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ストローク軌道の角度を計算してみる (テニス)

テニス ボールの打出し角度

ストロークを打つ際、どれ位上向きに打ち出せば良いのか?

フォアハンドを打つ際、ネットを越すために水平よりも上に向かってラケットを振ることになりますが、その際の

ボールを打ち出す角度 (≒ラケットを振っていく角度) が何度位なのか?」

を考える機会はないと思います。

今回はこの角度を計算してみたいと思います。

計算をするにあたっての前提としては以下の通りとします。

1)空気抵抗、ボールスピードと回転量の変化、温度、風の有無などの要素を考慮しません。

2)フォアハンドの打点がちょうどベースラインの位置にあるとします。

3)打点の位置はベースライン中央部、センターマークの位置と考えてください。

センターマーク

4) ネットの高さは最も低くなる中央、センターベルトの部分91.4cmとします。(プロの試合を見てもラリー中のボールの多く(8割とか) がネット中央付近を通るので問題ないと思います)

テニス ネットの高さ

3)ボールを打つ打点の高さは無理のない高さということで80cmとします。(170cm位の方で腰より少し下、骨盤位の高さです)

回転量やスピードは人によって違うでしょうが、ざっくりとした目安ということでご了承ください。

なお、計算するのはネットを特定の高さで通過する際の打点からの打ち出し角度な点をご注意ください。スピンをかけたとしてもネットを通過する高さが大きく違わなければ (ネットの3倍の高さとか) 極端に打ち出し角度が変わるということはないと考えます。

ネット中央の一番低い高さをぎりぎり通過する打ち出し角度

ネットの中央部、一番低い所の高さは91.4cm。ベースラインの中央、センターマークがある位置に打点があれば、計算上は最短距離になります。

テニス センターからセンターへ打つ

まず、ベースラインから打ったボールがネットぎりぎりを通過する際の角度を確認してみましょう。

打ちだし角度の図

テニス ネットを超す打ち出し軌道

打点の高さ(地上80cm)からネットの高さ(91.4cm)まで11.4cm上げる事になります。

その際の打ちだし角度は、水平+0.55度です。

テニス ネットを超す打ち出し軌道

1度も違わないという事は「ほぼ水平」ですよね。

角度の違いを意識しろと言っても難しい。かなり感覚的な調整だと思います。

2) 打ったボールがネット中央の2倍の高さを通過する場合 

続いて、よくストロークを打つ際の高さの目安として言われるベースラインから打ったボールがネット中央の約2倍の高さを通過する際の角度を確認してみます。

「ネットの2倍の高さ」等は実際の指導でも聞かれる例えでしょう。「ネットぎりぎり」より現実味がありますね。(でも「ネットぎりぎりの打ちだし角度が水平+0.55度だ」と「知っている」のは「知らない」まま打っているのと大きく違うのは分かると思います)

打ちだし角度の図

テニス ネットを超す打ち出し軌道

打点の高さ(地上80cm)からネットの高さ(91.4cm)までプラス102.8cm上げる事になります。

その際の打ちだし角度は、水平+4.943度です。

テニス ネットを超す打ち出し軌道

『約5度』と言ってもイメージしづらい かもしれませんね。

図で示せば45度の9分の1 (半分の半分の半分より小さい) です。

テニス ネットを超す打ち出し軌道

何が言いたいかと言うと、

実際にボールを打つ際は外的要素もありこの計算より角度を付けて打ち出すことはあるでしょうが、

スピンをかけるためにラケットを「上に振る」としても、ボールの打ち出されていく角度自体は『水平+5度』とかその程度

という事だと思います。

慣性の法則でラケットは勝手に前進していく

物体であるラケットには慣性の法則が働きます。

電車の急停車、急発進の例でおなじみですが「慣性の法則により止まった物体はその場に留まり続けようとし、進んでいる物体はその直進運動をし続けようとする」のです。

テニス ラケットに働く慣性の法則

物理の授業のようですが、我々は物理法則下で生きてるので、ボールもラケットも物理法則の影響を受けるのです。

「強く打てば強いボールが打てる」

「〇〇するのが強いボールを打つコツだ」

といった程度の理解では小学生位のお子さんと同じでしょう。

「ボールが飛び回転がかかるのは物理的現象でしかない」です。

それを理解しているか、理解していないかでは大きく違うと思います。

また、残念ながら我々が習う『フォアハンドストロークの打ち方』にはこういった根拠となる理屈が決定的に欠けていると考えます。同じ事を教わっているのに皆打ち方が違う、上達に大きな差が生まれるのはこの辺り。教わっている全員が「そもそも理解が足りていない」といった事だと思います。

