PR
スポンサーリンク
スポンサーリンク

サーブでうまく打てない、うまくボールが当たらない (テニス)

サーブを打つのは難しい

多くの人が、「テニスをやるだけでも難しいのに、サーブを打とうとすると尚さら上手く打てない」と感じます。皆がうまく打てずに悩むことで「上手く打つ方法を知りたい」と思い、ネットや雑誌等で「テニスを上達させる10個のコツ」といった内容が載っていたりします。

ただ、私は「テニスを難しく感じさせているのはそういった情報の影響もある」と思っています。

サーブをうまく打つには色々な要素が関係してきますが、ごくごく基本的な要素に目を向けることなく、強く打つコツ、回転をかけるコツといった”枝葉”の話ばかりしていてもしようがありません。でも、私が “ごく基本的な要素だろう” と思ってような部分が普段語られないのには理由があります。

サーブが打てる人は周りで見聞きする情報や”コツ”の類を聞いて “自身で練習する中で何となく打てるようになっている” ので、どうやったらうまくサーブが打てるのかという “基本的な情報・理屈の類” は曖昧なままだったりします。ただ、自分も周りから見聞きする情報で打てるようになっているので、今の出来てる状態を前提に、昔自分がしたのと同じように見聞きした情報(枝葉のコツ)を相手に説明し、自分の見本を “マネさせる” ような説明になります。

この昔から続く “漠然とした情報を基に何となく打てるようになる。だから人によって解釈や表現方法が様々。自分が教える際は同じように相手に伝える” という不完全なサイクルを延々繰り返しているような感じです。

トロフィーポーズと打点の高さ

サーブを打つ際は、トロフィーポーズをきちんと作るように言われ、その状態からラケットを振り上げて出来るだけ高い打点でボールを打つように言われます。

でも、トロフィーポーズではラケットヘッド側を上向きにラケットを立てて持っていて、ここからラケットを振り上げて打点の位置までラケットを到達させるということは、「最初から頭よりも高い位置にあるラケットを更に振り上げて、より高い位置にあるボールに接触させる」ということです。

トロフィーポーズで頭よりも高い位置にあるラケットを更に振り上げて高い打点でボールを打つ

当たり前のようですが、目から遠くなるほど物体の正確な位置や高さを把握するのは難しくなります。

ボールは空中にトスし、ボールの背景は空だけだったりしますから、高くトスを上げれば落ちてくるボールに対してその距離を正確に認識するのが難しいのは当然です。

テニス 頭上のボール

ラケットを持たずトロフィーポーズの形から手を挙げてボールに手で触るならまだ感覚的にもわかりやすいかもしれません。

腕を伸ばした高い位置のものに触る

ただ、ラケット面は手にもったラケットの先端付近にあり、体からも距離があります。体から遠いラケット面が頭よりも上にある状態で、さらに持ち上げてボールに当たるというのは難しくて当然です。

腕よりも体から遠い位置にあるラケット面でボールに触る

手に持った長い棒の先で、何かに触ることを考えれば、距離感や位置の調整など簡単でないのは分かるでしょうか?

手に持つ棒の先で何かに触る

既にサーブが打てる人が説明する場合、どうやってスイングするのかという基本部分を端折ってしまう。何故なら自分も練習の中で”何となく出来るようになっている”から。

既にサーブが打てる状態にある方が説明する場合、こういった難しさをどうやって考え取り組めばいいかという基本部分を端折って「トロフィーポーズからラケットを振り上げてボールに当てます」という説明をされてしまいます。

“できる状態の方が自分がどうやって打っているか” を説明するのと “これからできるようになろうとしている方がやる” のでは前提が全然違ってきますね。

テニスの指導でいえば、「体の仕組みや使い方」や「ボールが飛び回転がかかるという物理的な要素」という観点はなく、ボールを打つという技術的なポイントばかりになってしまっていると感じです。

自分が昔教わった際と同じように “コツ” をいろいろ挙げた上でボールを打つ様子をマネさせるような教え方になっていると思います。マネすることで何となくできるようになるでしょうが、人によってやり方が違ったりなかなか分からない人も沢山います。

人の体の仕組みや機能はほぼ同じですから “効率よくスムーズに腕を振る方法は大体同じ、スイングも皆同じようになるはず” です。皆が等しくできるようになるための情報が整っていないのだと思います。センスがどうこういう以前にこれでは上達するのは難しいです。

この辺りの「サーブを説明する情報や方法のこなれ具合や未精査な部分」がサーブ、ひいてはテニス自体を難しいと皆が感じることに繋がっていると思います。

サーブに限らずスイングの本質は安定した体勢でボールを飛ばし回転をかけるためにラケットスピードを十分上げること。ボールに当てるのは2次的な要素。

頭よりも高い位置にあるラケット面を振り上げて更に高い位置にあるボールに当てるとなれば、皆、ラケットをボールに当てることで精一杯になってしまいます。

サーブに限らず、ラケットをスイングする目的は「ボールを飛ばし回転をかけるための運動エネルギーを発生されるため」です。

安定した体勢、スムーズなスイングで、安定的に速いラケットスピードを実現した上で、ラケットがボールに接触する必要があります。まず、ラケットをボールに当てようとするでは順番が違うと言えます。

ラケットをボールに当てようとするあまり、ボールを飛ばし回転をかけるための「スイング」及び「ラケットの安定的な加速」がおざなりになってしまい、ボールスピードがない、回転がしっかりかからないサーブになってしまいます。

