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ラリー練習は野球で言うとキャッチボールでは? (テニス)

野球 キャッチボール

速度かコントロールか

初心者の方はボールを打つので精一杯、思った方向に飛ばせず四苦八苦しますが、ボールを打つのに慣れてくるとプロやコーチの見本のように「強いボール、速いボール、回転のかかった威力のあるボールを打ちたい」と思ったりします。(まぁその90%以上は男性ですが)

テニスの指導の話でたまに聞くのが

「まずはオーバーしても良いからとにかく強くボールを打つ事を考えろ。ラインに収める技術は後で身につければよい。」

といったお話。

実際にそういう指導はあるのでしょうし、確かにあれこれ細かい部分の体の使い方を説明してから打たせるよりも「とにかく強く打つ」とシンプルに考えさせる方が自然と自分なりの体の使い方、全身を使って打つといった事に結びつくことはあるでしょう。

ただ、これはあくまで “身体が出来上がっていないジュニア向け指導” といった場での話だと思います。

体重が気になるような良い年の大人の週一レッスン、選手として活動する事を想定していないような練習内容の場でそのまま参考にはできません。

仕事のストレス発散、職場や家庭では無理だからスクールでは周りに注目されたい、女性に良い所を見せたい、周りに自分のボールの強さを見せつけたい、自分の上達を実感するためと、色々理由はあるでしょうが『強いボール・速いボールを打つ』事に拘る方は多いです。(テニスに限らずスポーツや運動全般そうでしょうね)

tennis stroke

テニスのルール的な事

テニスでゲームをやる場合、自分がポイントを取れる要件としては、

1) 相手コートの決められたラインの範囲内にワンバウンドしたボールが相手がラケットで触れない間に2バウンドする

3) 自分が打ったボールが “ネットより向こうの相手コート側” に入り、2バウンド目 (ノーバウンドでも良い) までに相手が返球したボールが自コートの決められたラインの範囲内にバウンドできない

といった感じでしょうか。

(「ネットを越す」 は決まり事ではないです。ネット脇のポールの外側から相手コート側に着地させる “ポール回し” は問題ありません。)

1で言えばドロップショットのように相手が追いつけない位置、追いつけない時間の範囲で2バウンドさせるか、速いボールや角度をつけたボールで物理的に相手が2バウンド目までにラケットに触れない状態にする事ができれば良いです。

tennis court tennis court

2については相手の態勢を崩したり、予測を外したりを含めて相手のミスを発生させるといった感じでしょうか。自分が打ったボールと関係なく、相手が “勝手に” ミスするのは自分が起こしたポイントとは言えませんね。

tennis

150km/hのストロークを打ててそれをコントロールできるのか?

ものすごく恵まれた体格や運動能力を持っている方が初心者の時点で150km/h位 (男子プロが決めるショットで使うような位の速度) のボールが打てたとしても、それをラリーやゲーム形式の中で使いこなすのは難しいだろう事は想像が付きます。

tennis stroke

プロ選手は150km/h以上のストロークを打てても、スイング速度は変えず回転量を増やすことで速度を抑え飛距離を短くするといった工夫をしているでしょう。

また、そもそも常に100%近いエネルギーでボールを打つ訳ではなく

「打ち方は変えず出力だけ50%にしてボールを打つ」

といった事を意識するまでもなくやっているのでしょうし、それは初心者の方相手に経験者が少しいい加減な打ち方で相手をするいわゆる “手抜き” とは違うのは分かりますね。

つまり、自分が発生できる出力が高くてもそれをコントロールできる技能がなければテニスはできないという事が言えると思います。

当たり前の事を言っているでしょうか?

野球の基本はキャッチボールですよね?

“野球の基本”と言われれば多くの人が「キャッチボールだ」と答えると思います。

キャッチボールで大事と言われる点は

「相手の胸位の位置、相手がグローブで取りやすい位置に正確に送球する」

といった事です。

play catch ball

最初は短い距離で始め、次第に距離を伸ばしたり、投げる速度を上げられるようにしたりしていくでしょう。

相手が取りやすい位置に正確に投げられない段階で速いボールを投げようとしていれば怒られてしまうでしょう。

キャッチボールをテニスに置き換えると

相手の人とボールを打ち合うボレーボレーやラリー練習に相当する

と思います。

tennis stroke

そういった意図のある練習でも無ければ、ウォーミングアップのボレーボレーで相手の打つボールがあちこち散りまくっていては練習になりません。

同じようにコート反面や1/3の狭い範囲で打ち合うラリー練習でボールが左右に散りまくったり、アウトする位の深いボールばっかりでは相手の技術が高くリカバーできるとしてもまともにラリーは続けられないです。