フェデラー選手のフォアハンドストローク

forehand stroke

このフェデラー選手は、“地面と垂直” の身体の軸で身体の回転に伴って両肩が回り、利き腕肩が回るのに合わせて腕、そしてラケットも動いていくのが分かります。

体軸 (回転軸) が地面と垂直ですからラケット軌道は回転軸と90度、つまり、地面と水平方向に動いていく事になります。

身体の構造

身体の構造 身体の構造

ナダル選手のフォアハンドストローク

forehand stroke

ラケットを上に振り上げるフォームが印象的なナダル選手ですが、

「インパクト前後で身体の軸、回転軸を背中側に後傾 (傾かせる) させている」

のが特徴です。

身体の軸とラケットが進む角度を考えれば

「体軸の回転に合わせて両肩が回る。腕もラケットもその回転運動に伴って前進していく」

のが分かります。

理屈は上のフェデラー選手と同じなのです。

この点を理解しないで「ラケットを振り上げてスピンをかける」と考えていると回転はかかるけどスッカスカで速度の出ない、前に飛ばないボールになります。

テニス スイング軌道

ボールにエネルギーが加わる際のロスが大きいのです。速度が出ないから一層「強く振る」と考えます。

なぜ、体軸の回転がスイング軌道に関係するのか?

スイングを伴うフォアハンド側ショット、バックハンド側ショットを比べた場合、

フォアハンド側は、横向きを作る準備段階で身体の方法に下げた利き腕肩の位置を再び身体の前側に戻す動きの中でスイングを行い、ボールを捉えるのです。

tennis forehandtennis forehand  tennis forehand

一方のバックハンド側は横向きの準備段階からインパクト前後まで利き腕肩の位置は身体の前方にかり変わらないのです。

tennis backhand tennis backhand

この違いがあるから、

スイングを伴うフォアハンド側ショットにおいて、身体の回転 (実際には身体を回す「回転」というより、一旦下げた利き腕肩の位置を身体の前側に戻していく動作) がスイングそのものに必要に重要となる

のだと考えます。

慣性の法則と「腕を動かしてラケットを振る」意識との矛盾

物体であるラケットには慣性の法則が働くと書きました。

慣性の法則がどう影響するかと言えば、

・慣性の法則により振り始めの位置に留まろうするラケットに後方に引かれるため、手や腕はスイング初期、初期加速時にほぼ動かせない

という事が一つあります。

tennis forehand

我々は、

「腕を動かしてラケットを振る、スイングする」

と考えますね。

tennis forehand

ただ、実際には、

強い初期加速を行うほど、慣性の法則によりラケットが留まろうとする力も大きくなり、余計に手や腕は動かせない

のです。

tennis forehand

強いスイングを行う場合、

腕が動かせる、使えるようになるのは、加速したラケットが身体を追い越し、手や腕を後方に引っ張っていた負荷がなくなる頃

です。

tennis forehand

初期加速時、手や腕を使えない状況で用いるのは両足身体の力です。

よく

「腕の筋力は小さいから身体全身を使ってボールを打て」

とよく言われますね。

でも、そもそもの話、

身体の機能や仕組み上、まともな打ち方をすれば、手や腕でラケットを加速させられない

のは分かるかと思います。

私はこの「身体全身を使って打て」の話を聞くたびに説明不足、根拠となる情報不足だと感じます。そして「全身を使って打つ」の反対が「手打ちだ」という話になってしまうのです。

