年が変わると用具契約変更が目立つ
プロテニスプレイヤーの活動資金は大会の賞金の他、スポンサー契約で賄われる部分も大きいです。トッププロは年間数億というスポンサー契約をテニス用具メーカーと結びますが、ランキング下位の選手だと資金提供は無く用具提供のみというケースも多いと思います。
テニスツアーの区切りは年始めなので、オーストラリアで開催される全豪シーズン (全豪オープンを含む大会群) の様子をYouTubeで見ていると「この選手、あのメーカーに変えたのか」というのが目に入ってきます。
今年の全豪オープンオフィシャルYouTubeチャンネルは各試合のハイライトを片っ端から載せている感じで「男子上位選手の試合しか放送しない」TV局の放送を見ているより色んな選手が見られます。
今年は大型の契約変更が目立っては無いので契約変更に限りませんが全豪オープンを見ていて目についた選手のウェアやシューズを見てみましょう。
トマーシュ・ベルディヒ選手
昨年までアディダスでしたが、ウェア契約が“ドクロ” ロゴのハイドロゲンに変わっています。ウェアの契約変更に合わせてシューズはナイキになっていますね。
「かなり良い人」なベルディヒ選手にブランドイメージが合っているかは分かりませんが黒と白が基調のデザインは何となく様になって見えます。近年、アディダスの色使いはかなり奇抜でしたし、その前のH&Mはテニスウェアとしてはかなりこなれてない印象だったので尚更しっくり見える感じでしょうか。
ちなみにベルディヒ選手についてですが、去年の全豪オープンではフェデラー選手に良いようにやられて負けた印象でしたが、今年全豪1~3回戦を見ても動きが段違いに良く見えます。
ボールを追いかける際に踏ん張りが効かず、追いつけないし、フラフラとしていた去年に対し、今年は遠いボールを追ってもバランスが崩れず、しっかりと体勢を保てているので特徴であるパチンと当てて返すカウンター的ストロークの威力が高いです。
短いボールを追う際やパスショットに対応する様子もかなりバランス良く見えます。
シングルス4位になった2015年時より良く見える位です。
昨年、背中の怪我でウィンブルドン以降はツアーから離れていましたが、かなりしっかりと準備をして再起をはかっているようです。
Berdych Excited For Comeback Challenge
次の4回戦は対ナダル選手なので厳しいかもしれませんが、今年のベルディヒ選手はかなり期待できる出来だと思います。
フェリシアーノ・ロペス選手
2015年から契約していたエレッセからベルディヒ選手と同じハイドロゲンに変わっています。シューズは引き続きナイキです。
フェリシアーノ・ロペスは端正な顔立ちですがどうも契約メーカーのウェアとの相性が悪い気がしてしまいます。
エレッセも色使いのビビットさが顔と合っていない感じでしたが、ハイドロゲンの黒基調も同じ印象ですね。ウェアはシンプルなデザインのポロシャツ等の方が似合う気がします。
ハイドロゲンはイタリアのスポーツブランドで、同じイタリアの選手であるシモーネ・ボレッリ選手やファビオ・フォニーニ選手が使用していました。
今年に入りイタリア以外の国の選手にも契約を広げた印象で、ベルディヒ選手とフェリシアーノ・ロペス選手の契約がその代表なのでしょう。(ボレッリ選手は今季も引き続き着用しています。)
ファビオ・フォニーニ選手
先の2選手から話の流れ的にフォニー二選手。フォニー二は今年からジョルジオ・アルマーニの兄弟ブランドであるエンポリオ・アルマーニと契約しています。
“EA7” というのはエンポリオ・アルマーニの下着及びスポーツ関連のブランド(?)だそうです。
フォニー二選手が奥様であるペンネッタ選手と同社のCMに出ている画像が2018年の12月頃にTwitter等で流れていたのをみました。
Fabio Fognini and Flavia Pennetta become Emporio Armani ambassadors https://t.co/Qd2kFTdgYh pic.twitter.com/ggbxDMar8q
— Tennis World English (@TennisWorlden) 2018年11月30日
フォニー二選手が去年まで来ていたのがハイドロゲンだったので上位選手であるフォニー二選手が抜けるのを機にハイドロゲンがイタリア以外の選手にも契約を広げた感じかなと思います。