こういった練習では

「相手が打ちやすい所に打つ」という事が “その練習させる意図” として組み込まれている

と考えます。

スクールでもよく見る、強いボールを打とう、相手に速いボールを打ちこんでやろうと思っている、それを実行に移す方は

「説明時にコーチがその練習をやらせる意図を理解しようとしていない」

ですし、練習意図通りにできないということは

「自分で自分の上達を阻んでいる」

としか言えません。

強いボールが打てる事が上達ではないですし、そういった人の多くはその段階で止まって先に進めないままである事も多いと思います。

中級までは上がったけどそこから明確にレベルアップできずに伸び悩んでいるタイプは周りに良く居られませんか?

男子トッププロのラリー練習を映像で見て見ると、相手コートのサービスライン付近にバウンドさせているのが分かります。

相手もそのボールをベースラインから2m近く下がった位置で打つのです。

Djokovic and Dimitrov, 2018 US Open practice

「トッププロのボールは速度もあり回転も半端ないから?」

でも、そららを踏まえて相手が打ちやすい位置や高さで取れるように調整して打っている訳で、

ベースラインギリギリばかりで簡単にオーバーしたりフカしたりするボールを打つ人。

相手が打つボールを当然のようにベースライン上で待って打とうとする人。

我々はこのいずれの場合も練習内容をよく考えてない。

のだろうと思います。

ごく短い距離でイメージ通りに打てない人が長い距離でうまく打てるはずがない

短い距離での打ち合いには、ミニラリー やボレーボレー等があるでしょうか。

padel tennis

これらを「単なるウォーミングアップ、長い距離で打つのが本来の練習だ」と思う方は少なくないかもしれません。

でも、この短い距離で、相手が打ちやすい所にバウンドさせて、そのボールがちょうど良い高さで相手が打てるようにコントロールできない人が、距離が長くなった状況でそれ以上の精度でボールが打てるはずもないですね。

tennis stroke

1m先にあるごみ箱、3m先にあるごみ箱、紙ずくを放って入れるのはどちらが難しいでしょうか?

距離が長くなればボールを追い前後左右に動くケースも増え、十分でない体勢や自分が打ちたい打ち方や打点で打てない事も多くなります。

短い距離で打てる、簡単に思えるような状況だからこそ

『丁寧に足を動かして位置合わせをし、”きちんとした自分のの最高の打ち方”で、”出力だけは10%、または20%で10%を回転に使う” といった打ち方をする』

と言った意識が大事になってくるのかなと思います。

練習のはじめにミニラリーやボレーボレーをやるとボールがあちこち散ってしまい、何球も使わないといけない、どんどんボールが深くなってしまい相手が返球できないといったケースは良く見ますね。球出しのボールを打つより楽な状況なのにです。

これは明らかに (自分はそういった自覚はなくても) ミニラリーやボレーボレーを軽視しているためでしょう。

ボールを打つ技術が高いか低いかではなく “練習に取り組む意識” からのものでしょうね。

少し脱線『game based approach』について

スクールのレッスン序盤で行うコーチの球出しを打つ練習がありますが、コーチが打つボールは速度が遅いし、予めどのコースに打つか知らされるので、

自分では手を抜いたつもりはなくても棒立ちのまま大雑把に打つ人

最初のボールを打ちながら次のボールが飛んでくる位置に走っていこうとする人

等は良く見ます。

ゲームにおいて相手が打とうとする前にボールが飛んでくるコースに移動していたらそれはもう “超能力者” です。

※「相手の返球してくるコースや球種を自分の想定通りに引き出す配球をする」といった “未来を作る事” はできますがそれとは違いますよね。

コーチがやらせたいのは

「ゲームにおいて1stボレーが良い所に入ったら相手は浮いた返球をしてくることがあります。相手がそういう素振りを見せたら準備 (気持ちの準備と取りやすい位置に移動する準備) しておき、浮いたボールが出たら、しっかりと移動してポジションを取り、移動した先できっちりそのボールを決められるようにする。」

といった事でしょう。

球出しをする前にコーチからそういった状況説明があると思います。

聞く側がその意図を十分把握していない、周りが同じようにやっているから、毎週同じように練習しているからといった “慣れ” がコーチが設定する練習内容の持つ意味を無くしてしまっている