「手打ちな打ち方、手打ちでない打ち方をの違いを決める基準、根拠は何でしょう?」

修正した方が良いとしても、根拠なく、だ『見た目の印象』だけで言っているならそんな曖昧な指摘で相手が迷ってしまうのは困ります。

両足と身体の力を使って初期加速を生む

フェデラー選手やナダル選手の打ち方を見ていると下図のような身体の使い方を利用しているのを感じます。

テニス 初期加速を生む身体の動き

両足で地面を蹴る、踏む事で両足と身体の力を連動させ、腕ではなく利き腕肩の位置を前に移動させていく動き

といった感じでしょうか。

tennis forehand tennis forehand

ストリングスがボールに回転を与える

スナップバックが回転をかけるという話

かつてWilson社は

「ボールと当たった際、ストリングス(ガット) がズレ、それが戻る力、”スナップバック” でボールにスピンがかかる」

というスピンエフェクトテクノロジーという宣伝をしました。

Spin Effect Technology Exclusively by Wilson Tennis

この話は通説として広く知られていますが個人的には疑問のある説明です。(私は専門家ではないのでその正しさは分かりませんが)

飛ぶラケットと飛ばないラケット

「フレームが薄く、しなるラケットは飛ばない」という認識は多くの方が持っていると思います。

tennis racket

ラケットには「飛ぶ」「飛ばない」という評価がありますが、

飛ぶと言われるラケットに『バネや機械的仕組み等、使っている人が加えるエネルギー量とは関係なく、追加のエネルギーを勝手に加えてくれる仕組み』等が搭載されていない

事は分かりますよね。

tennis racket

ということは、

「加えているエネルギー量に対して “どれだけロスが小さいか” 」

事がボールの飛びを決めるのだろうと考えられるのです。

※実際には重力と速度を持って飛んで来るボールもエネルギーを持っているのでそれを反発させる際のロスの小ささも飛びに影響します。

tennis ball

エネルギーの大きさは『1/2 x 重力 x 速度 ^2 (2乗)』で表せます。

手に持つラケットは1種類なのでインパクト前後のラケット速度が速い程、飛びや回転に使えるエネルギー量が大きい事になります。

同時に (分かると思いますが) 「うまく当たらない」とエネルギーの伝達ロスが生まれるのです。

しなりっぱなし、歪みっぱなし、たわみっぱなし

ラケットやストリングスのしなり、歪み、たわみは主にボールに当たる、押される負荷で発生します。

その負荷は、ボールが飛んでいく、離れる、接触状態が解消されるまで無くならないのです。

Wilson社の「スナップバックが回転をかける」という話をしましたが、個人的には、

ボールが離れるまで、ラケットやストリングスは、しなりっぱなし、歪みっぱなし、たわみっぱなし

だと考えています。

142mph Serve – Racquet hits the ball 6000fps Super slow motion (from Olympus IMS)

トランポリンのように「復元する力が物体を飛ばす、回転などの影響を与える」には0/003~0.005秒と言われるインパクト時間は身近すぎるのだと考えます。

トランポリン

すごく柔らかく張ったストリングス、かなり大きな面サイズを持つラケット、ゆっくりとしたスイング、柔らかい当たり方をすれば『トランポリンのような飛び方』を感じるかもしれませんが「それで飛んでいる、回転がかかっている」とは考えづらいと思います。あくまで「そう感じる」という感覚の話で科学的根拠が分かりません。

その一方、ボールと接触した際、ストリングスは押され、スイング方向によってラケット面の一方による、ボールに不均等に接触する状態が生まれています。

野球のボールをを投げる際、指をかける幅で回転量や速度が変わるそうです。(速球、ストレートを投げる際は、狭い方が逆回転がよくかかりボールが伸びる)

ボールの握り方

同様にテニスでもボールに対して不均衡にストリングスが接触する、ひっかかる状況がスピンをかけやすくるという効果はあるだろうと考えます。

テニス ストリングスのズレ

ズレがストリングスが戻る事でスピjんがかかるのではなく、ズレた状態で不均衡にボールに接触する、力が偏って伝わりやすくなると考えるからです。

スイングする目的はボールを遠くまで飛ばすため

我々がスイングする目的

「ボールを遠くまで飛ばすため」

です。

tennis forehand

大きなエネルギーを加える事でボールは遠くまで飛びます。

同時に「ボールに速度が出る」のは遠くまで飛ばすための副産物です。

「速度を出すために強く打つ」とだけ考えていると「力を加えないと遠くまで飛ばせない」ようになり、「うまく当たらず毎回大きく伝達ロスが起きている」のに「ネットするからもっと強く振らないとダメだ」という発想になったりします。力任せにスイングしてもラケット速度の情報は僅かですし、一層当たりづらくもなります。負のスパイラルですね。

