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極端に厚いグリップを修正する、グリップを薄くしていくということを考える (テニス)

tennis forehand

厚いグリップでフォアハンドを打つということ

日本では中学生までの部活が軟式テニスが中心ということもあり、軟式テニスから硬式テニスに移る方がたくさんいます。軟式テニスでフォアハンドを打つグリップは総じてかなり厚めなようです。これは変形率の高いボールを使う軟式テニスでは硬式テニスのように「ボールに回転をかける」という効果が見込まず、ほぼフラットにボールを“潰すように”打つ、“ラケットのスイングスピードを回転には振らずボールを飛ばすという方向に絞って使う”という目的のためだと思っています。

また、硬式テニスでも「ボールにトップスピンをかけるには厚いグリップの方が有利だ」という “信仰じみた(と思っています)ものがあり、若い方で強いトップスピンを打つことに憧れのある方や軟式出身の方などでウエスタングリップ以上に厚いグリップでフォアハンドを打つ方もよく見かけます。

ただ、自分の感覚以上にグリップが厚いことで上手く打てない状態になり多少でもグリップの厚さを変えようか、薄くしようかと考える方も多いと思います。

今回はグリップの厚さとボールを打つということに関する影響をもう一度考えてみます。

グリップの違いは打点位置の違いである

分かりやすいように極端にグリップの厚い方が少し大げさにグリップを薄くしていくと考えれば、グリップを変えてもボールを打ち出す角度を前のグリップと同じにするには、ボールを捉える打点の位置を前後に移動させて、ボールを打出す角度・方向にラケット面を向けるための調整をする必要が生まれます。

例としては、コンチネンタルグリップでフォアを打つ際の打点が “体の横位” だとすれば、

コンチネンタルグリップ 打点

グリップを変えずにそのままの状態でラケットを前に動かす(腕を前に伸ばしていく)と自然とラケット面は上を向いていきます。

ラケット面が上向き

グリップを変えずに打点を前に動かした際にラケット面を修正するためには手首を曲げたり腕を回転させたりして調整しないといけませんが、その調整は“ただラケットを振る”という意味でのスイング動作の中では不自然ですし毎回の再現性もないものです。

つまり、打点位置はグリップによって大凡決まってくる、グリップが厚くなる程打点位置は前に、薄くなるほど体に近づいてくると言えます。

ボールを飛ばし、回転をかけるのはラケットの持つ運動エネルギーである

人がスイングすることでラケットが得る運動エネルギーは「1/2  x ラケット重量 x ラケットスピード ^2 (2乗)」で計算されます。

ボールとラケットは固定されている訳ではないのでスイングの中でラケットがボールに”接触すること”で 運動エネルギーがボールに伝わっているだけです。(ボールを直接押しているのとは違います。)

ボールを打っても打たなくてもスイングは止まったり減速したりしませんから、プレイヤーが考えるべきはまず「ラケットをボールに当てること」ではなく「安定的で速度が速いスイングを行うこと」です。

ボールを打ち出す角度、方向に向けてラケットをまっすぐ振ってラケット面を当てていけばラケットから伝わる運動エネルギーはボールをその方向に飛ばすために使われ、その角度より上にラケットを持ち上げれば前向きの回転をかけるために使われます。

飛ばしたい方向にまっすぐ進める

ラケットの持つ運動エネルギーを決定するのはラケットスピードであり、ラケットが速度を持っている範囲で打たないともったない

ラケットの速度で言えば、ラケットはテイクバック時の停止状態から加速し、一定の速度を保って体の横を通過、その後、減速しながらフォロースルーに向かいます。

これらラケット速度の変化は運動エネルギーの大きさに影響するため、ラケットスピードが速い範囲でボールを捉えないと “普通に” もったいないと言えます。

フォアハンド テイクバック

打点を前にして体から離していけばラケットスピードも低下する

ラケット速度が速いのは “テイバック位置から加速を開始し、体の横を通過して暫くの間”で体の横を通過して体から離れるほど速度は落ちていきます。

打点の位置をどんどん前に動かしていき腕が伸びる最大限前に打点を取るとすれば、ラケットはそれ以上前には進めず、腕の関節を曲げたり腕を捻ったりしてラケットを持ち上げる “上方向にしか” 動かせなくなるのは分かると思います。

tennis forehand

計算上、120km/hで動くラケットは、ラケットとボールが接触するインパクト時間の長さと言われる0.004秒の間にも約13cm前方に進むことになります。

打点を前に取ることで、ボールに触った位置からそれ以上ラケットが前に進めない、進みにくくなるのはロスに繋がるのは分かると思います。

打点を前に取りすぎるとラケットはボールを飛ばす方向には進めず、上に持ち上げるしかなくなる

前述の通り、ボールを飛ばす方向にラケットを振ればボールはその方向に飛んでいき、その角度より上に持ち上げれば前向きの回転がかかるので、打点を前に取りすぎるとラケットは前に進めないし、速度も落ちてきているのでボールを前に飛ばせない(ボールの速度が出せない)です。

前に進めないからと上に持ち上げる動作が中心になれば飛んでいく速度はないけど回転だけはかかるという状態になります。

ワイパースイング

※ラケットの持つ運動エネルギーは一定なので回転を増やせばその分ボールが飛ぶ速度は落ちます。また、ラケットスピードが落ちているということはボールを飛ばし回転をかけるための運動エネルギー自体も落ちてきているということです。

極端に厚いグリップでは回転はかかるけど速度は速くない場合が多いのでは?

