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片手バックハンドと両手バックハンドはそんなに違うのか? (テニス)

指の輪にラケットをひっかけて持つ

私はテニスを始めた時から片手バックハンドで、両手バックハンドについては1度も打ち方を習ったことはありません。ただ、テニスをやる際の体の使い方を考える中で片手バックハンドと両手バックハンドにおける体の使い方を比較し考えています。

以前は両手バックハンドについて考える事がなかったので、世間一般で言われるような基本認識、例えば「片手バックハンドと両手バックハンドは体の使い方が全然違う」「両バックハンドの方がはるかに習得しやすい」「片手バックハンドは技術的に難しい上に教えてくれる人がないから、余程思い入れがないと続かないし、続けても習得できる可能性が低い」というように考えていました。

ところが、ラケットを振る際の体の使い方を考えていくうちに「片手バックハンドと両手バックハンドの体の使い方にはそれほど大きな違いはない」と考えるように変わってきたのです。もう少し正確に言うと、「利き腕だけでスイングする片手バックハンドと両手を使う両手バックハンドは確かに違うが、両手バックハンドでも右手でラケットを持っているという点から考えていくと、体の使い方における関連性を感じるようになってきた」ということです。

細かく上げると長くなってしまいますが、今回は最近感じてきた点を少しまとめてみたいと思います。

キーワードとなるのは「人の体の機能は左右対象で基本となる動作原理は決まっている」及び「右手と左手にそれぞれ役割がある」という2点です。わかりやすいように両手バックハンドから考えていきたいと思います。(以下、右利きを例にします。)

よく両手バックは「左手のフォアの感覚で打つ」と言われますが、同じようにラケットを握っている右手の役割について触れられることは殆どないと思います。仮に右手に大きな役割がないなら、この動画のようにラケットを持ち替えて左手のフォアで打った方がボールの威力も回転量も増すかもしれません。

元ツアープロの左右両打ち動画

Two Forehands Tennis Against David Nalbandian

野球を例に上げますが、左バッターがスイングした際、左手を離して右手だけでフォロースルーする選手と、最後まで両手で持つ選手が居るのが分かります。実際のボールを打つ際は違いますが、イチロー選手が準備運動として素振りをする際、左手を離した形でフォロースルーをしますね。

イチロー選手の打席

ATL@MIA: Ichiro steps to plate to make Marlins debut

これはイチロー選手が尊敬するケン・グリフィー・ジュニア選手のフォームから来ていると思いますが、私はこの左手を離すフォロースルーと両手で持つフォロースルーの違いをそれぞれテニスにおける片手バックハンド的、両手バックハンド的な体の使い方だと考えています。

インパクトを迎えた後まで右手主導でバットを振るか、振り始め(始動と引き始め)は右手主導だけど途中から左手に役割を切り替えていくかです。野球に詳しい方やゴルフをやられる方は「スイングする際に右手が強いか左手が強いか」といった話を聞いたことがあるかと思います。これは「引く力か、押す力か」という切り分け方をされますが、両手で握り続ける場合は「引く右手から押す左手へ途中からスイングを主導する役割が切り替わっている」というものです。

「左手のフォアで打つ」だけでなく「右手と左手、両方の役割があってこその両手バックハンドだ」と言えます。

Essential Tennis.comの両手バックハンドのパワーの秘密という動画

Two Handed Backhand Power Secret

この動画の中でも、「ゴルフスイングやバッティング同様、両手バックハンドで打つ際は、スイング中の各時点でスイングを支配している腕が決まっている。右利きなら右手でラケットを引き始め、ラケットが加速する中で、スイングの支配を左手にスムーズに移行し開放する。以降は左手主導でスイングを行っていく。」と說明されています。

「左手のフォアハンドで打つ」というのは、初心者にフォアハンドを說明する際に、小さくテイバックしたラケットをバウンドしたボールに併せて「面を押す」ことでインパクト面を作る練習をさせるようなものでしょうか。ボールを捉えやすい半面、それは体を使ったスイングとは言えず、かといって体全体を使い回転で打つフォアハンドのようにラケットをスイングしては両手バックハンドのスイングができません。

みんなのテニスラボさんの両手バックハンドにおける体の使い方解説動画

【みんラボ】井本研究員の”ダブルバックハンドについて”

この動画は両手バックハンドの打ち方がスムーズでない、当たりが弱い、ボールに威力が出ないといった方は是非見た方がいいと思いますが、途中、ラケットの派手な動きに較べて、体や腕の実際の動きはものすごく小さいという点を解説されています。

両手バックハンドにおける体や腕の動きはこのように実際小さいのですが、その中で、始動からラケットを引き加速させる右手と途中から役割を交代しスイングを主導する左手のスムーズな切り替えが小さい動きの中でラケットを加速させ、正確にボールを捉えやすくする決め手かなと思っています。