また、頭上のボールにラケットを当てることに集中してしまっているので、スイング中の自分の体勢や自分がどちらに向いているのか、インパクトの後、ボールがどの方向・角度に向かって飛んで行くのかも把握できません。

他にも、高く打点を取ろうと膝を曲げて大きくジャンプしようとしたり、強く打とうと無理な姿勢や体勢でラケット振ろうしたりとすれば、ボールを打つ際の姿勢も毎回違ってしまい、安定してボールを捉えるのが難しくなるのも当然です。

これらは“トロフィーポーズをきちんと取る”“高い打点でボールを打つ”という2点がサーブの基本となっていることから起きているように思います。

それらは、体の使い方やラケットを振ることではなく単に見た目のポイントについて述べているに過ぎませんね。

 

ラケットダウンさせた状態からボールを打たせる

初心者の方にサーブの打ち方を教える際に、ラケットダウンした状態を作らせ、そこからラケットを振り上げる形で打点の位置や打点に至る体のラケットの振り方のイメージを持たせたりします。

肘を曲げた状態でラケットダウンを作る

これは、ラケットを上向きにスイングしてサーブの打点位置にラケットが到達するという感覚を理解させるためにはアリだとは思いますが、実際に、ボールを打ってサーブを打つ段階になってもこのやり方を続ける方がいますが「誤り」だと言えます。

人が前に向かって腕を振る動作において、肘の曲げ伸ばしは使わない

サーブでラケットをスイングする際、腕を振っていく方向は、ピッチャーのようにボールを投げる角度・方向に向かってというのが基本となります。

野球のピッチャー

ピッチャーがボールを投げる際、体と上腕(脇)の角度は90度、上腕と前腕の角度(肘)も90度、上腕と体は180度以上の角度になります。

肘を曲げ伸ばしして腕を伸ばすという動作は含まれないのです。

肘の曲げ伸ばし

これは腕を上に持ち上げるための動作であり腕を速く振るための動作ではありませんね。

つまり、ラケットをスイングしてボールを飛ばし、回転をかけることが目的であるサーブにおいては、この動作はそぐわないということです。

ラケットダウンは作るものではなく、ラケットに働く慣性の力により自然と起きる状況でしかない

物体であるラケットには慣性の力が働きます。

止まった状態にある物体はその場に留まり続けようとするし、動きている物体はその直進運動をし続けようとします。

トロフィーポーズでヘッド側を上向きにして持たれているラケットは、スイング開始によりグリップ側が手に引かれスイング方向である斜め上方向にグリップ側から引かれていきますが、ラケットヘッド側は慣性の力でトロフィーポーズの位置にとどまり続けようとします。

サーブ トロフィーポーズ

グリップ側からラケットを引っ張る力が、ヘッド側が留まろうとする力を上回ると、ラケットヘッドとグリップの位置は逆転しラケットは倒れます。

サーブ グリップ側とヘッド側の位置が入れ替わりラケットが倒れる

ただ、ラケットヘッド側が留まろうとする力は消えません。純粋にグリップ側が引かれる力の方が強いだけなので、グリップ側から引かれたラケットはヘッド側がそのスイング方向の真後ろから追従していく形になります。

サーブ ラケットダウン

グリップ側が動くのに関わらず、ラケットヘッド側が最初にあった位置に固定され、グリップ側を引っ張っていると考えれば分かりやすいでしょうか。

ラケットダウンというのは、ラケットがその場に留まろとする慣性の力と、グリップ側からラケットを引く腕の力のバランスの変化によって自然と生まれているもので、人がラケットヘッド側を下に向けるという操作をすることに意味はないのです。

サーブの確率を上げるために打点を高く取ろうとする意味はない

先日も、サーブは難しい? 高い打点で打つほどサーブは入る? で確認したように、一般的な身長の方がサーブの確率を上げようとできるだけ高い打点でボールを打とうとする意味はほぼないと言えます。

目の位置とボールが遠くボールの位置が把握しづらくなるためラケットが当たりづらくなる、高くジャンプしようと膝の曲げ伸ばしや体を折り曲げたりすることでも視線がブレる、高く打点を取ろうと体や腕が伸び上がってしまうとボールを打ちたい角度・方向に向けて腕を強く振れなくなる、等々、マイナス面ばかりです。

トロフィーポーズはピッチャーがボールの投げる際のような体と腕の角度を作るために行っているだけです。

加えて言えば、ピッチャーがボールを投げる際、テニスにおけるトロフィーポーズのように “一次停止して腕の形を作る” といったことがないように、体の機能を使ってしっかり腕を振ろうとすれば腕は自然とこういった形になります。(トロフィーポーズを作るという動作自体が不要、本来自然とこういった体や腕の角度ができる。)

打点を高く取ろうとジャンプしたり伸び上がったりする必要がないのであれば、両足が地面に着いた状態でピッチャーがボールを投げるように腕を振ってラケットをスイングすればいいと思います。トスも高く上げる必要はないので、腕を振ってラケットが自然と通過する軌道の範囲で打点位置が取れます。

動画: サーブ、ラケットスピードが自然と上がる体の使い方を考える 

動画: サーブ、ラケットスピードが自然と上がる体の使い方を考える (体軸の傾き)

こうやって確認していくと「サーブを打つためのコツ」をあれこれ比較するよりも、よほど「サーブを打ちやすく」感じるのではないかと思います。無理な姿勢も不要だし、ジャンプも、遠いボールにラケットを当てようとすることも不要ですから。

動画: テニス、サーブ、打点の高さと確率、ボールを飛ばし回転をかける要素としてのラケットスピード