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ガットを張る際、ラケットは”歪む”と言う話 (テニス)

ガットは定期的に張り替える

多くの方がラケットのガット(ストリング)を定期的に張替えると思います。

“ガットが切れた”からという物理的にどうしようもない理由で張り替えることもありますが、 “ガットが伸びる” ことと “経年劣化” で”性能が落ちる”から張り替える (張り替えろ!!) と言われることが多いでしょうか。

「張った瞬間からガットはどんどん伸びていく」と言っても、伸びたラケットのフレームから垂れ下がってしまうようなことや縦糸を引っ張ったら横糸から浮いてしまうということも起こりません。つまり、これ以上は伸びないという値があるはずです。

70ポンドとかラケットの方が壊れてしまいそうな高テンションで張れば、”これ以上は伸びない値”まで物理的に伸びる幅が大きい訳ですが、最近流行りの30ポンドといった緩く張る場合はもしかすると張った状態から”殆ど”伸びない?ということも考えられると思っています。

ガットが伸びると性能が劣化して肘などにも悪いと言われますがメーカーも色んな状況で散々テストしているはずですし、何年も張りっぱなしで使っているという人が居るのも事実です。

あくまで個人の考えですが、これらの事からガットを張り替えるのは「性能の変化」より「打感の違い」が生じるためではないか?と思います。

よく「冬場はボールが飛ばないからテンションを落とす」と言いますが5ポイント程度落としても物理的な飛びは殆ど変わらないでしょう。(張って2週間のラケットを本人に黙って張って3ヶ月後のラケットと交換しても多分気が付かないですよね。。)

逆に「冬場はボールが硬く感じる、打感が硬くなるからテンションを落として調整する」なら納得感があると思います。

「硬い打感のガットだからテンションを落として打感を調整する」も同じですね。硬いガットは飛ばないからテンションを落とすと言われるより断然理解できます。

張る人によってガットの性能が変わる?

よく「ガットを張る人によってガットの性能が変わる」と言われます。「あのお店は張るのが下手だとか」という噂話はよく耳にしますね。

私はラケットもガットも使い慣れていれば正直何でも良いと思っている(あれこれ試して自分の現状が分からなくなる方が困る)ので、量販店で当日張りしてもらうのに特に疑念もないのですが、ガットを張る技術を売りにしているお店があるのも事実です。

上の「ガットが伸びると性能が劣化する」話も同じですが、同じ人が張ったとしても日によって状態は変わるだろうし、同じお店でも張る人は違ったりする。プロ選手は『(性能もだが)張りたての打感を常に使いたい』から試合毎に毎日何本も張替えるし、道具トラブルなどの不確定要素在が生活に直結するからその除去にシビアなのは当然です。

我々が毎日ガットを張り替えるのはまず無理だし、そういう技術を持つ方に張っていただける環境にある方は羨ましいですが変に拘りを持ってしまう方が自分を縛ってしまう形になるのでは? とも思います。

ガットを張るとラケットが歪む

テニスラケットのガットは写真のようなガット張り機を使って張りますね。

テニス ガット張り機

張る際は、縦方向のガットをまとめて張る、横方向のガットをまとめて張るという工程を踏む (縦横交互に張っていく訳ではない) ので、我々が指定する何ポンド(何キロ)のテンションで張るかという条件に対して、ラケットの構造やストリングパターンの違い、ラケット面の大きさ等によって張る際の細かな調整が不可欠になるようです。(縦糸に対して横糸は何ポンド落とさないといけない等)

さもないと数十キロ (50ポンドは約22.7kg) の強さでガットに中心方向へ引っ張られ続けているラケットのフレームは簡単に変形してしまうそうです。

少し前に「スピンがかかりやすい」という触れ込みで16×15といった通常の16×19より横糸が4本も少ないラケットが販売されていました。こういったラケットは特に縦横の張りの強さに調整が必要になるようです。

ラケット毎の設定条件一覧

ガット張り機に付属していた各社のそれぞれのラケットについてこういう条件で張りなさいという設定がかかれた資料です。

ガット張り資料

そんなことはしませんが、ラケットのフレームを両手で抑えて両側からぎゅっと押さえつけるようにすれば歪みそうなのはわかりますね。

手元にあるラケットの歪みを確認してみる

この話を聞いたので、手元にあるガットの張ってある2本のラケット張ってないラケットのサイズを簡単にですが図ってみることにしました。

ラケットはWilsonのProstaff97です。

wilson prostaff97

wilson prostaff97

張ってある2本は約2ヶ月前、約20日前にそれぞれ張り替えたものですが、張った人はそれぞれ別の方 (スクールコーチ)です。どちらも同じテンション(48P)で張ってます。

まず、張っていないラケットのサイズを確認

縦糸のもっとも長い部分の長さ、横糸はPWSの部分(Wilsonの一部ラケットにある両サイドの内側に膨らんでいる箇所)で図りました。

縦糸部分

32.3cm位です。 

Wilson Prostaff97 縦糸部分1

横糸部分

23.9cm位です。

Wilson Prostaff97 横糸部分1

ガットが張ってある1本目のラケットA (約2ヶ月経過しているもの)

縦糸部分

32.5cm位ですね。

Wilson Prostaff97 縦糸部分2

23.8cm位です。

Wilson Prostaff97 横糸部分2

ガットが張ってある2本目のラケットB (約20日経過したもの)

縦糸部分

32.4cm位ですね。

Wilson Prostaff97 縦糸部分3

数値を一覧で確認

  縦糸部分 横糸部分
ガット無し 32.3cm 23.9cm
ラケットA 32.5cm 23.8cm
ラケットB 32.4cm 23.9cm

大雑把にですが、ガットが張っていない状態から、

ラケットAは縦糸部分が2mm長く、横糸部分が1mm短い。

ラケットBは縦糸部分が1mm長く、横糸は変わらない。

といった状態になっています。

それぞれ打ってみた印象が異なる

ガットを張った方が違うのでこの数値がそのまま反映されているのかはわかりませんが、ガットを触った感じでラケットBの方は縦糸がやや緩いのか明らかに動きやすいのはすぐに分かります。張り自体がゆるい感じはないのですが、ガットをラケットのフレームで交互に叩いてみると微妙に「キーン」といった音が混じります。

一方、ラケットAは数値から見て横方向にフレームが狭まって縦方向に膨らんでいるようですがこちらは叩いてみても変な音はしません。

両者を打ち比べてみると張って20日のラケットBの方がボールが飛びにくく、やや扱いづらい印象があります。ボレーを同じように打ってもボールの飛びが安定しづらいですす。 

ラケットAの方は2ヶ月経っていてラケットAよりテンションが落ちているでしょうから単純な比較は難しいですが、ラケットAよりもボールが簡単に飛ばせる印象を受けます。

ガットを張ることでどちらもフレームが縦横に歪んでいるがラケットBの方が縦横でバランスが取れている (飛びやすいと感じる方向に反映されるのがいいのかは別にして)ということかもしれません。

一括りに「ガットを張るのが上手い、下手」と言ってしまえるのかもしれませんが張り方というより調整の技術という感じでしょうか。上の写真のようなラケット毎の設定資料は必ず入手できる訳ではないですから、この辺りは経験や知識が必要なのかもしれませんね。