- テニスではインパクトでボールを押す?
- テニスも物理法則下にあるという理解の意味
- ボールが飛び・回転がかかる理屈
- 『ラケットを操作し動かすこと』と『ラケットを加速させること』は違う
- 物体であるラケットには慣性の法則が働く
- テイクバックの停止状態からのラケットの動き出し
- ラケットの加速
- 加速しながら体から離れていくラケットヘッド側
- ラケットスピードに影響を与えるのは「手によってラケットを引くフェーズ」である
- 加速したラケットは慣性の法則で更に前進していきボールと接触する
- インパクトの0.004秒の間にボールとラケットは接触したまま10cm以上動いているのです
- 加速したラケットは体を追い越した後で減速を始める
- グリップを厚くし打点を前に取るということのマイナス面
- 体を追い越して速度が落ちたラケットでボールを押すということは体の前にラケットをセットしてそこからスイングするのに近い
- あまり厚くないグリップでラケットを瞬間的に加速し、速いラケットスピードを活かして体に近い位置でボールを打ち、ボールスピードと回転量を確保するのが効率が良い打ち方ではないだろうか?
- 必要なのはラケットスピードと正確なインパクトだけ
テニスではインパクトでボールを押す?
テニスを教わる際にインパクトでボールに打ち負けないよう『打点でボールを押す(支える)』ようにしなさいと言われます。
誤解を恐れずに言えば、私はこの説明が多分に感覚的で提供すべき情報を含んでいないし、テニスを学ぼう、上達しようという方が “スイング” というものを理解するのに誤解を生んでいると思っています。
日本中どのスクールでも言われているようなことなので何を言っているかわからないかもしれませんが、今回はこれについて書きたいと思います。
テニスも物理法則下にあるという理解の意味
ボールを打つという事についてとかくテクニック的な話が先行しがちです。
「〇〇すれば回転が増す」「××でボールに威力が出る」といった情報が日常的にあふれていて皆それを参考にしようとします。そういうコツの類が自分のテニスを上達させる(唯一の)方法だと思っているからです。
ただ私は、『物体であるラケットやボールはごく基本的な物理法則下でその影響を受けている。そのことをそもそもの前提して理解しておくことで、今まで自分達が見たり聞いたりしていたテニスが根本から違って見えてくる』と確信しています。
ボールが飛び・回転がかかる理屈
ボールが飛び、回転がかかるのは、“接触”によりラケットが持つ運動エネルギーの一部がボールに伝わるからです。
ラケットの持つ運動エネルギーの大きさは『1/2 x ラケット重量 x ラケットスピード ^2 (2乗)』です。手に持つラケットは1種類ですから単純にはラケットスピードが大きくなるほどラケットの持つ運動エネルギーは大きくなります。
ラケットの持つ運動エネルギーがボールに伝わるには接触が必要で、且つ伝わるのも全体のごく一部です。(その殆どが伝わるならインパクトで運動エネルギーの元であるラケットスピードが落ちるはずですがそうはなりません)
つまり、正確に当たらなければ伝わる運動エネルギーの量にロスが生まれますし、当たり方によってもロスが生まれます。加えて言えば道具(ラケットはガット)でもロスが生まれています。
打ち方は様々でもボールは飛んでいくということ
一般のプレイヤーのボールの打ち方は個性的で皆違いますね。でも、安定性はともなくどんな打ち方をしてもラケットに当たりさえすればボールは飛んでいきます。このことも『ボールを飛ばし回転をかけているのはラケットから運動エネルギーが伝わっているから』という根拠になると思います。当たりさえすればとりあえず飛ぶのです。
反対に、男子プロ選手がボールを打つ際、根本の体の使い方、ラケットの動かし方は共通点があります。実績のあるコーチが始動するジュニア選手達は皆打ち方が似ています。サーブの指導で有名な大学の監督が始動する部活の選手は皆サーブの打ち方が似ています。これらは『人の体の構造は基本的に皆同じ。効率よく体の機能を使って体を動かそうとすればその動かし方は皆共通してくる』という事を表しています。
陸上100m短距離の選手の走り方は皆に通っているでしょう。効率や安定性を考えると体の打ち方は似通ってくる、突き詰めればオリジナリティは二の次になるべきです。
一般プレイヤーの打ち方が皆バラバラなのはそれだけ無駄があり、それが“ラケットスピードが上がらない”、”安定してボールを捉えられない”、”理由は分からないがなんとなくミスしてしまう”といったことに繋がるのは疑いの余地がありません。
ボールを飛ばし回転をかけるために速いラケットスピードと正確なインパクト
