアハンド

背中側にヘッド部が来る大きなテイクバック、踏み込まずその場で体を回すスイングをしたい方に見られる気がします。もちろん「ボールが飛び回転がかかるのは物理現象でしかない」ですからこういう打ち方が正しくないという事を言いたい訳ではありません。

ただ、ボールを飛ばし回転をかけるのに必要なラケットが持つエネルギー量はインパクト時のラケット速度が大きく影響し、発生したエネルギーを効率よくボールに伝えるにはインパクト時のラケット面の正確性も必要です。

エネルギーの大きさは『1/2 x 重量 x 速度 ^2 (2乗)』で計算されます。

フォアハンドストロークは身体の回転により一旦下げた利き腕肩を身体の前側に戻す距離でラケットや腕を加速させると言っても「加速性や軌道の安定性からラケットはできるだけ直線的に移動する方が良い」でしょうし「短い時点で瞬間的に加速させる方が準備の時間も短くできるし効率も良い」でしょう。

フェデラー選手や錦織選手は身体を捻じったコンパクトなテイクバックを取る印象ですが、スイング軌道としてはこのような形になると想像します。(上と同じ90度身体を回転させた図ですよ)

身体の回転とラケットの加速を別に考えるフォアハンド

Roger Federer Forehand Slow Motion – Indian Wells ATP (HD)

 

条件5. ボールも “身体の利き腕側” で打っている 

「ボールを打つ際に身体の片方に “壁” を作る」といった話を聞いた事があるでしょうか?

サーブに限らず、ストロークやボレーでも言われる事があります。

サーブには後ろ側の足を引き寄せるピンポイントスタンスと引き寄せないプラットフォームスタンスがあると言われますが、スタンスと関係なく身体の回転軸、身体の中心をボールに対しどの位置に置き、どういう体勢でインパクトしボールを打つ (エネルギーを加える)かという事が重要になります。

tennis serve 

 

身体の回転と体重移動という話

上で、横向きでトスを上げた後、身体の回転軸を含めた身体全体を骨盤を含めた基盤ごとボールに寄せていかないと腕を伸ばす、上半身を前傾させる等して帳尻を合わる事となり、強くボールにエネルギーを加えられなくなると書きました。

身体を回転させつつボールにエネルギーを加える点に利き腕肩を近づける

でも、この事はボールと身体の距離だけの話には終わりません。

テニスでもよく「体重移動をして打て」とか「体重をぶつけないと打ち負ける」といった話を聞きますが、私は

「両足の真ん中、身体の中央に身体の回転軸を置いた状態では左右の足から安定的に支えられるため身体を回転させづらい。横向きから身体を回転させる際、右足、左足のいずれかの脚上に身体の回転軸を移動させる事でフィギュアスケートのスピンのように足先から頭までを同じ軸で回転しやすくできる。それが”体重移動”と言われるものだ」

と考えています。

両足の中心に回転軸があると腰から下が回らない

両足の間に回転軸があると上半身しか回せない

左脚上に回転軸を寄せると体を回しやすい

踏込足側の上に回転軸を移動させると身体を回しやすい

後ろ側の脚上でも同様

後ろ側の脚上に回転軸を移動させても身体を回しやすい

目に見える “体重移動” がないオープン系スタンスも身体の前側に回転軸があるから両足で体を支えられ、ボールにエネルギーを加えられる

いわゆるオーブンスタンスは目に見える体重移動がない

何かを飛ばすため強く腕を振る際、単純な身体を回転では不十分

ピッチャーを例にしてあげますが、横向きの状態で非利き手側の足を上げ、ボールを握る利き手でトップを作り、非利き手側の足をホームベース方向に踏み出すのに合わせて身体を回転させ、決まったリリースポイントに腕が到達した段階でボールを投げます。

baseball pitcher

 