シューズですが、去年はバボラを履いていましたが、今年からアシックスに変わっているようですね。Gel Resolution 7のカラバリに見えます。
ディエゴ・シュワルツマン選手
シュワルツマン選手は契約変更ではないのですが使用しているウエアが上から下まで母国であるアルゼンチンカラーになっていました。
同じフィラ契約のチリッチ選手等も同じカラーリングのウェアを着ているのですが、シュワルツマン選手はシューズまでフィラ契約なので全身コーディネートが出来た形になっています。
ヒューイット選手がオーストラリア国旗カラーのウェアを着ていたようにシュワルツマン選手専用でこういうカラーリングのウェアを着ている訳ではないですが、全身をこの色でまとめている辺り、フィラも面白い事をするなと思いました。
因みにプリスコバ選手が着ている女子ウェアの方もシンプルなデザインながら可愛さが合って良いなと思いました。(写真はナイトセッション用。デイセッション用は白ピンクの色違いです。)
ペトラ・クビトバ選手
クビトバ選手はサーブを打つ様子、ストロークを打つ様子が美しいので個人的に好きな選手です。
この所、ナイキは “ナイキコート” ロゴ (テニスコートをモチーフにしたデザイン) を使っていて、これは1990年代にサンプラスさん達が使っていたウェアにも使われていたので個人的にはかなり欲しいです。去年から出ていたナイキコートロゴのウエアは1990年代と同じコットン100%素材でしたが選手達が全豪で来ているウェアはポリエステル100%のようです。肌ざわりはコットン100%なのですが汗をかくことを考えると化繊の方がありがたいです。でも、デザインに使っているラインがちょっとダサいかも。
クビトバ選手は、2016年に暴漢に襲われ利き手である左手の神経を損傷、2017年に復帰しシングルス最高4位で現在6位です。
負傷される前まではかなり太目で下膨れ的体形になっていたのですが、復帰後にどんどん痩せて(2017年は顔や体の皮膚がたるんだ何かバランスの悪い体形だった)、今はウィンブルドン初優勝(2011年)に近いかなりスリムな体形になっています。
皆「テニス選手の中で」というエクスキューズをせず「あの選手がかわいい。この選手が美人だ。」といった話をしますが、クビトバ選手がおキレイな方なのは異論がない所でしょう。
私は「女子選手の打ち方を参考にするのはなかなか難しい。何故なら進化の度合がはるかに大きく “現代的なテニス” を示しているのは男子テニスだから。男子プロは筋力や体力の差があるから女子を参考にしてはという考え方にはあまり賛同できない。初心者の段階からトッププロが行うような体の使い方を学び参考にする方が良い。」と思っていますが、そのうえでもクビトバ選手のサーブは参考にできる点は多いです。
サーブは自分の打ちやすさを優先させる、筋力で多少強引に打つといった事が他ショットよりもできやすいですからね。クビトバ選手の打ち方は体に無理がかかる部分が少ないように感じます。
なお、クビトバ選手が使っているラケットですが、デザインはPRO STAFF 97の白黒カラーバリエーションに見えますが黒部分は “光沢アリ” に見えます。
PWS辺りも楕円系に見えますし、昔で言う “ハンマー” 系ラケットに思えますね。
バウティスタ・アグート選手が使っているラケットも黒光沢。PWS部に突起部分が見えたりします。
(クビトバ選手と同じ、或いは同じタイプのラケットかは分かりません。)
ラファエル・ナダル選手
フェデラー選手が抜け、ナイキの1枚看板となったナダル選手ですが、そのせいか、専用モデルのウェアの特徴付けが強い今年の全豪オープンになっています。
去年は汗でぴっちり張り付くような生地が薄めでしなやかな感じのウェア(半袖)でしたが、今年はノースリーブでナダル選手っぽいオレンジカラー。
首周りと肩回りが白でこの部分はオレンジ部とは独立した作り(内部で縫い合わせた感じ)になっているように見えます。首元は “着物の合わせ” のようなデザインになっており、白い部分には縁に細かいデザインが施されています。結構凝っていますね。
シューズには最近ナイキもウェア等で取り入れているカモ柄になっています。
ちなみにナダル選手についてですが、PROSTAFF97で復活した後のフェデラー選手に隠れて目立ちませんがナダル選手も毎年進化してきている印象を強く持ちます。