簡単に言えば、スイングで目指すべきは”ラケットスピードを速くすること”と“正確なインパクト”です。これは腕や手の操作で両立・実現できるものではありません。前述の例でも分かるように『ボールの打ち方』といったテクニック的な情報ではなく、人の体の機能や構造を踏まえてどう使うのが効率的かという理解ができれば誰でも同じように安定して速いラケットスピードが実現できると言えます。
『ラケットを操作し動かすこと』と『ラケットを加速させること』は違う
テニスでボールを打つ際、スイングの有無があります。
ボレーのようにスイングを伴わないショットは飛んでくるボール軌道の延長線上にラケット面をセットし、ボールが飛んでくるエネルギーをラケットで反射させます。
一方、スイングを行うストローク等では、スイングによりラケットが得る運動エネルギーをボールに伝えてボールを飛ばし回転をかけます。
私はラケットでボールを飛ばすこれら2つを切り分けで理解すべきだと思っています。ボレーでも完全に止めた状態で打てるケースは少ないし、ごくわずかでもスイング(ラケットを動かす)を伴いますが、何も考えないままでは前提と考える物理現象の理解ができません。皆、ここが曖昧だからボールを思ったように飛ばせない、ミスが多いということが起きていると思います。
物体であるラケットには慣性の法則が働く
物体であるラケットは慣性の法則の影響を受けます。
日常でもよく聞く慣性の法則ですが、停止した物体はその場に留まり続けようとするし、動き出した物体はその直進運動をし続けようとするという事象です。
スイングにおいて、テイクバックで停止状態にあるラケットはその場に留まり続けようとし、手に引かれ動き出したラケットはその直進運動をし続けようとします。
スイングを “ラケットの速度” に絞って注目すれば、
テイクバックの位置では速度ゼロ。
手に引かれて加速を開始し、インパクト前後で最高速度に達する。
その後、フォロースルーに至る段階で速度は落ちていく。
というのは分かると思います。
慣性の法則を当てはめてこれらを見ていきます。
テイクバックの停止状態からのラケットの動き出し
テイクバックで停止状態にあるラケットはその場に留まろうとしますが、手に引かれてラケットは動き始めます。その際、グリップ側が動き始めても手の影響を受けにくいラケットヘッド側は留まり続けようとしますが、留まろうとする力よりラケットを引く手の力の方が強いのでヘッド側はスイング軌道の後方から追従する形になります。
この形、ヘッド側は追従しつつもとどまり続けようとする力で手を後方に引っ張りつづけるので起こります。この力が働くことでラケットはスイング軌道に対し一直線になり、動く際に軌道がブレたりもしないのです。
ラケットの加速
テイクバックからの動き出しに続いて、ラケットの加速が起きます。
手に引かれ動きだしたラケットですがその速度はどんどん上がります。ストロークでのスイングは腕の動きだけでなく体の回転を含むので、ラケット軌道もボールに向かって真っすぐ進むのではなく円軌道を含んだものとなります。
体から見た際、ヘッド側は手(グリップ側)よりも外側にあり距離が遠いです。
回転運動において、同じ時間で同じ角度回転する際、中心軸よりも遠い位置にある物体の方が速度は速くなります。中心から遠い方が同じ角度を動く際により長い距離を移動しないといけないからです。
テイクバックでラケットヘッドを体から遠い位置にセットする例がありますが、体の回転を起点にラケットを加速させるのであれば、テイクバックにおいてラケットは体から遠くない方が加速させやすいと言えるのです。
中心から遠い物体の方が長い距離を動くのですが『長い距離を動く = 動くのによりエネルギーが居る』ということであり、スイングの開始時点ではラケットは体から遠くない位置 (逆に肘がたたまれてしまう程近くては腕の機能が活かせない) にある方が効率がよいのです。
例えば、軟式テニス出身の女性の方が背中側からラケットをぐるっと大きくラケットを回してきてスイングしたりしますが、そのラケットスピードが決して速くないのは分かると思います。
補足: 遠心力でボールは飛ばない
テニス以外のスポーツでも「遠心力でボールを飛ばす」と言われることが本当に多いです。ただ、物理現象を前提にテニスを考えるにあたり『スイング中に遠心力を感じている』ということと『スイングによってボールを飛ばす』ということを同じ次元で結びつけるのは間違いです。
なお、遠心力とは「手によって回転軸の中心方向にラケットが引っ張ることで慣性の力で直進しようとするラケットの軌道が随時曲げられること。その組み合わせにより、中心に引こうとする手に対して反対側の外側に引こうとする力が感じられるもの」であり、“遠心力”という力そのものが存在する訳ではないそうです。
その上で、遠心力の力の向きは中心軸から外側に向かってです。スイングによってボールを飛ばす方向は体の正面(ネット方向)、遠心力とは力の向きが全然違います。