感じです。

それでボレーが上達しない、実際のゲームになるとネットしたりアウトしたりばかりで満足に打てないのではコーチの指導のせいにはできませんよね。

最近のテニス指導では「game based approach」という事が言われるようになったと聞きます。

テニスの指導でも「打ち方を身につけるためにフォアを連続20球」みたいな練習があったりしますし、自主練でそういう練習をやろうとする方は多いでしょう。

ただ、実際には、フォアを連続して打つより、フォアとバックを交互に打つといった練習内容の方が練習効果や練習の習得度が高いのだそうです。

初心者の球出し練習には注意したい件

レッサーパンダ(?)が微妙ですがVTuber的キャラです。

この話を聞くと、最近私が通うテニススクールでも、球出しのボールを両サイドからフォアとバックを打たせる他、球出しのボールもスピンがかかったものスライス回転のもの、速いもの遅いもの、短いもの深いものとより実戦に近い状況で打たせる取り組みがされている気がします。

野球で言えば “バッティングセンターで打つようなフリー打撃” と “守備が居る状態でピッチャーが投げるボールを打つシード打撃” みたいな違い。前者を否定する訳ではないですが試合に出て打ってこその練習ですからね。

技術を高めるのが上達ではないが

「コントロール良くボールを打てる事」というと “技術の高さ” をイメージしますね。

地術が高い人 = テニスがうまい人」という感じです。

私は「技術が高いとは10cmの違いを調整してボールを的に当てるようなもの」かなと思います。つまり少々曲芸チックなイメージです。

Thiem’s Tremendous Racquet Tricks In St. Petersburg 2018

我々のテニスが上達していった先で周りの人との差を生むのはそういった点なのかもしれませんが、ボールを正確に捉える、スムーズに大きなエネルギーを発生させる、怪我をしない、疲れにくい、等の要素は技術以外から生まれるものが多いだろうと思います。例えば「身体の機能や仕組みを知り、その使い方を理解し、それをテニスに活かす事」だったりです。

人は器用なので指や手や腕は細かい筋肉を使って柔軟に動きます。

逆に身体本体や足で地面を踏む事などは大きな筋肉を使うので細かい動きは苦手ですが安定感があり強い力を発生できます。

器用に動く手先ですが、身体を動かさず腕から先だけでボールを打とうとすれば、飛んでくるボールが一定でも、自分は安定的に狙って場所に打てないのは想像が付きます。

手先の器用さはボールを打つ、最後の最後に使う調整という感じです。

自分で考えないとコーチが上達させてくれる訳ではない

ボールを安定的に打てない、ボレーが苦手な方を見れば、ボールに当たる瞬間、ラケット面がグラグラしたり、あちこち向いてしまう事がその理由だと分かります。

テニス 不安定な打ち方

(それが無意識でも) 足や体を使って調整できていない分を手先でラケットを操作しようとしてなんとか帳尻合わせをしようとするためです。

テニススクールでは『フォアハンドストロークの打ち方』は教わります。

tennis stroke

ただ、その中にには、身体の仕組みや機能、それらを使って、足と体、腕がどう連動してボールを打つのが良いのかといった情報はその「ボールの打ち方」には含まれていない事が殆どでしょう。

身体の仕組み 身体の仕組み 身体の仕組み

身体の仕組み 身体の仕組み

身体の仕組み 身体の仕組み

「自分のテニスを上達させるのは自分自身。コーチや周りの人ではない。だから自分の理解が深まるように考え、理解やその説明に繋がる情報を探す。考えた事をボールを打つ検証。結果からまた考えて次回の検証に繋げる。といったサイクルが上達に繋がるだろう。」

とは言っても、

教わる『伝統的なテニスの基本』が言葉足らずなままだから皆が等しく理解できない、理解できないから上達もその人次第なのだ

と私は考えます。

これはコーチが悪い、スクールが悪いといった話ではありません。

コーチ自身もそういう指導の中で自分なりに考えて上達してきているのでしょうし「私の場合はこうやったよ」といった経験が話される事はあるでしょう。

我々一般レベルでのテニスの歴史でスポーツを科学的に研究する事が進んでいる状況の中でそれをテニスの指導にうまく落とし込める、変えられる機会がなかったものでしょう。

10名強を1人のコーチが担当する、ボールを打たせる事を最優先にしないと不満が出るといったスクールのフォーマット上やむを得ない選択なのだと思います。

たくさんのボール、整備されたコート、コーチを含むボールを打ち合える相手を1年中、朝から晩まで好きな時間帯で確保できる権利が1回3,000円位で確保できる仕組みはものすごく有用だと思います。