全ての人がそうではないでしょうが、ウエスタン以上に厚いグリップで打つ方を見れば回転はかかるけどボールスピードはそれほど速くない、ボールが飛んでいかない感じがするのではないでしょう?

それは回転をたくさんかけているからだと思うかもしれませんが、ラケットスピードが落ちている = ラケットの運動エネルギーが落ちてきている所で打っているのかもかもしれません。

その場合、ボールの速度を増すには “運動エネルギーを大きくする”、つまりプロ選手のように”ものすごく速く”ラケットを振る、ラケットスピードを上げるしかありませんが、普通は男子プロのような体の強さはないので、体の回転を使ったり足を使ったりしてラケットを速く振ろうとします。でも、そもそもの話、”速度が落ちている所”で打っている分がロスと言えます。

皆、体幹を鍛えるとか、筋トレするとかも考えがちですが、打点の位置が違うだけで自分が大きなロスを生んでいることを理解する方がよほど意味があると思います。

もちろんグリップを変えればOKというものではなく、体の使い方やボールを打つことに対する考え方自体から見直すべきかもしれません。でも、理解はその第一歩なはずです。

グリップを薄くしていくとボールに打ち負ける? ボールに喰い込まれる?

厚いグリップで打点を前にして打つのは、相手、ボール、ラケットを自分の視界の中に直線上で把握できるので「ラケットをボールに当てる」という面では理解しやすい点はあります。打ちやすいと感じるのでグリップを厚くしたくなる気持ちも分かります。

逆に、体に近い位置で打つのは打点が喰い込まれる印象があったり、体に近くなる分、ボールを打つタイミングや打点の位置が認識しづらかったりするかもしれませんが、単純に言えば打点が体に近い方がボールとの距離感やコートの広さや方向性の相関関係はつかみやすいと思います。

打点が体から離れて前に移動すれば自分とボールとの間の距離感 (奥行き)が分かりづらいでしょう。腕を伸ばした位置が打点という視覚情報に因らない判断になります。

それに “ラケットスピードが速いこと” はスイングの最大の目的がボールを飛ばすことである以上、全てに優先されます。

ラケットスピードが速い範囲で打つということはボールに当てづらくなるということ

ラケットスピードが速い範囲でボールを捉えるということは 当然、“ボールを捉えることの難しさ” にも繋がります。この”難しさに対する解”“人の操作でラケットをボールに当てようとしないこと” であり、“加速し慣性の法則により安定的な軌道で前に進んで行こうとするラケットの動きを体の自然な機能を使って補助する” スイングでもあります。

“現代的なフォアハンド” と言われるような、男子プロ選手がボールを打つ際のようなスイングはこういった原則に基づいたものになっていると感じます。人が一生懸命、体を回転させ、腕を振ってラケットを速く動かしボールに当てようとしても毎回毎回安定的にボールを捉えることは難しいはずです。

『特に意識することなく安定的に速度をもったスイングができる。』

実際、相手とボールを打ち合っている間にこれの持つ意味は分かると思います。

また、特別な運動センスや運動能力、筋力や体格が必要なものではないので、プロ選手だからできるものでも、我々にはできないといったものでもありません。人の持つ基本的な体の機能や仕組みを使うので初心者の方でも出来るようなものです。

ただ、残念ながらそれを教わる機会がなかなかありません。

「厚いグリップ=強いボールが打てる」という固定概念。その意味を考えれば理解が深まる

コートの特性や対戦相手など、ものすごく回転をかけないと勝てないような試合ばかりやっているのでもなければ、あまり厚くないグリップで比較的体に近い打点、ラケットの速度が速い段階でボールを捉える方が運動エネルギーも大きく、それらをボールの速度にも回転量にも振り分けることができると思います。

打点が近く、ラケットスピードが速い分ボールを捉える難しさについては、技術ではなくそもそもの体の使い方で回避できます。そのための道具の進化、フォアハンドの進化です。

ラケットスピードが落ちつつある、ボールを前に飛ばしにくい打点位置で打っているのをカバーするために筋トレを考えたり、コツを探したりするのは、本質からズレてしまっていると感じるのです。

最後に、これらは私が考える原則的な部分を上げ、理屈から考えればこういうことだろうとまとめてみたものです。全ての人に一律で当てはまるというものでもないでしょうし、色んな前提を飛ばしてそのまま当てはめてしまうことに意味もありません。テニスにおいても “これが正解で他は間違い”と断言したりは誰もできないと思っていますが、根拠の曖昧な通説に捕らわれずテニスを考えてみることは大事だと考えています。

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