ボールを飛ばす方向・角度に向けてラケットをスイングしていてそれによってボールは飛んでいくのですから、スイング中に遠心力を感じるということとは切り離して認識すべきです。
※スイング開始時に慣性の法則でその場にとどまろうとするラケットヘッド側が軌道の安定(一直線に並ぶ)に関係するのと同様に (ボールを飛ばすのには貢献しないものの) 遠心力はスイング軌道の安定には貢献します。スイングスピードが速くなるほど遠心力も強くなりますから、スイング時はリラックスし、手や腕の操作でラケットの加速を邪魔しないことが重要です。
加速しながら体から離れていくラケットヘッド側
テイクバックで体の近い位置にあったラケットは手に引かれ加速する中で、体の回転運動に伴いラケットヘッド側が体から離れていくことでラケットヘッド側の速度が更に増していきます。
スイング開始という所は『手に引かれることでゼロから加速を始めた』訳ですが、スイングの前半段階で『体の回転や手や腕を動かす速度よりもラケットヘッド側の速度の方が速くなる』という状態に至ります。
前述のようにラケットは慣性の法則の影響を受けるので、動き始めたラケットは直進を続けようとします。体の回転や手や腕の動きよりも速度が速くなったラケットは体や手の位置を追い越し、体よりも前に向かって更に進んでいこうとします。
ラケットスピードに影響を与えるのは「手によってラケットを引くフェーズ」である
説明で分かると思いますがテイクバックからラケットヘッド側が体の位置を追い越すまでは『手でラケットを引いているフェーズ(段階)』と言えます。
現代テニスではコンパクトなテイクバックで比較的体に近い位置にラケットをセットし、ボールまでの距離が長く無い中、瞬間的にラケットを加速させて打つ打ち方が効率がよいとされているようです。(加速する中、体から遠ざかるヘッド側は更に速度が増します。)
前述のように長い距離ラケットを動かすスイングではラケットを加速させることは難しく、テイクバックからインパクトまで長い時間が必要となります。ボールスピードが増した現代テニスではこれは不利です。
正確なインパクトで言えば、ラケットとボールまでの距離が30cmと1mなら前者の方が当てやすいのは分かると思います。大きなスイングは体の軸がブレる要因になります。
男子トッププロがボールを追う際や実際にボールを打つ際に体の軸や頭の位置が動かないのは正確にインパクトをするためでもあります。
ボールを強く打とうとラケットを一生懸命振る方はスイングで頭の位置がブレたり、体の軸が動いてしまったりします。それもインパクトが正確でなくなる (意図しないミスになる)原因です。
加速したラケットは慣性の法則で更に前進していきボールと接触する
手に引かれて加速したラケットは完成の法則により前進していこうとするため腕や体の位置を追い越していきますが、手や腕の動く速度よりもラケット(ラケットヘッド)の速度が速いということは『体を追い越した後、前進していこうとするラケットに手や腕は引っ張られる状態になる』ということです。
考えてみてほしいのですが、マラソンの伴走車のように
自分が進む速度と同じか、より速く進む車を「手で押す」ことができるでしょうか?
押す効果がほぼ発揮でないでしょうし、逆に自分よりも速く動いていく車に手が引っ張られていく感じだと思います。
これが『打点においてラケットでボールを押す』という広く言われる説明に対して私が違和感を感じることに繋がっています。
インパクトの0.004秒の間にボールとラケットは接触したまま10cm以上動いているのです
ラケットでボールを打つ際、ラケットとボールが接触している時間は0.003~0.005秒と言われています。
また、人の反応速度は早い人で0.2~0.3秒だそうで「我々がインパクトの瞬間を認識してラケット操作を加える事はできない」根拠になります。
インパクト時間を0.004秒だとして、一般の方が実現可能な120km/hでラケットをスイングしたとすれば、この0.004秒の間にラケットとボールは接触した状態で約13cm進んでいる計算になります。(※0.004秒に間にボールがラケットと接触、ボールがつぶれて、ラケットから運動エネルギーが伝わり、ボールは飛んでいき、ラケットから離れていく)
計算に必要な数値は知られており、計算自体も単純なmのですが、テニスをやっている人でもこのように考える機会がないので誰も気にしません。
ラケットを一定の速度のまま動かし続けているスイング中の一瞬(0.004秒)の間で『ボールを押す』のは不可能でしょうし、初心者の時に教わるまま、皆が “空中の1点” だと考えている “打点” は、実際は13cmほどの幅でボールとラケットは接触しているということなのです。
『空中の1点である”打点”でラケットでボールを押す』という説明と実際に起こっていることではだいぶ違うというのが分かるでしょうか?