飛ばしたい方向、距離があるのですから

その方向にまっすぐラケット面が向かっていく

のが伝達ロスを小さくする分かりやすい方法です。

ラケット面が動いていく向き

トップスピンを強くかけたいからといって毎度、ラケットを振り上げるようなスイング

「当たりづらく、伝達ロスも大きい」

勿体ない打ち方と考えられるのは分かるかと思います。

※誤解を生みそうのですが「間違いだ」といった指摘ではありません。私は「ボールの打ち方に正解も間違いもない」と思っています。トッププロも見ても打ち方はそれぞれ違います。世界的研究者、テニスの権威でも「この打ち方が唯一の正解」と決めるのは困難だし、あまり意味がない事だと思います。ましては我々レベルが「その打ち方は間違い。正しいのはこう」と指摘しあう行為に “マウントの取り合い” 以上の意味をを感じません。再現性の高いテニスをしたければ、物理法則下で自分が求める結果に対して如何に結果に結びつく条件を整えるかだけです。同時に「テニスの楽しみ方も人それぞれ」です。怪我をしない範囲で自分が打ちやすい、打ちたい打ち方で良いと私は思います。私は「上手くなりたい」ので、誰もが再現性高く安定してテニスが出来る方法を考えてみているだけです。

プロはボールを飛ばす効果的なスイングの中でスピンもかけている

ネットの2倍の高さ (約180cm) を通過させるためのボールの打ちだし角度は『水平+5度』 (条件は述べた通り)

スイングを伴うフォアハンド側ショットは『利き腕肩の位置を前方に戻す動作』の中でラケットを加速させ、スイングし、ボールを捉える。

慣性の法則によりラケットに引かれ動かせない手や腕の代わりに両足や身体の力を使って利き腕肩の位置を前方に戻す。

体軸を回転軸の両肩が回る、利き腕肩の位置が回ってくる。その際、腕は動かせないのだから、体軸が地面と垂直なら、スイング軌道は地面と水平に近くなる

プロ選手をみるとそういったスイングをしているのを感じます。

ボールは相手コート方向に向けて飛ばしたいのですから、当然、

「前に向けてボールが飛ぶ、遠くまで飛ぶようにエネルギーを加えられる」スイング

です。

tennis forehand tennis forehand

身体の回転がそのまま水平方向へのラケットスイングを生みます。

両足や身体の力を使って初期加速を生んでおり、強く加速したラケットは勝手にボールに向かって直進していきます。

その加速、前進運動を邪魔し、速度低下の原因になる手や腕による操作、再現性を低くし、毎回違うスイング軌道を発生させるそういった操作は出来るだけ行いたくないです。

手や腕を使ってラケットを持ち上げる、振り上げる事でスピンをかけようとする打ち方が

「せっかく発生させた、ボールに加えてようとしているエネルギーを如何に無駄にするか、当たりづらくスイングの再現性を下げるか」

は想像できると思います。

ネットの2倍の高さを通過する打ち出し角度が水平+5度だとすれば、それよりわずかに上向きにスイングする。発生させた強いエネルギーと直進するラケットを活かした安定したスイング軌道を利用してスピンをかける。手や腕による操作ではなく、高いラケット速度を利用して勝手にスピンがかかる。

ボールに加えられるエネルギーが大きければ速度を落とさず回転に割り振るエネルギー量が増やせる。

ボールに加わるエネルギー量を決めるのはラケット重量とインパクト時の速度 (そして当たり方)。

プロ選手のスイングはそういった望ましい条件を備えたものに感じます。

Rafael Nadal 4K – Australian Open 2016 Back Perspective (Practice Courts)

「前に強くラケットを振る」ということと「スピンをかける」ということは相反するような印象を持ってしまいますが、プロ選手達はそういう打ち方をしている、つまり現代的なフォアハンドはそういう打ち方だということですかね。