なお、ラケットを引く、ラケットを押すと言っても、そのように力を加えるという意味とは違います。

野球のバッターの例に戻りますが、バットを振る際に右手の引きと左手の押しがあるとして1kg近いバットをそれらの力だけでスムーズに振ることは困難です。

体に近い位置にテイバックしたラケットを体の回転と右手主導で引き始めて加速させ、次第に体から離すことで先端のスピードを増加させる、右手よりも速度の増したバットは右手を追い越し、“慣性の力”で更に前に進んでいこうとするところを、左手で支えフォローし前に進めていきインパクトを迎える、腕の長さ以上に前に進めないバットは手に引っ張られ進む方向を曲げられる、手や腕の関節が自然な働きに曲がるに併せて体に巻き付くようにフォロースルーを迎えるという流れです。

慣性の力で前に進もうとするラケットが腕に引かれて進む方向を曲がれるのは、物理で言うとところの「遠心力」となります。(物理上は遠心力という力はなく、進む力と引っ張られ方向を曲げられる力が合わさったものとされています。)

片手バックハンドと両手バックハンドの体の使い方がどう関係するのかですが、最初の方で書いたように、テイバックからラケットを引き始めた際に、インパクト後まで右手一本でスイングを行ってしまう、左手の役割を交代しないのが片手バックハンドだと考えています。

昔から、片手バックハンドを打つ際の基本は「横向きキープだ」と言われますが、最近の片手バックで打つプロ選手は体が開くほど大きなフォロースルーを取りますね。

これは野球のバッターがフォロースルーで左手を離す(つまり左手にほぼ役割を移管しない)スイングを考慮すれば理解できると思っています。決して横向き状態から「体を開くフォロースルーをする」という工夫をしている訳ではなく、振り始めからそういう体の使い方を想定しているものだと考えています。

 

バットを振ることに慣れている方なら、左バッターのように両手でラケットを握って素振りをする中、バッターのように体の正面を過ぎて以降に左手を離すスイングと、左手を離さす持ったままフォロースルーを行うスイングをしてみれば、左手を離すまではどちらも同様の体の使い方でスイングできるのが理解できるだろうと思います。

スイングは前述の通り、「引く」「押す」といった操作は行わず、イチロー選手の素振りのようにラケット(バット)にかかる遠心力を感じられるほどリラックして行います。バットよりはるかに軽いラケットですから力を込める必要もないはずです。(逆に重いバットを振る方が力を入れない振り方が分かるかもしれませんが)

右手で引き始め、途中から左手に役割を切り替える、もしくは右手主導で最後までスイングするという違いが分かってきたら、後者で左手を離すタイミングをスイング開始直後にし、左手を振り始めの位置から後方に残すようにすれば、プロ選手が体を開きながら胸を張るように行う片手バックハンドのフォロースルーが体感できます。

一部言われるような肩周りの関節の柔らかさも必要ないですし、右肩より右側にフォロースルーする際は、右腕の肘関節を回外(スピネーション)側に曲げて構いません。ラケットが慣性の力で自然と進もうとするのを腕の操作で邪魔しないことが大切になります。

片手バックハンド導入練習、リラックスしてラケットの遠心力を感じる取り組み

片手バックハンド導入 リラックスしてスイングできる感覚を学ぶ

腕や手に力が入っているか分からない場合は手全体ではなく、親指、中指、薬指で輪を作りグリップをひっかけるようにして持つとラケットに働く慣性の力(≒遠心力)を感じやすくなります。

指の輪にラケットをひっかけて持つ

片手バックハンドがマスターできている方は両手バックハンドをマスターするのは難しくないと思います。それは両手の方が簡単だから、左手のフォアで打てばいいからというよりも、今回のような考え方に基づけば「片手バックハンドの打ち方の応用」、もう少し踏み込んだ言い方をすれば「どちらも体の使い方に共通部分がある」と言えるからです。

錦織選手の片手バックハンドウィナー

Nishikori Hits One Handed Backhand Hot Shot 2016

試合で咄嗟に打ったショットですが錦織選手は普段の練習でも片手バックハンドでボールを打つことがありますし、セリーナ・ウィリアムズ選手も試合開始時のウォームアップでよく片手バックハンドで打っていますね。これらは体の使い方、バランスの確認という意味があるだろうと思いますが、片手バックハンドと両手バックハンドの体の使い方が全く別物ならわざわざ練習中に取り組む必要はないと思います。つまり、関連性があるから選手は練習に取り入れ、実際、両方打てるのだろうと思います。

スクールなどで、普段片手バックハンドを打たれるコーチは指導の都合もあり両手バックハンドでも打てるでしょうが、別物として認識されている (実際、得意不得意があったりする)場合も多いと思います。

最後に注意点として、今回考えた事は「片手バックハンドの打ち方から見た両手バックハンドとの共通点」と言えると思います。従って「両手バックハンドで打つ場合も積極的に右手を使用する」という前提です。

一般に言われる両手バックの指導方法は「左手中心でラケット面を作る」という形ですし、「腕の曲げ伸ばしは積極的に使わず(腕は三角形を作ると言われる)、腕は振り始めから伸ばし気味で手の位置は同じ高さで進める」イメージかと思います。

恐らく、片手バックハンドの体の使い方も含めて理解しないと今回考えたような体の使い方は難しいと思いますが、片手バックハンドに取り組まれている方なら、やってみると両手バックハンドでも片手バックハンドでも両方打てる、体の使い方の理解も深まるだろうと考えています。