これについて「あくまでイメージだから」と言われるのであれば、「押す」説明の際に「13cmほどの幅でボールとラケットは接触している」という情報も提示されるべきだと考えます。
加速したラケットは体を追い越した後で減速を始める
テイクバックの停止位置から体の回転と手に引かれることで加速を始めたラケットは速度を増し、手や腕、体の位置を追い越しして慣性の法則により前に進んでいく訳ですが、手や腕、体の動く速度よりも早くなったラケットはスイング開始当初と違って手や腕によりエネルギーを加えられる要素がなくなります。
ラケットが加速するのは手に引かれる、つまり運動エネルギーを与えられるからであり、その力がなくなれば加速する要素がなくなり、結果、ラケットの速度は減速に向かいます。手や腕、体を追い越して以降のラケットは慣性の法則で安定的に前進はするものの速度は落ちる段階に入っているということです。
グリップを厚くし打点を前に取るということのマイナス面
一般にはグリップを厚くしたほうがスピンはかかる、強いボールが打てると認識されており、厚いグリップで打とうと考える方は多いです。
グリップの厚さはシンプルに打点位置に影響を与えます。グリップ毎に自然とラケットを持った手を差し出した際、ボールの打ちだし方向・角度にラケット面が向く位置がグリップによって変わってくるからです。
グリップが薄いほど打点位置は体に近く、グリップが厚いほど体から遠くなっていきます。
前述したように体を追い越して以降のラケットは加速に必要なエネルギーが手や腕から供給されなくなるので減速を始めています。
よく『インパクトでラケットの最大速度になるように』『ボールが離れた後に前で”ビュッと風切り音がするように』と言ったりしますが腕が前方に伸びるほど厚い打点で打つ場合、スイング前半と同程度の速度がインパクトでも保たれているとは考えにくいです。打ち方によっても多少違うとしても、基本的には『体を追い越したラケットが前に進む中で体から離れていくほどラケットの速度は下がっていく』と考えるのが自然だと思います。
根拠と言えるか変わりませんが、エクストリームウエスタンと呼ばれるような極端に厚いグリップで打つ方のスイングスピードは思ったほど速くないと思いますし、回転がかかっている割にボールが飛んでいくスピードは速くないはずです。ラケットスピードが下がっている(運動エネルギーが減っている)中、回転に多くエネルギーを割り振るから飛んでいくスピードが遅くなってしまうものです。これをカバーしようとより一層ラケットを強く振ろうとすると思います。
男子プロ選手を見れば、フェデラー選手やナダル選手はイースタンからセミウエスタン程度の厚さのグリップでテイクバックからのラケットの加速を利用して比較的体に近い位置でボールを捉え、ボールに運動エネルギーを伝える打ち方をしていると思います。
厚いグリップであるジョコビッチ選手やマレー選手も腕が前方に伸びるほど前でボールを捉えてはおらず、グリップが厚い分、フェデラー選手やナダル選手より前でボールを捉えていますが、ラケットとボールが離れた後も十分ラケットが前進していけるだけのスピースを残した位置 (体から遠くない位置) でボールを打っていると感じます。
これらのことからも
「ラケットをスイングするのはボールを飛ばし回転をかけるため。その要素はラケットスピードの速さと正確なインパクト。テイクバックの停止位置から手に引かれ加速を始めたラケットは手や腕、体の動く速度よりも速くなるが、体を追い越して以降は加速のためにエネルギー供給がなくなる。
慣性の法則により引き続き前に進んでいこうとするが、体追い越して以降は減速に向かう。ボールを飛ばし回転をかけるためにスイングするのだから考えるべきは安定的にラケットスピードを上げること。
ラケットスピードが速いスイングの前半、体を追い越して間もない位置でボールを打つ、加速の大半を占めるテイクバックから“ラケットを引くフェーズ”に注目すべきではないだろうか?
