人の体の機能は左右対象である
当たり前の事かもしれませんが、人間の体において右腕と左腕に機能差はないので、テニスにおける基本的な体の使い方に右利きと左利きで違いはないです。同じ体の使い方を右利きでも左利きでも応用できます。
見方を変えると、この事は『体の使い方、ボールの打ち方を理解していれば、右利きの人でも同じような打ち方を左手でもできる。左利きの人も同様。』という事を表しています。
左右両投げのピッチャーがいますが。
野球では時おり左右両投げのピッチャーがいます。右手でも左手でも投げられるのですが、その選手が体の使い方を理解しているからどちらの手でも投げられるのかはわかりません。
試してみたら偶然できたのかもしれませんし。
でも、恐らく、投球フォームを見て左右の投げ方にそれほど差がなければ、どうやって自分が投げているのか理解してできるようになったのだと思います。(左右でフォームがかなり違う場合はやってみたら出来るようになったという事だと思います。左利きで0から覚えたのと同じですね。)
テニスにおいて左右両方で打つということ
テニスにおいても、気まぐれだったり、練習のためと、非利き手でボールを打ってみる人を見かけます。
私が聞いた話では非利き手の経験の30%は利き手の経験に反映されるそうですからコーディネーショントレーニングの一環としてならいいと思います。
ただ、この場合は、非利き手で打つ事自体に意味を見つけている訳ではないかと思っています。
よく『両手バックハンドは非利き手のフォアハンドと同じ』だと言われますね。そう聞けば、形から非利き手を使うイメージもできますが、普段、非利き手でフォアハンドを打つわけではありませんからどうやったらいいのか具体的にはピンと来ないと思います。
でも、両手バックを打つプロ選手は非利き手で利き手と同じようにボールを打つ事ができるようです。
2014年デビスカップ期間における錦織選手の練習 (有明)
私もこの練習を現地で見ていました。錦織選手は怪我で出場しなかったのですが、試合開始前に有明コロシアムのすぐ脇のコートで練習を開始し、練習の後半でいきなり
左手でボールを打ち始めました。動画だと打ったボールが見えませんが、直前に右手のフォアで軽く打った際と同じ位の球速はあったと思います。(一般なら十分速い)
本村剛一プロのイベントでのデモ風景
本村剛一プロのデモンストレーション映像です。
途中、左手にラケットを持ってスマッシュを打ち始めます。(3分20秒位から)
本村プロは左手でスマッシュを打つのがデモではお決まりのようですね。
打ち方は右手とは違うでしょうが打つボールの威力はかなり強いです。
Tennis Pro With Two Forehands – Serve with Right & Left Hand
海外のテニスYouTubeチャンネル『Top Tennis Training』の動画です。
チャンネル主催のテニスコーチAlexさんとプロ選手Nicolasさんの打ち合いです。お二人とも右利きですが、ストローク、サーブを右手、左手の両方で打っています。Alexさんは数年前から左手で打つ練習をしていて今はどちらも同じように打てるようになっています。
見て分かるのは「右も左も同じ身体の使い方で同じ打ち方をしようとしている」事ですね。
両手投げピッチャーを例に上げましたが身体の使い方を考えないままなら投げられたとしても左右で投げ方が違うでしょう。逆に考えていれば (練習は必要でも) 左右同じような投げ方ができるであろうという事を示していると思います。
実際の試合で「左右握り替えながら」というのは現実的ではないですし、「サーブだけ左で」というのも同様だと思います。(全て左なら分かりますが)
あくまで身体の使い方を考える練習の一環という感じだと思います。
非利き手で打つということの意味は?
何が言いたいかというと、単に両手バックに役立つから非利き手で打ってみたらいいという事ではなく、『利き手でも非利き手でも同じように、ストロークが打てる、サービスが打てるという事は、普段、自分がどういう風に体を使って打っているのか、どうやったら力を使わずにボールが打てるのかというのを理解できている』という事だと思います。
上でも書きましたが、非利き手で打ってみたら少しは打てるようになったというのは利き腕で初心者が0から試行錯誤しているのと同じですが、テニスにおけるボールを打つ理屈、体の使い方を理解していれば、どちらの手でも同じフォームで打つことができるようになるでしょう。もちろん、筋力や柔軟性など利き手とは違うでしょうが、非利き手で打てばより力を使わずにスムーズに打つ方法を学ぶヒントにもなりそうです。
右利きなら左手で同じフォームで打てるようになる。左利きなら右手で同じフォームで打てるようになる。感覚だけでは同じフォームでは打てませんからね。
テニスの基本を理解しているということ
私は、「基本を理解している」とは、“自分のテニスをきちんと言葉で具体的、論理的に説明でき、それを聞いた人がそのまま再現できる状態” だろうと考えています。
自分がボールを打つ状態を「◯◯のように」「◯◯する感じで」とイメージでしか説明できない人は自分が体をどのように使って打っているか理解できていないし、調子が悪くなると元に戻すことができません。調子のよかった時のビデオ映像を参考にするのは他人の映像を見て真似しようとするのと大差ないと思います。(これはいわゆる調子の波、好不調とは別のものだと思います。調子の波である”不調”ではなく“どうやって打っていたのか分からなくなる”状態です。)
“テニスはボールを打つ経験の中でしか上達できない”と考える人は多いです。だからとにかくたくさんボールを打とうとします。ボールを打つ経験は今の自分の状態を確認したり実際のボールの感覚を掴むのに不可欠ですが、ボールを打つことで得られる経験は感覚的で良いと感じる調子も翌日には分からなくなってしまったりします。
この場合の“基本”となる知識や理解がないのでどうやって調子を戻せばいいのかわからず仕方なく今まで違う方法で状態を良くしようします。
上達に向け前進しているようで今自分がどの位の位置にいるのか、どうすれば上達できるのかも検討がつかないまま、実際不必要な遠回りをしているかもしれない状態でひたすらにボールを打つのみです。
“基本”ができている人は基準とできる知識や理解がありますから何をすべきか自分自身で考えることができますから、感覚的な状態の変化に左右されることが防げます。