当初は体への負担を減らすためかスライスを用いたりするありがちな所から始まり、ピュアアエロ登場時のラケットを変更するかしないかと同時期に始まったスランプ。それらを経て2017年頃から徐々に復調、ベースラインから下がった位置一辺倒だったポジションを出来るだけベースラインに近い位置で打つよう修正し、現在は後ろとベースライン近く、ボールによってはスニークインでネットを取ってボレーで決めるシーンも多くみられるようになりました。
今年の全豪を見ての感想ですが更に変わった点を感じます。
去年も感じたのですがボールを打つ際、ラケットを振る際の “出力” が抑えられていると感じる事。
ナダル選手と言えば1球目からポイントが決まるまで常に声を出してフルスイングという印象ですが、ボールを打つ位置をベースラインはるか後方から適宜ベースラインに近い位置からでも打つようにした事で一生懸命振らなくてもある程度の球威で打てるようになった感じです。
そして50%位の出力でラリーを打っていてもそれで相手を追い込み、時には緩い山なりのボールも使い、状況を作り、決める1球だけ70%位の出力で打てば相手は返球できないという決まり方が増えているように見えるのです。
Rafael Nadal v Alex de Minaur match highlights (3R)
デミノー選手との3回戦。予測とボールまでの到達時間が速く、厳しいボールでも追いつき返球しパスを決めてしまうデミノー選手が相手ですが、決めるボールだけ出力を高める事でデミノー選手が追いつけない、追いつけても前の飛ばせない結果になっているのを感じます。
上位選手が相手になってくるとここまで理想的なポイントの取り方は難しくなり、平均出力も高めて打ち合うようになるのかもしれませんが、フェデラー選手のように「打つボール全てに意味があり、数手先に起こるポイントの取り方まで自分で演出している」感じのゲームの進め方です。
相手主導ではなく自分で支配しているので心理的にも肉体的にも疲労が軽減されるかなとも思います。
もう1点強く感じるのがバックハンドで、以前は右に走ってパスを抜くといった限られた場面以外は大きく普通にスイングをして打っていたものが、錦織選手ばりにコンパクトなスイングで打つシーンを多く見ます。
前に出てきた相手の横を抜くといった場合だけでなく、コントローラブルにバックハンドを配球しようとしている意図を感じます。これもベースラインに近い位置で打つようにしたことからフルパワーで打たなくても良い状況が作れている事が関係するのかなと想像します。
ユージニー・ブシャール選手
昨年後半小さい大会に専念するとコメントし、シングルスランキング80位前後に低迷しているブシャール選手ですが、全豪には出場しています。
ウェアを脇部分で縛りお腹を見せるアレンジにしています。
ブシャール選手はこのアレンジが好きみたいですね。良く見ますし、先日のWTAの動画でも行っていました。
Eugenie Bouchard explores Waiheke Island
全豪での練習風景
Eugenie Bouchard – Australian Open 2019 – Practice Courts
オーガンジー風の生地で暑いメルボルンでは熱がこもって逆に暑いのではと思ってしまいますね。
全豪の予想 (ただし男子シングルスだけ)
2019年1月20日現在で男子はベスト16。
残っている選手で実力通り、或いは好調そうに見えるのは、ジョコビッチ選手、メドベージェフ選手、ズベレフ選手、チリッチ選手、バウティスタアグート選手、ディミトロフ選手、ベルディヒ選手、ナダル選手辺りでしょうか。
錦織選手は通ってきた試合が試合なだけにちょっと分かりません。フェデラー選手は相手に恵まれ調整しつつ勝ってる感じですがあまり調子良さそうにも見えないですかね。
特に調子が良さそうに見えるのは、ディミトロフ選手とベルディヒ選手かな。
ジョコビッチ、ズベレフ、ナダルの3選手は良い意味で普通。(ただし、ズベレフ選手はボールへの入り方とかが去年以上に良くなってる感じ。)
割と誰が勝っても分からない、或いは無難にジョコビッチとナダルの決勝かといった感じですね。
私は誰のファンという事はない (日本人だから日本人を応援するとかもない) ので、誰が勝っても良い試合になれば良いなと思って見ています。