上達するために “当たり前の練習内容” もきちんと考えよう

私のお気に入りのお話で度々書いていますが、

元横浜ベイスターズの仁志敏久さんは内川聖一選手に聞かれ、「考えて野球をやれ。自分がやった事を説明できないとダメだ。この場面でこういうボールが来たからこう打った。成功しても失敗しても100%その理由を説明できる事が”考える”事だ」といったアドバイスをされたそうです。

baseball

身体の機能や仕組みを理解し、自分がそれらをどう使いラケットを振りボールを打っているのかを理解・整理できているという状況は、

「自分がどうやってフォアハンドを打っているのか、自分の打ち方を知らない初対面の人に説明する。且つ、その説明を聞いた人がその場でその打ち方を再現できる。」

といった事だと私は考えています。

あなたは自分の打ち方を初対面の方に具体的に説明できるでしょうか?

例えば、

「〇〇するイメージで」

「〇〇する感じで」

「腕はここでプロネーションさせる」

「体が開かないように」

といった表現をされるなら、多分それらは

コーチから言われたか、ネットかどこかで聞いた情報をそのまま言っているだけ

ですね。

テニスが上達したい、詳しくなりたい一心から、ネットや雑誌等で見聞きした情報やコツの類を口にしたがある『頭でっかち』タイプは一定数居り、話す内容とテニスのレベルが見合ってない事も多いです。(初心者の方に「ゲーム中にゾーンに入るには」みたいな話をされても「うーーん」です。)

tennis magazine

テニスの上達を目指すのにスポーツ科学や運動学の専門家になる必要はないですが、身体の仕組みや構造を理解しないと「身体を動かしてラケットを振る動作」は説明できないですし、物理を理解しようとしないと「ラケットとボールの関係性、なぜボールは飛び回転がかかるのか」も分らないです。

何となくでもそれらが上達に繋がりそうなのは分かりますね。

ボールを飛ばし回転をかけるために必要なエネルギーを生むのは

1) 速度を持って飛んできたボールが持つエネルギーをラケット面で反発させる

2) ラケットを加速しラケットが持ったエネルギーをボールに伝える

の2つです。

ボールが飛び・回転がかかるエネルギー

エネルギーの大きさは

『1/2 x 重量(ボールやラケット) x 速度 (同) ^2 (2乗)』

で計算できます。

ほぼスイングしないで打つボレーは主に1、自分でトスしたボールを打つサーブはほぼ2ストロークは相手ボールの質、状況、次に作りたい状況に合わせて1と2の両方をバランスよく使うという感じです。

Tsvetana Pironkova 1, Wimbledon 2013 - Diliff Milos Raonic Serve

「ボールが飛び回転がかかるのは物理現象でしかない」です。

ボールが飛び回転がかかる

よく見聞きするコツの類、例えば「〇〇すればボールの威力が上がる」といった話に

“我々が理解できる形で” それが実現できる根拠となる情報が示されていない

ですよね。

簡単に言えば

「出来るだけ重いラケット、出来るだけ速いインパクト前後のラケット、うまく当たる事」

位しか威力が上がる要素はないのです。

漫画やアニメのように超能力や必殺技は出せません。

「飛ぶ」ラケットに何か加速の仕組みが付いている訳でもありませんね。

逆にラケット・ストリングスのしなり、歪み、たわみは単純には『エネルギーの伝達ロス』です。(ロスを承知で打感の違い等、自身が納得できる選択理由があるなら良いですが「飛ぶ・飛ばない」「威力が出る」とかでラケットやストリングスを選ぶのは “ズレている” 気がします) 

「上達してきたら強い威力のあるボールを打ちたい」という気持ちは分かります。

ただ、「強く打てるようになっても自分のテニスの “総合力” は上がってない。上達がそこで停滞している。」と感じるのであれば、「自分の100%テニスをきちんとやる。ただ出力は50%で。ような状態をを目指すのはどうでしょう。

そのためには毎回行い慣れてしまっている練習内容でも、

コーチが設定した練習内容の意味を考え、何をさせたいのか、何を習得してほしいのか、結果的にどういう状態になり、それをどうゲーム等で活かせるようになれば良いのか

こういった事を何も考えず「テニス楽しい」「強打したい」だけでは (より効果が出る取り組み方があるのにという意味で) 勿体ないと思います。

テニス コーチング

「上達なんて “全く” 興味がない」という方はごく少数でしょうからね。