皆が空中の1点でラケットとボールが接触し離れる”打点”だと思っており、実質不可能であるその位置で”ボールを押すこと”を考えている。
皆が思う打点の位置ではラケットは減速を始めており、ラケットを押してボールに運動エネルギーを伝えることもできない (0.004秒でボールは離れてしまう)。
これらのことからも重視すべきはラケットとボールが接触する前にラケットスピードを安定的に上げておくことだ。」
といったことが言えると思うのです。
体を追い越して速度が落ちたラケットでボールを押すということは体の前にラケットをセットしてそこからスイングするのに近い
サーブをリターンする際など、ラケットを打点の位置にセットし面を作って当てることに専念する打ち方がありますが、ストロークにおいても体の前側にある空中の1点である『打点』でボールを打つことに集中するあまり、その打点の位置がスイングの始まりであるかのような打ち方になっていることが多々あります。
最初にボレーはボールが飛んで来る軌道上にラケット面をセットして反射させると書きましたが上のリターンの例も同じでそういった打ち方はボールにラケットを当てやすい面はあります。
ただ、スイングの有無を考えれば、ボールを飛ばすためにスイングをしている訳ですから、せっかくテイクバックをしている訳ですから、そこから打点の位置まではラケットを動かしていくだけ、打点付近でラケットとボールが近づいてから急にラケットを一生懸命に振り始めるのでは勿体ないです。
※ネット越しのミニラリーでボールを飛ばす必要がない場合やボールを正確に捉えることができない方が矯正のためにこういった打ち方を用いるのは問題ありません。ボレー同様、ラケットとボールが接触して飛ぶ理屈を踏まえれば打ち方の選択肢は色々選べます。
ラケットの加速に影響が強いのはテイクバックから体の回転に伴い『手でラケットを引くフェーズ』だと思っているので、体よりも前にラケットがセットされた状態では(インパクトは0.004秒ですから)ラケットでボールを押すことはもちろん難しいし、安定したインパクト、ラケットスピード、ボールを飛ばすために必要なものについてマイナスになります。
あまり厚くないグリップでラケットを瞬間的に加速し、速いラケットスピードを活かして体に近い位置でボールを打ち、ボールスピードと回転量を確保するのが効率が良い打ち方ではないだろうか?
フェデラー選手やナダル選手があまり厚くないグリップでボールを打っているのはジュニア時代から慣れているという事が関係しているのかもしれませんが、その打ち方、体の使い方はボールを飛ばすのはラケットスピードである (+正確なインパクト) ということを体現したような打ち方になっていると感じます。
ナダル選手がストロークを打つ際の回転量が他選手よりも多いことはよく言われますが、フェデラー選手もナダル選手に近い回転量を出しています。見た目イースタングリップ位?に見える薄いグリップであるフェデラー選手がウエスタングリップ等で打つ選手よりもボールの回転量が多いのは、スイングスピードを活かした打ち方をしているからだと思っています。
また、そのために体の機能や使い方を理解した打ち方が必要です。コツやテクニック、或いは道具の違いでボールの威力や回転量を増やそうと考えるのとは根本的に違うということです。
必要なのはラケットスピードと正確なインパクトだけ
繰り返しになりますが、ボールを飛ばし回転をかける要素はラケットスピードの速さであり、ラケットからボールに運動エネルギーが伝わる際に必ずロスが生まれるのでそれを減らすための正確なインパクトが必要となります。
また、ボールを打ち合う中、手や腕の操作で正確なインパクトは実現できないので体の機能や仕組みを理解した上で体を使うことが必要でもあります。
体の機能や仕組みは皆ほぼ同じなので、効率の良い体の使い方をしようと思えば、ボールの打ち方は(基本部分は)皆、共通してくるはずです。
『打点でボールを押す。体重をボールにぶつける。遠心力でボールを飛ばす。』といった説明はボールを打ってた際に感じる感覚的要素を科学的な分析せずにそのまま指導に割り込ませてるだけでしょう。本来理解に必要な情報 (物理法則に基づく曖昧でない誰にでも理解できる根拠) を伴わないままならそれを聞いた人達はそれを信じて上達に繋がると思ってしまいます。
テニスの説明はそういった固定概念(ステレオタイプ)で溢れていますが改善される要素が見つかりません。皆が上達に遠回りをしており、誰でも安定してボールが打てる術に気づかないままでいると思っています。