baseball pitcher

前述した身体の回転軸を基盤となる骨盤からリリースポイントに寄せていくのですが、単純に “前” という訳ではなく

「ボールをリリースするポイントに身体を寄せていき、身体を強く回転させる事で右肩をその位置に強く出していく」

感じです。

以前「身体の回転させる」という事と「身体の右側・左側を前後に入れ替える(2軸の入れ替え)」という事はその効果が違ってくるという事を書きました。

身体を回転させる

単純に身体を回転させる

身体の右側、左側を前後に入れ替える 

身体の右側、左側の軸を前後に入れ替える1

身体の右側、左側の軸を前後に入れ替える2

ボクシングのストレートパンチ、相撲のツッパリ、空手の正拳突き等はこれらを動作に用いていると考えます。

腕を強く突き出す動きですが、腕というより身体を捻じる動きをきっかけに左右の肩甲骨をそれぞれ動かす感じ。単純に身体を回転させているのではないので腕を突き出すのに合わせて足で押す、或いは腕を加速させる事も出来ます。

※両足で地面を強く踏み、下半身から身体を支えられます。俗に言う「腰が入る」というヤツです。

「身体が開くのを我慢しろ」と言われる話

フォアハンドストロークやサーブを打つ際、「身体が開くのが早い」「身体が開くのをギリギリまで我慢しろ」と言われたりしますね。

それは

「身体の中心を回転軸として身体の右側と左側が均等に回転する状況で、回転しないようにしろ (身体を回すな)

というより

「身体の左右に軸を置き、身体の中心ではなくその左右の軸を入れ替える事で横向きから正面向きになっていく」

と考える方が的確ではないかと思うのです。

すいません。少し分かりづらいですよね。

ラケットは身体の回転に伴って身体からの距離で見た肘の位置を身体の利き腕を移動して前に出てきます。(前述したようにスイング初期、腕はほぼ動かせません。足で地面を踏む反力、身体のねじり戻し等を使って横向きで下がった利き腕肩の位置を身体の回転で身体の前側に戻す距離でラケットを加速させます。)

身体の左右を2つの軸と考えこれらの位置を入れ替えると考えれば、

身体の回転軸は身体の中央である必要はなく、右利きなら身体の中央より左肩に近い位置に回転軸を置き、身体の中心を回転軸とするより、右肩側を中心からより遠い位置から回してくることができます。

比較的、身体が直立に近い、自然な状態でサーブを打つティーム選手を例にあげますが、横向きで身体の後方にある右肩が身体の回転で前に出ていく際、回転の軸は身体の中心である背骨の位置というより、やや左肩側にあり、その点から右肩までを半径としてグルっと右肩、右腕が出てくる印象を感じます。

Dominic Thiem practice

同じ時間で同じ角度回転する場合、中心から遠い方が長い距離を移動する必要があるのでその速度は速くなります。

回転の中心軸から遠い方が速度は速い

ただ、より速度を出すためには加速するエネルギーが必要で長い距離を進むにも同じくエネルギーが必要です。フォアハンドストロークで身体から離れた、背中側に大きく入るようなテイクバックを取り、身体の回りを遠くぐるっと回ってくるスイングをされる方のスイング速度が概して”遅い”のはこの辺りです。

ただ、サーブにおける回転軸を身体の中心から左肩側に寄せるのは、両肩の幅の範囲、両足のスタンス幅の範囲で行えるので問題になりません。メリットの方が大きいと言えます。

このような加点でトッププロのサーブを見て見ましょう。

Roger Federer Serve In Super Slow Motion – 2013 Cincinnati Open

「トスを上げた左側に壁を作っている」と見えますし、

左側の壁に対して下半身から身体を寄せていき回転を我慢してタメ(野球で言う “ワレ” と言う状態 )を作り、身体の中心より左肩側に回転軸を置いた形で、左肩側の回転軸から身体の中央を通過した右肩側までを半径として右肩側を前に出してくる。

慣性の法則で腕を後方に引っ張っていたラケットが加速により手や腕を追い越してくる段階で腕は身体の前側に回転してくる。

ラケットヘッドが慣性の法則で直進運動を続けようとするのをフォローするように腕は捻じれ、曲がっていく。

というように見えます。

 「横向きから左右の軸を入れ替える動作を伴って身体を強く回転させていく。左側の軸をギリギリまで前側に保って一気に右側の軸と入れ替えれば強く身体を回転させることができる」  

身体の回転は両手をブラブラさせながら回すような動作だけではないという感じでしょうか。

ピッチングのおける “ワレ” の説明

投球における「ワレ」!球速を一気に上げる下半身の使い方は…「C」と「L」!

※6分28秒位の “ワレ” を作らず (捻転差が出来ず) 股関節から肩までが一気に正面向きに回転してしまう投げ方だとボールを投げるための強いエネルギーが発生できませんね。

バッティングにおける “ワレ” の説明

【打撃における”ワレ”】NPB選手のように…強く変化球が打てる魔法 !

 

サーブを打つ際にも「”早く” 正面向きになってボールを見たい、打つ方向に向きたい」気持ちからジャンプしながら、或いは踏込み足一本で立ちながら、スケートのスピンのように身体全体が一気にくるっと回ってしまう方は良く見ます。

これは最初から正面向きで打っているのと変わらないか、回転が加わる分、より不安定で身体全体でスイングできなくなりますね。

「体の回転とラケットの軌道は別物」でも書きましたが、準備段階としてフォア側ショットは横向きを取りますが、身体の回転そのものでラケットや腕を動かす(円軌道) のではなく、ボールを飛ばしたい方向、角度に向けて適度に短い距離で瞬間的にできるだけまっすぐした軌道でボールに接近させていく方が総合的に見てプラス面が多いと考えます。(身体のブレ、準備時間、加速や軌道の安定性、少ないエネルギーで最大加速)

横向きから身体は回転させていく、利き腕肩を前方に戻す距離をラケットの前進・加速に利用。加速も腕よりむしろ足で地面を踏む反力や身体のねじり戻し等を連動させるもの。地面を強く踏める姿勢や体勢、身体の使い方でなければ、最終的に強くラケットは振れませんよね。

ここでもボールを打つ過程の様々な “形” ではなく、何をどうするからそういった形に見えるのかに注目できるかどうかが理解の差です。スタンス、腰や重心の高さ、体軸の直立性、身体の左右のバランス、身体のねじり戻し、色んな要素がサーブの打ち方を構成しているし、外から見える “形” だけ気にしていてもそれらに気づけません。

続きは後半

長くなってしまったので続きは後半にしたいと思います。

なお、ブログに書いている事は私が自分の上達を目指して個人的に考えた事で何か専門的な知識から述べているものではありません。

私は「自分のテニスを上達させるのは自分自身でコーチや周りの人ではない」と考えているので自身の “テニスに対する理解” を深めるためにテニスに限らず様々な情報を探して考えています。

自分の打つ方に関する相談は普段から自分の打ち方を見ているコーチに相談すべきです。それを職業とされている訳ですからね。教えてもらうでも良いですし、コーチからもらった情報を基に考えて自分の理解を深めるならより素晴らしいと思います。

会った事も自分の打ち方を見たこともない人の話を自分で考え見る事なしにそのまま実行しようとしても無理がありますし、怪我をする危険性すらあります。

「ネットで見た通りにやってみたら肘を痛めた」なんて話はよく聞きますね。

その人の事を知らないのに怪我の原因にされてしまうコーチも気の毒ですし、そもそもその人が説明意図通りに実行さているかも確認しようがありません。

ここで書いているものも単なる “情報” にすぎません。ご自身の上達のために自分で考える際の情報の一つとしていただければ幸いですが、本来は「私自身の上達のために書いているよ」という点はご理解ください。

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